真・恋姫†無双〜黒の御使いと鬼子の少女〜 103
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 三人でお茶をすする。

 

「……はぁ〜、癒されるわぁ」

「もぅ、詠ちゃん。おばあちゃんみたいなことを……」

「ちょ、ちょっと月っ! 変なこと言わないでよ。限られた時間でくつろいでるだけだって」

 

 と、わいきゃいしているところへ北郷がやってきた。

 

「げっ」

「顔見た瞬間にそれはさすがに勘弁してほしいんだけど」

「うっさいっ! お前の顔が悪いっ!」

「ひどいっ!?」

「詠ちゃん……!」

「うっ……」

 

 と、いつものように月にたしなめられて気まずそうに口を閉ざす詠。

 

「申し訳ありません、ご主人様」

「いいよ。だいぶ慣れてきたし……」

 

 “慣れたくはないけど”とぼそりと付け足したが、北郷の主目的はそこではない。

 

「皆はどう?」

「……さっき、桃香が少しだけ目を覚ましたわ」

「本当っ!?」

 

 これには月も驚く。

 

「でも、雪華の顔を見たら安心してまた寝ちゃったわ」

「そっか……」

 

 少し残念そうにつぶやくが、表情に影はなく、安心の色が濃く出ている。

 

「愛紗や、恋、ねねは?」

「ねねもさっき目を覚ましたけど、なんか神様? だか何だかに知識を請われて疲れたとか言ってまた寝たわ。恋と愛紗は……」

 

 詠の表情から察した北郷は眉をひそめた。

 

「……出陣までは、無理かな」

「恋がぎりぎりってところでしょうね。ただ、二人とも戦力に組み込むのはお勧めしないわ」

「だよね」

 

 恋はまだしも、愛紗は怪我をしている。目が覚めたとしても戦いに出るのは危険だ。出立までに目を覚ますかどうか心配するぐらいならここの守護を担当してもらう方がいい。

 

(……でも、それはあくまで“普通の戦”での話だ)

 

 白装束。彼らの襲撃を察知できなかった。という事は、今後も急襲される可能性が高いという事だ。しかも、質が悪いのがこの世界の常軌を逸していることだ。

 

(突然現れる何百の兵、恋や星でも一歩間違えれば即死してしまうような怪物が事前動作もなく襲ってくるってどんな無理ゲーだって話だよ……)

 

 そうなれば、荷台に寝かせることになってでも連れていくしかない。だが、そんなことをすれば後ろががら空きになってしまうし、なにより、受け入れてくれた人々を裏切ることになってしまう。

 

(…………くそっ! どうすれば)

「あらん、こんなところにいたのねぇん」

「“うわぁああああああああああああああ!?!?!”」

 

 と、詠と同時にとんでもない叫び声を出してしまった北郷。だが、そんな北郷以上に動揺しているのは初めて邂逅した詠だ。

 

「へ、へん、変態筋肉男がいるぅうううううううううううううううううううう!?!?!?」

 

 と、叫んで気を失いそうになる。

 

「詠ちゃんっ!」

「うっ、うう」

 

 月に支えられて何とか踏みとどまるが、そんな彼女を見てプンプンという音が似合いそうな起こり方をする小町。

 

「何よぉ! 失礼しちゃうわっ!」

「いや、初めてでいきなり見たらそうなると思うぞ」

 

 “って、大事なのはそこじゃない”と北郷は気を取り直して問いかける。

 

「玄輝の所に行ったんじゃ……」

「ちょっと連絡事項を忘れてたのよぉん」

「連絡事項?」

「この城一帯に白装束が入ってこれないようにしておいたわん。今回みたいなことはもう起こらないはずよん」

「本当にっ!?」

 

 その話は朗報としか言いようがない話だった。

 

「本当よん。でも、効果があるのは白装束だけ。他の国からの攻撃には無力だから、それは気をつけなさぁい」

 

 “それと”と小町は話を続ける。

 

「白装束に対する記憶が消えないようにもしといたわん。これで多少は対抗できるはずよぉ。あ、あと、思い出すこともできるはずよん」

 

 言われてこれまでの情報を思い出す北郷

 

「……本当だっ! 思い出せるっ!」

「問題ないみたいねぇん。じゃ、私はここで失礼するわぁん」

「小町、さん。ありがとう」

「気にしなくていいわよん」

 

 一言いい残して小町は驚異的な跳躍を見せて、跳び去っていった。

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「…………あんた、あれ何?」

「……玄輝の、知り合いかな?」

「……天には変人しかいないわけ?」

「あれは、俺たちの国でも十分に変人だよ」

「そう、なんだ……」

 

 しばらく小町が跳び去った扉を見ていた二人だった。

 

(って、いつまでも呆然としてるわけにもいかないか)

 

 頭を振って気持ちを切り替える。

 

「詠、ねねに軍議についての話はした?」

「……はっ! え、ええしたわよ」

 

 返答までのタイムラグは気にしないようにしておこう、そう思った北郷は話を続ける。

 

「じゃあ、明日の昼に最終的なことを決めるからそのつもりでね」

「分かったわ」

 

 確認が取れたところで北郷はその場を後にした。

 

「……はぁ」

「詠ちゃん、大丈夫?」

「ごめん、月。さすがに私も疲れた。部屋で少し休んでくる」

 

 詠はそれだけ言い残すと、疲れた後ろ姿のまま部屋を出ていった。

 

「詠お姉ちゃん、大丈夫かな……?」

「大丈夫、だと思うけど……。雪華ちゃんは大丈夫?」

「私は大丈夫だよ」

「そうなの?」

「さっきの人、玄輝と一緒に会ったことあるから」

「そ、そうなんだ。すごいね、雪華ちゃん」

 

