恋姫英雄譚 鎮魂の修羅47
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幽州と冀州を隔てる関所

 

 

 

麗羽「天を語る逆賊、北郷一刀!!!この袁本初が成敗して差し上げますわ!!!」

 

一刀「気でも狂ったか、麗羽!!!」

 

白蓮「麗羽、お前自分が何をしているか分かっているのか!!!??」

 

この場で、袁紹軍と公孫軍が一触即発の雰囲気を醸し出していた

 

関所を見上げる形で麗羽が馬騰を浴びせかけ、関所の上から一刀達が非難する形となっている

 

斗詩「ううぅ、ごめんなさい一刀様ぁ、麗羽様を止められませんでしたぁ・・・・・」

 

猪々子「・・・・・・・・・・」

 

悠「・・・・・・・・・・」

 

冀州の将軍達は、皆憂鬱そうな表情だった

 

麗羽「気安く呼ばないでもらえます、あなた方の様な不届き者共に呼ばれると、この袁本初の神聖な真名が汚れますわ!!!」

 

一刀「そんなことより、これはどういうつもりだ!!!??」

 

白蓮「そうだ、一体何の謂れがあってこんなことをしているんだ!!!??」

 

麗羽「そ、そんなこと・・・・・まあいいですわ、確かに今は些細な事ですわ・・・・・知れたこと、あなた方が陛下を攫った不届き者であるから、天誅を下しに来たのですわ!!!」

 

白蓮「はあぁっ!!?一体どこからそんな似非話が出てきたんだ!!?」

 

麗羽「決まっていますわ、十常侍の張譲さんからですわ!!!」

 

白蓮「うわぁ〜〜〜〜〜・・・・・」

 

一刀「ったく、どこまで道化を演じるつもりだ・・・・・」

 

一体いつまで操り人形でいるつもりなのか、もはやわざとやっているのではないかと勘繰りたくなってくる

 

一刀「お前じゃ話にならない、真直はどこだ!!!?」

 

麗羽「牢に閉じ込めましたわ、この袁本初に逆らうなど、とんだ不忠者ですわ!!!」

 

一刀「な・・・・・」

 

話の流れで、真直が麗羽を止めようとしたのは伝わってくるが、どうしてこうも史実の通りになってしまうのか

 

嫌になってくる思いだが、それ以上に真直が気の毒でならない

 

一刀「いい加減目を覚ませ、張譲が朝廷を腐敗させた主犯格だということを分かっているのか!!!??」

 

白蓮「あいつの言っていることは、全て虚言だ!!!董卓が暴君だという事も、私達が帝を攫ったという事も!!!それどころか帝を攫ったのはあいつなんだぞ!!!」

 

麗羽「なんという見え透いた大嘘でしょう、あの長年陛下に仕えてきたお方の言が間違っているなど有り得ませんわ!!!」

 

氷環「(どこまで愚かなのでしょう!!)」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

炉青「(愚か者どころかそれ以下どす!!)」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

傾「(なるほど、張譲が目を付けるわけだ)」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

詠「(まったく、動けば悪害しか齎さない人間って本当にいるのね)」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

月「(可哀想な人・・・・・)」

 

瑞姫「(あそこまで操り易い人、宮廷でもいなかったわよ・・・・・)」

 

風鈴「(いったいどのような教育を施せば、あのような人間が出来上がるのでしょう・・・・・)」

 

楼杏「(袁家の英才教育とは、愚か者を生み出す教育なのでしょうか・・・・・)」

 

関の陰に隠れ弁舌を聞いている者達がいた

 

一部は麗羽の傍若無人ぶりに憤り、一部は呆れ返っている

 

星「(馬鹿は死なねば治らないというが、これほど分かり易いものもあるまい)」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

菖蒲「(なんて愚鈍な、十常侍の言がおかしいと、何故気付かないのですか!)」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

この二人は、元々公孫軍であるため堂々と関の上に立っていたが、頭が痛くなる気持ちであった

 

麗羽「今すぐ陛下を引き渡せば、多少は罪も軽くなりましてよ!!」

 

白蓮「だーかーーらーーー、そもそも帝はここには居ないんだよ!!!」

 

一刀「どうして十常侍の言葉をそこまで鵜呑みに出来るんだ!!!?」

 

麗羽「お黙りなさい!!!・・・・・ですが、私も悪鬼羅刹というわけではありませんわ、北郷一刀と公孫?、この二人を差し出せば、他は助けて差し上げてもよろしくてよ」

 

星「なっ!!!?ふざけるな、貴様!!!」

 

菖蒲「どこまで傲慢なのですか、誰がそのような申し出を受けますか!!!」

 

一刀「お前は忘れたのか、あの洞窟でのことを、袁安邵公様がお前の為に残した、あの碑文を!!!」

 

麗羽「あなたに始祖様の何が分かるというんですの、陛下を攫った不届き者に!!!」

 

一刀「ったく、どこまで思い込みが激しいんだよ・・・・・」

 

まるで聞き分けのない子供でも相手にしているかのような気分である

 

