最強の傭兵魔導師、逆行する
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彼がここ、ミッドチルダに来て実に120年の月日が流れた。

 

その月日の間に彼は様々な事件と関わり、仲間たちとともに解決し、平和な時間を過ごして…そんな慌しくも充実した生活と人生を送っていた

 

だが…それも今日で終わる

 

「ああ…いい天気だ」

 

自室の窓際にあるイスに腰掛け、年老いた彼は窓越しに空を見上げる

 

仲間たちのうち、何人かは既に天に召されている。その死に際の顔は、ひとつの例外もなく安らかに逝った

 

ただ…ただ、自分を愛してくれていた妻達だけは少しだけ悲しそうだった

 

「一緒にいられなくてごめんなさい…」

 

それが、全員共通する最後の言葉…

彼は、涙と喉が枯れるほどに泣き叫んだことを覚えている…

 

その日のことを思い出せば、次から次へと仲間たちとの、愛する家族たちとの思い出が頭を過ぎる

どれもこれも、事件でさえ、今となっては人生を彩る最高の思い出だ

 

辛いことや、後悔したこともあったが、それすらも…

 

「…さぁ…俺も逝こうか」

 

今のは走馬灯…そして体から力が抜けていくとなれば、もうそれは死へのカウントダウンなのだろう

 

彼は十一年間の家族や友達との記憶…

そして傭兵として、父として、祖父としての120年のミッドの思い出を胸に抱え、ゆっくりと瞳を閉じる

 

そして、長年の相棒である紺色の宝石を握り締め…しっかりとした声で言葉を紡ぐ

 

「我、時空を越える者なり。選びし者の元、その力を放ち、応えよ。過去は糧に、記憶は胸に。そして壊れぬ魂は……我等の"心"に。この手に魔法(チカラ)を」

 

彼は今でも忘れない、初めてセットアップしたその瞬間を脳裏に蘇らせる

その証拠に、今でもこうしてスラスラとそのときの口上が言える

 

[…マスター]

 

そんなとき、紺色の宝石が点滅しながら話しかける

 

「ノブル…お前は俺の生涯最高のパートナーだ。あの時、あの子を救えなかったときは恨んでしまったが、それでも俺といつも一緒にいてくれた…お前のお陰であいつらに出会えて、愛する家族を得ることが出来た……ありがとう、俺の…最高の相棒」

 

[…あなたのデバイスであったこと、誇りに思います]

 

泣きそうな声で紡がれた言葉に、彼は嬉しそうに笑った

 

もう、この相棒とこうして語ることはないのだろう

別れというのは、いつになっても寂しいものだ

 

嗚呼、自分は死んだらどこへ逝くのだろう?そんなことを考え、彼は相棒を握り締めていた手から力を抜く。

 

もうすぐ、この131年に渡る人生が終わる。もう数秒ともたないだろう

 

それでも、彼は笑った

ニヤリと昔のように、どこまでも好戦的に、不敵に、仲間たちを魅せ続けた…衰えることのないその笑みを

 

「最後は、笑って逝く。どうだカミサマ…おれは…わらって…」

 

カツン、と音を立てて蒼い宝石が落下した…

その音を聞いて、彼の曾孫に当たる栗色の髪をした少女が部屋に入り、その中にある彼に近づく

 

まるで眠っているようなその体は、もう動くことはない。少女はその赤と緑の瞳から涙を流し…けれども笑顔を浮かべた

 

「さっすがおじいちゃん…だね」

 

彼は笑っていた…

いつも自分に見せていた笑顔を

少女は落ちている宝石を手にし、しっかりと握り締めながらもう一度彼を見つめる

 

そして…宝石を握った手を彼へと突き出した

 

「我、時空を越えし者の血縁なり。紡がれし言葉の下、その力を放ち、応えよ。悲しみを糧に、思い出は胸に。そして受け継がれし魂は…」

 

 

「[我らの心に。この手に魔法《チカラ》を!]」

 

部屋の中を、綺麗な空色の光が埋め尽くしていく。これは、彼を送る花の代わり…でも、きっと彼はこの方がいいだろうと少女は思った

 

送る言葉はいらない…代わりに、成長した姿を送ろう。その魂は受け継がれ、決して途切れることはない

 

少女は背を向け、部屋から出る。セットアップしたことによるその成長した後姿は、まるで、若き日の彼のようだった…

 

○●○●

 

「…ぶ…」

 

うーん…

 

「大丈夫ですか?転んじゃったんですか?」

 

うるっさいなぁ…

静かに逝った後、声をかけられて内心苛立ちながらも目を開けると…

 

「…へ?」

 

目の前にいたのは、とても綺麗な女性ふたりだった…

いや、見た目二十歳になる前なので、正しくは美少女、か?

