未来より来たりて
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暖かい日差しに照らされながら、草原で眠っている少女がいた。一つにくくられた栗色の髪に魔導アーマー―――アルル・ナジャその人である。

小鳥がさえずり、近くに流れている川のせせらぎが響く午後の穏やかな時間がしばらく続く――…と思われたが、唐突に蜂蜜色の両目がパチリと見開かれた。

 

「まずい!寝過ごしちゃった」

 

そう言いながら彼女は飛び起きる。早く晩御飯作らないとカーくんがまた……と内心で考えてたが、その思考は停止した。

眼前に広がる光景に全く見覚えが無かったのだ。ハッとして辺りをキョロキョロと見渡すものの、どこまでも続く草原に見覚えは無いような気がした。

 

「え、何で?知らない所に来ちゃったかな。どーしよカーくん……カーくん?」

 

いつも一緒にいる相棒に声を掛けるが返事がない。確かに肩にいつもの感触がないと感じてはいたが、てっきり地面にいるものかと―――…下を見たら、やはり相棒がいなかった。

知らない土地で、相棒も行方不明。アルルは顔面蒼白となる。

 

「カーくん!カーくぅうううん!?」

 

両手を口に添えて大声で呼んでみるが、返事どころか気配すらしない。

嫌な想像がいくつも思い浮かぶが、とりあえずそれらを払拭し、見つかると信じてアルルは相棒を探しながら歩き回ることにした。

 

しばらく歩くと、小さな街が見えてくる。レンガ造りの家の多い、どこか懐かしい雰囲気のもつ街であった。

その街には噴水のある広場があり、午後には住民達の憩いの場となっているようで、住人や旅人向けに行商していた魔物商人も多くいた。

アルルは片っ端から集まっている人々にカーバンクルについて尋ねたが、誰も知るものは無かった。

この街のことも全く知らないのだが、彼女の頭は相棒のことでいっぱいで他のことは後回し状態である。

 

「……ん?」

 

ふと、後ろに魔力の流れる気配がした。空間が魔力によって裂かれ、そこから誰かが出てくる。

どこかで見た光景だなぁと何となく考えていると、相手が自分を凝視しているのに気付いた。

青いローブ姿の、長身の男性。額には青いバンダナ、その銀髪にはウェーブがかかり、青い目は沈んでいて、無表情がどこか神秘性を匂わせている。―――が、「彼女」を見た瞬間、神秘性に亀裂が入った。眉間に皺をよせ、無表情は歪められている。青い目は見開かれ、更に沈んでいるように見えた。

まるで物凄く嫌な奴に出会ったかのようだ。露骨すぎるその表情はいっそ清々しかった。―――彼女とは対照的に。

 

「あっ!良かった〜やっと知り合いに会えた……」

 

相手とは対照的に、アルルはパアッと表情を明るくさせ、ニコニコと笑う。

見知らぬ土地で心細かったものの、普段はそこまで仲良しとはいえないが知り合いに出会った安堵感から来ていた。

 

「この際キミでもいいや…ねえ、カーくん知らない?」

 

相手に歩み寄ろうと一歩踏み出すと、男は一歩下がった。

――…まるで、笑顔で歩み寄る彼女を完全に得体の知れないものとして見ているように。

 

「ちょっと!何だよさっきから……」

「………」

 

ずんずんと歩み寄れば、相手はずさずさと後ろずさる。

流石にアルルも嫌になったのか、次の瞬間には叫んでいた。

 

「あのさぁ!何だよその態度!ボク何もしてな……どうしたの、その怪我。」

 

改めて知り合いをよく見れば、手首などに包帯が見えた。顔にも、魔力の施されたであろう傷テープが見える。

 

「な……」

 

ずっと黙っていた男がようやく口を開く。そして次の瞬間にはアルルを睨んでいた。

 

「き、貴様ッ……誰のせいでこうなったと……!」

 

怒りを堪えて声を押し殺しているものの、小刻みに震える身体や低い低い声からは憤怒が滲み出ていた。

「いつになく怖いなぁ」と内心でアルルは思いつつ、あくまで笑顔を作る。

 

「……わかった、ルルーだね!どうせまたサタンの悪口言ったんでしょ」

「……は?」

 

怒りを堪えていた表情から一変、男はひどく怪訝そうにアルルを見てきた。まるでアルルの話す言葉を宇宙語にでも聞こえているような。

一方、お構い無しにアルルが続ける。

 

「キミってば、ただでさえ失言が多いのに、まさかルルーの前でサタンの悪口言うなんて……」

「………」

 

いい加減呆れが頂点に達したのか、怪訝そうな顔は無表情に変わり、くるり…と男は振り返って、アルルの話を無視してスタスタと歩き出す。

 

「あっ!」

 

