恋姫英雄譚 鎮魂の修羅48
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真直「(・・・・・どうして、こうなってしまったの)」

 

牢屋に幽閉された真直は、膝を抱え蹲っていた

 

真直「(私は間違っていたというの、一体何をどう間違えたの・・・・・私は何も間違ったことは言っていないはず、なのにどうして麗羽様は私の言葉を聞いて下さらないの)」

 

理路整然に、単純明快に、あれだけ言葉を尽くしても麗羽の心には届かなかった

 

一体自分に何が足りなかったのか、それをひたすらに考えて別の方法をシミュレーションする

 

しかし、これまでずっと麗羽の成長を見守って来ただけあって、麗羽の反応は最終的に同じという結論しか出てこない

 

真直「(もういいわ、このまま罪人として死んでいくのもありでしょう・・・・・)」

 

これも一つの運命と、全てを受け入れ目を閉じ更に強く膝を抱える

 

真直「(ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・・・一刀ぉ・・・・・)」

 

思い人の顔を浮かべながら、死んで詫びるしかないと腹を括る

 

その時

 

桂花「やっぱりここに居たわね」

 

真直「・・・・・桂花」

 

かつての同僚の声が聞こえてきたが、真直は膝を抱えたまま目線を合わせることもなく、言葉を紡ぐ

 

真直「そう、冀州は曹操軍に落とされたのね・・・・・」

 

桂花「あら、分かるものなのね」

 

真直「あなたがここに居る時点で結論は出ているわ・・・・・どうして私がここに居ると分かったの・・・・・」

 

桂花「あんたの事だから、きっとこの戦には協力しないだろうと思ったのよ、そうなればどうなるかはおのずと知れるわ」

 

真直「そう・・・・・あなたの言う通りだったわ、麗羽様は、袁本初は、王の器ではなかった・・・・・」

 

桂花「・・・・・気持ち悪いわね、いやに素直じゃない」

 

真直「こんな無様な醜態を晒して、今更張る見得なんて無いわよ・・・・・」

 

桂花「まったく、勝ち誇ってやろうと息巻いていたのに、逆に毒気を抜かれるなんてね・・・・・それはそうと、あんたはいつまでそうやって蹲っているわけ?」

 

真直「主の暴挙を止めることが出来なかった、この無能の身に一体何を求めるというの・・・・・」

 

桂花「あんたが無能なら、大抵の人間は無能の身よ」

 

真直「随分と過大評価をしてくれるじゃない・・・・・」

 

桂花「あんたの事は、曹操軍では私が一番知っているわよ」

 

かつて袁紹軍に属していただけあって、この二人はそれなりに長い付き合いだったのだ

 

共に仕事をするにあたって、お互いの能力を常に推し量っていたため、お互いがお互いを決して無能な人間ではないことを知っていた

 

真直「それで、これ以上私に何をしろと言うの・・・・・」

 

桂花「それはあんた次第よ」

 

そう言いながら、桂花は牢の扉を開けた

 

真直「・・・・・何のつもり」

 

桂花「さあ、何のつもりでしょうね・・・・・一応選択肢は与えてあげたわ、ここで朽ち果てるもよし、ここから出て何をするもよしよ」

 

そう吐き捨て、桂花は牢を去っていった

 

これが、桂花が真直に与えられる最大限の情けだったのであろう

 

かつて共に仕事をした仲というのもあるが、それと同時にこれほどの逸材が牢で一人寂しく死んでいくのを黙って見ていられなかったのだ

 

真直「・・・・・私は、どうしたらいいの」

 

開け放たれた牢の扉を見ながら、真直は複雑な気持ちとなる

 

罪人として死んでいく覚悟を決めていた矢先に与えられた選択肢

 

それを与えた桂花に若干の憎らしさを感じつつも、目の前の選択肢と向き合う

 

その後曹操軍は、降伏する者以外、袁紹軍を誰一人として討ち漏らすことは無かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

星「そうか・・・・・ならば何も言うことは無い、その首落とさせてもらおう」

 

斗詩「・・・・・・・・・・」

 

もはや、斗詩は自分の無力さを嘆くしかできなかった

 

力なく、星が構える龍牙をぼんやりと見る事しかできない

 

