真・恋姫†無双〜黒の御使いと鬼子の少女〜 95
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 大体の方針は“長坂橋という橋まで移動。橋を渡り切ったところで陣を敷き、そこで迎撃。時間を稼ぎ切ったところで撤退”という流れだったのだが……

 

「報告しますっ! 後方に曹操軍の旗印ありっ!」

「くっ、もう旗が見えるくらいに! ねねっ!」

「長坂橋まではまだなのです!」

 

 さすがというべきか、曹操軍は予想よりも早く行軍し、北郷たちを視界に捕らえていた。

 

「鈴々っ!」

「分かってるのだっ! みんな長坂橋まではゆっくり動くのだっ! 速く動いたら、攻め込まれるのだっ!」

「応っ!」

 

 兵士は慎重に歩を進めるが、その額には緊張の汗が伝う。そして、それは兵だけの話ではない。

 

「ねね、もう少し急がせられないかっ!?」

「あまりガーガー言うなですっ!」

 

 だが、そんな二人を恋落ち着かせる。

 

「……ご主人様、落ち着く。敵はまだ来ない」

「恋? 来ないって、攻撃してこないってこと?」

「……敵のこと、考える。敵は、兵以外は、戦いたくない」

 

 そう言って指さしたのは民の列だ。

 

「……そうかっ。戦って庶民に被害が出たら」

 

 今まで大事にしてきた曹操の名に傷がつく。それを良しとする者は誰もいないだろう。さらに言えば、あれほど厳しい軍律を敷いているのだ。むしろ被害を出そうものならどうなることか。

 

「なら、長坂橋までは大丈夫、かな?」

「ん」

 

 恋の頷きを確認した北郷は焦っていた自分を己で両頬を叩くことで叱咤する。

 

「……うしっ! ありがとう恋っ!」

 

 落ち着きを取り戻した北郷は指示を出す。

 

「隊はこのまま移動。ねね、一部の兵に先行させて陣の準備をするように指示してっ!」

「承知なのですっ!」

 

 北郷の指示のもと、隊の一部が先行して長坂橋へ向かう。そして、残っている隊は後方との距離、速度を気にしつつ進んでいく。

 

 どのくらい経ったのだろうか。しかし、待ち望んだ報告がやってくる。

 

「民間人は全員橋を渡り終え、十分に距離を取ったそうですぞっ!」

「よしっ! 陣はっ!?」

「無問題ですぞっ!」

「なら、準備完了ってことだなっ!」

「なのですっ!」

 

 そして、北郷は指示を下す。

 

「鈴々、恋っ! 反転するぞっ!」

「応なのだっ! みんなぁ! 回れ右っ!」

 

 鈴々の号令に兵たちはすぐさま反転する。

 

「鈴々たちの旗を思いっきり揚げるのだっ! 敵に鈴々たちの存在を見せつけてやるのだっ!」

「“応っ!”」

 

 返事一つで旗が空にはためく。そして、それを見た北郷が全員に激を飛ばす。

 

「みんな! これは勝つための戦じゃないっ! 生きるための、そして後ろのいる人たちを守るための戦いだっ! 何としても持ちこたえてくれっ!」

「“うおぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!”」

 

 天の御遣いたる北郷の激に兵たちの士気が上がる。

 

「構えろっ!」

 

 そして、戦う姿勢を見せたことで、速度を上げた曹操軍。そして、両軍はぶつかり合った。

 

「しゃらぁ!」

「ぎゃっ!」

「くたばれぇ!」

「あぁあああああああああああああああ!!!」

 

 眼前で繰り広げられる命の奪い合い。だが、そんな中でも雪華は戦場を余すことなく“観る”。

 

(絶対に、絶対に見逃さないっ!)

 

 この戦場において雪華がすべきこと。それは白装束を決して見逃さないこと。

 

(どこ、どこ?)