アルルが声をあげても無視である。ぶつぶつ言いながらもトタトタと走って追いかけてくる彼女に嫌気がさしながらも、近くにいた商人―――…まるくて黄色く、一本の角が特徴的な一頭身の魔物、すなわち「ももも」に話しかけた。

店頭には、らっきょや福神漬けなどが所狭しと並んでいる。

 

「いらっしゃいませ!何をお探しですか?」

「……よく効く傷薬をくれ」

「分かりました、少々お待ち下さい」

 

そう言いながら、もももはゴソゴソと、後ろに置いていた大きなリュックサックの中身を漁っていた。店頭に置いているものには含まれていないらしい。

 

「……ももも、いつもの口調と違うね」

 

苛立ちながらもやり取りを見ていたアルルが怪訝そうにする。陳列された商品に目を向ければ、何故か包帯やきのこが置いてあった。

 

「……品揃え悪いし。傷薬まで持ってるのに、酒類全然無いじゃん。もしかしてリュックの中?」

「……酒が欲しいなら酒場に行けば良かろう」

「えー魔導力回復する為に酒場まで行ってたらキリ無いよ!まさかももも酒も仕舞ってるの?」

「……貴様は何を言っている」

 

妙にお互いの話すことがちぐはぐなことを自覚しはじめた頃、もももが濃い緑色のペースト状の薬が入ったビンを差し出してきた。

アルルの言っていることに引っ掛かりながらも一端無視して、男は指定された金を支払う。

 

「ありがとうございました!」

 

二人が歩き出すと、後ろからそんなもももの声が聞こえてきた。アルルがぼそりと呟く。

 

「………変なももも」

「変なのは貴様だ」

 

とうとう意味不明な発言に痺れを切らしたのか、男は間髪入れずに答える。アルルはムッとした。

 

「変なのはキミじゃないか!な〜んか怖……いやスカしてるし!今日は闇の魔導師らしくクール気取りなの?」

「闇の…貴様どこでそれを…」

「はぁ?自分でいつも言ってるじゃん!」

「……付き合いきれん」

 

溜息を一つつくと、銀髪の男は立ち止まる。うつむいて目を閉じてボソボソ何かを言っている彼を、アルルは暫くボンヤリと見ていたが、ある響きに気付いて急いで男の腕をつかんだ。

 

「待った!」

「!…何をする!?」

「今キミにテレポートされちゃボクまた一人じゃないか!ヘンタイで魔力バカなシェゾでも今はいないよりマシなんだよ!」

「頼ろうとしておきながらその扱いか……む?貴様、今私の名を…」

「呼んだら悪いの?シェゾ」

 

闇の魔導師の男――…シェゾはテレポート詠唱の邪魔をされ不快感を示していたが、再び怪訝そうな表情を浮かべる。アルルも負けじと強気に対抗した。

シェゾが光の宿らない目を細める。

 

「小娘、何故我が名を知っている…?」

「そりゃあ毎度毎度、闇の魔導師シェゾ・ウィグィィ様って自己紹介されちゃ覚えちゃうよ!それに小娘だの貴様だの…いつもみたいにアルルって呼んでよ!フルネームでもいいから!」

「貴様の名なぞ知らんわ!……敵として牢で戦い合った者同士が気軽に名前を呼び合えと?」

 

アルルの強い調子に思わずシェゾも強い調子で返す。アルルは腕を組んで呆れていた。

 

「牢って…シェゾいつの話をしてるんだよ……」

「二日前だ」

「………えっ?」

 

アルルの目が点となる。状況をよくわかっていなさそうな彼女に、溜息混じりで彼は続けた。

 

「私がお前を牢に閉じ込め、脱出したお前が私を返り討ちにしてから二日が経っている。まさかもう忘れたのか?」

「えっ……じゃ、その怪我……」

「他でもない貴様の仕業だ。魔物共曰く、普通は立って歩いてられぬ程らしい」

 

苦虫を噛み潰したかのような表情でシェゾは答える。

そして一通り話終えた後、また何かを呟きだし――…

 

「待ってってば!」

 

またもアルルは腕をひっつかんだ。シェゾの無表情が歪み、細められた目がアルルを捉える。

 

「いい加減にしろ。貴様と馴れ合うつもりは無い…これ以上邪魔をするならば…」

 

更に目を細め、冷たく鋭い眼光はアルルを睨み付けた。そうすると、もう片一方の手に黒い魔力がジワジワと収束されていく。もう少し時間が経てば、アルルへと容赦なくぶつけるつもりなのだろう。

 

「何だよ、やろうって?」

 

アルルもシェゾをにらみながら、魔力を感じた瞬間に後ろに引き下がり、両手をシェゾに向けていつでも魔法を放てる姿勢を整える。

シェゾが繰り出そうとしている技に懐かしさを覚えながらも、対策をばっちり考えていた。

 

「アレイアード・ロン!!あたり」

「リバイア!」

 

