司馬日記外伝 三国塾の生徒会役員共 |
コンコンコン。
静かな生徒会室の扉が短く三度叩かれ、一瞬の間をおいて一年生の制服を纏った少女が跳ねた銀髪を振りながら室内に滑り込んできました。
「遅れました、申し訳ありません」
「遅いですよ、漣(楽?)。何をしていたのですか」
「父上を御護りする為の鍛練を母上につけて戴いておりました」
「それでは仕方ありませんが、今後は皆を待たせる事の無いように」
「はい。注意致します」
凛とした態度で注意を告げる姉さんをちらりと横目で見る。
御父様の名前を出せばどのような行為も止むを得ないものとしてしまう姉さんは、母様の血を私よりも更に色濃く引いていると言わざるを得ないがあえて口に出すことはありません。及びこそしないものの、どうせ私だって似たり寄ったりです。
「それでは皆揃いましたので、本年度第二十七回家庭環境改革会議を開催致します」
姉さんの開会宣言に、集まった皆が黙礼する。
「それではまず定例議題から。今週の御父様との触れ合いについて、担当者は報告を」
「はい」
挙手したのは律(郭奕)だ。
「二学期の中間考査で一科目主席となった御褒美に、でーとをして頂きました!と言っても午後半日の都の散策ではありましたけれども、沙和さんのお店で外出着を買って下さいました!」
「それは素晴らしい事です。律(郭奕)は優秀ですから、今後も勉学にも励むと良いでしょう」
残りの四科目中三科目の主席である私達姉妹が言いづらいところではありますが、こういうところを気にせず言えるところは頼もしい姉だと心から思えます。
「異議あり〜」
「何でしょうか、嵐(程武)」
眠たげな瞳で挙手の代わりに『異議』と書かれた小旗を上げる嵐(程武)。
「律っちゃんの報告は一部隠蔽されています〜」
「ら、嵐(程武)!」
「本当は生協の下着屋に連れ込んでガーターベルトとドスケベ下着を選んでもらうはずでしたが〜、寸前でヘタレて服屋に変更したのでした」
「いえ、嵐(程武)あれはその場の空気を読んでっ」
「稟さんのレースのスケパンを箪笥から探し当てて〜、これに負けないものを選んで頂きますと一週間前には言っていた筈ですが〜」
「それは本当ですか、律(郭奕)」
「いえあの、その位の意気込みであったと言いますか…」
「御父様には娘の女としての成長を是非御覧頂くべきところ、我等これから長く御父様の側近くにお仕えするというのにそのような弱気ではいけません。今後は今少し積極的に自分をお見せするように」
「く…は、はい」
姉さんの注意を受け、律(郭奕)が着席しました。とは言え実の父親にこれどうかなぁと言いながら穴開き下着を強請る娘は中々の剛の者だとは思いますが。
「次は私ね」
入れ替わって、蓮佳(孫亮)様の手が上がりました。
「はい。では蓮佳(孫亮)様お願い致します」
「来年度から私も高等部だから、高等部用の制服が届いたので御父様にお披露目したの!そうしたらとっても可愛いよって言って下さったのよ!」
「それは重畳に御座います」
両頬に手を添えて嬉しそうに語られる蓮佳(孫亮)様の御報告に皆も頬を緩ませ、姉さんの言葉も心なしか柔らかになる。
「…発言宜しいでしょうか」
「想夏(甘述)さん、発言を認めます」
控えめに挙手をした想夏(甘述)さんはやや眉根を寄せられています。
「…この度も、蓮華様も御購入なさったので?」
「ええそうよ?御母様も可愛くってよく似合っていたわ。中等部に進級した時もそうだったけれど、『私が蓮佳(孫亮)くらいの頃は学生生活なんて無かったから羨ましいわ』って口癖のように言っているし」
母親が自分と同じ学生服を着るのは孫家的にはアリなんですね。誰も声には出さないものの、雰囲気がそこはかとなくざわつきます。
「…僭越ですが、蓮華様は既に御洗濯をなさっておられたりは…」
「あら、良くわかったわね想夏(甘述)?納品時に御母様の分だけちょっと汚れてたんですって、中等部の制服もたまに洗われてるし…ってなんで皆目を逸らすのかしら?」
「あー私それ分かったぁ、それねぇ蓮華さんがパパとエッt」
「やめなさい桜香(劉禅)」
