絶撃の浜風 赤城編 03 一航戦暗黒神話T |
絶撃の浜風 赤城編
03
一航戦暗黒神話T
(2020年12月11日 執筆 2021年8月14日 加筆修正)
某鎮守府に着任した赤城は、鳳翔に代わり秘書官に任命された。鳳翔はというと、それまで一手に担っていた全ての演習から外され、事実上の《退役》扱いにされていたが、その事実は赤城には知らされていなかった
この、極端な艦隊運営は、現某鎮守府提督の方針であった。彼は元々、中央省庁勤めを希望していたが叶わず、滑り止めとして大本営に就職した経緯を持つ
故に、というか、元々の性格もあってか、彼は艦娘に全くと言っていいほど関心も興味もなかった。彼の現在の関心は、地方の提督として実績を上げ、大本営勤務に昇進すること以外になかった
そんな彼が某鎮守府提督に就任後真っ先に行った事は、所属艦娘の戦力分析だった
与えられた任務を遂行するにあたって、最低限必要な戦力と艦艇数を割り出し、最小限のメンバーを選抜し、集中的に任務に当たらせた
限られた任務を特定の艦娘に集中的に消化させる事で、レベルを短期間で向上させるためにあった
艦娘のレベルが上がれば、それだけ高難易度の任務を受ける事が可能になる。高難易度任務は報酬も多く、戦果も挙げられる。戦果は提督の評価そのものとなり、出世を第一に考えるならこの方法が最も効率がいい
一方、選抜に漏れた艦娘は《退役》扱いされ、任務に当たらせる事はなかった。新しい艦娘が覚醒し、戦力になると判断されれば、順次下位の艦娘と差し替えられた。戦力にならなければ、そもそも《始まりの艤装展開》すら受ける事が出来なかった
これは、大本営の規定に違反する行為ではないが、これほど極端な艦娘運用は過去に例がない。彼は、無駄な事には、一切の資材を投じない事を徹底していた。そして、一度外した艦娘は二度と使わない、それが彼のやり方だった
当然艦娘からの反発も多く、代表して鳳翔が《他の艦娘にも任務遂行の機会を与えて下さい》と、何度となく進言した結果、一度だけ聞き入れてくれた事があった
だが、それは鳳翔以下某鎮守府所属艦娘にとって、悪夢の幕開けになってしまった
「この海域も、ずいぶん平和になりましたね。姫も出ないし、退屈ですねぇ・・・・こんな時、加賀さんがいれば気が紛れるんですが」
北方棲姫のいない海域の哨戒など、赤城には退屈極まりなかった。それに・・・
《なんですかねぇ・・・この空気。みんな覇気が無いというか、おどおどしてますね・・・》
「今度は鳳翔さんもいっしょに、南方海域まで行ってみたいですね〜龍驤ちゃん?」
「・・・あ〜・・・・それはないわ・・・・」
(2020年12月12日執筆)
「?・・・・何だか煮え切らないですねぇ・・・何かあったんですか?」
「鳳翔は、多分もう海には出れへんわ。赤城と入れ替わりで外されたって事は、そういうことや・・・・」
「・・・どういう事です?」
赤城の問いかけに、龍驤は押し黙ったままだった。その様子から、ただ事ではない事は赤城にも見て取れた
「・・・龍驤ちゃん、その話、詳しく聞かせてください」
「どうもこうもない、ここの提督の方針なんや。演習や任務の定員が24隻と決められとってな、有力な艦娘が着任してきたら下のモンから入れ替えさせられるんや。うちの知る限り、外された艦娘は二度と使われてへん・・・・」
「そんな馬鹿な! そんな偏った運用してたら休む暇もないじゃないですか! 後進も育てなければ、先が知れてますよ。 何故そのままにしてるんですか? 鳳翔さんは、何も言わなかったんですか!?」
「もちろん何度も言うた! 鳳翔だけやない、みんなで提督に進言したんや・・・けどな・・・」
「・・・一体、何があったんですか?」
「それは・・・うちの口からは・・・言えん・・・・提督に聞いとってや・・・・」
そう言うと、龍驤は黙り込んでしまった。他の子たちも、一様に沈んでいた
《・・・これは・・・ただ事じゃありませんね・・・・この分だと鳳翔さんも・・・・》
鎮守府に帰投するなり、赤城は執務室で提督を問い詰めていた