一刀「こんなことをして只で済むと思っているのか!!!?このまま不可侵の決まりを破れば、お前は二度と信用を回復できないぞ!!!この同盟調印書を忘れたとは言わせないからな!!!」

 

袁家の印が入った同盟調印書を掲げ、麗羽の行いに如何に大義名分が無いかを示すも

 

麗羽「ふんっ、それがなんですの?逆賊との同盟など、こちらから願い下げですわ!!!信用ですって?そのようなもの、あなた方から陛下を救い出せば、何とでもなりますわ!!!」

 

一刀「な・・・・・あ・・・・・」

 

余りに荒唐無稽な麗羽の言葉に茫然自失となり、手から調印書が抜け落ち関の下へと落ちていく

 

かつて徐州で伏龍鳳雛が言った通りの結果となった

 

今、この瞬間をもって、この同盟調印書はただの紙切れとなり果てたのだった

 

麗羽「一刻の猶予を差し上げますわ、大人しく陛下を引き渡せば、北郷一刀と公孫?の首だけで済ませて差し上げますわ!!!」

 

問答無用で切り捨てる言葉を残し、麗羽は陣地へと去っていく

 

三人の将軍も、言葉もなく後に続いたのだった

 

一刀「〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」

 

氷環「隊長様、お気を確かに!!」

 

炉青「しっかりしてくださいどす!!」

 

苦虫を噛み潰しながら眉間を押さえ、ふらつく一刀に氷環と炉青が駆け寄るもその場にへたり込んでしまった

 

瑞姫「一刀君、もうあの人はどうにもならないわよ」

 

傾「だな、あのような愚か者には即刻引導を渡してやるのがせめてもの情けというものよ」

 

一刀「・・・・・駄目です、何とかして説得をしなければ」

 

風鈴「一刀君、気持ちは分かるけど、あれはもうこっちの言葉に耳を貸さないわよ」

 

楼杏「ええ、そのようなことを言っている場合ではありません、攻められる以上戦わねばなりません」

 

一刀「なら、せめて俺の首一つで・・・・・」

 

白蓮「何を言っているんだ、絶対に駄目に決まっているだろ!!!」

 

星「さよう、そのような事、許しませぬぞ!!!」

 

菖蒲「そんなことをするくらいなら、戦った方がまだマシです!!!」

 

一刀「だが、このままではまた同じことの繰り返しになってしまう、一人でも死人が出れば、もう止まらなくなってしまう・・・・・」

 

月「・・・・・では、私が」

 

詠「月!!?何をするつもりなの!!?」

 

そんな一刀の姿がいたたまれなくなったのか、月が階段を降りようとする

 

月「董卓である私の首を差し出せば、袁紹さんも・・・・・」

 

詠「そんなの無意味だよ!!」

 

氷環「そうです、袁紹の頭の中では董卓は暴君のままです!!」

 

炉青「はいな、犬死にしかならないどす!!」

 

一刀「や、止めろ月!!ここでお前に死なれたら、俺は何の為に・・・・・」

 

何の為に、反董卓連合などという茶番劇を容認してまで助け出したのか

 

あんな下らない茶番劇で死んだ兵士達も、まるで浮かばれない

 

月「それでは、他にどうしろというんです・・・・・」

 

一刀「それは・・・・・・・・・・」

 

何かうまい抜け道は無いか、誰も傷つかず、誰も死なない、そんな明るい未来への道筋

 

このままではこの世界の歴史は、史実の通りの醜い地獄絵図を描いてしまう

 

それこそ、運命論と決定論を認めることとなってしまう

 

聖フランチェスカ学園特進科随一の頭脳をここで使わずしていつ使うのだ

 

この状況を打開するための奇策を、頭をフル回転させて捻り出そうと試みる

 

傾「・・・・・一刀よ、もう諦めて決断しろ」

 

一刀「傾、様・・・・・」

 

瑞姫「そうよ、ここまで来たら、もう戦う以外の道なんてないわよ」

 

一刀「馬鹿な事を言わないでください、そんなことをしたら・・・・・」

 

風鈴「もういいのよ、一刀君・・・・・」

 

楼杏「はい、攻めてきているのは向こうです、しかも謂れのない理由でです、向こうが殺されても何も文句など言えません」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

かつての祖父の言葉が脳裏をよぎる

 

いつかお前にも決断を迫られる日がきっと来るじゃろう・・・・・その時にお前が生き残ってくれることをワシは願っておるぞ・・・・・

 

まるでこうなることを予見していたかのような、それでいてあの時の自分は、その言葉の重みに全く気付いていなかった

 

一刀「だがしかし・・・・・」

 

白蓮「・・・・・わかった、なら私が決断する・・・・・幽州は冀州と徹底抗戦をする!!」

 

一刀「な、白蓮、何のつもりだ!!?」

 

白蓮「身の程を弁えろ、一刀・・・・・お前は幽州宰相、私は幽州州牧、であれば上の命には従ってもらうぞ!」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

白蓮「これで、この戦いで多くの死人が出たとしても、それは全て私の責任だ」

 

