真・恋姫無双紅竜王伝O〜官渡への足音〜 |
曹操軍の将となった織田舞人は凪・真桜・沙和の3人―――後に『魏の三羽烏』と呼ばれる少女達を指揮下に加え、警備隊の隊長兼将軍として忙しい日々を過ごしていた。大将軍から異例の降格となったのだが、彼はたいして気にはせず今の職場を楽しんでいた。
「そういえば舞人、あなたには礼を言わなくてはならないわね」
「礼?なんの礼だ?」
ある日、舞人の部屋を訪れた曹操はそんな事を言い出した。
「虎牢関で、春蘭を助けてくれたでしょう?」
「ああ・・・」
そういえばそんな事もあったなぁと舞人が回想していると、曹操は彼に対して―――
「あの子の主として感謝するわ。あなたがいなければ、春蘭は死んでいたかもしれないもの。今あの子があるのはあなたのお陰。礼に私の真名・華琳を授けるわ」
頭を下げ、真名を授けたのだった。
その彼と華琳のもとに、一人の客が訪れた。
「田豊と申します。この度、曹操様の幕下に加えていただくべく参上つかまつりました」
田豊は栗色のロングヘアーに桃色の踊り子のような衣服を纏った少女で、参謀として華琳に仕えたいと申し出てきたのである。しかし、問題があった。
「田豊、あなたは麗羽の参謀だったと記憶しているけど?敵の参謀だった者を私が雇うとなぜ思う?」
「元・敵の参謀だからこそです」
華琳の質問に田豊はこともなげに返答して見せた。
「曹操様は近く袁紹軍と決戦をする意思があると私は愚考しております。しかし私が思うに曹操様には帝を擁して大義名分を手に入れ、夏候惇・夏候淵・張遼・織田舞人など良将がそろっていても、曹操軍には勝利するに足りないものがあります」
「その足りないものとは?」
「まずは兵力です。袁家の擁する兵力はいまさら言うまでもないでしょう。確かに織田殿の存在を袁家の兵たちは恐れております。しかし織田殿とて人間、どのような不測の事態が起こるかわかりませぬ」
確かに華琳が舞人を雇い入れた理由の一つに『敵兵への影響力の強さ』というものがある。敵兵への恐怖心を煽るとともに自軍の兵に対して心強さを与えるが、彼がもし戦場で斃れるような事があれば、自軍の兵に対する衝撃は大きいという負の一面もある。
「次に敵の情報です。曹操様も袁紹軍に対する情報を握っておられるとは思いますが、最重要機密までは握っておられないはず」
「そうね・・・しかし私が臣下になる武将に求めているものは何か分かっているかしら?田豊」
「忠誠心。そして、有能である事」
「そうよ。田豊、あなたが有能であることは麗羽の軍で参謀を務めていた実績もあるし、私も認めるところではあるわ。しかしあなたが麗羽から放たれた間者ではないという保証はどこにもないわ。いったいあなたはどのようにして麗羽から離反したという証拠と私に対する忠誠を示すつもりかしら?」
華琳の問いに対し、田豊は黙って懐に手を伸ばし一枚の書簡を差し出した。書類には2列に並んだ『顔良』『文醜』の名はもちろん、『郭図』『審配』など袁家の主だった将達の名前があった。
「これは・・・?」
「袁家の主だった将たちの派閥の図です。顔良や私、友人の張?は穏健派。郭図・審配は強硬派となっています。これを御活用いただければと」
「なるほど・・・しかしこれだけで私に対して忠誠を示しているとは思っていないでしょう?」
「それはもちろん・・・そのまえに」
チラリと舞人の方を見る田豊。彼女の顔が少し赤らめられて、
「殿方は、すこし外していただけませんか?」
舞人達男性の兵や将が出ていき、華琳と2人きりになった田豊は白磁のような白い肩を曹操に晒す。
「これは・・・!鞭に打たれた後、ね」
「はい」
彼女の肩には無数の鞭の跡が生々しく刻まれていた。
「先日の袁紹による謀反の前に私は諫言をして投獄されたのは御存知かもしれませんが、私と沮授殿は郭図から拷問を受けたのです。ありもせぬ謀反の疑いをかけられて。もはや私はあの下種とその下種達を重用する袁紹のもとにいては命まで奪われかねないと思い、出奔した次第です」