「提督、これはどういう事ですか?」
「・・・随分な口の利きようだな、赤城」
「そういうのはいいですから、答えていただけませんか?」
事情は、あらかじめ通達してあった。だが提督はそれについては「貴様に話す事など何もない」と一蹴されたため、直接乗り込んできたのである
「・・ふん・・効率的な運用をしているだけだ」
「特定の艦娘にだけ集中的に経験を積ませる事が、効率的だと?」
「そうだ。何故見込みのない連中にまで機会を与える必要がある?」
「育成艦の数が少なすぎます。これでは有事に対応できませんよ」
「馬鹿を言うな。今や深海棲艦など絶滅危惧種並にしかおるまい。現に貴様だって北方AL海域を回って、たったのLV.5にしかならん。見込みのありそうな者を選んで任務を有効に振り分けて何の問題がある?」
この時点で赤城は気付く。某提督は、実戦・・・・戦場と言うものを知らない・・・机上の空論だけで物事をわかった気になっている
「提督は深海棲艦をわかっていませんね。やつらの中には知性を持った個体もいます。備えは必要です。慢心など、以ての外ですよ」
「話にならんな。貴様の進言など、取り合う気はないわ。失せろ!」
一方的に話を打ち切り背を向ける提督の肩を、赤城は掴む
「まだ話は終わっていませんよ、提督・・・・・」
「・・・・艦娘風情が・・・私の体に触れるなっ!」
振りほどこうとする提督・・・・だが、赤城は離さない・・・艦娘の膂力で掴まれては、人の力でなど振り解けるはずもなかった
「・・・貴様・・・」
睨みつける提督に構わず赤城は話を続ける
「ここの艦娘たちは、一様に覇気がありません。 あなた、一体何をしたんですか?」
「・・・しつこい奴だな・・・それ程言うのなら、一度、貴様の言う通り、他の艦娘にもチャンスをやろう・・・・もっとも、やりたいという奴がいればの話だが」
「・・・・どういう事ですか?」
「赤城ちゃん、もうやめなさいっ!」
執務室へ、一人の艦娘が乗り込んできた
「・・・・鳳翔さん?・・・」
赤城が提督に直談判しに行ったとの知らせを龍驤から聞いた鳳翔が、赤城を止めるために執務室に訪れていた
「提督、申し訳ありませんが、当面は今の編成で任務を回していただけませんか?」
「・・・鳳翔・・・貴様はもう秘書官でも何でもない・・・・貴様の進言など聞く言われはないわ!」
「・・・ですが!!」
「・・・・ふん、だから最初からそう言っているだろう。赤城にもよく言っておけ!」
苦悶の表情を浮かべる鳳翔・・・・これは・・・ただ事ではなかった
「鳳翔さん・・・提督・・・これは、どういうことですか?」
だが、提督は答えない
鳳翔も・・・・黙ったままだった
《この感じ・・・・そう、これは・・・・・》
嫌な、記憶だった
赤城は、麻雲と・・・・六三八の事を思い出していた・・・・
「・・・あぁ、そういう事ですか・・・・・」
赤城の中で、何かがキレた
「提督・・・一度だけ言います・・・この状況は、いかなる理由があろうと私には看過出来ません・・・・きちんと話してもらえませんか?」
「言っただろう。貴様と話す事など何も無い。失せろっ!」
「ああ、そうですか・・・・じゃあ、仕方ありませんね・・・・」
「赤城ちゃん、ダメッッツ!!」
鳳翔が止める間もなく、赤城は執務室の中で《艤装展開》をした
「・・・ばっ・・・何のつもりだっ!」
「いえ、あなたがあんまり聞き分けがないんで、もう面倒になりました。・・・・要はあなたが元凶なわけですよね?」
そういうと、赤城は零戦52型を10機発艦させ、提督の上空を旋回させた
「少しは話す気になりましたか?・・・いえ、別に話していただかなくても結構ですよ。その足りないおつむに風穴が空くだけなので」
「で、できるものかっ! アドミラル権限があるのだぞっ! 手を出せるわけが・・・・」
------ZZDaDaDaDaDaA---DaBudda--budda----dadadadadadadadadadada--da----------!!!!