こんな迷いだらけの自分が戦ったところで、すぐにでも殺されてしまうのは明白

 

いっそ全てを受け入れてここで死のうと、金光鉄槌を地に落とすのだった

 

星「・・・・・止めておこう」

 

斗詩「え・・・・・」

 

星「この趙子龍、戦意を失った者を殺すほど落ちぶれてなどおらん、お主はもはや武人ですらない、早々に帰るがよい」

 

死相がありありと見える斗詩の顔を見て、星は踵を返し関へと去っていく

 

斗詩「・・・・・・・・・・」

 

助かったと安堵すると同時に、自分が余りに哀れに思えてならない斗詩であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猪々子「まぁ、なんだその・・・・・悪りぃ・・・・・」

 

菖蒲「私を馬鹿にしに来たのですか」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

猪々子「そんなつもりはないって!!けど、あたいもどうすればいいのか分かんなくて・・・・・」

 

菖蒲「では約束通り、もはや容赦はしません」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

猪々子「待て待て、話せば分かるって!!」

 

菖蒲「何を今更、謂れなき理由で攻めてきた自覚はあるのですか」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

支離滅裂な猪々子の言に、最早菖蒲も堪忍袋の緒が切れそうであった

 

猪々子「だから悪かったって!!あたいも姫が分からないっていうか・・・・・」

 

菖蒲「問答無用です、一刀様の信を裏切った報いを受けなさい!!!」

 

猪々子「わああああああああ、なんでこうなるんだよおおおおおおおおお!!!」

 

その後暫く、猪々子が菖蒲に追いかけられる無様な姿が戦場に披露されるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠「そういうことだ、もう諦めろ」

 

一刀「何が、そういうこと、だ」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

程なくして帰って来た悠の言葉に、一刀は怒り心頭だった

 

一刀「お前は本当にこの戦争に疑問を感じているのか?何がスッキリした気分で俺と戦いたいだ?」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

悠「あたしもあんな麗羽は初めて見るんだよ、あそこまで頑なじゃはっきり言ってどうしようもないぜ」

 

一刀「どうしようもないのはお前自身だろう、言い訳に言い訳を重ねやがって、少しでも信じた俺が馬鹿だったよ」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

悠「ああ、人を見る目が無かったお前の責任だな」

 

一刀「そうだ、お前達は最初から信じるに値しない奴らだった、そんな奴らを信じた自分自身に吐き気がする」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

悠「・・・・・何処までも自分の責任なんだな」

 

一刀「そうだ、起こりうることは全て自分の責任だ、それは全ての人間に言えることだ」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

悠「あたしも自分の責任を他者に擦り付けるなんざ虫唾が走るけど、一刀はちと度が過ぎるんじゃないか?それじゃ麗羽と大差ない気がするが」

 

一刀「俺をあんなキチガイな大量殺戮者と一緒にするな」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

悠「またそれかよ、いい加減お互い受け入れようぜ、運命ってやつをよ」

 

一刀「もうウンザリだ、お前の言葉にはほとほとウンザリだ」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

悠「そっか・・・・・ならもう何も言うことは無い、あたしももう引き返せない所にまで来てしまったからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黄「主上様、献帝様、食事をお持ちしました・・・・・」

 

空丹「ありがとう、黄・・・・・」

 

白湯「いつもすまないなの・・・・・」

 

黄「いいえ、これもお勤めにございます・・・・・」

 

高級旅館の一室に食事を持ち込む黄

 

部屋の寝台にて帝姉妹が手を繋いで座っていた

 

空丹「ごめんなさい、黄・・・・・私が迂闊なばかりに、このようなことになってしまって・・・・・」

 

白湯「一刀から張譲の言葉は信じないように言われていたのに・・・・・」

 

黄「いいえ、張譲様を諫めることが出来なかった私にこそ、責があります・・・・・」

 

この様なやり取りを何度しただろう、三人は終始暗い表情だった

 

高級旅館に泊まっているのに、気分は豚小屋にいるようである

 

そのような憂鬱極まる中で何とか精神を保ってこれたのは、一刀からもらった五百円硬貨のお陰である

 