一刀「白蓮、お前は・・・・・」

 

白蓮「本来であれば、私が真っ先に決断すべきことだった・・・・・すまなかったな、これまで何もかもお前に丸投げしてきてしまった、ここで州牧らしい、お前の上司らしいことをさせてくれ」

 

一刀「・・・・・ならせめて、向こうを説得しながら防衛に専念する、それをさせてくれないか」

 

白蓮「分かった・・・・・だがもう無理だと判断したら、こっちも一切手は抜かないからな」

 

一刀「その前に、俺があいつらを説得して見せる!」

 

傾「まったく、何処までも甘い奴であるな」

 

楼杏「しかし、私達は一刀さんに救われている身です、これも一つの恩返しという事でいいのではないですか」

 

風鈴「そうね・・・・・でも、もう限界だと判断すれば手段は選んでいられないわよ」

 

星「一刀殿、伯珪殿の命ゆえ、ある程度は付き合いますが、そこから先の保証は出来かねますぞ」

 

菖蒲「はい、事ここに至る時は腹を据えます」

 

一刀「その前に、俺がこの茶番を終わらせて見せる!」

 

反董卓連合に続き、この易京の戦いもとんだ茶番劇である

 

連合戦での公孫軍は、敵味方問わず一人の死人も出さずに済んでいるが、この戦いではどうなるか分からない

 

彼女達を大量殺戮者の仲間入りをさせるなど、あってはならない

 

自分の采配で今後の彼女達の命運が決まる

 

それを胸に刻み、一刀は背筋を伸ばし袁紹軍を見据えた

 

氷環「隊長様、私達はどうすればいいでしょうか!?」

 

炉青「はいな、何でもするどすよ!」

 

一刀「それなんだが・・・・・まずは、俺達公孫軍のみで戦う」

 

星「そうですな、これは幽州と冀州の問題でありますからな」

 

菖蒲「それに、董卓軍に属していた人がいると知れれば、向こうから何を言われるか分かったものではありませんから」

 

白蓮「そうだな・・・・・風鈴先生達は、まずは手出し無用でお願いします」

 

風鈴「分かったわ・・・・・でも、もしもの時は・・・・・」

 

楼杏「ええ、私達も介入させてもらいますから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

斗詩「麗羽様、本当にこれでよかったんですか・・・・・」

 

猪々子「あたいも、今回は気が進まないっていうか・・・・・」

 

悠「ああ、向こうの言い分を聞いてからでも遅くないんじゃないか?」

 

麗羽「くどいですわよ!!!早く戦の準備をなさい!!!」

 

斗詩「・・・・・分かりました」

 

猪々子「う〜〜〜す・・・・・」

 

悠「ったく、あたしも早さが取り柄だが、早合点や早とちりは感心しないんだがな・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩香「・・・・・ここまでは、予定通りですね」

 

風「あっさり行きすぎな気がしますね〜・・・・・」

 

稟「ええ、正直怖いくらいです・・・・・」

 

桂花「ふふん、私の存在に感謝しなさい♪」

 

曹操軍は、一つの武力衝突もなく冀州への侵入を難無くこなしていた

 

北郷包囲網に遅れて参加したと、留守を預かる袁紹兵が信じ込んで関所を素通りしたからである

 

元袁紹軍である桂花の顔が思いの他効いたのもあった

 

秋蘭「では華琳様、後は手筈通り」

 

華琳「ええ、城に着いたら一気に冀州を我が物とするわ・・・・・この冀州を我が覇道の太始として献上して見せなさい」

 

春蘭「ははっ、腕が鳴ります!」

 

麗春「待っていろ一刀、私が今助けに行くからな!」

 

それぞれが、それぞれの思惑に則り冀州侵攻に一丸となる中

 

凪「・・・・・・・・・・感じる」

 

沙和「あれ〜、凪ちゃんどうしたの〜?」

 

真桜「なんや、ボ〜っとしよってからに」

 

何故か凪が明後日の方向を向いていた

 

凪「お待ちを、華琳様!」

 

華琳「どうしたのかしら、凪」

 

凪「どうも気になることがありまして」

 

華琳「気になることですって?」

 

凪「はい・・・・・一刀様の氣を感じるのです」

 

華琳「は?」

 

春蘭「いきなり何を言い出すのだ?」

 

秋蘭「ああ、北郷の事が心配なのは分かるが、気が動転しているのではないか?」

 

凪「いいえ、確かです!確かに冀州の街中に一刀様の気を感じるんです!」

 

風「まさか冀州の街にお兄さんがいるとでも言うんですか〜?」

 

凪「そんなはずはないと思いますが・・・・・しかし、どうしても気になりまして」

 

稟「凪殿、今はそのような戯言に耳を貸している場合ではありません、お控えください」

 

いきなり一刀の気を感じると言われても、只の妄言と聞き流されるであろう

 

しかし

 

華琳「待ちなさい・・・・・凪、確かなの?」

 

凪「はい、微弱ではありますが間違いありません!」

 

他の誰でもなく、数少ない常識人である凪であれば、ある程度の説得力がある

 

