フレームアームズ・ガール外伝〜その大きな手で私を抱いて〜 ep24
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『まず口部の収束性雷火光条インペリアルフレイム。頬の多目的2連レーザー砲。更に尻尾の2連プラズマキャノン。さっきの輝鎚さんの一撃を防いだエネルギーフィールド、その他接近戦用のクロー含めて……うん!ムリゲーだな勝つの!』

 

 実況のアイがセンサーを使い増援で現れたアグニレイジを解析する。実況とはいえ他人事、故にアグニレイジとの武装差、性能差的にどう考えても轟雷達に勝ち目はないと判断しバッサリな感想を告げる。

 

「ちょっと!何勝手な事言ってんのよ!」

 

 実況席の横でスティレット達がヤジを飛ばすがアイ達は意にも介してない。

 

『しかし運営側、マスターがサポートメカでの出場を許可していたとはいえ、あれだけ大型の機体はいいんでしょうか?解説のクローディアさん』

 

『そうですねー。真姫さんが1人で出ている事を考えると、いいハンデという事になるんじゃないでしょうかー』

 

『この辺適当極まりねぇなー運営の連中……。さぁて轟雷チーム!この逆境をどう切り抜けるのか!?』

 

 実況は轟雷達には届いてない。仮に届いていたとしても、この状況でツッコミを返せるだろうか。轟雷達はインペリアルフレイムを食らいながらもなんとか立ち上がる。

 

「ほう、今のでも致命傷にはならないか」

 

 真姫はアグニレイジの右翼の付け根に飛び乗る。

 

「……当たり前ですよ!それにしてもこんな隠し玉があったとは驚きですね。まるで狩りゲーの主人公になった気分ですよ」

 

 轟雷は空元気ではあるが、自分が勝つと間接的に告げる。

 

「ほざけ!」

 

 真姫が叫ぶ時、轟雷は背中の滑腔砲をアグニに向けて撃つ。狙いは眼前の真紅の翼竜、だがアグニレイジは機体周辺を蒼いエネルギーフィールドで覆い防御。当然真姫もその中にいる。

 

「エネルギーフィールド?!あれで叢雲を防いだんですか!」

 

『マガツキとほとんど同じはずだ!何度も使えるもんじゃない!』と黄一。

 

「轟雷!エネルギー切れ狙うよぉ!」

 

 その横で輝鎚が叢雲を向ける。

 

「させるか!」

 

 シュンはレイジのバリア解除、直後に真姫がオオトリで視界右側にいた輝鎚を、レイジは両頬のレーザー砲で視界左側にいた轟雷に撃つ。

 

「ちっ!」

 

 キャタピラで高速移動をかけて回避する轟雷。轟雷改のアーマーは光学兵器に耐性が追加されてるが、むやみに受けないにこした事はない。一方でオオトリのビームは叢雲に当たり爆発。重装甲な分通常スピードは非常に遅いのが輝鎚だった。

 

「わぁっ!」

 

『輝鎚!大丈夫か!?』

 

 加賀彦の慌てた声が響くが帰ってきた答えは元気な声だ。

 

「大丈夫だよぉ!叢雲がなくとも!」

 

 輝鎚は装備を手持ちのチェーンガンに持ちながら迎撃を行う。

 

『破城鎚か専用ブースターを転送しようか?!』

 

 破城鎚というのは輝鎚専用の大鉈だ。これまた身の丈以上のサイズがあり対要塞用という極端な装備である。

 

「大丈夫!」と答えながら輝鎚は撃ちつづける。

 

「余裕だな!」と、真姫は輝鎚にキョウテンを向ける。輝鎚にかわせる様な機動力はない。

 

「そう何度も受け止められるものか!」

 

「いけません!輝鎚!」

 

 轟雷は叫びながらレールガンで真姫を阻止しようとする。しかし轟雷の方はアグニレイジが頬のレーザー砲で轟雷を仕留めようと撃ちつづける為、かわすの精一杯だ。そこへ加賀彦の叫びが響く。

 

『輝鎚!いっそ突っ込め!』

 

「!!」

 

