真・恋姫†無双〜江東の花嫁達〜(番外壱拾)
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(番外壱拾)

 

 秋晴れが広がる中、天下無双の強さを誇る呂布こと恋は愛娘の愛と琥珀、翡翠の四人で山盛りの積まれた饅頭を頬張っていた。

 

 軽く五十人前はあるであろうその饅頭の山だがまだまだ育ち盛りの愛と翡翠に比べて幾分か年をとってもその食欲は全く落ちない恋と琥珀にかかればあっという間になくなるのも時間の問題だった。

 

「恋さん?」

 

 ふと琥珀は恋が手を止めて空を見上げていることに気づいた。

 目が見えるようになってから様々な風景を見る楽しみのある琥珀だが、恋が空を見上げている姿は初めて見た。

 

「どうかしました?」

「そら」

「空がどうかしました?」

「……青い」

 

 

 それは当たり前ことだが妙に琥珀はその言葉が心に響いていく。

 同じように空を見上げる琥珀。

 そこには青い空がどこまでも続いていた。

 

「綺麗ですね」

「(コクッ)」

 

 琥珀は瞼を閉じて心の中でその青空を感じていく。

 かつて見えなかった青空が今では普通に見える。

 それは新鮮なものであり眺めているだけでも心が楽しくなる。

 

「琥珀?」

 

 瞼を閉じて空を琥珀に恋は不思議そうに首をかしげる。

 

「お、美味そうだな」

 

 そこへやって来たのは一刀と月と陽、それに詠と恵の五人だった。

 

「御主人様♪」

「ご主人様」

「ちち」

「父様」

 

 四人は一斉に一刀の方を見る。

 誰もが嬉しそうに彼を見ており、そんな光景を一刀の後ろから見ていた詠は軽く息をついた。

 

「ほらそんな所に突っ立ってないでさっさと運びなさいよ」

「あ、わりぃわりぃ」

 

 そう謝って一刀は運んできた料理を敷物に敷いた上に並べていく。

 そこには彼女達が見たことのないものが並べられていた。

 

「ご主人さま?」

「これは何ですか?」

 

 並べられた料理は一刀と月が作った『ハンバーガー』だった。

 数もかなりありこれは恋達の普段の食べる量を考えてのことだった。

 

「なかなかパンが上手く出来なくて困っていたんだけど、華琳にどうしたらいいか相談したんだ。まぁこれはその試作品かな」

 

 そう説明する一刀をよそに四人はすでに手にとっていた。

 

「ちょっと、誰もあんたの説明聞いてないわよ」

「…………予想はしていたさ。とりあえず食べてみてくれ」

 

 一刀の言葉に四人は一斉にハンバーガーを食べていく。

 手のひらサイズのハンバーガーはあっという間になくなり、四人はしっかりと噛んで初めて食べる感触に集中した。

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 食べ終わった四人は黙ってしまい、それが一刀を不安にさせた。

 月と詠も言われたままに作ったために同じように不安が過ぎった。

 

「ご主人さま……」

 

 恋が一刀のほうを見る。

 その表情はいつになく真剣さが感じられた。

 

「ど、どうした恋?」

「…………」

 

 じっと一刀を見つめる恋。

 そして視線を外せない一刀は恋が怒っているのかと思った。

 

「もう一個……」

「へ?」

 

 一刀の予想とは違い、恋は手を伸ばしてもう一個欲しいと催促をする。

 それと同時に他の三人も手を伸ばしてきた。

 

「御主人様、私にももう一つください」

「父、愛にも」

「父様」

 

 四人の反応を見る限りではとりあえず成功したようだと思い一刀はホッと胸をなでおろした。

 

「美味しかったか?」

 

 ハンバーガーを手渡しながら感想を聞くが、誰もそれに答えることなく新しいハンバーガーを頬張っていく。

 

「そんな感想聞くまででもないでしょう?」

 

 詠は見れば一目瞭然だといわんばかりに一刀に呆れたように言う。

 月は陽と恵にもハンバーガーを手渡すと、二人とも一口食べて感想を言わずに美味しそうに頬張っていく。

 

「お義兄さま、私達も頂きませんか?」

「そうだな。それじゃあこれを」

「あ、ち、ちょっ!」

「ん?」

 

 少しこげているハンバーガーを手にした一刀に詠は慌てて止めようとした。

 不思議そうに彼女を見る一刀と月。

 