 

 木の上に隠れ、目立たないように戦場を見渡す。時折流れ矢が飛んできたりもするが、玄輝と共に2年も渡り歩いたのだ。それを避けるくらいの事はできる。

 

 と、そこで戦場に動きがあった。曹操軍を押し返したのだ。その機会を逃す北郷ではない。

 

「鈴々っ!」

「分かってるのだっ! お兄ちゃんとねね、雪蓮は撤退するのだっ! 殿の殿は鈴々たちがするのだっ!」

「頼んだよっ! 危なくなったらすぐに撤退してよっ!」

「無問題なのだっ!」

「大丈夫。逃げるの、2回目」

 

 二人の言葉に北郷は頷く。

 

「じゃあ、任せたっ!」

「任されたのだっ!」

 

 北郷はすぐに指示を飛ばし、撤退を始める。

 

「雪華っ!」

 

 頷いて木から飛び降り、馬に跨る。

 

「雪華はねねと一緒に動いて。いいね?」

「うん」

 

 すぐにねねの近くに行くと、北郷が撤退の指示を飛ばした。

 

 駆けていく馬の背から後ろを見ると、恋と鈴々の背中がどんどん小さくなっていく。不安に駆られるが、頭を振ってそれを振り払う。

 

(恋お姉ちゃんと鈴々ちゃんなら大丈夫だもんっ!)

 

 そう信じて駆ける。だが、二人の姿が見えなくなった時、角が強烈な痛みを発する。

 

「あうっ!!!」

「雪華? どうしたです?」

「つの、が……!」

 

 あまりの痛みに角に触れる。

 

(えっ?)

 

 すると、何故か空から恋や鈴々を見ていた。

 

(な、なんでっ!?)

 

 驚いて角から手を離すと視界が元に戻る。

 

(……もしかしてっ!)

 

 もう一度触れると、また空からの視点に戻る。視界では、鈴々と恋の前に強そうな人が何人か向かっていた。でも、そこから離れて木々に隠れながら進んでいる光が見える。

 

(あれは……?)

 

 光に意識を向けるとそれは人で、光っているのはその人の胸だ。さらに意識を向けると、光は人形のような形をしている。

 

(……あれ、人型だ)

 

 式神の依代だ、って言って玄輝が絵で描いてくれたことがある。

 

(じゃあ、あれはっ!)

 

 白装束だ。角から手を離して反転する。

 

「せ、雪華っ!? どうしたです!?」

「白装束がいるのっ! 伝えてくるっ!」

「な、なぁ!? ちょっと待つですっ!」

 

 ねねも反転しようとしたが、うまくいかず、馬のコントロールに手間取ってしまう。

 

「すぐ戻るからっ!」

 

 そして雪華はそのまま駆けて行ってしまった。

 

「軍師殿!」

「こ、黄仁殿! 何人か連れて行って雪華を守るですっ!」

「御意っ!」

 

 指示を受けた黄仁は反転、御剣隊の中でも上位の3名を連れて雪華を追う。

 

「天女様っ!」

「…………!」

 

 黄仁が大きな声で呼びかけるが、雪華は馬の手綱を握ること、そして白装束の事を伝えることだけに意識が行っていて声が届かない。

 

「くっ! ダメか」

「李文(りぶん)、どうするっ!?」

「速度を上げるしかないだろうっ! 行くぞっ!」

 

 黄仁は速度を上げ、横に並びはしたがその時にはすでに残った将二人がはっきり認識できる距離まで来てしまっていた。

 

「天、」

 

 女様、と声を出そうとした時、黄仁の口は止まってしまった。

 

(天女様、なのか?)

 

 一瞬だけ見えた表情。それはいつも見ていた年相応の少女のものではなかった。

 

 戦いに明け暮れた武将が見せる表情にも、命の奪い合いに魅せられた者にも見える表情。

 

(……修羅)

 

 思わず、手が止まる。その隙に雪華は黄仁を引き離してしまう。

 

「李文っ! 何してる!?」

「っ! すまんっ!」

 

 慌てて追いかけるが、再び合流できた時にはすでに武将二人にも認識されてしまっていた。

 

「……雪華?」

「恋お姉ちゃんっ! 白装束がっ!」

「っ!」

 

 その言葉に反応した瞬間、木の影から短剣が投げつけられる。

 

「恋お姉ちゃんっ!」

 

 雪華は馬の上に立ち上がり、恋の体を押すために飛び出す。

 

「っ! ダメっ!」

 

 だが、その狙いは恋ではなかった。

 

 2本目の短剣が投げ出され、前の短剣にぶつかりその軌道を変える。そう、飛び出した雪華の方へと。

 

「え?」

「雪華っ!」

「天女様ぁあああああああああああああああ!!!」

 

 二人の声はむなしく響き、短剣は雪華の左肩に深々と突き刺さった。

 

「あ」

 

 ここでようやく思い至る。

 

(わたし、なの?)