その場の蓮佳(孫亮)様以外の誰もが察しながらも口に出さなかったことを桜香(劉禅)様が平然とブッこむのを、寸前で華麟(曹丕)様が口を塞いで防がれました。確かに無駄に他人の親子関係にヒビを入れることはありません。
「母親の真名が書かれたブルマを見つけた娘の気持ちを味わうのは私一人で十分よ…」
遠い目をしてぼそりと呟かれた華麟(曹丕)様の御家庭には残念ながら既にヒビが入っていたようです。
確かにコスプレとコスチュームプレイの違いを母親の洗濯物で知るのは中々キツいかもしれません。
「え、えー、それでは続いて、先週の『はろうぃん闘争』の反省会を。今年も惜しくも御父様にいたずら(性的)を行うに至らず、御菓子を戴くに留まってしまいました。昨年、一昨年の反省を踏まえて万全の態勢で臨んだ心算ではありましたが、我等の勝利とはいかない結果について華麟(曹丕)様、御総括を」
「そ、そうね…まあ何よりも、今年はお母様達に守りを固められ過ぎていたわよね。一日中御父様の回りに山のようなお菓子を用意されて、恋さんや甘寧さんとか腕利きの方達がかわるがわる傍に付かれていては難しいわ」
「成程、敵の備えが我々の備えを上回ったと言う事ですね。ではなぜそこまで対策を打たれてしまったのでしょうか」
「それはほら、去年の桜香(劉禅)が…ねえ…?」
「えぇー?あれくらいでー?」
桜香(劉禅)さんは心外そうに目を丸くされていますが、昨年折よく手ぶらの御父様を見つけた桜香(劉禅)さんが木乃伊女のいで立ちでとりっくおあとりーと、と叫びながら満面の笑みで御父様に抱き着かれ、その勢いで包帯がほどけ母親譲りの豊かな生乳を御父様の顔面に押し付けたのは親娘としてはかなりギリギリな行為ではありましょう。後日聞いた話では桃香様はそれほど気にされてはいないとの事でしたが、桜香(劉禅)さんの巨乳ぶりに危機感を強めた比較的胸がつつましい母親方を中心に『近く高等部ともなる王侯の子女としての自覚に欠ける行為は慎ませるべき』との認識が強まってしまったのは致し方ないところと言えるのではないでしょうか。
「そこでいたずら(性的)一択にするべく、我々の中でも手練れの者達で御父様を取り囲む御菓子の山を蹴散らすべく襲撃したのですが、全て恋さんらに返り討ちに遭ってしまった訳です。あの時挑んだ者は挙手を」
姉さんの言葉にぱらぱらと手が上がる。姉さん自身に私、冬蘭(夏侯覇)様、蜀は関興・関索姉妹に張苞・趙統・趙広さん、呉は陸抗さん。
一応三国塾では名うての方々ではあるのです、が。
「恋さんおかしいよ…死に物狂いで御菓子の山から一つだけなんとか弾き飛ばしたと思ったら、余裕でそれを口で受けて『…美味しい。麗々(張苞)も食べよう』だって」
「麗々はまだましですよ…私達なんてそのあと御母様の手作りお菓子地獄ですよ…」
「いたずらとかお菓子とかそういう次元じゃなく、久々に死ぬかと思いました…」
長い栗色の髪の後ろで手を組み不貞腐れる張苞さんの隣で、麗しい黒髪を萎れさせてげっそりした表情で項垂れる関姉妹。
かく言う私達姉妹は周泰さんと蒋欽さんに苦も無くボコられ、口の中にお菓子を詰め込まれて母様に引き渡された訳ですが。あの方達は母様とは『まぶだち』だそうですが、その娘にここまで容赦無いのは一般的に見ても国際政治的に見てもどうなのでしょうか。
「…今少し我々の武術の鍛練が至らなかったと言う事でしょう。来年こそは目に物を見せてくれます」
まあ一年程度では来年もおそらく今年の再現でしょうが、この前向きなところも姉さんのとても頼もしいところです。往年の孫尚香様を真面目にした感じねと孫権様が仰っていましたっけ。
「さて、次の議題に移ります。予てから華陀さんに依頼しておりました例の薬ですが、遂に臨床試験に移れるとの事です」
「ほう…!」
「…あの件、貴女達本気だったのね…」
姉さんの報告に冬蘭(夏侯覇)様が軽く驚きの声を上げると、蓮佳(孫亮)様も続けて呟かれました。
「当然で御座います。女としての性教育(実地)を御父様自ら御指導頂き、御父様に傅く若妻と成る為には欠くべからざるもの。副作用の治験人数の確認を再度行いたいと思いますので、希望者は挙手を」
姉さんの問いかけに、私、嵐(程武)、桜香(劉禅)様が手を上げました。予備調査時から変更有りません。