 輝鎚はすぐさま背部のブースターを点火させた。輝鎚はロケットの様な噴射で真姫に突っ込んでいく。発射寸前だった真姫と輝鎚は衝突し、お互いが大きく弾け飛びバウンド。

 

「ぐあぁっ!?!!」

 

「ふわぁぁっ!?!?」

 

『あぁっと!輝鎚!避けられないと判断するとマガツキに突っ込んだー!!』

 

『輝鎚に搭載されたショックブースターですねぇ。重量級の輝鎚を強引に動かす為の武装ですー』

 

 輝鎚はアグニの右側面に落ちて、真姫はアグニの真後ろに落ちた。

 

「真姫が?!」

 

 シュンはどうにか援護しようとするが轟雷の相手で手一杯である。

 

「これでぇ!」

 

 上半身を起こしながら輝鎚はチェーンガンのミサイルを撃つ。フィールドで防がれると思っていたが、ミサイルは吸い込まれるようにアグニに命中。

 

「うっ!」

 

 爆発に驚きの声を上げるシュン。輝鎚の攻撃に気付いてなかった様だ。

 

『……対応が遅い?』

 

 セコンド席の方で加賀彦が異変に気付く。

 

『そうか!信道君の右目!』

 

 サポートメカを操縦していても、視界はパイロットの視界頼りだ。そしてシュンは怪我で右目が見えてない。

 

『轟雷!右側だ!信道君の視界は右が見えてない!』

 

「右?!そうか!」

 

 轟雷は同時に真姫がアグニレイジの右翼でずっと撃っていたのを思い出した。直後シュンのアグニレイジはエネルギーフィールドを貼って防御態勢に入る。焦ってる様にも見えた。

 

「迎撃をしない?!迂闊です!」

 

 この隙に体勢を立て直そうと轟雷は右に回り込もうとする。だが……、

 

「迂闊なのは……どっちだと思ってる!」

 

 直後真姫が二刀流で切りかかってくる。

 

「うわっと!」

 

 すんでの所でかわす轟雷、砲撃装備の崩天から通常のマガツキ装備に真姫は戻っていた。姫武者の猛攻は止まらない。

 

「私の逆鱗に触れたなぁ!!」

 

 今までにない怒りを見せながら少女は切りかかる。轟雷はナイフで対応しようとするが、二刀流の剣捌きは非常に素早い交戦権を真姫に与えていた。

 

『あぁっとマガツキ!凄い気迫です!!』

 

「射撃だけでなく接近戦も得意とは……!」

 

「私が射撃一辺倒の女と思ったか!!」

 

「そうやって怒るって事は!やはりあなたはマスターが好きなんですね!」

 

「っ!仕えるのは当然だろう!そんな安直な物ではない!」

 

 そう言って真姫は刀を横に薙ぎ払い轟雷を弾き飛ばした。

 

「あうっ!」

 

 次に真姫は輝鎚の方に斬りかかる。……それをセコンド席で見ていた黄一は安直な指示を後悔する。

 

『しまった!トラウマに触れたから……』

 

『悔やんでる暇はないよ黄一君!目には目をだ!』

 

 加賀彦はそんな状況を見ながらも冷静にコンソールを操作する。黄一の方も「そうですね」と自分を落ち着かせながら続いた。

 そしてフィールド内では……、

 

「チェストォッ!!」

 

 轟雷同様に真姫は輝鎚を弾き飛ばした。チェーンガンが弾かれて攻撃手段が無い。

 

「わぁっっ!!」

 

 倒れこむ輝鎚に、真姫はとどめを刺そうと刀を振り上げた。アグニレイジを直接攻撃した所為だろうか。

 

「祈れ!」

 

――やられる?!――

 

 輝鎚が覚悟した時だった。真姫の真後ろから轟音を上げてフィールド内に突っ込んでくる物が二つ。振り向いた真姫は驚きの声を上げた。

 

「ムーバブルクローラーとブリッツガンナーだと?!」

 

 お馴染みのギガンティックアームズ『パワードガーディアン』の分離形態だ。クローラーの方は加賀彦が操縦しており、ブリッツの方は黄一が動かしていた。

 

「くっ!」

 

 機銃を撃ちながら突っ込んでくるクローラーに真姫は回避、急停止するクローラー、加賀彦はすぐさま指示を出す。

 