「やっぱり!」と内心でアルルは呟く。あの必中アレイアードはまず避けることが出来ない大技である。ただ、避けられないなら避けられないなりに対策をすれば良いのだ。

シェゾの放った大技はアルルの放つ魔法障壁に全て防がれ、逆に自分に跳ね返って爆発した。

 

「うぅぅっ!」

 

沈んだ目が更に沈んでいく。痛みに無表情が歪み、肩膝をついてしまった。

 

「ええ…リバイアの反射ダメージでそこまで…?」

 

不思議に思ったアルルが駆け寄って見ると、ローブが赤く滲んでいる。冷や汗を垂らし、シェゾは腹を押さえていた。ぽたぽたと赤い液体が垂れているのが見えた。

 

「あ、傷口開いちゃったのか……ゴメン……って先に喧嘩売ってきたのキミ!」

「忌々しい小娘だ……私にここまでの深手を……」

「あーもう仕方無いなぁ…」

 

頭の後ろをポリポリと掻くと、その場にしゃがみこみ、患部に向かって手をかざす。

一瞬、とどめをさすつもりなのかとシェゾは身を固くしたが、アルルはそれとは逆に

 

「ヒーリン……」

「!?」

 

回復魔法である「ヒーリング」――と、いい終える前に、シェゾは思いきりアルルの手をはたいて弾いた。

アルルがヒリヒリ痛む手をひっこめ、怒鳴る。

 

「何するの!?」

「敵に情けを掛けるな愚か者め…!今度下手な真似をしたら…ぐううぅッ」

 

先ほどより腹が赤く染まっていた。下手に動いたことにより先ほどよりも傷口が開いたのは明白である。

 

「下手な真似してるのはどっちだよ…今も昔もバカなんだから。…あのさ、勿論ただで回復させてあげないよ?条件つきさ」

「……ことわ……」

「ヒーリング!」

 

ただで回復でもよかったけど、それじゃきっと許してくれない――…と思ったアルルなりの気遣いだが、果たして伝わったのだろうか。

シェゾの言葉を無視して強制的に回復させたので、シェゾといえばこの世のどん底にいるような雰囲気で、恨めしげにアルルを見つめてはいるが。

開いた傷口が塞がったものの別の傷口を開いてしまったようだ。

 

「あくまで応急措置だからね、帰宅したらしっかり消毒してその薬塗りなよ」

「ヒーリングなぞ私でも……」

「さっきの魔法のキレ悪かったけどなぁ?」

 

アレイアード・ロンを放ったシェゾの表情が無表情ながらも苦しそうな色を見せていたのを、アルルは見逃していなかった。シェゾが苦々しく視線を逸らしていることから、どうやら図星らしい。

魔物達に「立って歩いているのがすごい」と言われているくらいだから、集中力も精神力もいる魔法攻撃など論外だろう。それでもキレが悪いとはいえ魔法を放てるのがシェゾの実力だが、そのすごさもアルルにとっては「やっぱりバカだ」で片付けられてしまうのであった。

 

「じゃあ、条件言うね。」

「………」

 

アルルが立ち上がり、膝をついたままのシェゾがそれを見上げる。

その刹那、アルルがバシッと両手をシェゾの肩に起き、グッと顔を近づけ、シェゾがクエスチョンマークを頭上に浮かべながらも戸惑っていることもお構い無しに、

 

「カーくん探すの手伝ってぇえええ!!」

 

アルルは大声で必死に叫んでいた。広場の住民達や魔物商人が何事かと見ているのもお構い無しで。

―――…今度はシェゾの目が点になる番だった。

 

「……ほう。つまり貴様……」

「アルルだってば」

「……小娘にとっては牢での事も昔の事であり、私の姿すら過去のものに過ぎないという訳か」

 

意地でも名前は呼ばないらしい。その意味の分からない強情さにアルルは呆れた。

 

「……うん、私言うシェゾなんてすっごく久々に見た」

「……お前の言う『シェゾ』は素性や名前を明かしていて何度も邂逅する内にお互い慣れてしまい、私とそやつを同一視して妙に馴れ馴れしい態度で寄ってきたと」

「馴れ馴れしいって何だよ!」

「言葉の通りだ。二日前倒した男に嬉々と近づいてくるお前は、正気の沙汰ではないと思ったぞ」

 

――…ああ、だから今日初めてシェゾに出会った時、あんなに露骨に嫌な顔をしていたのか、とアルルは回想する。

確かに二日前にこっぴどくやられた相手にはち合わせしたら、そりゃあ嫌だろう。しかも相手は笑顔だし、とアルルは少しだけ同情した。

シェゾが怪訝そうに首を傾げる。

 

「……で、お前は未来からタイムスリップでもして来たと言いたいのか?」

「ん〜……多分」

「下らん」

 