尚且つ氣の使い手であるが故に、氣の感知も人一倍優れているのであろうから猶更である

 

華琳「分かったわ、楽進、于禁、李典はその氣とやらの捜索に向かいなさい」

 

凪「はっ、ありがとうございます!」

 

沙和「何だか分からないけど、分かったの〜」

 

真桜「なんや、ウチも微妙に感じるな・・・・・」

 

螺旋槍という氣を原動力とする武器の使い手であるため、真桜も何かを感じ取ったようだ

 

意識を集中すると、確かに一刀の気に近いものを感じるのだ

 

彩香「では、私も同行しましょう」

 

秋蘭「彩香様、それではこちらが手薄になってしまいます」

 

彩香「なに、すぐに戻ります、それにこれくらいの事はあなたと春蘭だけでも十分だと思いますよ」

 

秋蘭「買い被らないでください」

 

春蘭「その通り、こんな手薄な領地など、私一人でも十分だ、うわっはっはっは〜〜♪♪」

 

麗春「では私もそっちに!」

 

風「麗春ちゃんはこっちですよ〜」

 

稟「はい、春蘭様の言葉を真に受けないでください」

 

麗春「むぅ・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麗羽「もう何をやっていますの、あのような関くらいちゃっちゃと落として見せなさいな!!!」

 

斗詩「無茶言わないでください!!!」

 

猪々子「そうだぜ、それにあの上に立ち並んでいる兵共の堅さといったらないぜ!!!」

 

悠「ああ、あそこまでガチガチに固められたら、あたしの速さも意味を成さないからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

星「いいぞ、登ってくる兵は叩き返せ!!!」

 

菖蒲「矢が来ましたよ、防いでください!!!」

 

関を守る兵の殆んどは、北郷隊で構成されていた

 

機動隊張りの盾捌きで矢を防ぎ、梯子で登って来た敵兵をシールドチャージで叩き落していく

 

一刀「(落ちた奴ら、大丈夫か・・・・・)」

 

10mはある関の上から落とされては、怪我どころでは済まない

 

落ちて行った敵兵の安否を気にしつつ、後で必ず治療をすると誓いながら、一刀も兵を指揮していく

 

白蓮「門を破られるな、絶対死守しろ!!!」

 

下の正門では、白蓮が兵士達を指揮していた

 

敵側にも破城槌などの攻城兵器があり、それが門をぶち破ろうと轟音を響かせてくる

 

門に閂を幾つもかけ、それを折られないよう裏から兵達が渾身の力で抑えにかかる

 

傾「・・・・・なかなかのものだな」

 

瑞姫「ええ、もう三日も経っているのに士気が落ちていないわね」

 

楼杏「しかし、それもいつまで持つか・・・・・」

 

風鈴「一番心配なのは糧食ね・・・・・」

 

烏丸の飢饉を脱する為に国庫の殆んどを費やしてしまっているため、もって一週間といった目算であった

 

氷環「皆さん、何をぼーっとしているのですか!!!??」

 

炉青「そうどす、やることはいくらでもあるどすよ!!!」

 

風鈴「ええ、ごめんなさい・・・・・」

 

楼杏「そうね、いくら何でも一刀さんに任せ過ぎね・・・・・」

 

守勢の手伝いに駆けずり回っている氷環と炉青に叱咤され、風鈴と楼杏も手伝いに加わるのだった

 

瑞姫「え〜〜、私肉体労働なんて芋な事したくないんですけど〜・・・・・」

 

傾「そう言うな、このままでは余等も袁紹に狩られかねん、死にたくなければ働くことだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麗羽「あーーもーーー、このままでは埒が明きませんわ!!!」

 

三日経っても一向に変化しない戦局に麗羽も苛立ってきた

 

麗羽「あれを持ってきなさい、前に真直さんが考案したあれを!!!」

 

斗詩「真直ちゃんがって・・・・・まさか、あれをですか!!?」

 

猪々子「でも、確かあれってまだ未完成で、すっげー遅くて悠姉が嫌っていたような・・・・・」

 

悠「ああ、あれか・・・・・速さを身上とするあたしからすれば、論外な代物だ・・・・・」

 

麗羽「悠さんの意見など知ったこっちゃありませんわ!!!使えるものは何でも使いますわよ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麗羽「お〜〜〜〜っほっほっほっほっほ♪♪お〜〜〜〜っほっほっほっほっほ♪♪」

 

白蓮「な、なんだ!!?」

 

いきなり高笑いが斜め上の方から響いてきたため見上げると、高さが15メートルはありそうな移動式の櫓が、幾つも迫ってきていた

 

その頂点には、上から目線のドヤ顔で鼻っ柱をこれでもかと強くしている麗羽が居た

 

下の方で何人もの兵士達が櫓を担ぎ、ヒーヒーいいながら運んでいる

 

人力で運んでいるため、まさにドン亀のごとき遅さである

 

これでは、あの悠とは相性が悪いはずである

 

もともとこの櫓には車輪を付ける予定であったが、時間的な問題があり未完成のままこの場に持ってくるしかなかった

 