「そ、それは…………ダメ」

「なんでだよ?」

「ダメったらダメ!食べたらあんたのこと一生恨むわよ」

「なるほど詠が作ったのか」

 

 妙に納得する一刀に顔を紅くしていく詠はそのハンバーガーを奪おうと手を伸ばしたがそれより先に一刀がかぶりついた。

 

「あああああああああああああっ!」

「ふるふぁいぞ、ふぇい(うるさいぞ、詠)」

「あ、あ、あんたっていう男は……」

 

 拳を握り締める詠を前に一刀は彼女のハンバーガーを綺麗に平らげた。

 そして何事もなかったように詠の頭に手を伸ばして優しく撫でる。

 

「美味かったよ、詠」

 

 嬉しそうにそう言う一刀に詠は怒りをぶつけられなかった。

 ふと横を見ると月が自分のことのように嬉しそうに微笑んでいるのが見えた。

 

「よかったね、詠ちゃん」

「月……」

 

 本当は失敗して捨てるつもりだったのを月がこっそり入れていたのだと気づき、彼女には逆らわない詠はため息をつくしかなかった。

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「詠が作ってくれたのに食べないと損だろう?」

「お、お腹壊しても知らないからね」

「その時はきちんと詠に看病してもらうよ」

「は?なんでボクがあんたを看病しないといけないのよ!」

 

 さらに顔を紅くする詠だが、自分のものを食べてくれた一刀がもし腹痛を起こしたらなら責任をとらなければならないと思った。

 

(でも看病って言っても……)

 

 以前にも同じことがあってその時も口では罵声に近いものを浴びせながら看病して、気がつけば寝台に引き込まれていた事を思い出して思わず頭を抑える詠。

 

「あ、あんたのために作ったけど失敗して捨てようと思っていたのに、あんたが勝手に食べたのだから知らないわよ」

「詠ちゃん、やっぱりお義兄さまのために作ったんだね」

「え、あ、いや……」

 

 激しく動揺する詠に月は優しく微笑むだけ。

 それを聞いた一刀は詠を自分の胸に引っ張り込んで抱きしめた。

 

「ち、ち、ちょっとあんた!」

「ありがとうな、詠」

 

 心からの感謝。

 そう思ってしまうほど詠は一刀が好きでいる。

 そしてそれを素直に喜びたいと思いつつもそうできない自分が情けなかった。

 

「また今度、詠が作ってくれたハンバーガーを食べさせてくれるか?」

「な、何日も寝込んでもいいなら作ってあげなくもないわよ」

「じゃあ寝込んだら看病してくれるってことで♪」

「あんたね……」

 

 何度呆れてため息をついたことかと詠は思いながらもそんな彼に抱かれて心地よさを感じていた。

「いいわよ。その代わり残したら許さないわよ」

「もちろん♪」

 

 詠は顔を上げて一刀を見上げると、ゆっくりと顔を近づけていく。

 ほんの数ミリほどまで近づいた時、自分が今どこにいるかを思い出した。

 恐る恐る、横を見るとそこには嬉しそうに見守っている月と口の周りを汚しながらもハンバーガーを加えて見ている恋達の視線が自分達に降り注いでいた。

 

「こ、この…………………………」

「詠?」

「このバカあるじぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃい!」

 一切の手加減ない右の拳が一刀の顎を捕らえてそのまま打ち上げた。

 

「ぐはっ」

 

 全くの防御ができずにまともに受けた詠の一撃に一刀は成す術もなく後ろに倒れた。

 

「も、もう作らないから!」

 

 顔を真っ赤にする詠はそう言って残っていたハンバーガーに手を伸ばして食べていく。

 

「お、お義兄さま、大丈夫ですか?」

「い、今のは効いたぜ…………ガクッ」

 

 一刀はそう言って意識を手放した。

 

「お、お義兄さま!」

 

 慌てる月だが一刀が息をしていることに安心して自分の膝の上に彼の頭を乗せていく。

 詠は少しムッとしたがハンバーガーを食べてごまかし、自分の失敗したハンバーガーを美味しいと言ってくれたことを内心では喜んでいた。

 その様子を見ていた恋達は小さな騒ぎが収まると、まるで気にしていないかのようにまだ残っているハンバーガーをそれはそれは美味しそうに食べていった。

 

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 そしてその日の夜、急な腹痛を訴えた一刀を詠はまさに全身全霊をかけて看病をし、翌朝には一刀に抱かれている彼女の幸せそうな寝顔を月に目撃されたことはいうまでもない。

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(座談)

 

水無月:え〜いきなりですが、交通事故に遭い、只今療養中でございます。

 

雪蓮 :大変そうね。

 

水無月:追突事故ですからね。人生初の救急車ですよ。

 

雪蓮 :更新は大丈夫なの?