間髪入れずに一蹴される。こういうところは昔から変わらないが、今アルルの前にいるシェゾは目の色が沈んでおり、暗い無表情が多く、いつもより怖く感じていた。

 

「な……酷いなぁ!言っとくけど、未来のキミはそりゃもう親身になってくれるんだから!だってその、友達……だし」

「嘘だな」

「……何で分かったの?」

「やはりか…私が友なぞ作る筈が無かろう」

 

その言葉に、アルルは少しばかり重い空気を感じる。

シェゾはというとその言葉に深い意味はなく、ただ友人とつるむよりは魔導に没頭している方が良いとの事だけだったが――…ふいにアルルが口を開いた。

 

「未来のキミは、ボクにお前が欲しいと叫びまくって、変態魔導師の地位を不動のものにしているよ…」

「『力』が抜けている。その発言をお前に言えば確かに変態か」

「本人曰く、清く正しい闇の魔導師なんだって」

「闇が清く正しくてどうする」

 

腕を組み、眉間に皺を寄せ、溜め息混じりに繰り出される的確な言葉。

いちいち的を射た発言に、アルルは「こっちの方がまともじゃない?」と考えていた。

 

「…それが未来の私とは思わんが、とりあえずお前はこの時代の者ではないと言いたいのだな」

「うん」

「そこで連れもいなくなったから、知人と同姓同名の私に手伝えと」

「うん…」

「良かろう。先ほど私が敗北したのは事実だからな…ではお前は南を探せ、私は北へ向かう」

「二手にわかれるんだね!ありがとう、任せたよ!」

 

二人がほぼ同時に立ち上がると、アルルは笑って去っていった。相変わらずこの青いシェゾは沈んだ無表情で何を考えているか分からないが、なんだかんだで手伝ってくれるのだと安堵する。

相棒を探しながら走って行く彼女が小さくなると、それを黙って見据えていたシェゾはポツリと呟いた。

 

「確かに、二日前の小娘とは違うか…」

 

その声は、風に紛れてすぅ…と消えた。

 

・・・・・・・・・

 

「やーっと見つけたわよ!アルル!!」

「この声は…!」

 

きつい口調の大声が聞こえてきたと思いきや、彼女はずいっとアルルの前に現れた。

水色のロングヘアに白いロングワンピースが麗しいナイスバディな女王様のご登場だ。どうやら女王様はご立腹らしく、黄緑色の目がキッとつりあがっている。

 

「一人で何処ほっつき歩いてるのよ!この街、あんたが言ってた魔導学校と方向全然違うじゃない!まさか嘘教えたんじゃないでしょうね!?」

「あ…ルルー…」

「あ、じゃない!さっさと魔導学校へ……あら?ちょっと、カーバンクルはどうしたのよ」

「それがカーくん行方不明で…今探してるんだけど…」

「何ですって!?」

 

先程まで怒り狂っていた美女――…ルルーの顔が白くなる。カーバンクルを心配してくれることは嬉しいが、ここまで露骨に顔色を変えるかと不思議に思っていたら――…

 

「あんた何やってんの!サタン様を失望させるつもり!?」

「いや別に…」

「急いで見つけるわよ!カーバンクルを逃がしたなんて知られたら……妃どころじゃなくなるわ!」

 

相変わらずコチラの話を聞いてくれない。こういう所は今も昔も変わらないと思いつつ、二人はカーバンクルを探して並んで歩き始めた。

 

「…北の方は探したの?」

「いや北はシェゾが探してくれるって言ってたから…」

「誰?」

「えーシェゾだよ……ってそうか」

 

此処は恐らく過去の世界。先程もルルーが一緒に魔導スクールに行くと言っていたので、まだこの頃の自分はスクールに通っていないと推測する。ならばルルーがシェゾを知らなくても仕方がない。何だかんだで同レベルな口喧嘩が絶えない二人を懐かしく思い浮かべた。

 

「ヘンタ……闇の魔導師のお兄さんだよ」

「闇の魔導師ィ?怪しいわね、そいつがカーバンクルを持っていったんじゃないの?」

「シェゾはそんな事…」

 

しない、と言いかけたが、果たしてそうだろうか。今のアルルが知るシェゾは確かにそんな真似はしないと信じているが、昔のシェゾなら?魔力のある生物を見つけたら?地下牢に閉じ込めるかもしれない、あの時のように――…嫌な予感が過る。

アルルはゾクリとした。

 

「た、確かに彼は魔導力目当てにボクをさらったりしたけど……」

「まあ!やっぱりそいつが犯人よ。何たってあのサタン様の寵愛を受けている生物よ?特別な力があってもおかしくないわ」

「そう言われると……」

 

ビーム出したりも出来るし、実はすごい生物かもしれない。些かルルーが強引に話を進めている気がしたが…

 

