鬼滅の恋姫 壱話
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「さようなら……。愛していたよ……、華琳《かりん》」

 

 

青年『北郷《ほんごう》 一刀《かずと》』はその言葉を最後に、目の前にいた小女『曹操《そうそう》 孟徳《もうとく》』、真名《まな》を華琳の前から消滅した。

 

 

「何よ……。一緒に…いるって、言ったじゃ…ない……」

 

 

「バカぁ…、バカぁ……」

 

 

うわああああぁぁぁぁ〜〜〜っ、ああああぁぁぁ〜〜っ

 

 

華琳はその場で大粒の涙を流した。それも途切れること無く、次々に溢れ出た。

 

 

そして彼の物語はこれで終わる

 

 

はずだった

 

 

『どぅふふっ。ご主人様、申し訳ないけど貴方の物語はこことは違う世界でまた始まるわ。頑張って頂戴』

 

 

華琳の頭上を一筋の流星が流れた。

 

 

 

 

 

「ハッ!」ガバッ

 

 

一刀はいきなり上半身を起こした。見回すと、彼は森の中にいた。

 

 

「あれっ?俺、なんでこんな所で寝てたんだ?確か俺はあの時に消滅したはず…」

 

 

一刀は何故森の中で寝ていたのか考えていると

 

 

バキンッ

 

 

"何か"が折れる音がした。一刀は立ち上がり、音がした方へ走った。

 

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…ハァ…」

 

 

「ぐひひっ、もう諦めて俺の餌になりなァ」

 

 

一刀が目にした光景、それは同い年と思われるツインテールの女性と頭に角を生やしている男が対峙している所だった。

 

 

だが、一刀は"違和感"を感じていた。

 

 

「(何故彼女は"折れた刀"を男に向けている? それにあの男の頭にあるのは角みたいだが、本物なのか?)」

 

 

一刀は木の影に身を隠しながらその光景を見ていた。

 

 

通常ならここでパニックを起こすのだが、彼は元いた時代から約千八百年前の三國志の世界へとタイムスリップしてしまい、戦場《いくさば》に身を投じたり、時には自ら剣を取り戦ったりと、ちょっとやそっとでは驚かなくなっていた。

 

 

「誰が諦めるもんですか!私はアンタなんかに負けはしない!アンタに勝ってみせる?」

 

 

「じゃあ聞くが、その"折れた刀"で、どうやって俺の頚を斬るんだ?」

 

 

女性は悔しそうに唇を噛む。

 

 

「だから大人しく、俺に喰われな!」

 

 

"鬼"が女性目掛けて飛び掛かる。

 

 

「"ライダーキック"!」

 

 

しかし一刀が鬼に飛び蹴りを喰らわし、怯ませた。一刀はその一瞬の隙を突いて女性の腕を掴み、その場を駆け出した。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「ここまで…、来れば、大丈…夫だ…」

 

 

「ハァ…ハァ…ハァ…」

 

 

二人は息を切らしながら木の影に隠れた。

 

 

「あの…、先程は助けてくれてありがとうございます」

 

 

「あ…、いや、気にしないで。あれは俺がしたくてしただけだから」

 

 

女性は息を整えながら一刀に礼を言い、一刀は素直に受け取った。

 

 

「それで、幾つか聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」

 

 

一刀は女性に質問があると言って、女性は頷いた。

 

 

彼女、『神崎アオイ』が言うには、

 

 

今の時代は『大正時代』であること。

 

 

襲って来たのは『人喰い鬼』であること。

 

 

その鬼を滅ぼすべく活動している『鬼殺隊』のこと。

 

 

そして今、その鬼殺隊の入隊試験『最終選別』をこの山『藤襲山《ふじかさねやま》』で行っていること。

 

 

「そして鬼は"太陽の光"に晒すか私たちが持っているこの"日輪刀"で頚を斬るしか倒す方法しかありません」

 

 

「ありがとう神崎さん。大体分かったよ」

 

 

一刀はアオイに礼を言った。

 

 

「では、次に北郷さんのことを教えて下さい」

 

 

アオイの質問に一刀は頷いた。

 

 

一刀が言うには、

 

 

『今から数百年後の"違う世界"』から来たこと。

 

 

『三國志の時代まで時を遡った』こと。

 

 

その時代の武将たちと戦場を駆け巡ったこと。

 

 

本来の歴史をねじ曲げてまで仲間を守ったこと。

 

 

その人の前から消滅したと思っていたら、いつの間にかこの山で寝ていたこと。

 

 

「そして何かが折れる音がしたからそこに向かったら、神崎さんたちがいたって訳」

 

 