かつて回天丹田の氣を取り込み白銀の羽を放出していたそれは、今では淡い輝きを放つのみであるが、それでも握り締めると憂鬱な気分を和らげてくれる

 

しかし、その輝きも今にも消えてしまいそうである

 

黄「(どうして、こんなことに・・・・・)」

 

今回の出来事は、白湯が献帝として即位する寸前に起きた

 

これは極秘裏に行われていたことである

 

張譲達は、あくまで自分達の傀儡とすることが出来る空丹を帝に据えたがっているため、この様な事を公にすれば徹底抗戦をしてくるのは目に見えている

 

政に興味のある白湯が帝になれば、これまで通り利権を貪れないからだ

 

そのため、黄も傾と瑞姫と共に白湯を帝に祀り上げると同時に、他の十常侍を弾劾する暗躍をしていた

 

張譲達が自分の部屋に押し掛けてきた時は暗躍がバレたのかと思ったが、こうして二人の世話係を続けさせているという事は、その事実には至っていないのであろう

 

にも拘らず、向こうの先手を許したという事は、傾と瑞姫の情報管理が甘かったからに他ならない

 

黄「(いいえ、暗躍していた以上、私も同罪ですね・・・・・)」

 

こんなことなら、一刀の言う通り正式な方法で彼等を処罰していればよかったと思う

 

空丹の権限で新しい制度を確立し、膿を吐き出していればこの様な事にはならなかったのかもしれない

 

自分達が余計な事をした結果が、この様である

 

一体一刀に何と申し開きをしたらいいだろうと考えていると

 

黄「?・・・・・何やら騒がしいですね」

 

空丹「ええ、どうやら外みたいね」

 

白湯「何があったの?」

 

旅館の手前辺りから、喧騒らしき物音が聞こえてくる

 

やがてそれはこの旅館内にまで至り、三人もただ事ではないと悟る

 

凪「ここです、この部屋です!!」

 

沙和「お邪魔しますなのー!!」

 

真桜「おらあ、往生せいや、十常侍のぼんくら共!!」

 

そして、扉を蹴破るような形で見知らぬ4人が踏み込んで来た

 

黄「な、何者ですか、あなた方は!!?」

 

彩香「手荒な訪問、大変失礼します・・・・・私達は、曹操軍の者です」

 

黄「曹操軍・・・・・良かったです、これで主上様も献帝様も救われます」

 

彩香「話が見えませんが、貴方は・・・・・」

 

黄「はい、私は趙忠、十常侍第二位を務めるものです」

 

凪「な、十常侍!!?」

 

沙和「まだ居たなのー!!」

 

真桜「こいつも踏ん縛ったりーな!!」

 

彩香「待ちなさい、三人とも!!」

 

どうも様子がおかしい、他の十常侍とは雰囲気が異なる

 

なにより、後ろにいる二人が一番の問題である

 

彩香「予感はしていましたが、なぜ帝と劉協様がここにおられるのですか・・・・・」

 

凪「え・・・・・帝、劉協様・・・・・」

 

沙和「ほ、本当に本人なの〜?」

 

真桜「うそやろ、ウチ心の準備が・・・・・」

 

いきなり国の象徴が現れたことで三羽烏は硬直した

 

黄「それは、私が説明します・・・・・」

 

そして、淡々と黄は事の顛末を話した

 

凪「そ、そんなことが・・・・・」

 

沙和「董卓さん、可哀想過ぎるのぉ〜・・・・・」

 

真桜「どこまでも腐り果てとるな、こりゃ・・・・・」

 

彩香「なるほど、一刀君はこの事実を知っていたという事ですね・・・・・」

 

どうりで、一刀の様子がおかしかったわけである

 

反董卓連合を即座に解散させなかったのも、全ては空丹と白湯を救い出す為の苦渋の決断だったという事だ

 

凪「それで、この宦官はいかがいたしましょう?」

 

沙和「なの、十常侍には変わりないの〜」

 

真桜「とっ捕まえてええんか?」

 

空丹「ま、待ちなさい、黄は何も悪くないわ!!」

 

白湯「そうなの、悪いのは他の十常侍なの!!」

 

黄「いいえ、張譲様を止めることが出来なかった時点で、私も同罪です・・・・・」

 