「第一そいつに協力してもらったって言ってたけど、そいつカーバンクル知ってたの?私はサタン様経由で知ってたけど」

「もちろん知って……あっ、あああああッ!」

 

大事なことを忘れていた。

 

「知らない筈…ここのシェゾはカーくん知らないよ…!」

 

地下牢脱出後に向かったライラの遺跡でカーバンクルに出会ったのだ。その後二日間アルルと出会っていないのなら、カーバンクルを彼が見たことは無い筈だ。

アルルは両頬に手を添えて、顔を青くしていた。

 

「……知らないものをどうやって……もういいわ、待ち合わせ場所は?」

「そういえば時間も場所も決めてな……」

「逃げたんじゃない!やっぱりそいつが犯人だわ!」

 

ルルーは叫んで、続けざまに、

 

「そいつのアジトに案内なさい!」

「う、うん……」

 

ルルーからメラメラと闘志が燃え上がっているのが見える。凄まじいし、何より怖かった。相変わらずサタンに夢中なのに一安心しつつ、ルルーの愛の怖さを改めて感じる。さりげなく距離をとりながら、アルルは懸命に地下牢の位置を思いだそうとしていた。

何しろ自分にとっては昔の事だ。かといって辿り着けなかったら、ルルーに冗談抜きでばたんきゅーされるリスクもあった。下手したら殺されるかも……心なしか、アルルの身体は僅かに震えていた。

 

・・・・・・・・

 

薄暗い地下牢の一室で、シェゾは簡易ベッドの上にうつ伏せになって寝転がっていた。

帰ってくるなり不機嫌さを醸し出していた主に魔物達は誰もツッコもうとはしなかったが、

 

「シェゾ様、珍しく帰りが遅かったですが、寄り道に夢中だったのでしょうか?」

 

一匹の可愛らしい犬風の男――…すなわち、おおかみおとこが首を傾げて尋ねる。

他のリュンクスやウィルオーウィスプといった魔物達が「おいばかっ」とツッコむ前に、シェゾの光の点らぬ鋭い視線を向けられ、彼は黙って後ろずさった。魔物達も合わせて後ろずさる。

 

「……寝る。暫く誰も入るな」

 

無表情でぽつりと言うと、彼はそのまま自室として使っている部屋に入っていく。

自室代わりといっても、お世辞にも綺麗な部屋とは言えなかった。狭い部屋に窓はなく、簡素なテーブルには蝋燭が一本、そして簡易ベッド。最低限寝ることしか考えられていない部屋である。

 

「……………」

 

明かりの無い部屋でも夜目が効くのか、ベッドの位置まで迷うことなく進み、倒れ込む。ぶわっという音がした。

―――…まさかあの小娘に出会うとは。完全回復したらまた力を狙ってやろうとは考えていたが、あんなに早く再会するとは予想外だった。

滅多に怪我などしない自分の為の傷薬等を常備している筈もなく、地下牢にいた魔物商人も傷薬は売っていなかった。配下の魔物達が街でショッピング…という訳にもいかず、仕方無しにテレポートで街に向かってみれば。

 

ヒーリングをかけられたのが屈辱だったが、適当な事を言って撒けたから良しとしよう。未来から来たか何か知らないが、関係無い。魔導以外に興味がわく筈も無かった。

――…そんな事をボンヤリと考えているうちに、いつしか睡魔に囚われていた。

 

「シェゾ様ぁ!」

 

青い肌の一つ目鬼――…サイクロプスが明かりを片手に、何か叫んでいる。

それが自分の名前だと何となく分かった時、シェゾは目を開いた。低い声が響く。

 

「貴様…中に入るなと…」

「す、スミマセン!でも魔導師がっ!」

「魔導師?」

 

それを聞いて口元に笑みを広げる。――…純粋なものではなく、邪悪な笑みだ。

 

「捕らえたのか。丁度魔力が欲しいと思っていたのだ…でかしたぞ」

「い、いや魔導師が…乗り込んできました、此処に」

「……は?」

 

ポカンとする主に、サイクロプスが片手をワタワタ動かしつつ続ける。

 

「女二人に配下の牛男一匹…何やら主を出せとか叫びながら、仲間達をバタンキューさせていってます。しかも女の一人はあの茶髪の魔導師で!」

 

「茶髪の魔導師」のところで、サイクロプスが声を荒げる。二日前、獲物として捕まえた女が数々の部下仲間たち、そして主をばたんきゅーさせていったのだ。彼や他の魔物たちにとって、アルルは恐怖の対象以外の何物でもなかった。幸いなことに、自分ともう1人の見張り役は色仕掛け後に気絶しただけで済んでいたが。

 