麗羽「この袁本初の威厳に恐れおののくといいですわ♪♪」

 

白蓮「う〜〜〜ん、麗羽らしいな・・・・・」

 

一刀「一体何がしたいんだ、あいつは・・・・・」

 

星「しかし一刀殿、あれは厄介ですぞ」

 

菖蒲「はい、放っておくことは出来ないかと」

 

見ると、櫓の中央から上辺りに弓を構えた兵士が数人見える

 

地面と櫓、この二か所から同時に攻撃をされれば、流石にこちらの死人が出るのは避けられない

 

下と上からの十字砲火となれば、その威力は格段に上がるのだから

 

一刀「くっ、仕方ないか・・・・・」

 

余りに気乗りがしないが、一刀は関の凸凹に上がり声を張り上げた

 

一刀「麗羽、今すぐ降りろ、でないと落ちるぞ!!!」

 

麗羽「まあまあ、なんて高慢ちきな、親の顔が見てみたいですわ!!!」

 

一刀「斗詩、猪々子、悠、あの馬鹿をしっかり受け止めろよ!!!」

 

斗詩「え、何を・・・・・」

 

猪々子「は、なんだって?」

 

悠「どういうことだ?」

 

麗羽の言葉をスルーし、一刀は自身の手を目の前で素早く動かす

 

シュバババッ   ズドンッ!!!

 

麗羽「は・・・・・」

 

次の瞬間、何かがカッと光ったと思いきや

 

バキャアアアアアア!!!!

 

麗羽「なっ、きゃあああああああ!!!??」

 

高速の氣弾、雷針砲が木製の骨組みに命中し櫓が傾き、麗羽が落下していく

 

斗詩「れ、麗羽様!!!??」

 

猪々子「姫!!!??」

 

悠「おっと!」

 

落下した麗羽は三人にしっかりキャッチされ難を逃れた

 

一刀「そのふざけたものを運んでいる奴ら、お前らも怪我したくなかったらとっとと帰れ!!!」

 

ズドンズドンズドン!!!

 

ドガアアアアアアア!!!   バキャアアアアアア!!!   ズギャアアアアアアア!!!   

 

「「「「「うわああああああああああああああ!!!!!」」」」」

 

雷針砲を連続で放ち、次々と櫓を破壊していく

 

事前に警告をしていたため、弓兵も持ち手も一人も死なずに、全ての櫓は破壊された

 

麗羽「むっきーーーー、何なんですのあれは、反則ですわよ!!!」

 

猪々子「兄貴の奴、あんな隠し玉を持っていたのか」

 

悠「なんで反董卓連合で使わなかったんだ?」

 

斗詩「・・・・・麗羽様、どう考えてもおかしいです、あの一刀様が帝を攫うとはとても思えません」

 

麗羽「まだそのような事を言っていますの!!?あれもこちらを惑わせるための演技に違いありませんわ!!」

 

斗詩「・・・・・・・・・・」

 

猪々子「どっちにしたって、作戦の練り直しだな、こりゃ・・・・・」

 

悠「ああ、あたしの速さを生かせる作戦がいいな」

 

猪々子「こんな時に真直がいてくれたらな・・・・・」

 

悠「そいつはあたしじゃなくて、麗羽に言ってくれや」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・張譲様、これからどうなさるおつもりですか?」

 

「ええ、我等はこれからどうすれば・・・・・」

 

張譲「急かすでない、今考えておるわ!!お主らは人質と趙忠を見張っておれ!!」

 

「・・・・・は」

 

「御意・・・・・」

 

張譲「くっ、どうしてこのようなことになったのじゃ・・・・・」

 

冀州の城から東に位置した高級旅館の前で、数人の十常侍が重苦しい雰囲気で談合をしていた

 

いくら何でも自分達はやり過ぎてしまっている感が、十常侍を支配していた

 

それは当の張譲とて同じであった

 

張譲「なぜじゃ、なぜこうも上手くいかぬ・・・・・」

 

最初は、忌々しい北郷一刀を蹴落とし、利権を貪ることが出来ればそれでよかったのだ

 

世間知らずの空丹と白湯を連れ出すことは容易であった、大将軍の政権転覆を回避する為に冀州に避難する旨を伝える

 

黄も了承済みとう虚言をあっさり信じてくれた

 

問題は趙忠こと黄である、あの無駄に帝への忠誠心が厚いbQを黙らせる事には苦労した

 

帝のお気に入りであり、下手に殺せばかえって怒りを買いかねないため、一緒に連れて行くしかなかった

 

その気になれば、帝の代わりを拵えることは容易である

 

血を重視する輩もいるが、そういった輩は権力で踏み潰せばいい

 

だが、今の帝は空丹であるのはれっきとした事実であるため単純に殺害していたのでは自分達が帝殺しの汚名を着せられ弾劾されてしまう

 

人質は生きていてこその人質なのだ、死体となっては何の役にも立たない

 

麗羽を操り人形に仕立てたまでは良いが、そこから先が想定を上回ってしまった

 