 

 いつからなのかはさすがに分からない。だが、今の一投は雪華が狙いだった。

 

(なんで……?)

 

 その答えは、すぐに知ることになる。

 

(あ、ああ)

 

 自分の体から血じゃない“何かが”噴き出してくる。

 

「あ、あああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 噴き出した何かは全身を覆い、彼女の意識を奪い去った。

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 一瞬だった。恋ですら反応出来ないほどの短い時間で短剣が雪華に突き刺さる。

 

「っ!」

 

 すぐさま投げつけた敵を排除しようと動くが、どす黒い気配がその足を止めた。

 

(なにっ?)

 

 見れば、さっきまで対峙していた張遼ですらその手を止めて気配を出している対象を見ている。

 

「なんや、あれ?」

 

 そして、恋もそれを見た。

 

 黒い、禍々しい何かが人の形をしている。ただ、人と違うのは額から二本の長い角が生えていること。そんな化け物の手には、さっきまで雪華が握っていた武器が握られている。

 

「雪華……?」

 

 思わず声をかける。すると、黒い人型は視線を恋に向ける。

 

「っ!」

 

 同時に彼女は防御の姿勢を取る。次の瞬間には凄まじい衝撃が彼女を襲っていた。

 

「うっ、ぐっ!」

 

 恋ですら思わずうめく衝撃。

 

「“恋っ!”」

 

 張遼と鈴々が同時に名を呼ぶが、それを意に介さず、恋は声を張る。

 

「雪華っ」

「………………」

 

 雪華だったそれは名前には反応するが、今までの笑顔ではなく一撃で返す。

 

「っ!」

 

 再び耐えるが、その隙にさっきまで戦っていた張遼が刃を振るう。

 

「せあっ!」

 

 しかし、それは恋に、ではない。雪華にだ。幸い、雪華はそれを避けて無傷だ。

 

「霞っ!」

「一旦、死合いは終いやっ! こいつをやるでっ!」

「やるのは、駄目っ!」

「恋、何言ってっ、とぉ!?」

 

 攻撃されたからだろうか。対象を張遼に変えた雪華は二撃目を振るおうとするが、恋が間に入り、それを防ぐ。

 

「やるのはダメって、何言ってんねんっ! そいつは敵やろっ!」

「違う。雪華は、敵じゃない」

「恋、頭を下げるのだっ!」

「っ!」

 

 鈴々の声に従って頭を下げると、蛇矛の先端が頭の上を通り過ぎ、その持ち手である棒部分は雪華の体を浮かせて、間合いを広げさせる。

 

「鈴々」

「恋、何とか雪華を元に戻すのだっ! 後ろは鈴々にまかせるのだっ!」

「ん!」

 

 鈴々に雪華を任せ、恋は戦う場所を少しでも引き離すため、注意を引きつつその場から離れていった。

 

「んじゃ」

 

 その場に残った鈴々はそこにいた曹操軍の武将4人と相対する。

 

「悪いけど、みんなで鈴々の相手をしてもらうのだ」

 

 鈴々の一言。だが、それはいつもの無邪気な物ではなく、かといっていつもの戦場での声色でもない。

 

「鈴々、時間がないから、今日だけは本気の本気で行くのだ」

 

 思わず後ずさりしそうになるほどの闘気か空間を震わせる。あまりの圧力に兵たちは恐れおののき、逃げていく。

 

 だが、武将4人は違う。猛烈な闘気の風の中、その中心である鈴々をしっかりと見ている。そこで退かぬのは相対する武将4人とて数多の死線をくぐり抜けて来た猛者だからだろう。

 

「たくっ、あんなちっさい体にどんだけ詰め込んどんねん」

「う、動けないですっ!」

 

 だが、4人のうち、二人はこれ以上のものを知っている。

 

「姉者」

「……ああ、あの男の闘気と比べればっ!」

 

 一度だけ会った“死そのもの”を体現していたあの男に比べれば大したことは無い。夏候惇は大きく一歩を踏み出し、剣先を張飛へと向ける。

 

「聞けいっ! 燕人張飛っ! 我が名は夏候元譲っ! 魏の道を切り拓く大剣なりっ! 闘気ごときで押し返せると思うなっ!」

 

 名乗りを聞いた張飛は不敵に口を釣り上げ、返答する。

 