『乗れ!輝鎚!』

 

「解ったよぉマスター!」

 

 離れた場所では既にブリッツに乗った轟雷がアグニレイジに猛攻をかけていた。一斉射撃にレイジはフィールドで防御するが、これに輝鎚とクローラーまで加わる。このままではジリ貧だ。

 

「主殿……私が盾になります。インペリアルフレイムのチャージを」

 

『真姫?!』

 

 フィールドを貼っていたシュンは真姫の提案に驚く。一身に攻撃を受けると言うのだ。

 

「このままでは押し切れらます!私ならTCSとこの装甲で暫く耐えられます!」

 

『駄目だよ!あくまでこいつは君のサポートの為のヘキサギアなんだよ!?君が盾になったらどっちが!』

 

「……シュン、せめて今位はマキに盾にならせてよ……ここでもあなたを守れなかったら、マキ……何の為に……」

 

 凛とした表情が崩れ、真姫は泣きそうな表情になる。

 

『真姫……無理はしないでよ……』

 

「っ!言われずとも!」

 

 了承と判断すると真姫はいつもの調子に戻った。アグニレイジの前に躍り出るとTCSで蒼いバリアフィールドを張る。直後、アグニレイジはフィールドを解除し、インペリアルフレイムのチャージを開始、

 

『防御を解いた?!』

 

「捨て身ですか!でもこのまま押し切ります!!」

 

 全ての火器を撃ち込みながら轟雷達は強引に突破しようとする。

 

「やってみせろぉ!私はシュンを守る!今度こそ!!」

 

 姫武者の叫びと共に蒼い障壁は一層輝き全ての攻撃を受け止め続ける。暫く真姫のTCSは続いたが、次第に切れかけた電球の様に不安定な輝きとなり、そしてエネルギー切れとなった。TCSは解除。

 

「エネルギー切れ!?」

 

『真姫!下がれ!』

 

 真姫は両腕を交差させ防御態勢を取る。そしてここから動くつもりはなかった。

 

『あぁっとマガツキ!!TCSが切れてもどける気配がないー!この判断がどう出るかー!』

 

「主殿!フルチャージでなければ勝てません!それまでは!!」

 

「敵ながら天晴れって奴ですか!真姫!何故そこまでして!」

 

 疑問はあるがこの状況に同情をするつもりは一切ない。轟雷達は真姫に、後ろのアグニレイジに一斉射撃を続ける。攻撃にさらされる中、姫武者の鎧が、真紅の龍の装甲がはじけ飛んでいく。暫くして……。

 

「く……!」

 

 煙の上がるフィールドの中、真姫はその場に倒れこんだ。ほとんどの鎧は破壊され、ほとんど汚れた素肌とインナースーツが見えていた。残りのHPはもう僅かだ。

 

「勝った……?」

 

「いや……」

 

 黒煙の中、紅龍の放射状に開いた顎が輝いた。真姫共々ボロボロになりながら、まだ生きている。アグニレイジの手は倒れこむ真姫を受け止めると、フルチャージのインペリアルフレイムを発射させた。最初とは比較にならない勢いの炎がフィールドを覆い尽くした。

 

「貴方達の……負けだ!!」

 

 迎撃しようとする轟雷達の前に地獄の業火はフィールドを覆い尽くす。

 

『ワァァァッ!!!』

 

『轟雷!!(輝鎚!!)』

 

 青空の下、似つかわしくない少女達の悲鳴と、マスター達の絶叫が木霊した。共に全員のHPがあっという間に減らされていく。瞬く間にお互いのHPは0となり、このバトル、真姫とシュンの勝利である。

 

『winner マガツキ』

 

『決まったぁぁっ!!一時はどう転ぶか解らなかったこのバトル!!逆転で勝者はマガツキだぁぁっ!!』

 

『この勝負、何気にマスターとFAGとの信頼関係で決まったと言っていい勝負でしたねー』

 

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「轟雷!」

 

 準決勝が終わった轟雷達にスティレットとグライフェン達が駆け寄ってくる。

 

「負けちゃいましたよスティレット……」

 