 

水無月:そのせいで今しばらく最終話は更新できませんので、とりあえず短めを更新に!

 

雪蓮 :はいはい、それが終わったらさっさと横になるのよ。

 

水無月:そうするです。というわけで最終話はもうしばらくお待ちください。たぶん次も短編かと思いますのでよろしくお願いします。

説明
秋といえば食欲の秋!
はい、食べ過ぎてしまい体重計が怖いです。
なんで秋ってこんなにも食べ物が美味しいのでしょうね。
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コメント
kayui様>こっちもびっくりしました(笑)(minazuki)
四方多撲様>詠も十分に魅力的ですからね。(minazuki)
shun様>ありがとうございます。(minazuki)
りばーす様>ありがとうございます。完結させるまでは・・・・!(minazuki)
キラ・リョウ様>クリスマスもいいですね〜♪(minazuki)
フィル様>でも四人ならあっというまに完食しそうです。(笑)(minazuki)
まーくん様>ですね〜。さすが一刀ですね。(minazuki)
kanade様>ありがとうございます。(minazuki)
jackry様>ぉぉ。すぐに訂正いたします。あとなんとか生きてきます(笑)(minazuki)
ゆず様>ありがとうございます。(minazuki)
だめぱんだ♪様>ありがとうございます。無理しない程度にがんばっていきます。(minazuki)
ポーザン様>温泉やスキー・・・いいかも♪(minazuki)
ゲスト様>入院まではいきませんでした。まぁそれでもだいぶ良くなりました。(^^)(minazuki)
紅蓮様>ありがとうございます。体調をみながらまた更新をしますのでよろしくお願いいたします。(minazuki)
samuraizero様>なんとか回復に向かっています。ありがとうございます。(minazuki)
NEKO様>そうですね。これが最後にしたいです。(minazuki)
トーヤ様>自分もまさかの落とし穴に驚いています!(minazuki)
nanashiの人様>最終話は万全で行きますのでご安心を!大人しくしていても妄想が!(ぇ)(minazuki)
龍威旋様>ある意味、一刀らしいかなって思いました。(笑)(minazuki)
蟹辰様>ありがとうございます。のんびりと回復させながら更新の方もがんばります。(minazuki)
お大事に・・・びっくりしましたww(kayui)
やはり詠は可愛い… さておき、今は怪我の完治が最優先ですよ。お大事に^^;(四方多撲)
お体を御大事に・・・。(shun)
救急車とは大変でしたね。お体は大事になさってください。(りばーす)
短編、クリスマスとかよさそうですね。  無理せずお大事に!!(キラ・リョウ)
山のようなハンバーガーが目に浮かびますw では無理をならぬよう、お大事に!(フィル)
はらぺこキャラ4人も居て食料財政難にならないくらい豊かになったんだね・・・一刀くんの手腕に脱帽・・・(まーくん)
ただ一言・・・・・・お大事に(kanade)
どうぞお大事になさってくださいな。(ゆず)
交通事故って…お大事にしてくださいねー。ごゆっくり養生してください。(だめぱんだ♪)
短編か。。。冬・・・。(温泉orスキーww?)(ポーザン)
入院だったりすると暇だから筆?が進んだりするがねw お大事に(ゲスト)
交通事故って大丈夫ですか?!早く治るように頑張ってください!(samuraizero)
あらら・・・救急車なんて何回も乗るもんじゃないですよ。仕事柄+私事でも回数が・・・。 ともかくお大事にしてください。(乾坤一擲)
最後に落とし穴が……お大事に!!(トーヤ)
ちょ^^; 話し読んでほっこりとしてるところになんという・・・ 早くベッドに帰るんだ 体調万全での最終話を楽しみにしてるから、今はおとなしくしとけ^p^(nanashiの人)
い、意外な結末に・・・・・・カズトくん、ご愁傷様(龍威旋)
無理せずお大事に!!(蟹辰)
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恋姫無双 一刀    琥珀    翡翠 

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