鬼畜王文台 蘇りし虎は曹魏を食らう 12 第十章四節 |
蜀漢軍
太守 劉表
軍師長 賈駆
副軍師 顔良 陳宮 張勲
騎兵隊長 呂布 華雄 馬超 馬岱
歩兵隊長 文醜 趙雲 魏延
弓兵隊長 黄祖 厳顔 黄忠 許貢
後方支援隊長 董卓 袁紹 袁術
作者より一言:
劉表は、ちんこの悪い部分を凝縮したような存在です。
完全な悪役ですな。
なお、次回の投稿は、十一月頭を予定しております。
第十章
-4-
〜長安・天守閣〜
蜀軍兵士「賈駆将軍、宜しいでしょうか?」
賈駆「何?」
蜀軍兵士「孫呉の軍勢が、洛陽に到着した模様です」
賈駆「そう、もうすぐってところね…数は?」
蜀軍兵士「はっ。敵軍の勢力は約百二十万。 うち三十万を行軍路の拠点に配置し、
大多数の砦や兵站を構築している模様です」
賈駆「進行方向は?」
蜀軍兵士「荊州は経由せず、東の陳方面から向かったとのことです」
賈駆「思ったとおりね…さすがに袁紹みたいに、敵地を堂々と行進するような馬鹿ではないか…
くれぐれもあいつらにはまだ手出ししないこと。
向こうもこっちも準備万端な状態で、全軍をもって迎え撃てば良いわ。
孫堅のことは良く分からないけど、曹操ならそうするはず…ほかに報告は?」
蜀軍兵士「はっ、報告は以上でございます」
賈駆「了解…下がっていいわ」
蜀軍兵士「はっ! それでは、失礼いたします!」
趙雲「やれやれ…堅苦しい兵士の相手は大変ですな、詠殿」
賈駆「あんたは少し不真面目すぎるのよ…はぁ…」
蜀軍軍師長、賈駆。
彼女は最初、主人である董卓と共に洛陽を脱出し、西にある成都へ向かった。
そこで戦乱が収まるまで過ごし、いつか涼州の故郷に二人そろって帰るつもりでいた。
だが、その成都の地で、彼女ら二人は劉表という若い男に、
「俺が率いている蜀軍に入ってくれないか」と請われた。
彼、劉表は、出会ったときは仮面をかぶっていて正体が分からず不気味なものを感じたが、
その素顔を見ると何故か惹かれるものを感じ、そのまま蜀軍に参内したのである。
今目の前にいる趙雲は「魅了の術を使う妖か何かではないのか」といぶかしんだが、
賈駆はそのまま軍師を続けることにしたのである。
だが、彼女は、劉表の隠された本性を知らずにいた。
この劉表は史実と違い、大の戦争好きだったのである。
趙雲「しかし、呉にはしてやられましたな。 あの孫堅のことですから、
わき目も振らずに我らの前に真正面から突っ込んでくるかと思いきや」
賈駆「私だって最初はそう考えたわよ… 連中がこっちに突撃してきたら、
伏兵を配して後背の補給路を寸断して、一気に片をつけようと思ったんだけど…」
趙雲「孫呉らしくありませんな。 ああまで完璧な穴熊作戦を展開してくるとは」
賈駆「洛陽の三方に砦を構築し、さらに許昌までの五里ごとに駐在所を配置。
許昌の近くの川まで水路を確保して、そこから小船で物資を運搬…
完っ全に守りに出られたわ」
董卓「詠ちゃん、大丈夫? 疲れてるなら顔良さんに代わってもらえば…」
賈駆「ありがと月。 でもあいつは袁紹の馬鹿の世話でかかりっきりだから
こっちに来れっこないわよ。」
劉表率いる蜀軍の内情は、それは殺伐としたものだった。
呉や魏の統治を良しとしない者たちが、互いに寄り集まって出来ただけの軍。
劉表率いる蜀軍の特徴は、個々の部隊では一騎当千の力を発揮できても、
横の連携が非常に弱いという大きな弱点があった。
魏呉と対抗する策を考えるべく、賈駆が頭を痛めていると、
扉の向こうから一人の若い男が入ってきた。
名を劉表といった。
彼は、これから始まる観閲式に三人を呼びにきたのである。
劉表「やぁ、三人ともこんなところにいたのか。探したよ」
趙雲「………」
劉表「つれないなぁ、星。そんなに剣呑にならなくてもいいじゃないか」
趙雲「申し訳ないが、私はただの客将。 立場上、真名は許したが、
貴殿と馴れ合うつもりはございませぬゆえ」
趙雲はこの男のことが正直好きではなかった。
妙に気障ったらしく、八方美人で慇懃無礼。 しかも本人は自覚しておらぬように見える。
そばに居るだけで悪寒が走る。
それでも蜀軍にいたのは、自分が世の見聞の為、益州に滞在していた折、
自身が思っていたより想像以上に早く、呉が魏を滅ぼしてしまい、、
さらに残った劉備らも呉に参内したため、ここ以外の居場所を失ってしまったからである。
あのとき、劉備たちに参内しておけば。 しかし、いまさら後悔しても、遅すぎた。
つまり趙雲は、自らの手で機を逸してしまったのである。
逃した魚は、あまりにも大きすぎた。
長安の街中に、蜀軍七十万が参列していた。
これから、劉表軍の観閲式が始まる。
しかし、肝心の将たちにまとまりがなく、後方の袁術袁紹たちが口うるさく愚痴をたれていた。
袁術「七乃ぉ〜、童(わらわ)はまだ眠いのじゃぁ〜…」
張勲「駄目ですよお嬢様。 これから劉表様のお話があるのですから」
袁紹「ちょっと、まだなんですの開式は!?