彩香「・・・・・いずれにせよ、この場での判断は出来かねますね・・・・・我が主、曹孟徳の下までご同行願います」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

氷環「お疲れ様です、隊長様」

 

炉青「お水をどうぞどす」

 

一刀「ああ、すまない・・・・・」

 

いっきに水をあおるも、相当に疲れが溜まっているのか、一刀の表情は険しいままだった

 

白蓮「一刀、少しは休めよ、見ていて痛々しいぞ・・・・・」

 

楼杏「そうですよ、烏丸の一件からずっと働き詰めですよ・・・・・」

 

風鈴「この戦いが始まってもう七日よ、ここまでやって関を突破されないだけでも上出来もいいところなのよ・・・・・」

 

烏丸で十四日、易京の戦いで七日、計二一日もの間ぶっ続けともいえるくらいに働き通しであった

 

それくらいに一刀の仕事量が膨大なものといえる

 

これまで倒れずにやってこれたのは、一人でも死人を減らしたい一心さと、どうにかしてこの戦いを止めさせたい思いがあるからだ

 

傾「一刀よ、救いようがない袁紹などもういいであろう」

 

瑞姫「私ももうこんな芋な重労働はごめんよぉ〜〜・・・・・」

 

月「一刀さん、もういいのです、一刀さんはよくやってくれました」

 

詠「そうだよ、あの雷針砲でしたっけ、あれで袁紹を仕留めればこの戦もすぐ終わるよ」

 

一刀「馬鹿な事を言うな、そんな・・・・・っ!!!??」

 

そんなことをすれば、ことの真相を知らずに麗羽を死なせることになる、そんなものに意味は無い

 

そう言おうとしたが、関の下を見て一刀は仰天する

 

そこには、夥しい数で関に迫りくる袁紹軍兵士達の姿があったからだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麗羽「こうなったら力ずくで行きますわよ、総員何としてでもあの関を抜きなさい、この戦いに袁家の威信をかけますわよ!!!!!」

 

斗詩「そんな、関を攻めるのにこんな用兵なんてしたら、とんでもない犠牲が出ますよ!!!」

 

猪々子「あたいも、これは無いと思うけどな・・・・・」

 

悠「麗羽、いくらなんでも自暴自棄が過ぎるんじゃないか・・・・・」

 

麗羽「やかましいですわ!!!!!これで何としてでも陛下を救い出して見せますわよ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鴎「ちょっと、袁紹の奴、何を考えているのよ」

 

明命「はい、あんなもの無意味に味方に死ねと言っているようなものです・・・・・」

 

思春「袁紹軍に軍師はいないのか、あれでは犬死を増やすだけでしかないぞ・・・・・」

 

近くの森林に潜み、事を見守る細作三人がいたが、袁紹軍の余りにお粗末な用兵ぶりに呆れるばかりだった

 

思春「しかし、北郷もよく持ちこたえるものだ・・・・・」

 

明命「はい、この七日間、殆んど休みなく動かれているはずですのに・・・・・」

 

鴎「どうしようかしら、危なくなったら助けに入るように言われているけど、私達が参戦したとしても焼け石に水だし・・・・・」

 

思春「ああ、精々北郷を落ち延びさせるくらいしか出来ることは無いぞ・・・・・」

 

明命「でも、一刀様は私達の申し出を受けることはないでしょうし、かといってこのまま何もしないわけには・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

菖蒲「くぅっ!!なんて数ですか!!」

 

星「連日これではたまらんぞ!!」

 

白蓮「麗羽の奴、最早なりふり構わないってか!!」

 

理屈もくそもない人海戦術に公孫軍は劣勢を余儀なくされていた

 

これまで通りの北郷隊のみによる防御だけではどう足掻いても防ぎきれないため、他の部隊による弓矢での反撃も加えなければならない程であった

 

一刀「くそったれ、麗羽の馬鹿が、味方がどうなっても構わないっていうのか!!?」

 

関を攻めるのに、この様な力押しなどナンセンス極まりない

 

壁に挟まれる形になる以上、後ろから押されたら前にいる人間は身動きが取れない、只の肉の壁になるのみである

 

しかし

 

氷環「隊長様、もう門がもちませんわ!!!」

 