「あの、前に聞いたかもしれないけど、桜香(劉禅)は桃香さんに了解取ったって本当?」
「うん?ママ、華陀さんのせんしょく…なんだっけ?あ、染色体異常防止、だっけ?のお薬があってぇ、パパが良いって言ったらいっしょにエッチしてくれるってぇ」
「…あ、改めて凄い家庭ね」
「確かに桃香さんなら言いそうだけど…子元(司馬師)と子尚(司馬昭)のところは?」
「うちは母親が御父様至上主義者でちょろいので、全く問題ありません」
華麟(曹丕)様の問いに対する私の言葉に、姉さんも軽く頷きます。直接了解こそ取ってはいませんが、御父様絡みで母様がまともな判断が出来た試しは無いので姉さんの言う通りでしょう。素晴らしい御父様に女としてお仕えする事は良い事ですよねと聞くだけで十分です。
「じゃ、嵐(程武)さんのところは大丈夫なのかしら?風さん、のんびりしてそうで実は色々厳しいって呉でも聞くけど…」
「お互い絶対譲らないのが分かってますから〜。単純に一対一の女の戦いをするだけなのですよ〜」
「凄い事をさらっと言うのね…」
「嵐(程武)の所はそうかも。私、御母様の世代で一番怖いの風さんだと思うし」
「…し、質問宜しいでしょうか」
華麟(曹丕)様、蓮佳(孫亮)様が呟かれるのに、漣(楽?)がおずおずと手を上げました。
「子元さん、子尚さん達は…その、あの…本当に、父上とその…そういう事を、その…されたい、と言う事なのでしょうか?」
「漣(楽?)、『そういう事』とは何ですか?」
「うえっ!?…そ、それは…」
「姉さん、………」
姉さんに反問され、顔を赤らめる漣(楽?)を眺めているのも楽しいですが、話が進まないので姉さんに耳打ちしてあげます。
「ああ、漣(楽?)の言う『そういう事』とは御父様とのせっ〇すの事ですか?」
「※△×〇!?」
「姉さん、少し言い方を」
満面朱に染めて口をぱくぱくさせる漣(楽?)は少しだけ可哀想かも知れません。面白いですが。
「いいえ、御父様が天の国から伝えられた御言葉こそが最も正しく言い表すものなのですから、せっ〇すの事をまぐわいだの同衾だの性交だのと言い換えるのは不敬と考えます。漣(楽?)の問いに答えるならば、まさしく我々は御父様に濃厚なるせっ〇すをして頂きたいと願っていると言う事になります!」
「…あの、子元?ここにいる全員が全員それを望んでいるって訳じゃないのよ?」
「いいえ華麟(曹丕)様、この会議の主旨たる『御父様について語り合い、もっと触れ合えるにはどうすれば良いかを考える』事の延長線上には御父様とのセッ〇スがあり、その先には妻として御父様にお尽くしし子を得て守り育てるという目標があるのです!その為には」
「あの〜、子元ちゃん〜?余りせっ〇すせっ〇す言い過ぎないで〜?むっつ律っちゃん(郭奕)が鼻血噴きすぎて気絶しちゃう〜」
「ふがっ、だ、誰がむっつりですかっ!?そ、それよりもやっぱり父娘でその、せっ、せっ〇すと言うのはちょっと問題では」
「ありません。古今東西、娘を手籠めにした王侯の類などいくらでも居るではないですか。それに比べれば娘側も合意の上、しかも生まれる子の健康のまで考慮しているのですから何の問題もありません」
確かに漢代でも親子ではないにしても近親婚はあった事です、ただ逆に娘達が父親を手籠めにしたという話は聞いた事が有りませんが。
「お姉ちゃん、流石『真☆近親上等姉妹』と呼ばれるだけの事はありますよね」
「うん…私達の母様も義姉様達も色々とんでもない人達だと思ってたけど」
「関興さん、関索さんだって時間の問題ですよ。それよりも漣(楽?)、貴女は御父様と最後にお風呂に一緒に入ったのは何時ですか?」
「え、えっと…初等部を卒業する頃だったかと思います」
「成程、だから貴女はまだなのかもしれません。私達姉妹は粘りに粘って泣き落としも駆使して中等部二年生の末まで一緒に入って頂きました」
「はあ…」
「そこでズプッと一発父娘の絆をキメるべく、陳琳様の小説よろしく御父様の背中を御流しするのに子尚の胸を用い、空いた前を私の掌で御洗い差し上げ、御逸物が御雄渾となられたのを見ました時」
「ちょ、ちょっと貴女達もうそんなとこまで!?」
「…ぶはっ!」