最低でも一か月は続くであろうと思っていた反董卓連合の間にどうするかを考え準備をするつもりであったが、なんと十日もせず終わってしまった

 

この一か月という日数は、洛陽の民から何もかもを搾取し、水関、虎牢関、洛陽と続け様に、それこそ暴君の如く粘りに粘って防衛を繰り返した末の計算である

 

十常侍からすれば、月は暴君董卓という汚名を着たまま亡き者にしたかったが、せめてもの意趣返しの如く、そのような謀略や時間稼ぎを詠は許さなかった

 

一番の誤算は、董卓だけを洛陽におびき寄せるはずが、涼州連合までもが付いて来てしまったことだ

 

それを防ぐ為に書簡に董卓だけ来るようにと書いておけばよかったと思うが、それはそれで怪しまれる、自分がそのような手紙を送られれば間違いなく訝しむ

 

馬騰にも此度の真相はバレてしまっているであろう、あの涼州筆頭も無駄に忠誠心が厚いため決して自分達を許さない、迂闊に洛陽に帰れば確実に粛清されてしまう

 

どうやって涼州連合を黙らせるか、これが一番の難題である

 

かといってこの暮らしを永遠に続けることも不可能である、今は麗羽をコネにしているがそれもいつまで続くか

 

旅館の主には洛陽の貴族がお忍びで来ていると伝えている、帝が泊っているなどと言ってしまえばあっという間に噂が広まってしまい、自分達が帝を攫ったことが麗羽にもばれてしまう

 

そうなればもはや逃げるしか手立てが無くなるのであるが、それだと自分達は死ぬまで日陰者として生きていかねばならなくなる

 

話の流れで麗羽の意識を幽州に向けさせることが出来たが、仮に幽州を滅ぼし一刀を亡き者にしたとしても、真相を知る人間がいる限りそれも意味を成さない

 

そういった者達は空丹と白湯、黄を含め全て亡き者にしたいが、そのようなことをすれば敵に回す者が増え過ぎる

 

もしもの時は、空丹に全責任を擦り付ける算段であったが、この状況ではそれもままならない

 

このままでは洛陽に返り咲くなど、夢のまた夢である

 

張譲「ぐっ!!・・・・・おのれ、大将軍め・・・・・」

 

自分達の抹殺を未然に阻止しようと大将軍に先手を打ったが、思いもしない逆襲に会ってしまった

 

鞭による結界に阻まれ、傾と瑞姫の暗殺は失敗し手勢の大半は洛陽で失ってしまった

 

まさか大将軍があそこまで武の腕を上げているとは思わなかった

 

最近は珍しく鍛錬に勤しんでいるとは思っていたが、高々一月程度で何が出来ると高をくくっていた

 

自分も鞭による攻撃を受けてしまい、今でも傷跡から焼けた鉄棒でも押し付けられたかの様な痛みが襲ってくる

 

大半の手勢を大将軍の足止めに使ってしまったため、空丹と白湯をぎりぎり拉致するまでに終わってしまった

 

張譲「ふぅぅ・・・・・やはりこの体は気持ちが悪い、いつまで経っても慣れん・・・・・」

 

自らの体を抱き締め、不快感を必死で抑え込む

 

去勢したことによりホルモンバランスが崩れ、女性の体の特徴が出てしまっている自らの身体

 

男にも成れず、かといって女にも成り切れないストレスに常に晒される苦しみ

 

この宙ぶらりんな体を憎らしく思いながら、自分も旅館へ入ろうとした

 

その時

 

ドゴンッ!!!

 

張譲「ごはぁっっっ!!!!??」

 

いきなり鳩尾からの衝撃に体がくの字に折れ曲がり、そのまま意識を手放した

 

沙和「ちょっ、凪ちゃん!!?」

 

真桜「いきなり殴りかかってどないすんねん!!?」

 

凪「すまん、凄い邪気を纏っていたから、つい・・・・・」

 

彩香「待って下さい、この者には見覚えが・・・・・張譲!!?」

 

真桜「は、張譲って、あの宦官の!?」

 

沙和「十常侍の筆頭なの〜!」

 

彩香「なぜこの様な者がここに・・・・・」

 

「張譲様!!?」

 

「き、貴様ら、張譲様に何を!!?」

 

張譲の声を聞きつけ、旅館から十常侍達が駆けつけてきた

 

彩香「あなた達、ここで何をしているのですか?」

 

「貴様ら、張譲様を離すのだ!!」

 

「無礼者め、我等を帝側近の高官と知っての狼藉か!!?」

 

彩香「その帝側近の高官が、ここで何をしているのかと聞いているのです」

 

「それは・・・・・」

 

「むぅぅ・・・・・」

 

へたに口を開けば、自分達が帝を攫ったことがバレてしまうため、迂闊に答える事も出来なかった

 

凪「・・・・・一刀様の氣は、この旅館から感じられます」

 

彩香「そうですか・・・・・では凪、沙和、真桜、多少手荒でも構いません、この者達を捕まえなさい」

 

「な、貴様何様のつもりだ!!?」

 

「そのようなことをして只で済むと思うたか!!?」

 