「なら、その剣で確かめると良いのだ。この張飛が闘気だけかどうかっ!」

「そうさせてもらうっ! はぁああああああああああああああ!!!」

 

 気合いの一撃。だが、それを張飛は蛇矛の一閃で弾き返してしまう。

 

「ぐぅっ!?」

 

 それどころか、自身の手から大剣を離してしまいそうになるほどの衝撃が全身へ伝わる。

 

「何という重さっ。これがあの張飛の全力かっ!」

「どうしたのだ? まさか、あの一発で終わりなのか?」

「そんなわけなかろうっ!」

「姉者っ!」

 

 その背に妹が近づく。

 

「秋蘭っ!」

「悪いが、私も関わらせてもらうぞっ! 私とて、華琳様のために上に行かねばならないっ!」

 

 あの時、悔しい想いをしたのは姉だけではない。夏侯淵も落ち着いた後、人知れず涙を流した。自分の情けなさに。あまりの力の差に。

 

 だが、それは乗り越えなければならない。どんなことがあろうと、何をしようと。

 

「……わかった。行くぞっ!」

「ああっ!」

「二人だろうが構わないのだっ! 来いっ! 今の鈴々に勝てると思うななのだっ!」

 

 こうして両雄はぶつかり合う。一方その頃、戦場を離れた恋と雪華は……

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「うっ、ぐっ!」

 

 長坂橋から離れ、少し開けた場所で戦っていた恋だが苦戦を強いられていた。

 

「……………」

 

 振るわれる一撃一撃は単調な物だ。仕留めるならば苦労はしない。仕留めないで動きを止めることが彼女にとって難しいのだ。なにせ、目の前に対峙するのは今までは“敵”しかいなかった。でも、今は違う。目の前にいるのは守るべきものだ。

 

 加減をして叩こうとすれば、それ以上の速度で弾かれ、力を入れて振ろうとすれば雪華を傷つけるかもしれないと思い、力が出しきれない。

 

「……雪華、しっかりっ!」

 

 となると、声をかけ続けるしか彼女には思いつかなかった。幸いというべきかどうかは分からないが、防御に徹すればまだまだ戦える。

 

(でも、だめ)

 

 たぶん、それでは雪華をもとには戻せない。何かが決定的に足りていない気がしている。

 

 何故そう思うかはまだ分からない。だが、恋は本能的にそう感じている。

 

(足りないのは、なに?)

 

 そもそも、なんで雪華はあんな姿になったのか?

 

(……短剣?)

 

 そうだ。短剣が刺さってから姿が変わった。

 

(なら、短剣を)

 

 抜けば元に戻るのでは? そう考えた恋は雪華の左肩の辺りを注視する。

 

「あった」

 

 雪華の左肩に辛うじて短剣の柄が見える。

 

(でも……)

 

 如何せん、手が足りない。さすがに恋の技量といはいえ、一撃も貰わないであれを抜くのは難しい。

 

(……もらえばいい)

 

 貰わないでやるのが難しいのであれば、貰う事を前提にすればいい。

 

(行くっ……!)

 

 覚悟を決めて、一歩を踏み出した。

 

【マッテ】

(っ!?)

 

 突然、頭の中で声がした。驚きつつも一撃をいなし、心を落ち着かせる。

 

(いまの、なに?)

【ワタシ、トメル。ケン、ヌイテ】

(っ!? また!?)

 

 なんで突然声がしたのか分からない。しかし、そんな彼女を置いて状況が変わる。

 

「…………っ!」

 

 突如として長い光が雪華の胸から飛び出し、彼女の体を縛り付けた。

 

「へ、び?」

 

 思わず口にした恋だが、誰が見てもそう形容するしかない。そして、光の蛇はその口を開いて声を出す。

 

【ケン、ヌイテ】

「っ! んっ!」

 

 あれが何かは分からない。ただ、恋にはあれが味方だという事は分かってた。その声に従って、間合いを詰めて剣の柄を掴む。

 

「っう、あ!?」

 

 瞬間、世界は過去の闇に覆われる。何もなくて、奪うことでしか生きられなかった。何人も殺して、真っ赤に染まった。その内、髪の毛も赤くなっていった。

 

(わたしの、体は、血で……)

 

 思わず剣から手を離しそうになるが、肩に走った痛みが再び剣を握らせる。

 

【マケルノ、ダメ。オモイダス】

(おもい、だす?)