一方、シェゾの方は段々と激しくなっていく頭痛に、思わず頭を抑える。

――…おのれ、私がそんなに憎いか。眠らせて拉致監禁して返り討ちにされた私がそんなに憎いのか。寧ろこちらが受けている被害の方が甚大ではないか。

アルルもしくは第三者から見れば確実にシェゾの自業自得だが、シェゾ自身がそんな事実に目を向けなかった。

 

「……分かった、すぐに向かう」

 

その刹那、シェゾの姿は消えていた。テレポートを使うことは珍しくなく、主が消えても驚かない。

ただ、別の事を心配していた。

 

「大丈夫かなあ?結局買ってきたキズグスリ、使ってないし…」

 

テーブルに置かれた未開封のビンを見る。疲れはてて結局そのまま眠ってしまったのだろう。

 

「ヒロウコンパイってヤツだよなぁ……でもシェゾ様が勝てない相手にオレらが敵う筈ねえし…」

 

無力な自分達とつくづく不運で不憫な主に対して盛大な溜め息をつくと、サイクロプスは部屋から出た。

 

・・・・・・・・

 

死屍累々……正確には、ばたんきゅー累々の配下の魔物たちを見据え、シェゾは眉間に皺を寄せる。

そうして乱暴者の招かれざる客たちに対し、冷たい声で問うた。

 

「貴様ら、何をしている?」

「……あんたが親玉ね!カーバンクルを返しなさい!」

「何の話だ」

「出さないというなら……ミノタウロス!」

 

ルルーの隣にいたガタイの良い牛男、ミノタウロスが前に躍り出る。小娘二人から魔力の気配が感じられないのを見るに、この牛男が数々の魔物共をばたんきゅーさせていたことは容易に想像できた。手に握られた斧も赤く汚れている。

相変わらず全く人の話を聞かないルルーより前に出たアルルが声を張り上げた。

 

「先に帰るだなんて酷いよシェゾ!約束したのに!」

「……フン」

 

悪びれる様子もないシェゾにルルーが食ってかかる。

 

「さぁ早くカーバンクルを出しなさいよ!!」

「知らん、カーバンクルなぞ姿も分からん」

「やっぱりカーくん知らないんだ…黄色くて額にルベルクラクを埋め込んだ耳の長い小さな生き物なんだけどさ…」

「知らんものは知ら……あ」

 

見覚えがあるのか、声を漏らしたシェゾの隙をルルーは見逃さず、次の瞬間には首根っこを掴んでいた。

 

「やっぱり知っているのね!?」

「!……離せ……」

 

一瞬の出来事にアルルの口はあんぐりしていた。いつも以上にルルーがアグレッシブな気がする。シェゾはシェゾで、怪我のせいで動きが鈍くなっているようだ。

ぐぐっと傷の癒えていないシェゾに顔を寄せ、睨み付けるその風格はまるで悪者のようだ。アルルは内心シェゾに同情していた。

 

「乱暴な真似はやめてもらえぬか!シェゾ様はまだ傷が…」

「お黙りトカゲ男!」

「トカ……!?」

 

一蹴されるトカゲ男――…リザードマンを不憫に思いながら、アルルが助け船を出す。

 

「ルルー、怪我人に乱暴はやめようよ」

「は?あんた敵に同情するの?コイツあんたを拐ったクズでしょ」

「……そうだけど」

 

幾ら自分勝手がすぎるルルーといえど、こんな――…少しだけ、自分の知っているルルーと違う気がしていた。

シェゾをクズだと言ってのける声色に、優しい感情は混じっていない。侮蔑や敵意ばかりが色濃く混じっている。

 

「チッ……分かった、私が見た所まで案内してやる」

 

先に折れたのはシェゾの方だった。

舌打ちというおまけつきで、表情という表情は面倒臭さと不快さを、全体的に表していたものの。

 

「分かればいいのよ」

 

キリキリキリ…と強めていた力を弱め、ルルーはバッと離す。シェゾは後ろずさって距離をとった後、肩で息をしていた。また傷口を開くことは無かったものの、相当傷口に響いたようだ。

アルルが駆け寄ろうと、前に出る。

 

「もう一回ヒーリング掛けようか?」

「いらん!」

 

「もう一回」の言葉に魔物達がざわついた。もしや我らの主の帰りが遅かったのは、この小娘の仕業なのか――…と。敵である主が小娘に回復されたりしたらそりゃ屈辱的だと思い、先程の不機嫌さに内心納得していた。

自身の失態を魔物達に知られたのが屈辱だったようで、シェゾは密かに歯噛みする。

 

「来い……さっさと済ませるぞ」

「それは私の台詞よ。逃げるんじゃないわよ?もし逃げようとしたら……」

「プモーッ!」

 

ルルーの声にミノタウロスが反応し、血のしたたる斧がギラリと光る。シェゾは「逃げはせん」と淡々と言うが、空気がピリピリと重い。アルルの居心地が悪くなってきた。

魔物達は先導する主の姿を見て、魔物達が次々に道を開けていく。人望あるんだなぁ――…とアルルは呟いていた。

 