彩香「黙りなさい!!三人とも、責任は私が取ります、一人も逃してはなりませんよ!!」

 

凪「はっ!」

 

沙和「分かったの〜!」

 

真桜「了解や!」

 

華琳の宦官嫌いも相まって、彩香も宦官に対して良い感情を持っていなかった

 

それ以前に、こんな所に宮廷直属の宦官がいる時点で、怪しさ全開である

 

三羽烏の連携により、十常侍達は抵抗らしい抵抗も出来ず次々とお縄になっていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

斗詩「やあああああああ!!」

 

星「ぬるい!!!」

 

斗詩「きゃあああああ!!!」

 

力の籠っていない斗詩の攻撃を星がはじき返す

 

星「なんだその様は、袁紹軍の顔良ともあろう者が、迷いがありありと出ているぞ」

 

斗詩「・・・・・私、どうしたらいいか」

 

星「一刀殿か袁紹か、どちらが正しいかで迷っているか・・・・・ならば何度でも言ってやろう、我々は帝を攫ってなどおらん、お主ももう気付いているのであろう、帝を攫ったのは十常侍であると」

 

斗詩「でも、でも・・・・・私の主は麗羽様で・・・・・」

 

星「であれば、仕える者を間違えた、己の盲目を恨むのであるな、あるいは主の暴挙を止められなかった自分の非力さを」

 

斗詩「・・・・・・・・・・」

 

自分の武器、金光鉄槌を地に落とし、すっかり戦意喪失してしまった斗詩を星は哀れんだ

 

星「・・・・・では、お主に機会をやろう、今一度袁紹を説得するのだ」

 

斗詩「え・・・・・」

 

星「言っておくが、これは私の情けではない、一刀殿の情けだと思え・・・・・この機会を逃せばお主に先は無い、次はその首確実に落とさせてもらう」

 

斗詩「・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

菖蒲「やあああああああああ!!!」

 

猪々子「おわあああああああ!!!」

 

菖蒲「どうしました、袁紹軍の二枚看板が聞いて呆れますね」

 

猪々子「んなこと言われたって、斗詩があれじゃ、あたいもいまいち気合が入らないっていうか・・・・・」

 

菖蒲「ただの言い訳にしか聞こえませんね、袁紹の暴挙を止められなかったことを、顔良さんのせいにしているとしか思えません」

 

猪々子「そりゃ・・・・・まぁな・・・・・」

 

菖蒲「ではなぜ、あなたはこの戦をよしとしたのですか?」

 

猪々子「そりゃ、あたいは難しいことは分からないっていうか・・・・・」

 

菖蒲「要するに、自分で考えることを放棄しているという事ですね、自身の行いがどんな未来を作るのか、想像することもなく」

 

猪々子「それこそ、んなこと言われたって・・・・・」

 

菖蒲「はぁ〜〜〜〜・・・・・」

 

どうしてこんな人物が一陣営の将軍などという看板を背負っているのか

 

武の腕を買われているといっても余りにお粗末であり、さしもの菖蒲も深い溜め息しか出なかった

 

菖蒲「であれば、もう一度袁紹にこの戦を止めるよう言ってください」

 

猪々子「え・・・・・」

 

菖蒲「何度も申し上げましたが、帝を攫ったのは私達ではなく十常侍です、この戦には最初から大義も何もないのです、あなた方は敵を完全に間違えています」

 

猪々子「・・・・・・・・・・」

 

菖蒲「言っておきますが、これが最後の機会です、次に戦場で会った時は私ももはや容赦はしません」

 

猪々子「わ、分かった・・・・・肝に銘じるよ・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠「どうした一刀、前みたいなキレが無いぞ!!!」

 

一刀「ふざけんな、こんな不毛な茶番でやる気を出せだなんて、どうかしているぞ!!!」

 

こちらでは、一刀と悠が縮地という高速移動をしながらの殴り合いを敢行していた

 

一刀「俺はお前に、こんな茶番に悪用する為に縮地法を教えたんじゃないんだよ!!!」

 

悠「おい、余り茶番茶番と連呼すんな、戦ってのは本来神聖なものなんだぜ!!!」

 

一刀「なにが神聖だ、戦争なんていつだって茶番以外の何物でもないんだよ!!!それに本来って言うなら、お前はこの戦争の真相に気付いているはずだよな!!!?」

 

悠「・・・・・そりゃあな」

 

一刀「だったらなんで、お前達はこの戦争を支持し、共謀し、麗羽の命令を黙認した!!!?お前達も立派な共犯者だ、言い訳の余地なんか無いぞ!!!」

 

悠「・・・・・・・・・・」

 

一刀「お前達は、冀州の重鎮なんだろ!!!?だったらなんで麗羽を止めなかった!!!?まさか命令だからとか、その場の空気の流れだとか言うつもりじゃないだろうな!!!? 」

 

悠「・・・・・じゃあどうすれば良かったってんだ!!!?あたしら重鎮にだって権限というものがあるし、出来ることには限界があるんだよ!!!」

 