「大丈夫だった?炎で焼かれたけど……」

 

「問題ナッシングですよ。バトル中のダメージは所詮バーチャルでしたから」

 

 とはいえあれだけの炎で焼かれるのを見ると無意味とはいえ心配になってくる。

 

「心残りは言いたい事言えなかった事ですかねー」

 

「何が言いたかったのよ」と聞くスティレットに轟雷は「内緒です」とはぐらかした。

 

「とはいえ収穫はありました。これで少しは戦いやすくなったはずです。スティレット……後は頼みます」

 

「轟雷……任せて」そう言いながら2人はすれ違う。そして決戦のフィールドに向かうスティレット達だった。

 

 

『さぁ!このイベントも!もはやクライマックスとなりました!!相対する少女達!スティレットとグライフェンのコンビネーションが孤高の剣士を粉砕するか!マガツキとアグニレイジの武装が二人を圧倒するのか!見どころであります!!』

 

「まさかお前と決勝で当たるとはな。偶然とは恐ろしい物だ」

 

「アンタ……その様子じゃマスターとは仲直り出来たみたいじゃない」

 

 挑発する真姫にスティレットは皮肉とも心配とも取れる言葉を投げかける。真姫は言葉に詰まった。

 

『おかげさまで、真姫も少しは機嫌を直してくれましたよ』

 

「主殿!!」

 

 にこやかに答えるシュンに真姫が慌てて止める。アグニレイジは既にフィールドに待機していた。どうにもこれから激闘をする関係とは思えない。

 

『ゆるいなぁ』とヒカル。それに蓮が『程よく緊張がほぐれていいじゃないか』とフォローを入れた。

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『battle start』

 

 そんなやり取りもそこそこに、バトルが、決勝戦が始まった。

 

『いよいよ始まりました!漫才の様なパフォーマンスを経て!どのような激闘となるか実に楽しみです!しょっぱい試合見せんなよー!!』

 

 アイの血気盛んな実況だがスティレット達はお構いなしに、真姫達に突っ込んでいった。

「行くわよ!グライフェン!」

 

「頑張ります!Weigh Anchor!」

 

 スティレットは空から、連装砲とマルチプルシールドを装備したグライフェンは陸から一斉に火器を向ける。狙うのは真姫でなく彼女が乗っているアグニレイジだった。放たれた射撃は真紅の龍に向かう。シュンはアグニのフィールドを発生させて防御。

 

「最初から主殿のアグニを狙うか!相手は私だろうが!」

 

 キョウテンを弓状に変形させて発射、空のスティレットと陸のグライフェンを同時に片づける算段だろう。横殴りの豪雨の様な拡散ビームが二人を襲う。

 

「つっ!」

 

 グライフェンはマルチプルシールドで防御。上空のスティレットは旋回しつつ回避、そこをいつも通り二基のドローンが機銃で狙う。

 

「しまった!なんてね!」

 

 スティレットは躊躇なく両肩のドローンを切り離し、アグニレイジの赤いドローンにぶつけた。両機がひしゃげると同時に爆散。だがこの程度は予想内の真姫とシュン。

 

「フン!推進力が落ちた状態で!」

 

 真姫はオオトリをスティレットに向ける。しかしそこへヒカルのキラービークが割って入る。

『やらせるか!』

 

「何?!」

 

 撃ってきたキラービークのライフルに真姫はTCSで防御。フォローしようとするシュンだが、加えてアグニレイジの方も蓮のレイジングブースターとグライフェンの連携でフィールドで防御せざるを得ない。

 

『あぁっと!これは意外!マガツキが防戦一方になっているぞ!』

 

『マスターさん達がスティレットさん達の方をフォローしながら攻めてきてますからねー。迂闊に動けないんでしょう』

 

「チッ!連携で攻めてきて!」

 

『跳ぶよ!真姫!』

 

 真姫の返事も聞かずに真上に跳躍するアグニレイジ、突然の動作に驚くスティレット達、

 

「跳んだ?!」

 

「上空からなら避けられまい!」

 

 最初に轟雷達がやられたパターンだ。インペリアルフレイムでバトルフィールドを薙ぎ払う。フルチャージではないが痛手は与えられるという判断だ。

 