彼女の顔には怒りと、そして元主君を止められなかった不甲斐ない自分に対する憤りがあった。
「分かったわ。田豊。とりあえず、服を直しなさい・・・誰かある!」
「はっ」
田豊が服を整えたのを確認して、華琳が女官を呼んだ。
「織田将軍を呼びなさい」
「来たわね、舞人・・・ってどうしたの、その格好」
再度入室してきた舞人の恰好に、華琳は目を点にする。束ねている深紅の髪は解かれて所々はねて三つ編みになってたりもしていた。
「暇だったから外に出てたら流琉と季衣に捕まってな、髪で遊ばれてたんだ」
「そ、そう・・・」
お子様親衛隊長の2人に遊ばれた彼を内心気の毒に思いながらも、彼女は続けた。
「その前に・・・田豊、私の真名・華琳を預けるわ」
「はい。私も真名・市(いち)を華琳様に捧げます。ところで・・・」
田豊改め市はチラチラと舞人の方を気にしている。
「織田殿をお呼びしたのはいったい・・・?」
「ああ、そうね。市、あなたは新設された織田隊の参謀として配属してもらうわ」
「畏まりました・・・織田殿、真名を市と申します。これからよろしくお願いいたします」
「織田舞人だ。真名はないけど、舞人と呼んでくれ」
「そんな訳でこれから仲間になる市だが―――って凪、なんでお前不機嫌なんだ?」
「べ、別に不機嫌ではありません!」
翌日、舞人は3人の前に市を紹介したのだが、「ほなよろしゅうな〜」「よろしくなのー、市ちゃん♪」と真桜と沙和は笑顔で市を出迎えて真名を交換していたが、凪だけは「・・・凪です」と不機嫌そうに真名を預けていた。
「たいちょ〜、凪は嫉妬しとんねん」
「嫉妬だと?」
訳が分からないという感じの舞人。真桜はニヤニヤ笑いながら
「すでに隊長には皇帝陛下っていう奥さんがいるっちゅーのに、さらに綺麗なお市さんが隊長の部下になったんや。恋する乙女の凪ちゃんとしては気が気ではないで」
「なっ・・・!」
ボフッと顔を真っ赤にする凪。ちなみに皇帝・劉協が女だという事は一部(愛すべきおバカ)を除いた曹操軍の女将軍には知らされている事である。
「真桜!いい加減な事を言うな!」
「おお、恐っ!逃げるで沙和!」
「おおっ、なの〜♪」
脱兎のごとく逃げ出した2人を真っ赤な顔をして追いかけまわす凪。
「ま、こんな職場だがよろしく頼むな」
「は、はい」
多少戸惑っているようだが、この中にいれば早く曹操軍に溶け込めるだろうと舞人は確信していた。
曹操軍が新たに織田隊に軍師・田豊こと市を迎えた頃、北の群雄が動き出そうとしていた。
「それでは、審配さん?決戦場の方はどうなっていますの?」
「はっ」
上座に座る狸のような顔つきの男―――袁紹軍筆頭参謀の審配は広げられた大陸の地図を指し示す。
「我が軍と曹操軍が対峙するとすれば、決戦場はここになりまする」
野太い声で呟いた彼が太い指で示した場所にはこう記されていた。
『官渡』と―――
オリキャラ紹介
田豊
字は元皓(げんこう)。真名は市(いち)。曹操軍織田隊の軍師として配属された少女。彼女の知略は古の張良・陳平(ともに漢の高祖・劉邦に仕えた名軍師)に匹敵すると言われる才智を持つが、袁紹を見限って曹操のもとに去った。歌と踊りが好きで、よく陣中で口ずさんでは無聊を慰めている。料理の腕は殺人的なレベル。貧乳。
説明 | ||
素早い感じで16弾です。いよいよ官渡決戦への足跡が近づいてきています。そんな中で新キャラ登場です。 | ||
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コメント | ||
春蘭と二人で料理食べ比べてほしいですねw(ブックマン) 本人が納得してるのはいいとして、なんで降格人事?帝が許し、曹操がそうした理由がわからないのですが…あと、沮授はどうなったんだろ?(吹風) 貧乳に一票!(覆面X) |
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