炉青「このままじゃ破られるどす!!!」

 

その甲斐あってか、門が悲鳴を上げ始める

 

分厚い木製の門と閂が折れる寸前へと追い込まれる

 

一刀「くそっ!!!・・・・・ぐっ!!??」

 

門へ向かおうとしたが、視界がぐらつき全身に強烈な疲労感が襲い来る

 

烏丸の一件から今日までほぼ休み無しで働き続けてきたツケが一気に来たようだ

 

なにせ戦闘に加え、部隊の指揮から五斗米道による治療までの役目をこなしてきたのだ

 

月「か、一刀さん!!?」

 

詠「ちょっと、流石に無理し過ぎだよ!!」

 

その場に倒れそうになった一刀を月と詠が支える

 

一刀「くっ、くそっ・・・・・こんな所で・・・・・」

 

気力も氣も尽きかけ、消え入りそうな意識を何とか繋ぎ止めるも、体が思うように動かない

 

このままでは門を破られ、無関係な幽州の民にまで被害が及ぶ

 

焦りが頂点に達した、その時

 

天和「一刀ーーー、手伝いに来たよーーー♪♪」

 

地和「みんな大好き、地和ちゃんよーーー♪♪」

 

人和「とっても可愛い人和ちゃん、皆の為に来たわよーーー♪♪」

 

影和「全力でご支援させていただきます!!」

 

一刀「お前等、どうしてこんな所に・・・・・」

 

突然、張三姉妹が参戦してきて後方から歌を披露する

 

氷環「これは・・・・・妖術!?」

 

炉青「はいな、でもうちらとは系統が違うどすな・・・・・」

 

すると、味方全体が奮起し破壊される寸前だった門を押し返していった

 

傾「待て、この歌、以前聞いたことがあるような・・・・・」

 

風鈴「ええ、確か黄巾党の時に・・・・・」

 

楼杏「まさか一刀さん、あの四人は・・・・・」

 

一刀「・・・・・その話は後で、しっかり説明しますので」

 

ここまできたら、一切の言い訳もすまい

 

なにせ黄巾の主犯格を匿っていたのだ、どんなお咎めも甘んじて受けよう

 

アニキ「旦那、待たせたな!」

 

チビ「あっしらも来やしたぜ!」

 

デク「さ、参戦なんだな!」

 

一刀「お前達まで・・・・・」

 

なんと、あの三連星までもが来てしまった

 

刑務所にて、囚人の監視兼ダンスの指導員を担っているはずのこの三人までもが

 

アニキ「これまで、お世話になりました、旦那」

 

チビ「旦那に拾ってもらった恩、ここで返すでさぁ」

 

デク「か、感謝しかないんだな」

 

一刀「お、おい、何をするつもりなんだ・・・・・」

 

妙に神妙な三連星に、一刀は焦燥感に駆られる

 

アニキ「今まで溜まったツケ、ここで返してきますわ!」

 

チビ「罪滅ぼしをさせて下さいでさぁ!」

 

デク「ち、地和ちゃんに真名を預けられたんだな、こ、こんなに幸せな事ってないんだな!」

 

一刀「よ、よせ・・・・・止めろ・・・・・」

 

アニキ「旦那、おさらばでさぁ!!!」

 

チビ「旦那の為に働けたこと、あっしの誇りでさぁ!!!」

 

デク「ち、地和ちゃんの為に死ぬんだな!!!」

 

そして、三連星は一刀に別れを告げ走り去っていく

 

一刀「ああ・・・・・うああ・・・・・」

 

笑顔で前線へと赴いていく三連星の後ろ姿に、涙が溢れてくる

 

涙で歪む視界の中で見たのは、敵兵に斬られ、倒れ伏していく三連星だった

 

あの三人はこれからだったのだ、これからやり直すはずだったのだ

 

いつかは、三姉妹のバックダンサーを務めこの大陸を盛り上げていくはずだったのだ

 

罪というなら、あの三人の罪は、華佗に記憶を消された時点で許されているのだ

 

なのにどうしてこんな事に

 

どう足掻いても、過去は消せないというのか

 

神は、時代は、時は、彼らを決して許さないのか

 

やり直すチャンスすらも与えないというのか

 