「はいはい律っちゃん頭がすがすー」
華麟(曹丕)様ががたっと席を立たれ、律(郭奕)がいつも通り鼻血を噴きました。最近嵐(程武)の律(郭奕)に対する扱いが雑になってきたような気がします。めんどくさくなって来たのでしょうか。
「脳髄に稲妻が走り、下腹がキュンと切なくなり。私の胎内はこれをこそ収める為にある、ずっぷりぶち込んで頂くべきものだ、と言う事をその瞬間に雌の本能として悟ったのです」
「そ、それで…まさかそのまま!?」
「いえ、我等の体が未熟である事を慮って下さった御父様の御抵抗に遭い、母様を呼ばれ残念ながら阻止されてしまいました」
厳密には私がおっぱいを御父様の背中に押し付けた時点で既に御父様がかなり抵抗されたのをなんとか抑え込み、姉さんが御父様の御子様(私達ではない方)を握りしめたあたりで遂に母様を呼ばれてしまったというのが正しいところではありますが。
「はぁ…そう。というか、貴女達既にその頃からそんなに大胆だったのね…」
「つまり漣(楽?)、私が言いたかったのは御父様との裸の御付き合いをすれば、自然裸の御突き合い、つまりせっ〇すで御奉仕すべきという結論に至ると言う事なのです」
「は…はぁ…」
華麟(曹丕)様がほっとされたように席に着かれる傍ら、漣(楽?)は頬を染めながらよく分からないような返事をしました。いや、姉様上手い事言った様なドヤ顔されても。
「華陀さんによりますと薬の副作用を確認する臨床試験は二か月ほどと聞いております。つまり、我々が御父様に堂々女として御奉仕出来る最も近い機会は正月です」
ばん、と右手で机を叩き、姉さんが立ち上がります。
「そこが我々の真の開幕戦!御父様の姫始めは我々のようなぴちぴちぷるぷるおっぱいを愛で、青い蕾を花開かせることで行って頂くのが本来当然なのです!三十路もとうに過ぎただらしない体に御世辞を言うのが御父様の御仕事ではなく、ましてや五十路だか六十路だかの垂れt」
「!…子、子元っ!」
「…あー」
「子元さんっ!」
「姉さん」
姉さんの口から滑り出す危険な単語に、華麟(曹丕)様、蓮佳(孫亮)様、桜香(劉禅)様が反応して声を上げました。
ですが、今まで一度もそれが間に合ったのを見た事はありません。
廊下に人の気配はなかったのに、あたかもはじめからそこに立たれていたかのように、生徒会室の扉ががらりと開かれます。
扉を開けた人物の、穏やかな笑みと目尻の僅かな小じわ。
胸やお尻の、年にそぐわぬ異常な抑揚。
全てを諦めた、皆の表情。
「子元ちゃん?先生、目上に対する口の利き方は前にも指導しましたよね?」
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「おかえ…どうした子元、そのでかいたんこぶは。…何も間違った事は言ってない?…説明になっていないぞ、こら子元!勝手に二階へ行くな、もう夕飯は出来ているんだぞ!…、全くしょうがないな子元は。子尚は手を洗って食卓に着きなさい、今日は急遽一刀様がいらっしゃっ…痛っ!?お前達、母にぶつかったら詫びる位…、待て子元その席は私の席だ、お前達は一刀様の向かいだ向かい!子尚は一刀様に乗るんじゃない、お前達はもう子供じゃないんだぞ!?いいから二人共制服を着替えて来なさい!違う、そこで脱ぐな尻を振るな!お風呂は後だ、一刀様を引っ張るなと言っている!それに一刀様と一緒に入るのは妻の私だぁーーーっ!!」
説明 | ||
その後のその後の、とある文官の娘さんたちです。 | ||
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コメント | ||
これなら、嫌いだ臭いだの言われて、悲しい思いをすることは無いかと思ったが、桂花の娘が母親の血を濃く引いてたら、心折れるだろうな。(ken) どいつもこいつも、同じ穴の狢じゃねえかwwww(劉邦柾棟) だめだコイツら早く何とかしないと・・・(飯坂裕一) 一刀も大変だなぁ・・・(D.A) ……なんも言えねぇ。(Jack Tlam) |
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