一刀の説明にアオイは目が点になっていた。

 

 

「まぁ普通はこんな突拍子の無い話を信じる方が難しいけどね」

 

 

一刀は苦笑いを浮かべ、頭を掻きながらそっぽを向いた。

 

 

「いえ、信じます」

 

 

するとアオイが"信じる"と言って一刀は驚いていた。

 

 

「確かに信憑性が無く、作り話と思われるますが、貴方の目は嘘を言っているようには見えませんでした。むしろ、悲しい目をしていました」

 

 

「そんな目をしている人が嘘を言うはずありません。例え他の人たちが信じなくても、私は信じます」

 

 

アオイは一刀の目を見ながらはっきりと断言した。

 

 

「ありがとう、神崎さ「私のことは"アオイ"と呼んで下さい」…ありがとう、アオイさん。なら、俺のことは"一刀"でいいよ」

 

 

「分かりました"一刀さん"。さしあたってはこれから"七日間"、どう行動するかを決めたいのですが」

 

 

「分かった。とりあえず…、ん? "七日間"?」

 

 

一刀はアオイの言葉に疑問を持った。

 

 

「あれ? 言いませんでしたか? 最終選別は『七日間行われる』と」

 

 

そう、今は最終選別の『初日』だったのだ。一刀は大袈裟に首を横に振った。

 

 

「そうでしたか…。すみません、肝心な所を抜かしてしまって…」シュン

 

 

「大丈夫だよ。とりあえず今後は一緒に行動しよう。それでいい?」ナデナデ

 

 

落ち込んだアオイを一刀は頭を撫でながら許し、今後の行動を言った。

 

 

「は…、はい…」/////

 

 

アオイは顔を赤くしながら頷いた。

 

 

「よし、まず最初は武器を調達しないとな。今はお互い丸腰だからな」

 

 

一刀はそう言うと、アオイの腕を掴んで立ち上がらせ、その場を移動した。その理由は武器の調達もあるが、近くに先程の鬼の姿を視界に捉えたからだった。

 

 

その後、二人は運良く折れてない刀を見つけ、それを身に付ける。途中、アオイが『花摘み』に行った以外は極力一緒に行動していた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

最終選別が終わりに近づいた六日目の夜、二人は初日に出会った鬼と対峙していた。

 

 

「貴様ら、よくも俺を虚仮にしてくれたなぁ…。その礼も兼ねて、貴様らを喰ってやる?」

 

 

鬼は二人に襲い掛かる。が、二人は左右に別れ難を逃れる。鬼はアオイに狙いを定め、腕を伸ばす。そこに

 

 

『全集中 水の呼吸 壱ノ型 水面斬り』

 

 

アオイは水面斬りで鬼の腕を斬り落とす。

 

 

「一刀さん、今です!」

 

 

『全集中 "空の呼吸" 壱ノ型 燕返《つばめがえ》し』

 

 

一刀は見様見真似《みようみまね》で全集中の呼吸を使い、鬼の身体と頚を斬った。

 

 

「!? 俺は…、ここで……、死ぬ…の…か……」

 

 

頚を斬られた鬼は灰になりながら、アオイに腕を伸ばそうとするが、

 

 

「その汚い腕で、彼女に触ろうとするな」

 

 

一刀がその腕を斬り、鬼は完全に消えた。すると、二人の勝利を祝福するかのように、朝日が登った。

 

 

「朝…だ…」

 

 

「朝…、ですね…」

 

 

「「つ…、疲れた〜」」

 

 

二人はその場にへたり込んでしまった。

 

 

「まぁ何はともあれ、最終選別、合格おめでとう」

 

 

一刀はアオイに祝う一言を言い、手を伸ばした。

 

 

「はい。一刀さん、ありがとうございます」

 

 

アオイは伸ばされた手を握り、返事をした。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

その後、アオイは数人の合格者と共に連絡用の"鎹鴉"と"隊服"、そして日輪刀の素材となる玉鋼を受け取り、下山した。

 

 

合格者の中には一刀の姿は無かった。彼は厳密には最終選別には参加して"いない扱い"になっているのだ。一刀は森の中からアオイの姿を見て微笑んでいた。

 

 

「元気でな…、アオイさん」

 

 

一刀は一言呟く。

 

 

「さて、俺はこれからどうしようかな〜?」

 

 

一刀は背伸びしながら今後のことを考えていた。

 

 

「そこの森にいる御方、此方にいらしてくれますか?」

 

 

すると、合格者を見送っていた女性が森(正確には一刀)の方を向いて声をあげる。一刀は『隠れても無駄か…』と悟り、素直に姿を現す。

 

 