「はぁ……シェゾ、何かごめんね」

「何故謝る」

「……だって無理矢理……」

「貴様なぞに同情される義理は無い」

 

ルルーは黙って、シェゾが逃げ出さないかを見張っていた。シェゾはシェゾで、アルルに視線を合わせることもなく前に進んでいく。

地下牢から出て、最初アルルがいた草原を通りすぎて――…そのまま西へ西へと進んでいた。シェゾの足取りに躊躇はなく、迷い無く道を覚えているようで心強かった。

空の色は、夕暮れにうっすらと紫色のグラデーションかがかっていた。じきに夜になるだろう。

そんな空をいつもなら幻想的で綺麗だとは思うのだろうが、今日アルルが見上げる空は何処か冷たく感じた。

知っているのに、知らない。なんだか冷たい。――…今ここにいるシェゾとルルーのようだ。

 

「……いつもより冷たいね」

「私はいつもこうだ」

「……ルルーも」

「私もいつもこうよ」

 

ピリピリとして、何処か殺伐としていて――…この雰囲気に覚えがあるような、無いような。

少なくとも「変態魔導師!」「脳みそ筋肉女!」と罵り合う二人ではなかった。ここにいる二人は口に出して罵詈雑言を吐き合うことも無かったが、お互いの嫌悪レベルはあの二人より遥かに上だろう。

もっと仲良くしようよ、という言葉をアルルは飲み込む。言っても仕方の無いことだと思ったからだ。

 

「着いたぞ」

 

シェゾが連れてきたのは小さな湖のある場所だった。日は既に沈み、夜が世界を支配している。アルルとシェゾはライトの呪文で、ルルーはミノタウロスに松明を持たせ明かりとしていた。パッと見たところ、黄色い姿は見当たらない。

 

「何よ、カーバンクルいないじゃない」

「今日、私が見た所は此処だ。無駄な時間を使い、貴様らに嘘を教え何の得になる」

 

無表情かつ淡々とした口調でシェゾが吐き捨てると、ルルーも黙った。ただし無言で睨む。シェゾは黙って睨み返した。――…空気が重い。

 

「ま、まあ折角案内してくれたし、探そうか!」

「案内はした。私は帰…」

「あんたも手伝うのよ!」

 

右肩を強引につかみ、ガッと押さえ込む。

傷口に響いたのかシェゾは無表情を歪めるが、ルルーは意にも介さなかった。

 

「……分かった」

 

抵抗する気力も無いらしく、そのまま一緒にカーバンクル探しをすることとなる。心配したアルルは、もう一度尋ねた。

 

「やっぱりヒーリング…」

「くどい!いい加減せねば闇のつるぎで…」

 

一緒に探すのはOKでも、回復を受けるのはNGらしい。

沈んだ目でアルルは睨み付けられる。無表情で無機質な感じがしながらも、時折示される感情にアルルは内心安堵していた。得体の知れない雰囲気は、シェゾであってシェゾでない気がしていたから。

 

「あんた、いつからそんなお人好しになったの?最初会った時と全然違うじゃない」

「え…ええと…」

 

シェゾをチラリと見ると、光の無い青と視線が合う。ただしシェゾは無関心な様子で、すぐに視線をそらされてしまった。

 

「そんな事よりカーくん!」

「それもそうね。じゃあ一端分かれて…」

「月の位置があそこに来たらまた集合しようか!ミノとルルーは向こうをお願い、シェゾはボクが逃げないよう見張りながら探すことにするよ」

 

月の位置を指差し、強引に話を進める事にする。基本的に皆自分勝手で、人の話を聞かない――…ならば、ここでは強引におしすすめるのがセオリーらしい。

 

「はあ?あんた勝手に…」

「いいからいいから!はい行こ行こ!!」

 

強引にシェゾの背中を片手でぐいぐい押し、無理矢理進んでいく。ルルーとミノタウロスからどんどん離れていく。

――…ある程度離れた所でアルルは一息ついた。

 

「……おい貴様、わざとだな?」

 

チラリとアルルを見つつ、そう問う声は低かった。思わずアルルは身震いするが、急いでひきつった笑顔を作る。

 

「な、何が?」

「とぼけるな。乱暴に扱われぬ様に私をあの女から遠ざけたのだろう」

「違っ………や、そうだよ。だって、敵とはいえ怪我人だし」

 

隠し続けてもバレると諦めたアルルは観念する。そうすると容赦無く舌打ちが飛んできた。

やっぱりこのシェゾ怖い…アルルはそう思うが、表情に出さぬ様に気を配っていた。

 

「何処までお人好しなのだ貴様は。どんな世界にいればそうなる?」

「……こんな世界じゃないかもね」

 