一刀「俺だったら麗羽を気絶させて、その隙に十常侍を捕まえ真相を暴露させる!!!陛下を救い出せば陛下の言で麗羽も納得させられるからな!!!」

 

悠「おいおい、無茶苦茶な言い分だな!!!そんな危険な博打をしろと言っている方がどうかしているぜ!!!」

 

一刀「こんな茶番でしかない戦争をしている方がよほど危険だろうが!!!!!」

 

殴り合いをしながらの口論は、傍から見れば子供の口喧嘩にも見えてくる

 

しかし、今回は悠も歯切れが悪い所がある

 

なにせ一刀の言い分は、ほぼ全てが正しいと言えるからだ

 

自分が言っていることが、全て言い訳だと分かっているし、例え権限を越えたとしても麗羽を止めるべきであったのであろう

 

悠「はぁ、はぁ、・・・・・」

 

一刀「はぁ、あぁ・・・・・」

 

流石に戦いながらの口論というのは、エネルギーの消耗が早い

 

二人共息を切らし、お互いの出方を見ながら呼吸を整える

 

一刀「はぁ〜〜〜〜・・・・・だったら、俺を麗羽の所に連れて行け、俺が麗羽に直談判する」

 

悠「おいおい、止めといた方がいいぜ、今の麗羽には何を言ったところで無駄だ」

 

一刀「一体何があったんだ、十常侍は麗羽に何を言ったんだ、元々向こう見ずな所があったが、今回は異常としか言いようが無いぞ」

 

悠「舌戦の時に、麗羽が言ったことが全てさ」

 

一刀「文字通り、奴らの言ったこと全てを鵜呑みにしているってか、よくそれで人の上に立っていられるな」

 

悠「そこに関しちゃあたしも同意見だが、それくらいに漢王朝が定めた地位ってのは絶対的なものなんだよ」

 

一刀「そんな形式ばったことで、何もかもを台無しにするつもりなのかよ・・・・・」

 

悠「一刀、もう運命を受け入れろ、あたしも今回の件に関しちゃ疑問だらけだが、世の中はあたし達の思惑をもはや通しちゃくれないんだよ」

 

一刀「運命だ?はっ!!それこそくそくらえだ、それを言い出したら何もかもが運命という言葉で片付くじゃないか!!」

 

悠「あたしは別に運命という言葉を便利な言い訳に使うつもりはない、だが今回ばかりはどうしようもないんだよ!!」

 

一刀「語るに落ちているぞ、言い訳に使うつもりはないだ?言葉と行動がまるで噛み合っていないぞ!!」

 

両者の言葉は、ただひたすらに擦れ違うのみである

 

何処まで行っても平行線でしかない口論に、いい加減飽き飽きしてきた

 

悠「はぁ〜〜〜〜・・・・・分かったよ、今のところは帰れ」

 

一刀「どういうつもりだ?」

 

悠「あたしとしてもスッキリした気分で一刀と戦いたいからな、まずは麗羽にあたしの疑問をぶつけてみるよ、それで駄目だったら諦めるんだな」

 

一刀「俺は諦めるつもりはない」

 

悠「いつまでそんなことを言っていられるか見ものだが、今はお互いに引いておこうぜ・・・・・それじゃあな」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

戦場であるにも関わらず相手に背中を見せて去っていく悠を見て、その言葉は本気であると一刀も察した

 

どうか、これで麗羽が心変わりをしてくれることを切に願うのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麗羽「はあぁっ!!!!??皆さんまだそのような事を言っていますの!!!!??」

 

斗詩「だっておかしいんです、どう考えても・・・・・」

 

猪々子「ああ、向こうはいつだってあたいを殺れたはずなのに、話をしてくるんだぜ・・・・・」

 

麗羽「そのようなものに惑わされてはなりませんわ!!!!」

 

悠「だが麗羽、十常侍の言い分、相当偏っていたと思わないのか、董卓が暴君にしたって何の根拠も証拠も持ってこなかったんだぜ、麗羽も自分の言葉に少しくらい疑問をだな・・・・・」

 

麗羽「この華麗なる袁本初の通る道に間違いなどあるはずがありませんわ!!!!我が袁家の華麗なる花道、ひたすらに突き進んで見せますわよ、お〜〜〜〜っほっほっほっほっほ♪♪♪♪」

 

斗詩「・・・・・・・・・・」

 

猪々子「・・・・・・・・・・」

 

悠「・・・・・・・・・・」

 

一体何が麗羽をここまで突き動かしているのか

 

後のことを、まるで省みていないとしか思えてこない

 

この戦をすることだけが自分の使命であると言わんばかりである

 

まるで何かに取り付かれているかのような麗羽を、三人は痛々しく見る事しかできなかった

説明
五里霧中の修羅
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コメント
更新ありがとうございます!一刀の気…前に帝にあげた500円でしたっけ?それにして麗羽はマジでひでぇな…これは本当に頸を落としてもいいぐらいアホですね(恋姫大好き)
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恋姫英雄譚 鎮魂の修羅 恋姫無双 恋姫†無双 北郷一刀 ファンタジー 

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