鬼滅の刃 清めの音を持つ鬼 第3話 |
炭治郎が狭霧山を出立して数刻、やっとの思いで最終選別会場である藤襲山に到着した。
藤襲山は麓から中腹に掛けて藤の花が一年中咲き狂っている摩訶不思議な山である。そして藤の花の香りは人喰い鬼が嫌う香りでもある為、人喰い鬼にとっては天然の牢屋となっている。
炭治郎は麓から中腹に掛けて伸びている階段を登りきると、そこには自分の他にも数人、合わせて十数人いた。そして2本の柱の前には黒髪と白髪の2人の少女が立っていた。
2人からの説明によると
『選別期間は7日間』
『7日間中腹から山頂の間で生き抜く』
との事だった。説明が終わった直後、受験者は一斉に向けて歩き始めた。
炭治郎は登り始めて数分経った時、自分に襲い掛かる鬼2体に遭遇した。炭治郎は左近次から受け取った日輪刀を鞘からゆっくりと抜き、
『全集中・水の型 肆の型 打ち潮』
打ち潮で鬼の頸を切り落とした。頸を斬られた鬼は着ていた衣服だけを残し、跡形も無く崩れ去った。炭治郎は鬼の遺物に手を合わせた。しかしその直後、異様な匂いを嗅ぎ取ると、別の方向から他の受験者が逃げる様に走り去って行った。去り際
「何で大型の異形がいるんだよ??聞いてないこんなの」
と言っていた。そしてその受験者を追うかの様に『全身を手や腕で覆い隠した』鬼が現れた。
異形の鬼は逃げていた受験者を腕を伸ばし脚を掴んだ。このままでは喰われる。その時
『水の呼吸 弐の型 水車』
炭治郎が掴んでいた腕を斬り落とした。
異形の鬼は自分の腕を斬り落とした炭治郎を一瞥すると
「また来たな。俺の可愛い狐が」
と睨んだ。
「狐小僧、今は明治何年だ?」
「??……、今は大正時代だ」
鬼の質問に炭治郎が答えると
「アァアアア年号が??年号が変わっている??」
鬼が突如発狂した。どうやらこの山に閉じ込められてから相当の年月が経っていた様だ。更には自分を閉じ込めたのは左近次だった様で、
「十…、十一…、お前で十二だ」
異形の鬼が不意に数を数えだし、炭治郎は何の数かと訪ねると
「俺が喰った鱗滝の弟子の数だよ。あいつの弟子はみんな殺してやるって決めてるんだ」
この最終選別の時には左近次の弟子を殺す事を決めていたと語った。
左近次は『厄徐の面』と言う自身が彫った狐の面を弟子に渡していたが、異形の鬼はそれを目印にして襲っていた。
「特に印象に残っているのは二人だな。あの二人。口に傷があるガキと花柄の着物の女のガキだ」
「だが、喰おうとしたら、他の鬼に横取りされたがな」
炭治郎は内心安堵しつつも目の前の鬼に怒りが沸いていた。炭治郎は構えていた日輪刀を振りかぶり、異形の鬼に迫った。鬼は腕を伸ばし迎撃しようとするが、全て斬られてしまう。
そこで奥の手である地面からの奇襲を試みるが、持ち前の嗅覚で気配を察知。上に跳躍する事で何を逃れた。が、鬼が腕を伸ばし捕まえようとするが、頭突きで腕を払い退け逆に鬼の方が隙を作ってしまった。
『全集中 水の呼吸 壱の型 水面斬り』
横一文字で頸を斬り落とした。
頸を斬り落とされた鬼は人間だった頃を思い出していた。兄の後を追い、手を繋ぐと言う物だった。炭治郎は鬼から悲しい匂いを感じ、残っていた鬼の手を握り、冥福を祈った。
炭治郎は徐に瑠璃狼と音角を懐から取り出し、音角を鳴らし瑠璃狼を起動。地に放ち暫く座って休憩していると、放っていた瑠璃狼がアニマルモードからディスクモードへと戻り、持ち込んだ情報を音角から読み取った。
炭治郎は不意に立ち上がると、瑠璃狼が持ってきた情報の場所に駆け出した。