皆、確かに自分勝手で人の話を聞かず、ぷよ勝負で全てを解決しようとする世界だけど――…でも、この世界とは何か違う。このシェゾもあのルルーも、そして此処のアルルも、なるべくしてそんな性格になったのだと。

 

「あ!」

 

アルルが声をあげる。黄色くて小さな生き物が目の前にひょこと現れたからだ。

 

「カーくぅうううん!心配したんだからぁ!!」

「ぐーっ!」

 

片手のライトを消し、思わず大声で名前を呼ぶと、相棒は笑顔で飛び付いてきた。ぎゅっと抱きしめ、相棒の感触を確かめる。

間違いなく、自分といつも一緒にいる相棒だ。

 

「ありがとうシェゾ!」

「………」

 

最早言い返す気力も無いらしく、視線をそらしたまま黙り込んでいる。その表情は無機質な無表情で、何を考えているか分からない。「良かったな」などとは当然言ってくれない様だ。

 

「さっき大声聞こえたけど見つかったの……ってカーバンクル!良かったわ…」

「はい、無事で良かったです」

 

後ろから聞こえてきたのはルルーとミノタウロスの声だ。

アルルは元気良く振りかえると、にっこりと笑ってカーバンクルを示す。

 

「お陰様で!皆のお陰だよ……えッ!?」

 

眼前に広がる光景がボンヤリぼやけていく。徐々に徐々に滲んでいって――…もう皆の顔も見えないくらいだった。

その中で唯一、両手で抱えた相棒だけがクッキリと光り輝いている様に見えた。

異質な光景に、ここはもう崩れてしまう――…誰かがそう言ったわけでもないが、アルルにはそんな思考がぼんやり浮かんでいた。本能的に察知したのだろうか。

ぼやけた青い髪の女や牛男の様子の可笑しいアルルを心配する声がきこえ、アルルはハッとする。

今逃したらもう二度と言えない気がする。もう二度と此処の皆には会えない。

アルルは大きく息を吸い込んだ。

 

「シェゾ、ルルー、ミノ!」

 

――…無駄かもしれないけれど、それでも、

 

「もっと仲良くしようよ!そっちの方がきっと、楽しいから!!」

 

屈託の無い笑顔でそう力一杯叫んだ瞬間、アルルの意識は途切れた。

 

「まずい!寝過ごしちゃった」

 

アルルが次に目覚めたのは、草原であった。何処までも続く広い草原――…一つあの時と異なるのは、見覚えのある草原だということだった。小鳥のさえずりが懐かしい。

 

「ぐー!」

「カーくんもう起きてたんだ」

 

半身を起こし、草のついた髪を手でとく。ふわ…と欠伸を一つして、何か面白い夢を見た様な…と回想していた。

そんなアルルの前に、ぬっと現れる黒い影二つ。

 

「……こんな所で何やってんのよアルル」

「アルルが大ボケなのはいつもの事だが、平和ボケが過ぎるんじゃねえか?」

 

ぐーっと背中を後ろに倒せば、見慣れた青い髪のセクシーな衣装を身に纏い、呆れ顔をしている女と、銀髪で黒装束に身をつつみ、ニヤリと嫌みに笑っている男が、立っているのが見えた。

 

「……あ、ルルーおねえさまと闇の魔導師」

 

聞きなれぬ呼称に二人はギョッとする。

―――それを見て、アルルはニイっと笑った。

 

「…じゃなくて、格闘女王様とヘンタイ魔導師!」

 

立ち上がって二人にそう言う。

二人ともしばらくポカンとしていたが――…

 

「そうよ、あたしは天下の格闘女王。おねえさまなんて器じゃおさまらないわ!」

「だ、誰がヘンタイ魔導師だぁ!オレ様は清く正しい闇の魔導師!!ったく、ようやくちゃんと呼ぶようになったかと思えば……!」

「闇が清く正しくてどうするの?」

「うぐっ…」

 

どこかで誰かが言っていた言葉をそのままぶつけると、激昂していたシェゾは狼狽え黙ってしまった。ルルーは何故か誇らしげである。

 

「やっぱり…」

 

ボクにとっての二人がこうが良いなぁ。ボクにとっての世界も。――…そんな思いをより一層強くしながら、アルルにとっての楽しい会話はまだ続くのだ。

 

――…今日も良い天気。この世界は平和である。

(終)

説明
約10年前に某所に投稿していた小説です。ルルー→サタンという公式描写に忠実ですが非公式カップリング要素はありません。

当時のコメント:コンパイル版ぷよぷよのアルルと、MSX魔導のシェゾとルルーの邂逅物語です。 祝、PC98魔導初プレイ!PC98魔導をやらせて下さった親戚への贈り物です。(この話の舞台はMSX版ですが) 久々に版権もの小説を書いたので、結構ドキドキしました。 MSX版アルルが主人公話も書きたいけど、どうしよう…
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