「燃えろ!!っ!?」

 

 インペリアルフレイムを発射するアグニレイジ、その直後だった。左右をキラービークに掴まったスティレットが、レイジングブースターに乗ったグライフェンが通り過ぎる。炎の中を突っ切って更に高く上がっていった。

 

『スティレットチーム!アグニレイジより高く飛んだ!これではインペリアルフレイムも空振り!いや空焚きだぁーっ!』

 

「おのれぇっ!」

 

 真姫とシュンはどうにか撃ち落とそうと、キョウテンとオオトリで、そしてアグニレイジの尻尾に取り付けられたプラズマキャノンを向けて撃ち落とそうとする。

 

「うっ!」

 

 真上の太陽の直射日光に真姫は顔をしかめる。逆光になったスティレット達は良く見えなかった。

 

『全機!撃てぇぇっ!!』

 

 蓮の号令にスティレット達は真下のアグニレイジに一斉射撃、真姫はTCSで防御するも、攻撃範囲が広すぎる為に防ぎきれない。攻撃にさらされたアグニレイジは至る所で小破していく。インペリアルフレイムの発射体勢だった所為でフィールドが使えなかったのだ。

 

『うわぁぁっ!!』

 

「シュン!?シュンーッ!!」

 

 そのまま落下するアグニレイジと真姫、追う様にスティレットとキラービークが追撃をかけながら降りてくる。アグニレイジは対応しようにもエネルギーフィールドが展開できない。さっきの攻撃で頭部中央の角が破損していた。そしてそこがエネルギーフィールド発生装置だったのだ。

 轟音を立ててフィールドに墜落するアグニレイジ。

 

「轟雷達のおかげで押す事ができるわね!!」

 

「負けた者を利用してようやく出来た事を!」

 

 キョウテンとオオトリを向ける真姫、その時だった。

 

「だからこそっ!!」

 

 真姫の真後ろ、つまりアグニレイジの背中に轟音を上げて何かが落ちてくる。振り向いて火器を向けるが、大型のサブアームがオオトリとキョウテンを掴むと、グシャッと音を立てて握りつぶした。声の主、グライフェンだった。

 

「犠牲は絶対に無駄にさせません!」

 

「グライフェン!?」

 

『念には念とばかりにグライフェン!アグニレイジの真上に投下!これは完全に流れはスティレット達に傾いているーっ!!』

 

「あぁ惜しいです!武器だけでした!」

 

「シュンの上に乗るなっ!」

 

 真姫を掴めなかった事に残念がるグライフェン、激昂した真姫は二刀流で切りかかってくる。剣捌きにグライフェンはシールドで受け止めるが、シールドを切り落とされる。

 

「なんて切れ味!」

 

『グライフェン!離れろ!』

 

「司令官!?了解です!」

 

 蓮のレイジングブースターがエクスキャノンでボロボロのアグニレイジを狙う。退避するグライフェンを確認するや否や撃つ。案の定真姫が防御に入って受け止めた。

 

『やっぱりな!アグニレイジは自分より優先して守ろうとする!』

 

「それがどうした!今度こそ主殿は私が守る!」

 

 とはいえもうアグニレイジは限界と言っていい状態だ。あくまでレイジの立場は真姫のサポートメカである。ここで真姫の負担になってしまっては本末転倒だ。

 

『真姫!もうレイジは限界だ!離れて!』

 

「嫌です!」

 

『所詮こいつはサポートメカだよ!ここで君がやられたら意味がない!』

 

 真姫はTCSで必死に防衛に回る。

 

「いや!!」

 

 必死になる真姫、それを容赦なくスティレット達は猛攻で押していく。

 

――何故、そこまでしてマスターを守る事に固執するんですかあなたは……――

 

 それを見ていた轟雷は必死すぎる少女に違和感を感じていた。轟雷の言いたかった事。マスターと壁を作ろうとする少女がこのイベントに出ている事に。

 と、そうこうしてる内に真姫のエネルギーも底をついたらしい。TCSが切れる。

 

「あっ!」

 

『息切れになった?!今がチャンスだ!!』

 

 蓮の指令で全ての火器が姫武者めがけて放たれた。

 

――受けたとしても、アグニレイジを守りながらでは……負けるのか?――

 

 諦めが真姫の心を覆い始めた。その時だった。

 

 パシッ!