炭治郎が到着した所は、1人の女性に複数の鬼が取り囲んでいる所だった。炭治郎は取り囲んでいる鬼に飛び蹴りを喰らわし、怯ませると、女性を庇う様に立ち塞がった。
「誰だぁ??俺を足蹴にしたのはぁ??」
蹴り飛ばされた鬼は蹴られた頭を擦りながら周りを見渡すと、狙っていた女性の他に炭治郎がいるのを見た。
「てめぇかぁ、俺を足蹴にしたのはぁ??喰い殺してやる?」
鬼が炭治郎に襲い掛かると、炭治朗は抜刀していた日輪刀で鬼の頸の跳ね、塵となり消滅した。
取り囲んでいた他の鬼達はどう動こうか迷っていると、炭治朗は日輪刀を地面に刺した後、懐から音角を取り出し、鳴らす。そして波紋が広がっている状態で音角を自分の額に近づけた。
すると炭治朗の額に鬼の面の様な物が浮かび上がり、炭治朗の全身が白い光に包まれた。
そして
「ハァアアアァ…、ハァ?」
勢いよく両腕を振るうと、そこにいたのは、全身が白い身体に銀の装飾。顔は眼、鼻、唇が無く、腰には前に『音撃鼓 輝光《おんげきこ きこう》』、後ろには『音撃棒 閃光《おんげきぼう せんこう》』を着けた鬼、『仮面ライダー輝鬼《かがやき》』となっていた。
輝鬼となった炭治朗は音撃棒 閃光を持ち、剣の状態にする『鬼棒術 閃光剣』を使い次々と頸を斬り鬼を葬った。閃光剣には日輪刀と同じ力があり、これで頸を斬ると鬼を倒す事ができるのだ。そして最後の鬼には音撃鼓 輝光を鬼の胸に取り付け
「音撃打 閃光連打《おんげきだ せんこうれんだ》?」
そう言って音撃棒 閃光を連続で打ち込み、最後の鬼を爆散させた。
炭治郎は顔だけ変身を解き、女性の方を向くと女性は見ていた光景が信じられないのかキョトンとしていた。
「大丈夫、怪我は無い?」
炭治朗は女性に聞くと彼女は頷いて答えた。
「良かった。あ、ちょっと待ってて」
炭治郎は女性にそう言うと、瑠璃狼を起動させ、何かを探させた。
「これで良しっと。今、日が当たりやすい所を探しに行かせたから、ここで少し休憩しようか」
炭治郎はその場に座り込むと女性もスカートを気にしながらその場に座った。少し経つと放っていた瑠璃狼が戻り、炭治朗は音角でその情報を読み取り、地面に刺した日輪刀を抜き女性を連れてその場を移動した。
そして七日間の最終選別が終わり、最初の所に戻るとそこにいたのは、自分と途中で行動を共にしていた女性を含め四人しか残っていなかった。
初日に出会った少女たちに最初労いの言葉を掛けられ、次に隊服の採寸並びに支給。そして階級の授与。階級は『甲《きのえ》・乙《きのと》・丙《ひのと》・丁《ひのえ》・戊《つちのえ》・己《つちのと》・庚《かのえ》・辛《かのと》・壬《みずのえ》・癸《みずのと》』の十階級。更に日輪刀の元となる玉鋼と連絡用の鎹鴉《かすがいがらす》が渡される事になった。一人鴉では無く雀だったが。
だが、ここで問題が発生した。生き残った一人が支給された鴉を払い退け説明していた少女の髪を鷲掴みにし「今すぐ刀をよこせ?鬼殺隊の刀?『色変わりの刀』?」と叫びだした。
だがその腕を炭治郎が掴み、握力だけで握り潰した。当然ではあるが、骨に罅が入ったり折れたりすると激痛が走る。少年は余りの痛さに掴んでいた手を離し、炭治郎の手を振りほどき掴まれていた箇所を押さえていた。
残った皆はそれぞれの玉鋼を選び帰路に着いた。
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この話は竈門炭治郎とその師匠となる鬼の話である | ||
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