間髪入れずに52型の機銃が提督の帽子を跳ね飛ばし宙に舞う・・・帽子は床に落下するまでの間に無数の機銃掃射を受け、文字通り消滅した
「ひ、ひいいい〜っ!!!」
頭を抑え、その場にうずくまる提督
「アドミラル権限て・・・そんなもの、大した拘束力はありませんよ。知らなかったんですか?」
「・・・え?」
「要は、貨幣通過みたいなもんですよ。価値があると信じ込んでるから意味が付与されてるだけで、あんなもの、只の紙切れですから・・・・さてと」
貨幣通過のようなもの・・・そう赤城は一蹴したが、現実問題として、その貨幣を捨てられる人間などそうはいない・・・・その身を常に生死の狭間に置いている者にしか、それは出来ない事である
「警告はしました。次はあなたの頭がこうなりますが、どうします?」
「な、なぜだっ!!なぜ貴様はこんな事を・・・!! 殺す気かっ!!」
「頭を吹き飛ばしたら、大抵は死ぬんじゃないでしょうか?」
「ひいいいいい〜っ!!! や・・・っ・・・ま、待ってくれっ!!! わかった、わかったから、やめてくれ〜っ!!!」
「・・・はじめから素直に言えば、死なずに済んだんですよ」
既に提督の運命を過去形で話す赤城に、提督は心底震え上がった
《ひっ・・ぃぃ・・、マジで殺す気かこいつ・・・》
「そ、その前に、教えてくれっ! 何故貴様は俺に攻撃出来る? アドミラル権限以前に、人に危害を加えられるわけが・・・」
「・・・そうですね・・・月並みですが、冥土のみやげに教えてあげましょう」
「や、待ってくれ、殺さないでっ!!!」
「だったら、ちゃっちゃと喋っちゃって下さい。私の気が変わらないうちに」
「あ、あれは、わざとじゃない、失念していただけだ。ほ、本当だっ!!」
「・・・・は? 何を言ってるんです?」
すると、鳳翔が二人の間に割って入る
「それは・・・本当ですか? 提督?」
「ほ、本当だっ! 艦娘が、元は人間だったなんて・・・知らなかったわけじゃないが、興味がなかったんで”うろ覚え”だったんだ。後で気がついてやばいって思ったんだっ!」
「・・・・・・・」
「?・・・鳳翔さん、提督は何の事を言っているのですか?」
苦悶の表情を浮かべ、鳳翔は吐き出すように語りはじめた
「・・・赤城ちゃんが来る少し前、美雪ちゃんが轟沈しました。碌な装備も持たされず、道中大破したんです・・・・・それで・・・・・」
「・・・・!?・・・・・・まさか・・・・」
赤城は、鳳翔が何を言おうとしているのか理解した
「・・・・お前・・・やったのか!?・・・《大破進軍》を!!!!」
彼、某提督は、Lv.1の特型駆逐艦・美雪を、初期装備だけで南西諸島哨戒任務に同行させた。そして、道中大破した美雪を無視し任務を優先、鳳翔に《大破進軍》を命じた。結果、美雪は轟沈。LOST(帰らぬ人)となった
任務における《進軍》の命令は、提督の有する最も強い権限であり、艦娘はこれを拒否出来ない
彼曰く、
「私は、任務を遂行したに過ぎない。道中大破するような弱い者を任務に当たらせると、こうなる事はわかっていたはずだ」
と。
信じがたい事だが、彼は、艦娘が元は人間が覚醒した存在だという事実を失念していた
元々中央省庁勤めを希望していた彼は、某鎮守府に配属されるまで、艦娘について殆ど何も知らなかったのである
後で気付き、《まずい事をした》と彼は思った。艦艇が擬人化した初代艦娘と違い、人から覚醒した現代の艦娘には人権がある。当然の事ながら必然性のない大破進軍は禁止されている
事が大本営本部に知れたら、何らかのペナルティーは免れない。無論出世の望みも絶たれる
だが彼は、やってしまった事を嘆き反省するどころか、《大破進軍カード》が思いのほか効果が強い事を知り、逆にこれを利用する事にした