 

「えっ?!」

 

 棒立ちだった真姫を誰かが横に突き飛ばした。シュンのアグニレイジだ。真姫を小突く様に射線上から外し、代わりに自分を置く事で庇った。当然そうなってはアグニレイジは集中砲火に晒される事になる。砲撃の雨に晒された真紅の龍は砕けていき、原型を留めない。

 

「嫌……シュン……シュンーッ!!!」

 

『真姫……駄目だよ。自分を粗末にしちゃ』

 

「また!また私は!」

 

『いいんだよ。君がいなくなる方がぼくは辛いから……』

 

 そう言った直後だった。スティレットのスマートガンがアグニレイジの頭部を撃ち抜く。

 

「あ……」

 

 真紅の龍はその場に倒れこみ爆散した。それと同時に砕かれたパーツがフィールドに散乱する。

 

『これは!まさかの展開!!連携でアグニレイジ撃破!このまま決めるかスティレット達!?』

 

『精神的にもマガツキさんはダメージがあるでしょうからねー。流れは完全にスティレットさん達ですねー』

 

 崩れ、燃えていく真紅の龍。見ている事しか出来なかった真姫は絶望した様な顔で絶叫を上げた。

 

「あぁ……あぁぁっ!!!」

 

「サポートメカを失っただけで大げさね!次はアンタの番よ!覚悟なさい!」

 

 スマートガンを向けるスティレットに対して真姫は、怒りの形相で睨み返す。

 

「お前か……?撃ったのは……」

 

 ゆらっと立ち上がりスティレットに向きなおると、アグニレイジの砕かれたパーツ、両翼がエンジン部ごとが浮かび上がり、背中のパーツをパージした真姫の背中に接続される。不釣り合いなほど大きい龍翼が姫武者に追加された。

 

「合体した?!」

 

 エンジン部から発する音は、真姫の怒りに呼応するかのようだった。

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「撃ったのはスティレット……お前かぁぁっ!!?」

 

 爆音を上げながらスティレットに凄い勢いで突っ込んでくる真姫、

 

「速い!」

 

「うわぁぁっ!!」

 

 回避を取ろうとするスティレットだが、それを許さない勢いの真姫が切りかかってくる。とっさにスマートガンを盾にして防御するスティレット。振るった刀がスマートガンを切り裂き、次に薙ぎ払おうと横に刀を振るう。左腕のブレードで受けたスティレットを後方に吹き飛ばした。

 

「あぁっ!」

 

『スティレット(さん)!』

 

 ヒカルやグライフェンが援護に入ろうと撃つが……

 

「フン!」

 

 真姫はTCSで防御。

 

『これは!合体したマガツキのTCSが復活してるぞー!!エネルギー切れだったのに何故?!』

 

『合体した事でアグニレイジの余っていたエネルギーがマガツキさんに回されたという事ですねー。さっきエネルギーフィールドが使えなかったのが今になって使える様になったという事だと思われます―。加えて今の真姫さんには消費の大きいオオトリとキョウテンが無いですからねー。エネルギーはTCSに集中出来ると思います―』

 

『スティレット!使え!』

 

 ヒカルがキラービークに吊るしていたサムライマスターソードを投下してスティレットに渡す。阻止しようとする真姫だがグライフェンとレイジングブースターが引き続き撃ちながら邪魔をする。

 

「サンキュー!マスター!」

 

 すぐさまスティレットはソードを分割し二刀流のスタイルに。

 

『タイマンに付き合う必要はない!このまま押し切るぞ!』

 

「了解です!」

 

 真姫の速度は非常に速い。しかし現状は四対一となっている。TCSで防御をしている真姫だが、スティレットとそれを援護しながら舞うヒカルのキラービークに、そしてグライフェンと蓮のレイジングブースターに、それぞれの連携に徐々に押されていく。

 

「くぅっ!キョウテンとオオトリを無くした影響がここまで!」

 

射撃を受けながら空中で静止した真姫は苦虫を噛み潰したような顔で苦戦していた。

 

