時の彼方に流されて行くものと時の流れに抗うものと(How I/They Against The Time Flies)
説明
「頭上を横切る青空のパイプラインは、
片側に3つずつの翼を持つ
大企業所有の有翼船が
通り抜けるのに支障が無い程度の
大きさに造られているのだが、
虹にとってはあまりに窮屈過ぎるのか
パイプラインを途中で抜け出してそのまま、
築年数の古いジグソーパズルのアパートの
ピースが抜け落ち青空が覗く空洞の中へと
逃げ込んだ。

その様子は車窓からもハッキリと確認出来る筈なのだが、
車内の大部分の乗客達の証言は恐らく頼りにならないだろう。
車窓を眺める事よりも
時の流れに一分一秒でも抗いたいが為に
予定を秒単位でびっしり埋めたスケジュール帳や
パソコンの画面を眺めている事の方が
重要な乗客が殆どなのだから。
時間と言うものは
本当に無責任で残酷なものだからね。

線路脇に並ぶ旧型のパソコンは
これから分譲される住宅に転用する為の
改装工事が行われているようだ。
幾つかの個体では既に作業が始まっていたが、
未だ手が加えられていない個体の
電源が点いたままの画面には
青いエラー画面が表示されたままだった。
二度と文字を打ち込まれる事も
無いであろうキーボードの前に
建てられていた不動産広告には
施工主の連絡先と
完成予想図に描かれた
"理想的な"家族の幸せそうな生活。
全てが取り除かれたキーボードを
転用した車出しには
高級車が描かれていた。

ロケット型のタイムマシンは
不具合を起こしたまま
今では物置の代わりになってしまっている。
もしかしたらいつかは使うかも知れないから、と
取っておいては結局一度も
使った試しのないものばかりで溢れている。
雲のラジカセから流れて来た音楽は
昔は一日に何回もラジオで流れていたと言うのに、
今ではすっかりラジオで掛からなくなった。
きっと誰も覚えていないのだろう。
きっと沢山のものを置き去りにして
どんどんこの先へ進んで行くのだろう。
あのジグソーパズルのアパートも
再来月には取り壊されて、
その跡には「先進諸国並みの水準」を謳った
コンドミニアムが作られるらしい」


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(完成後に)B4(257×364)サイズ程に切り取った水彩紙に
水彩絵の具、水彩色鉛筆で描いたもの。
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