「私に従わないというなら、それは一向に構わんが、せいぜい大破しないよう、気をつける事だな。また同じような不幸が起きないとも限らん」
某提督は、この時《暗黒面》に足を踏み入れた
そう・・・・《大破進軍》をカードに、艦娘たちを従わせたのである
仮に大破進軍で艦娘をLOSTしたとして、その後の出世の道が絶たれる事はあっても、罷免される事はない。艦娘側からしてみれば、告発しても状況は変わらない。むしろ出世の道を絶たれた某提督の逆鱗に触れ、再び大破進軍を命じられる危険性が高まるだけである
鳳翔も、黙るしかなかった
赤城が就役してきたのは、この事件の後だったのである
某提督は、何かと口出ししてくる鳳翔の事を疎ましく思っていた。そこへあの高名な戦闘マシーン、一航戦の赤城覚醒である。彼としては当然の如く、すぐに鳳翔と赤城を差し替えた
事情を知らない赤城は、秘書官就任してすぐに北方AL海域戦闘哨戒任務に出た。ここで赤城は任務を全うし、LV.5となった
だが、これを最後に、赤城が某提督の元で戦場に出る事はなくなった
「わ、悪かった! お前らの希望通り、他の艦娘にも機会をやるっ! 大破進軍もしないっ!! 約束する! だから・・・」
だが、提督の言葉に赤城はピクリとも反応しなかった・・・・・完全に・・・キレていた
「・・・・何か勘違いしてませんか? お前を処分すれば新しい提督が来て万事解決じゃないですか」
「ひいい〜〜っつ!!!」
「一つ、いいことを教えてあげます。私と、あと3人・・・かつての第一機動部隊の四人は、それぞれの裁量で一人だけ大本営所属の軍人を処分する権限が与えられています。私たちが大本営に協力する条件として、55年前に認めさせたんですよ」
「そ・・・そんな話聞いた事ないぞ!」
「そりゃあそうです。こんな事、誰もが知ってたら、提督やる人いなくなっちゃうじゃないですか。知っているのは、大本営の上層部のごく限られた人たちだけですよ。」
「そ、そんな・・・」
「特に海軍軍令部の軍人はその後全員入れ替えになってますし、知っている人は、まずいないんじゃないですかね」
赤城たち第一機動部隊の四人は、艦娘として初めてこの地上に顕現した折、当時発足したばかりの大本営と、一つの【約定】を交わしていた
それは、赤城が先に述べた【大本営所属軍人処分に関する権限】である
大東亜戦争におけるあの《ミッドウェー》での敗北は、敗戦へと誘おうと画策していた海軍軍令部の意向と、それに利用され踊らされた本山六三八司令長官、そしてそれを盲目的に実行した麻雲忠三中将によって引き起こされた
あの時は、人同士の争いに過ぎなかったが、今回の敵は、人類そのものの敵、深海棲艦である
もし、この人類存亡の掛かったこの戦いに於いて、《あの時》のような事が起きてしまったら・・・・今度こそ取り返しのつかない事態に陥ってしまう
当時の大本営側としても思うところはあった。処分における裁量を四人の艦娘に委ねる事に反対する者も多かったが、当時の大本営幹部連を統括していた陸軍参謀総長、所謂幕僚長の独断でこの約定は締結された
人類共通の敵の前に、先人の犯した轍を二度と踏むわけにはいかなかったのである
「第一機動部隊、第一航空戦隊旗艦・赤城の裁量権により、某提督・・・・・あなたを処分します」
突然の・・・あまりにも急展開な出来事に、某提督は言葉を失っていた
「・・・とまぁ、そんなわけなんで、おとなしく処分されちゃって下さい」
「・・ひ、ひいぃぃーーっ!」
某提督の運命は、まさに風前の灯火であった
だが、何の運命の悪戯であろうか、それとも本山六三八の怨念の成せる技だったのか・・・