「もう観念なさい!私とマスターは一線を越えてなんかないわ!でもずっと意地張ってるアンタよりかは!ずっとずっと……強い絆があるんだから!!」

 

「っ!!」

 

 心を抉られた様に胸中に痛みを感じる真姫。同時に表情も青ざめる。スティレットは砂浜でのお返しとばかりに言い続ける。

 

「アンタがそうやって意地を張ってるのが!シュン君にどれだけ迷惑が掛かってるか解ってr『真姫の気持ちも知らずに言うなぁっ!!』

 

『!?』

 

 一際大声がスティレットの言葉を遮る。声を上げたのはセコンドにいたシュンだった。

 

『真姫はな!真姫は!ぼくを守ろうとしたんだよ!ぼくを庇ったんだ!結果ぼくの右目はこうなって!真姫はずっとその事で自分を許せないでいたんだ!!』

 

「え?」

 

 オドオドしたシュンからは想像もつかない様な叫びと形相だった。言葉を遮られたスティレットは呆気にとられる。何かしら重い理由はあると思っていたが、いざそう言われると戸惑ってしまう。

 

「っ!?隙ありだ!」

 

「くっ!?」

 

 真姫は隙を逃さない。とっさに剣を受けて鍔迫り合いになった真姫とスティレットは膠着状態となる。

 

「やはり私達はロボットの範疇を越えられない!必要以上のマスターとの距離感を縮めようとするのは反吐が出る!!身の程を弁えろ!!」

 

「なんですってぇ!!」

 

『……なら何故!真姫はマスターを拒絶するのですか!!』

 

『っ!?』

 

 実況席から轟雷の声が聞こえた。その場にいた全員が実況席を見る。見れば轟雷がアイからマイクを奪っておりボリューム最大で喋っていた。

 

「うぉい!アタシのマイク!!」

 

「ごめんにぇ。終わったら返すからにぇ」

 

 マイクを突然奪われた事に抗議するアイだが、輝鎚に羽交い絞めにされて手足をバタつかせるしか出来ない。

 

『このイベント!!不思議でした!マスターとFAGが皆仲良しなのばかり!!貴方だって!本当はマスターと仲良しなのでしょう!?何故ですか!何故ここまでしてマスターとFAGとの間に壁を作りたがるんですか!!』

 

 そう言われた真姫は、ぎりっと歯を一層強く食いしばった。

 

「……教えてやる」

 

『真姫!!』

 

「言わせて!!……ある所に一人の男の子と……FAGがいた……」

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 止めようとするシュンを振り切る真姫、昔話をする様な口調で真姫は話始める。内容は真姫の事だとその場にいた全員が理解していた。

 

「仲の良い二人だった。一見頼りない男の子だったのに芯の強くて優しい子。一緒に暮らしてる内に……FAGはその子の事が……好きになった」

 

 再びスティレットを弾き飛ばす真姫。距離を取りながら真姫は話を続ける。

 

「そして……FAGが男の子に好きだって言ったら……男の子も好きだって言ってくれた。……禁忌だって解っていた。他の誰にも伝えられない二人だけの秘密。でも愛があればそんな壁だっていつか乗り越えられる。そんな甘い考えをFAGは持っていた……」

 

 警戒しつつ淡々と真姫は話続ける。だが次第に、声に悔しさを混ぜた様に低い力の籠った声になっていく。

 

「だが……運命の日が来た。あの日、男の子とFAGが乗った親の運転する自動車。あれが事故にあった日が」

 

「事故……?」

 

「他愛もない話を男の子としながら、そのFAGは幸せを感じていた。……横からトラックが突っ込んでくるまではな」

 

 シュンの発言と組み合わせて……次第に話が見えてきたスティレット達だ。

 

「極限状態だった所為か、スローモーションの様だったよ。潰れていく車内で大きな破片の一つが、割れたガラスから入ってきて男の子に真っ直ぐ向かう……。FAGはとっさにその破片から男の子を守ろうと飛びながら両手を広げた」

 

「……その時、アンタが守ったのがシュン君なの?」

 

 一応ぼかして話をしていたが、当然ながら自分とシュンの事だと見抜かれる真姫。ぼかすのはやめて話し続ける。

 