「貴方は一体誰なのですか?鬼であれば、既に陽光に妬かれて灰になっているはず」

 

 

彼女『産屋敷あまね』は一刀の姿を見て警戒心を露にする。

 

 

「話します。話しますので、一度落ち着いてくれますでしょうか?」

 

 

一刀はアオイにも話したことをあまねにも話した。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「と、言うことです」

 

 

「にわかには信じられませんが、隊士を守ってくれたことには感謝します。ありがとうございます」

 

 

一刀の説明が終わると、あまねはアオイを守ったことに対してお礼を言った。

 

 

「つきましては、貴方を正式に鬼殺隊の入隊を認めたいと思います。連絡用の鴉は後日用意致しますので、まずは隊服の支給。次に階級の授与。それからご自身の刀の素材となる玉鋼を選んで貰います」

 

 

あまねは一刀を正式に鬼殺隊への入隊を認め、一刀の服の採寸、右手の甲に"藤花掘《おうかぼ》り"を施し、最後に玉鋼を選ばせた。

 

 

「これで終わりです。それと、これからの拠点に関しましては『蝶屋敷』でお世話になるとよろしいでしょう。あの子も蝶屋敷に住んでいるので、仲良くなれるかと」

 

 

あまねは一刀の事情を書いた手紙と、蝶屋敷までの地図を一刀に渡した。

 

 

「数々のご配慮、ありがとうございます。このご恩は忘れません」

 

 

「お礼は一体でも多く、鬼を狩ることで示して下さい」

 

 

一刀はあまねに頭を下げると、階段を下りた。すると、階段の一番下の段にアオイと狐の面を着けた少女が腰掛けていた。

 

 

「アオイさん、どうしたの?」

 

 

一刀は思わずアオイに声をかける。

 

 

「!? 一刀さんこそどうしてここに!?上にはまだ人がいるはずなのに…」

 

 

一刀は先程あったことを話した。

 

 

「そうだったんですか…。何はともあれ、鬼殺隊入隊おめでとうございます」

 

 

「ありがとうアオイさん。それでこの子は…」

 

 

一刀は隣にいた少女を見た。

 

 

「私は真菰《まこも》。"あの時"は助けてくれてありがとう」

 

 

少女『真菰』は一刀に礼を言った。

 

 

真菰が言う"あの時"とは、最終選別の最中、一刀とアオイ、真菰が倒した『異形の鬼(以後"手鬼"と表記)』のことだった。

 

 

「俺は北郷一刀、別に礼はいらないよ。あの時は俺も無我夢中だったから。それより、手鬼に握られた手足は大丈夫か?」

 

 

一刀は真菰の礼を素直に受け取りつつも、真菰の心配をした。

 

 

「骨が折れてる可能性があるので、蝶屋敷に連れて行こうと思っていたんですが、何分、私も疲労困憊で、どう運んで良いか考えていたのですが…」

 

 

アオイは真菰の状態を説明し蝶屋敷に連れて行きたかったが、どう運んで行こうか悩んでいたようだ。

 

 

「だったら、俺が二人を運ぼうか?」

 

 

一刀は二人を運ぶことを提案した。

 

 

「それは願ってもないことですが、大丈夫ですか?一刀さんもかなり疲れているはずなのに…」

 

 

アオイは一刀の体調のことを気にしていた。

 

 

「これ位は問題無いよ。さぁ善は急げ、早速行こう」

 

 

一刀はアオイをおんぶし、真菰をお姫様抱っこすると

 

 

「アオイさん、疲れてる所申し訳ないけど、案内よろしく」

 

 

「ハアァッ、しょうがないですね」ギュッ

 

 

アオイは一刀にしっかりしがみつくと、ため息を一つ吐いた。

 

 

「真菰さん、後で交代して下さいね」

 

 

「え〜っ、どうしよっかな〜?」

 

 

アオイは真菰に後で交代するように言うと、真菰は渋った声をあげる。

 

 

「真菰さん、からかうようなら無理矢理にでも歩かせるけど?」

 

 

「ごめんなさい、それだけは許して」

 

 

「分かればよろしい」

 

 

一刀は真菰に注意をすると、彼女は大人しくなり一刀は蝶屋敷に向けて歩き出した。

 

 

 

説明
『さようなら……、愛していたよ……』

本来の歴史をねじ曲げてまで愛する人を守った"天の御遣い"は最愛の人の前で消滅する……。

はずだった。

誰の因果か不明だが、"彼"は再び戦いの火中へと身を投じる。

悲しみの連鎖を絶ち切るために、立ち上がり刀を振るえ!
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原作死亡キャラ一部生存 恋姫†無双 鬼滅の刃 

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