こんな茶番劇なんて、さっさと終わらせて部屋に戻って休みたいですわ!!」
文醜「麗羽様ぁ〜、もう少し我慢してくださいよー、まだ始まってもいませんってー。
あたいだってお腹減ってるの我慢してここに来てるんですからー」
顔良「文ちゃ〜ん、さっき屋台で大盛りのラーメン三杯食べたばかりじゃない。
もうお腹すいたの?」
魏延「おい! お前らさっきからたるみすぎだぞ! もう少しシャキっとしろシャキっと!!」
そのとき、城壁から銅鑼の音が鳴り響いた。
これより劉表が、全軍に向けて大号令を発するのだ。
騒がしかった袁家の者たちも、私語を慎み、城壁に立った劉表に集中し始めた。
華雄「諸君! これより我らが主、劉景升様のの演説が始まる!!
その目、その耳でしかと受け止めよ!!」
あたりが水を打ったように静まり返り、やがて壇上に立った劉表が口を開いた。
劉表「諸君、私は戦が好きだ! 諸君、私は戦が好きだ! 諸君、私は戦が大好きだ!!」
開口一番、いきなり戦が好きだと三連呼した劉表に、皆が皆あっけに取られていった。
しかし彼は、構わずそのまま演説を続ける。
劉表「殲滅戦が好きだ! 水上戦が好きだ! 追撃戦が好きだ! 防衛戦が好きだ!
包囲戦が好きだ! 情報戦が好きだ! 隠密戦が好きだ! 攻城戦が好きだ! 撤退戦が好きだ!」
劉表「平原で 街道で 関門で 草原で 城壁で 街中で 江上で 海上で 山中で 湿原で……
この地上で行われている、ありとあらゆる戦が、私は大好きだ!!!」
あたりに、なんともいえない気まずい沈黙が流れる。
皆が皆、呆然とした様子で城壁に立つ男の演説に聞き入っていた。
劉表「鶴翼陣を組んだ弓兵の斉射が、敵陣を乱すのが好きだ!
空中高く放り上げられた敵兵が、退却兵の下敷きになった時など心がおどる!!
戦車兵の操る投石器が、敵戦車を破壊するのが好きだ!
悲鳴を上げて燃えさかる戦車から飛び出してきた敵兵を、
矢の豪雨でなぎ倒した時など胸がすくような気持ちだった!!」
劉表「槍先を揃えた歩兵の横隊が、敵の戦列を蹂躙するのが好きだ!
恐慌状態の新兵が、既に息絶えた敵兵を
何度も何度も刺突している様など感動すら覚える!!
敗北主義の逃亡兵達を城門に吊るし上げていく様などはもうたまらない!
泣き叫ぶ捕虜達が、私の降り下ろした剣と共にばたばたと薙ぎ倒されていくのも最高だ!!
哀れな小領主たちが、なけなしの装備で健気にも立ち上がってきたのを
十万の大軍で一網打尽にした時など絶頂すら覚える!!」
劉表「孫呉の突撃隊に滅茶苦茶にされるのが好きだ!!
必死に守るはずだった村々が黄巾党に蹂躙され、
女子供が犯され殺されていく様はとてもとても悲しいものだ!