某提督は・・・・気付いてしまった
彼の手元にあった端末が点滅していた・・・・それは、現在出撃中の南方海域からのコールサインであった
「!!!」
そしてその内容を見た時、彼は確かに《悪魔》が耳元で囁くのを聞いたような気がした・・・・
「ゴクリッ!」
彼は緊張のあまり、唾を飲み込む・・・・そして・・・
《・・やるんだ・・・このままではどのみち殺られるっ!! やるしかない!!!》
「お、俺が悪かった! た、頼むッ!! 殺さないでっ!!」
某提督はとっさに小芝居を打った・・・そして赤城に気付かれないように端末の夜戦コマンドの上にそっと指を降ろした・・・・・・
チェックメイトだった
《・・・・やった・・・やったぞっ!!!》
先程まで情けなく命乞いをしていた表情が、みるみるうちに醜くゆがんだ笑みを浮かべる
そして・・・・
「赤城、一つ取引をしようじゃないか。俺を殺すのをやめ、大破進軍の事を大本営に伏せておくなら、お前の要求通り、他の艦娘にも適切に任務を振り分けてやろう。大破進軍も二度とやらない。これで手打ちといこうじゃないか」
(2020年12月14日 執筆)
「は? 何を言ってるんですかあなたは?」
某提督の突然の豹変に、赤城は怪訝そうな表情を浮かべる
「わからないか? ここにきて俺が強気に出ている理由が」
「・・・随分と口の利き方が変わりましたね・・・それが”素”ですか?」
《・・・錯乱しているようには見えないですね。だとすれば・・・・・・・・え・・!?》
赤城は気付く
端末のタッチパネルの上に置かれた提督の指先には・・・・第一艦隊の《夜戦》コマンドがあった。そして、編成された艦娘の中に、大破したものが二人もいた
提督がタッチパネルから指を離した瞬間、《大破進軍》が実行され、おそらくは大破した二人は轟沈する可能性が高い
かといって、ここで提督を射殺し倒れてしまえば、どのみちパネルから指が離れて必然的にコマンド実行されてしまう・・・・・
形勢は、某に大きく傾いていた
《・・・この状況で、とっさにこんな事を思いつき実行するとは・・・・》
「・・気付いたか!! お前らもう詰んでるんだよ!!」
「そんな事をすれば、あなたもさっきの帽子みたいになりますよ」
「だから取引と言ってるんだ。お前は俺を追い詰めすぎたんだよ。どのみち殺されるのなら、こういう手に出るのは当然だろうが?」
「・・・・下衆がっ!!」
「何とでも言え。さあどうする? そろそろ腕が疲れてきた。うっかり指を離してしまうかも知れんぞ?」
とんでもない悪党がいたものである。人の悪意とは、かようなまでにドス黒く醜いものであったか・・・・・なればかつて、我らが六三八の掌の上で運命を弄ばれた理由も合点がいく・・・・・・
《・・・・所詮、人と艦娘とは・・・相容れない関係なのかも知れませんね・・・・・・》
艦娘の誇りも・・・真摯な想いも・・・・・人の悪意の前に蹂躙され、踏みにじられてゆく・・・・・・
何度生まれ変わっても・・・・・・同じであった・・・・
「・・・・仕方ありませんね・・・但し、私が納得のいく条件でなければ、あなたを地上から消滅させますよ」
ともあれ、今回はこの男の方が一枚上手であった・・・・認めざるを得なかった
「俺の要求はさっき言ったとおりだ。あと、《始まりの艤装展開》拒否権を、五人まで認めろ。お前みたいな奴が、今後来ないとも限らんからな」
「・・・一人までです。嫌ならこの場で射殺します」
「・・・わかった、ひとりでいい。その代わり赤城、お前は今後あらゆる任務から外すっ! いいな! 嫌なら撃てばいい・・・・二人の仲間を見殺しにしてもいいのならな!」
「いいでしょう。それで了承します。でもいいんですか? あなたがコマンドを解除した途端、あなたを蜂の巣にするかも知れませんよ?」