 と月から褒められて少しうれしい雪華だが、気になっていたことを聞く。

 

「ねぇ、月お姉ちゃんも忘れていたこと思い出せたの?」

「そういえば……」

 

 言われて月は思い出すように目を閉じる。

 

「……うん、私も思い出せる」

「なら、あいつらが私の事何か言ってたの覚えてない?」

「雪華ちゃんのことは、言ってなかったと思う。私の事は言ってたのは覚えてるけど」

「月お姉ちゃんのことを?」

「うん」

 

 少し手を握りしめてから続きを話す。

 

「私がこの世界の楔の一つだって言ってたの。だから、私を贄として捧げれば大きな力が手に入るって」

「楔?」

「よくわからないけど、多分この世界を繋ぎ止めている何かなんだと思う」

 

 “でも、”と月は眉根をひそめながら続ける。

 

「私、そんな重要な人間じゃないと思うの。家族が神様とかに仕えてる家系でもないし、不思議な物が見えたりするわけでもないし……」

「…………シンについては覚えてる?」

「あんまりそれについての話はしてなかったけど、私を贄にしたらかなり近づくって……」

「それだけ?」

「……他には、気になったことが一つ」

「気になったこと?」

「私が質問したら“木偶風情が知る必要ない”って返されたの。最初は今の状況からそう言われているんだって思ってたんだけど……」

 

 ざわつくのだろうか、胸に手を当てて険しい表情になる。

 

「今思うと、別の意味があるような気がして……」

「別の意味って?」

 

 雪華の問いに月は首を横に振る。

 

「ごめんね。私にもよく分からないの」

「月お姉ちゃん……」

 

 雪華の言葉を聞いて、月は彼女の頭を撫でて、いつもの優し気な笑顔を見せる。

 

「また何か思い出したらお話しするね。私もそろそろお仕事に戻らないと」

「うん、分かった」

 

 部屋から月が出て行った後で雪華も部屋を出ようとするが、そこで一度振り返る。

 

(…………)

 

 姉が二人寝ているその部屋を一度だけ見て部屋を出た。そして、時は過ぎ出陣の時になった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「よし、じゃあ最終確認するよ」

 

 北郷は集まった面々に確認をしていく。

 

「まず、先陣は鈴々と恋、中堅は白蓮、本陣には星、華雄に詰めてもらう。ここまでは大丈夫?」

 

 呼ばれた面々は頷いて同意を返す。

 

「で、ねねは前線へ、中堅には雛里、本陣には詠。これで問題ない?」

「はい、大丈夫かと……」

 

 雛里の返事に加え、二人も頷いて肯定を示す。

 

「よし、ではこれより出陣するっ!」

「“応っ!”」

 

 と、みなが返事をしたとき、玉座の間の扉が開いた。

 

「お待ちください」

 

 そこにいたのは、

 

「愛紗っ! 桃香っ!」

 

 つい先日まで寝ていた二人。そして、その陰には雪華がいた。

 

「二人とも、怪我は大丈夫なの!?」

「私は大丈夫だよ。そもそも、はたかれただけだし」

 

 “たはは”と情けなさそうに笑う桃香。

 

「だから、私も行くよ。戦いに」

「私も問題ありません。戦線に加えていただきたい」

「でも、愛紗……」

 

 愛紗は桃香と違い、思いっきり吹き飛ばされている。医者からも安静が必要と言われていたのだが……

 

「心配をおかけして申し訳ありません。ですが、戦いに支障はありません」

 

 そう言い切る彼女の目は確かに気力に満ちているし、顔色も元に戻っている。だが……

 

「なら、私が判断してやる」

 

 星が席から立ち上がり告げる。

 

「星……」

「悪いが、今のお主に兵の命を預けられるか、はっきりしない内は戦線に連れて行けるわけがない」

「……望むところだ。ご主人様、構いませんか?」

「………………」

 

 北郷としては休んでいてほしい。だが、戦力がギリギリなのもまた事実。ましてや、愛紗が来てくれれば心強いのは間違いない。

 

「……わかった。でも、星が無理だと判断したらおとなしくこの城で待っててくれるね?」

「御意」

 

 こうして出陣の直前で手合わせが行われることになった。場所は終わり次第すぐに出発できるよう、町の外で、何万人の兵が見ている中で行われる。

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どうもおはこんばんにゃにゃにゃちわ。作者の風猫です。

 

さて、ついに今年のマジカルミライが発表されましたが……

 

まさかの2022ではなく10th表記! しかも、ミクさんの生まれ故郷である札幌でも行うとのこと。しかも、今年のミクさんの絵はKEIさんっ!

 

もうこの時点で楽しみでしかありませぬ。

 

しかも、時期も東京は9月とオリンピック前と同じ時期に行われるので、そう言った意味でも懐かしいです。

 

また、札幌の方は2月というなんとも絶妙な時期に行われるので、界隈では”もしや、雪ミクと……?”みたいな話も出てたり……

 

どうなるか、引き続き楽しみに追っていきます。

 

にしても、もうかれこれ10年もこのイベントに行ってたんだなぁと感慨深くなってしまいました。

 

早く次の情報が欲しいですね。

 

さて、今回はここらで失礼します。

 

また次回っ!

説明
オリジナルキャラクターが蜀√に関わる話です。

大筋の話は本編とほぼ同じですが、そういったのがお嫌いな方はブラウザのバックボタンをお願いします。
































ちゃんとオリジナルの話もありますよ?(´・ω・)
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