曹魏の物量に押し潰されて殲滅されるのが好きだ!
あの天の御使いなどという口先だけの無能者に追いまわされ、
害虫の様に地べたを這い回るのは屈辱の極みだ!!!」
劉表「諸君! 私は戦を、地獄の様な戦を望んでいる!!
諸君! 私に付き従う蜀軍戦友諸君!! 君達は一体 何を望んでいる?
更なる戦を望むか? 情け容赦のない糞の様な戦争を望むか?
疾風迅雷の限りを尽くし、三千大千世界における数多の外史を滅殺する、嵐の様な闘争を望むか?」
静まり返る蜀軍七十万。
しかし、やがて兵たちの間から、連呼が聞こえはじめる。
それはやがて、全軍に、一種の狂気のように伝播していった。
蜀軍兵士「 戦!! 戦!! 戦!! 戦!! 戦!! 戦!! 戦!! 戦!! 戦!! 戦!! 」
劉表「……よろしい、ならば戦だ」
劉表「我々は満身の力をこめて、今まさに振り下ろさんとする握り拳だ!!
だが、この不毛の益州で長い間堪え続けてきた我々に、
ただの戦争では、もはや足りない!!」
劉表「大 戦 争 を !!!
一 心 不 乱 の
大 戦 争 を !!!!!」
劉表「我らはわずかに七十万、魏呉の大軍団の半数以下の勢力にすぎない。
だが諸君は、一騎当千の精兵たちだと私は信じている」
劉表「ならば我らは、諸君らと私で総兵力百万と一人の大軍団になる。
我々をの不毛の大地へと追いやり、飽食している連中から飯を奪い取ろう。
髪の毛をつかんで引きずり降ろし、眼を開けさせ思い出させよう。
連中に蜀の底力がどういうものかを思い知らせてやる!
連中に我々の軍靴の音を思い知らせてやる!
正史と外史の狭間には、奴らの儒学では思いもよらない事態が起こることを思い知らせてやる!
七十万の蜀漢の大勢力で、肥沃な魏呉の大地を奪い尽くしてくれる!!」
劉表「蜀軍太守より全軍へ、目標、擁州州境・函谷関! 決行日は本日より二度後の満月の夜!!
洛陽奪還作戦 状況を開始せよ! 征くぞ、諸君!!」
蜀軍兵士「オオオオオオオォォォォォォーーーーーー!!!!!!!!」
袁紹「をーほっほっほ!!! さすが劉表さん、私の見込んだ男ですわ!!」
文醜「戦じゃー、戦じゃぁーーー!! だぁ〜うはははははぁ〜〜www」
趙雲「……やはり、思ったとおりであったか……」
全軍が雄たけびをあげる中、ただ一人、趙雲は気づいていた。
そして先ほどの演説を聴いて、確信した。
劉表、やはりあの者は、人間のそれではない。
しかし、そのことに気づいていたのは、黄忠や厳顔も同じであった。
黄忠「星ちゃん…」
趙雲「間違いありませぬな。 紫苑殿。 あ奴からは、人間の匂いがいたしませぬ。
やはり、化生(けしょう)や魑魅魍魎か何かでしょうな」
厳顔「ふむ…ならばいかにしようか?」
趙雲「今はまだ下手に行動を起こすときではございますまい… 呉に密使を出しましょう。
『劉景升は、人間のそれにあらず。 全力をもって、これを殲滅せよ』、と」
厳顔「よかろう。 ではわしは使者の選定に移りまするゆえ」
趙雲「うむ、重々気をつけられよ、桔梗殿」
第十章四節終了
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注意・免責事項については、[01 第六章IF]の注意書きをお読みください。 上記内容にすべて同意された方のみ、 本作品をご覧になられることをお勧めいたします。 |
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コメント | ||
劉表、ウゼー(杉崎 鍵) 確かにカリスマナイネ!!(零壱式軽対選手誘導弾) たしかにオーラが感じられないですね。(ブックマン) 確かにこんな人、好きにはなれんな・・・(キラ・リョウ) なぜだろう?言ってることはさほど変わらないのに少佐殿が偉大に思えてくる(雄) 少佐の名言使ってるけどなんかこの劉表からは小物臭しかしないなぁw(闇羽) 元ネタは分かったけど・・・この劉表からはカリスマは感じられん気がw少佐殿は見た目はああだがカリスマはあったからなあwww(村主7) |
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