「・・・・いいや、お前はそうはしないだろうよ」
「・・・なぜ、そう思うんですか?」
「鳳翔の事もあったからな・・・お前の事はよ〜く調べてある。お前は誇り高い艦娘だ。例え相手が深海棲艦だったとしても、約束を違える事はない・・・そうだよな?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
赤城の、一航戦としての誇りさえも、交渉の切り札として使われていた・・・・・・・完敗だった
「・・・おい、何とか言えっ!」
「・・・まったく・・・あなた、それだけの胆力があるなら、まともな提督やればよかったじゃないですか? 正直、甘くみていました」
「誰が提督風情で終わるかよ。俺は大本営のトップになる男だからな」
「あなたがトップじゃ、先が思いやられますね。いっそこの場で始末したくなりました」
「おいおい、不確定な未来のために仲間を見殺しにする気か?」
「まぁ、せいぜいあなたが出世しないよう、邪魔する事にします」
「お前ほどの艦娘を艦隊編成から外さざるを得ないんだ・・・十分邪魔されてるわ。・・・・誓えっ!!赤城っ!!!」
「一航戦、赤城の名にかけて、この約定を締結し、これを違える事なく尊守する事をここに誓う!」
「お互い、暇になっちゃいましたね、赤城ちゃん」
本当にこの子は心配ばかりかけて・・・とでも言いたそうな鳳翔であったが、大破進軍が事実上無効化された事で、幾分表情がやわらいでいるように思えた
「まぁ、干されるのはいつもの事なんで、別にいいですけどね」
「そんな事言って・・・こんなに早く提督と揉めるの、はじめてでしょ」
「あの提督は、今までの中で格別に質が悪いですからね・・・・加賀さん流で言うと、久々に頭にきました」
「ごめんね、私がもっとちゃんとしてれば、赤城ちゃんにあんな嫌な役回りさせなくても済んだのに・・・」
「鳳翔さんは悪くないですよ。アレは、私みたいな第一機動部隊だからこそ、脅しが効かせられたんですから・・・・それに・・・・」
「それに、もし私より先に加賀さんや飛龍たちが来てたら、きっと同じ事をしたと思いますよ」
「・・・・・・みんないい子たちだものね・・・・・・」
「それよりも鳳翔さん、私、お腹が空きすぎてヤバいです。流石に甘味だけじゃもう限界ですよ!」
「ふふっ、そういえば間宮さん言ってましたね。『鳳翔さん、お願いだから早く戻ってきて下さい!』って。営業妨害レベルだって聞きましたよ?」
「だって、鳳翔さんのご飯が食べられなかったんですよ〜! ついやけ食いしてしまいました」
「しかたないですね・・・・赤城ちゃん、今から暖簾を掲げるから、手伝ってくれる?」
「おほっ、しますしますっ! 私、鳳翔さんのご飯をいただく為に覚醒したようなもんですから!」
「また〜調子のいい事言って・・・つまみ食いしたら、前みたいに出禁にしますからね。」
「・・・後ろ向きに善処します・・・・」
こうして、鳳翔と赤城は、仲良く退役扱いとなり、第一線から退いた
そして、久しくなかった『居酒屋 鳳翔』の暖簾が掲がり、艦娘たちの、憩いの場が帰ってきた。そして、引き戸には《提督禁止》の張り紙があった
加賀 01 Lv.1加賀 に続く
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絶撃シリーズ 赤城編 第三話です この物語全般に大きく影を落とす、最初の事件です 本編はこの事件のあらましを描き切ってからになりそうです |
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