【アナタ、ヒトリ?】

(……ちが、う)

 

 そう。一人じゃない。あの中で、セキトと出会った。ねねと出会った。月と出会った。たくさんの出会いがあった。

 

(ひとりじゃ、ないっ!)

 

 胸に仕舞っているセキトの布が熱い。肩から流れてくる光が熱い。

 

「う、ああああああっ!」

 

 なら、その熱さに答えないといけない。彼女は全身全霊を持って剣を引き抜く。

 

「ああああああああっ!」

 

 闇は相変わらず付きまとう。でも、それと同じぐらいの光が傍にいてくれる。

 

「せつ、かっああああ!」

 

 渾身の力を籠め、彼女は短剣を抜いた。

 

 とたんに真っ黒い液体が噴き出し、雪華を覆っていたどす黒い何かも一緒に虚空へと消えていき、最後には雪華が地面に横たわっていた。

 

「雪、」

 

 彼女に近づこうと足を前に動かすが、それは叶わなかった。

 

「え?」

 

 足に力が入らず、そのまま前のめりに倒れる。

 

「なん、で?」

 

 立とうとしても、腕が震えて立つことすらままならない。そんな恋の目の前にさっきの蛇がやってきて、恋に告げる。

 

【イマ、アナタ、チカラナイ。ゼンブ、ツカッタ】

「全、部?」

 

 言われてようやく自分には体力が残っていないことを自覚した。ただ、ここまで疲労したのは人生で初めての事だった。

 

【ワタシノ、スコシ、アゲル】

 

 何を、というより前に蛇は恋の体に?みついた。

 

「うっ!」

【ダイジョウブ】

 

 するとどうだろう。体に活力が戻ってきて立ち上がるくらいの事はできるようになった。

 

「…………」

 

 驚いて呆気にとられている恋を尻目に、蛇は雪華の胸元へと戻っていく。

 

【ワタシ、ツカレタ。ネル】

 

 一言だけ言い残して、蛇は胸元へと消えてしまった。

 

「…………」

 

 驚きの抜けない恋。その時、茂みががさついた。

 

「っ!」

 

 とっさに武器を構えるが、下段に構えることしかできない。

 

(つかうの、無理)

 

 だが、何もしないよりはマシだ。彼女は構えを維持して茂みを凝視する。すると、そこから出て来たのは、

 

「にゃー! 恋、いたっ!」

 

 鈴々だった。

 

「探したよーっ! 大丈夫かにゃ?」

「…………」

「あいつらは鈴々がぶっ飛ばしたから、大丈夫なのにゃ!」

「……お前、誰だ?」

「にゃ?」

 

 そう。確かに、そこにいるのは鈴々だ。だが、気配から何まで全く違う。そもそも、だ。

 

「鈴々は、そうやってしゃべらない」

「……ちぇ、やっぱり付け焼刃じゃ無理か」

 

 そう言って目の前の鈴々は一瞬で服が変わった。その身に纏っていたのは、洛陽にいた白装束のそれと同じものだった。違うとすれば、顔が出ていることだ。

 

「やっぱりほんの数刻で模写なんてできるわけないじゃん。ご主人様式神使いが荒いなぁ……」

「お前っ……!」

「はじめまして。僕は天邪鬼の覚鬼(さき)だ。あ、覚えなくていいよ」

 

 名乗った鈴々の姿をした白装束はそう言って、蛇矛を振り回す。

 

「君はここで死ぬからねっ!」

「っ!」

 

 恋が死を覚悟したとき、目の前に女が降り立った。

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はいどうもおはこんばんにゃにゃにゃちわ。作者の風猫です。

 

はい、もうお分かりだと思いますが、雪華の暴走回です。

 

そして、恋のピンチに現れた女の正体はっ!?

 

待て次回っ!

 

……まぁ、ここまで読んでくださった読者の皆様であればある程度察しているかとは思いますが、また次回にします。はい。

 

あ、いつものように誤字脱字あればコメントにお願いします。

 

ではっ! さらばっ! また次回!

 

説明
オリジナルキャラクターが蜀√に関わる話です。

大筋の話は本編とほぼ同じですが、そういったのがお嫌いな方はブラウザのバックボタンをお願いします。
































ちゃんとオリジナルの話もありますよ?(´・ω・)
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