「……守られたんだよ」

 

「え?」

 

「庇って、やっぱり自分はFAGなんだって……人間の為にって、そんな風に思って悲しくなって……目の前に破片が迫ったその時だった。シュンは……私の主は、私を……払いのけた……」

 

「っ!?」

 

「気を失って……気が付いた私が……最初に見たのは……破片が突き刺さった右目から……シートに座ったまま、血を、脂汗を流し、声を殺して痛みに必死の形相で耐えるシュンだった……。絶望しながら……必死に主の名前を呼ぶ私に、シュンは私を見て……こう言ってくれた……『真姫、怪我はない?』って……」

 

 涙声になっていく真姫、だがここで真姫に攻撃を加える事が誰にできようか。

 

「主の親も……軽傷で済んだ。主も……ただ一か所……右目以外は……、シュンは……言ってくれた。私が無事ならそれでいいって。だが私が……人形だったらシュンは私を庇う事はなかった。……私が人間だったら一生傍にいて支えてあげるのに。私達の寿命は人間よりも短い。それなのにシュンは恐れずに一生残る傷を負った。解らないんだよ自分が。……教えてくれ。私達はなんなんだ?なんでこんな半端に人間に近づいた?!中途半端に人間に近づいたロボットに何の意味があるんだ?!!」

 

「それは……」 

 

「……いや……言えるわけが無いな。何も考えずに……主とベタベタする事しか考えてない様な貴様たちに!!」

 

 言葉に詰まるスティレットに対して真姫は怒りの表情をむき出しにして再び切りかかる。

 

「!!」

 

「私は右目としてシュンを守る!そして不要だった感情とも決別する!!だから私はシュンとあえて距離を置くんだ!!」

 

『真姫……』

 

 その理由に轟雷や実況達も呆然とする中、スティレットもまたソードで刀を受ける。

 

『させるかよ!』

 

 キラービークで援護に入ってくるヒカル。

 

「邪魔するな!!」

 

 真姫は刀をぶん投げる。車輪の様に回転しながらキラービークに刀は斧の様に突き刺さった。

 

『うおっ!?』

 

「マスター!!」

 

 スティレットがキラービークの方に向いた。間の悪いことに真姫に背中を向ける形となる。

 

「笑止!!」

 

「あっ!」

 

 無防備だった背中に、剣道の面の動作で真姫が切りつける。スティレットは背中のドローンを切られて爆発。飛ぶ手段だったそれを失ったスティレットは落ちていく。

 

「きゃぁぁ!!」

 

「解ったか!人間とFAGが不用意に近づきすぎるとこうなる!!私は憎む!こんな風に作ったFA社を!人間に近づけた源内あおと試作型轟雷を!!」

 

『……待てよ。人形だってんなら、だったらシュン君の意思はどうなるんだよ!』

 

「何?!」

 

 見ると墜落しつつあるキラービークはスティレットの方に飛んでいく。そして翼の部分を切り離すと、それは落ちていたスティレットの背中に接続された。

 

「そうよ!確かに私達は人間にはなれないわ!アンタの言う通り距離感は必要でしょうね!でもね!」

 

 スティレットは再び飛ぶ手段を得ると刀を構えて真姫に突っ込んでいく。真姫はTCSでそれを防御する。離れるスティレットは刀を向けながら言い放った。

 

「私達だって!心があったから救えた人間だってたくさんいたのよ!それを否定するなんて!許せないんだから!!」

 

 スティレットとヒカルの脳裏に浮かぶ。健とフレズ、源三とバーゼ、それ以外にも大なり小なり救われたり影響を受けたマスターとFAGばかり見てきた。

『あぁ!行くぞ!スティレット!!』

 

「任せてよマスター!!」

 

 そう言って二人は真姫と決着をつけるべく突っ込んでいった。

-6ページ-

ようやくグライフェンと次の話が完成しました。この章も次で終わりです。今月中に投稿しますんで、

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『人間とフレームアームズ・ガール』(後編2)
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フレームアームズ・ガール外伝〜その大きな手で私を抱いて〜 FAG フレームアームズ・ガール 

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