 

一人は健康的に焼けた肌を持ち、焦げ茶色のロングヘア…一部を水色のシュシュでまとめてあり、年頃のギャルといった感じだ…

 

もう一人は、白魚のような肌を持ち、クールそうな顔立ち…

艶やかな黒髪のショートヘアのお陰か、大人っぽさが全面に押し出されている…

 

どちらも同じデザインの服を着ており、且つその服ですらも隠せない肢体が扇情的である…

 

だが、彼はそんなものよりも、二人の顔を見て驚いてしまう…

 

だって…

 

「…姉さん?…香住先輩?」

 

その二人は、彼の姉とその親友なのだから…

 

「(ちょっと待て!?二人はもう俺がポックリ逝く前に死んだって聞いたぞ!?)」

 

軽く混乱する彼…

当たり前だ、二人は享年八十一で、すでに死んだのだから…

 

しかも、自分が離れる前と同じ容姿で目の前に現れたことに驚いてしまう…

 

「「え?」」

 

一方で、彼の言葉を聞いた二人は驚いた後、笑い出す

 

「ププッ…姉さんって何よ、明日生ったら何大人ぶってんのォ〜?」

 

「大丈夫ですか?どこかいたくないですか?」

 

「へ?へ?…えぇ??」

 

その反応を見て彼は…明日生は混乱する…

するとふと、自分の手を見てしまう

 

「!?」

 

死ぬときはしわくちゃだった自分の手…

その手は皺一つ無かったのだ…

 

「(どうなってんだ?)」

 

「見たところ、怪我とかはないようですね」

 

「そっかー、じゃあ解散!帰ろ帰ろ」

 

そんな中、女性陣はそう言い出すのであった…

 

○●○●○●

 

〜キャラ紹介〜

*ネタバレがあります

 

主人公

名前:新崎 明日生(しんざき あすき)

年齢:131(享年)→11(小学五年生)

職業:傭兵(〜十六)→管理局員(〜六十五)→道場経営(→享年まで)

魔力:A+

魔力色:萌黄色

 

概要:

小学生時代は虐められており、少し卑屈な少年だったが、ある日次元犯罪グループに誘拐されてしまい、そこで一緒に逃げようとしていた女の子を死なせてしまって以来、傭兵として犯罪者を“掃除”することを生業とすることにした

その際にいろんな世界で後記の戦闘技術を身に付けた為化け物級の強さを持ち、次元世界最強の傭兵と言われるまでに成る

 

管理局にスカウトされてからは局員として活動、その際に知り合った五人の女性と結婚、一人の養子に加えて八人の子供達を持つ

 

その後、戦闘技術を教える道場を設立し、順風満帆な人生を終える…

 

が、何故か自分が誘拐される三ヶ月前までさかのぼってしまい、現在混乱中

 

知識や技術はそのままだが精神が体に引っ張られてしまっている模様

 

念能力

明日生が傭兵としての仕事をしている際に身に付けた技術…

誰もが内に秘めている力、オーラと呼ばれる生命エネルギーを自在に使いこなす能力の総称

 

オーラは体中にある「精孔(しょうこう)」というツボのような所から出すことが出来るが、?

生命エネルギーを下手に漏らすとすぐ死んでしまうため、普段の状態では「精孔」は閉ざされている

 

 

精孔を開く方法は、様々な修行を積むことで自然に開くのを待つ方法と、?

「オーラによる攻撃を受ける」などで無理やり開く方法(外道の方法)がある

 

 

よい師匠に出会うことが出来れば、その中間である「手加減したオーラを流し込んでもらう」という比較的穏健にして安全な方法でオーラを目覚めさせることが出来る

これがある意味最善の方法である

ただし、精孔が開いてからエネルギーが流れきる前に操作を会得しないと倒れてしまうため危険がないわけではないが…

 

逆に何も知らぬまま念能力者に出会ってしまい、対処できないまま攻撃を受けてしまうと最悪である

 

この方法でも目覚めはするのだが、大抵は死に、運良く生き延びても基本的に体の一部は失うことになる

そもそもこの例は戯れ程度のものが多く、殺意を持たれている場合は素質に関係なくそのまま殺害されかねない

 

また邪念は更なる邪念を招きやすいらしく、そういった危険性からもこの方法での習得は警戒される

 

精孔が開いていない人にとって、オーラは「生ぬるい粘液のような、見えないぶよぶよが皮一枚隔ててあるような肌触り」がするらしい。?

あまり気持ちいいものではないらしい

 

念能力を使う者を地域によっては仙人や超能力者ともよぶ

又、生命力であるオーラを操るためか、能力者は皆長命であり、老化が遅いという

説明
寿命で死んだ最強の傭兵が傭兵になるきっかけの起こる三ヶ月前まで遡ってしまった!?
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