氷環「隊長様、盛り返しましたわ!!」

 

炉青「これであと少し時間が稼げるどす!!」

 

張三姉妹と三連星のお陰で、破られかけた門は再び内側から押し返されたのだった

 

一刀「く、くそ・・・・・くそ、くそっっっ!!!」

 

悔しさの余り、地面に拳を何度も叩き付ける

 

本当に、どうしてこうなってしまったのか

 

やはり全ての過ちは、十常侍を野放しにしてしまったことである

 

自分の見通しの甘さが、この様な事を招いたとしか言いようがない

 

瑞姫「ふぅ〜〜〜〜、これで一息つけるかしら・・・・・」

 

傾「だな、あの三人娘のお陰で何とか危機を脱したな・・・・・」

 

楼杏「しかし、それも一時的なものでしかありません・・・・・」

 

風鈴「そうね、物量の差は如何ともし難いわ・・・・・」

 

反董卓連合にて、数の理というものを思い知らされている一同は、これがその場しのぎのものでしかないという事を分かっていた

 

白蓮「一刀、このままじゃジリ貧だぞ・・・・・」

 

星「さよう、いずれは数に押し潰されますぞ・・・・・」

 

菖蒲「ええ、もう袁紹に拘っている場合ではありません・・・・・」

 

一同の顔から疲労の色が隠せなくなっている

 

流石に一刀の我が儘に付き合うのも限界が見えてきている

 

このまま付き合わせ続ければ、三連星に続きこの中の誰かが確実に死ぬこととなる

 

もう既に、敵味方問わず多くの死傷者を出しているのだ、甘い事を言っている時期はとっくに過ぎ去っている

 

一刀「・・・・・白蓮、お前は逃げろ」

 

白蓮「は?・・・・・」

 

いきなりの一刀の言に、白蓮は呆気に取られる

 

一刀「桃香の所に落ち延びるんだ、そこで再起を図れ・・・・・」

 

白蓮「何を訳の分からないことを言い出すんだ!!?」

 

一刀「他の皆も、ここを離れるんだ・・・・・」

 

氷環「そんな、隊長様を残すなど出来ません!!!」

 

炉青「そうどす、一人で何が出来るんどすか!!!」

 

一刀「俺はもう、誰も失いたくない、死ぬのは俺一人で十分だ・・・・・」

 

星「何を今更、此度の件は一刀殿一人が死んでどうこうなるものではありませぬ!!!」

 

菖蒲「その通りです、死んで責任を取れるなんて思わないでください!!!」

 

白蓮「そうだ、責任というなら私達の責任は何が何でも生き延びて、この世の苦しみを生ある限り受け続けることだ!!!お前だけ楽をしようったって、そうはいかないからな!!!」

 

一刀「俺は、そんなつもりで言ったんじゃ・・・・・」

 

白蓮「だったら私一人じゃなく、一刀を含めここに居る全員で逃げ延びるぞ!!!それが承諾出来ないなら、私もここに残る!!!」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

楼杏「一刀さん、一刀さんの気持ちはありがたいですが、私も逃げ延びようとは最早思いません」

 

詠「それにここに居る全員が逃げ延びるなんて土台無理な話だよ」

 

風鈴「そうね、逃げるにしても精々逃げられるのは二,三人程度ね、それ以上では気付かれておしまいよ」

 

瑞姫「それなら私が逃げむぅ〜〜〜〜〜!!」

 

傾「今更どこに逃げるというのだ?」

 

珍しく、傾が瑞姫の口を塞ぎ、場の空気を壊すことを防いだ

 

月「ここまできたら、最後までお付き合いします、一刀さん」

 

一刀「ならせめて、白蓮だけでも・・・・・」

 

白蓮「お前は、私に部下を見捨てた卑怯者の烙印を押すつもりなのか!!?」

 

一刀「さっきお前は言ったじゃないか、生きることが責任だと!!」

 

白蓮「それはお前も同じだ!!」

 

一刀「死ぬつもりなんてない!!白蓮はこの幽州の州牧であり頂点だ、頂点が死ぬなんてことはあってはならない、万一の事を考えての予防措置だ!!」

 

白蓮「嘘をつくな!!」

 

一刀「嘘じゃない、麗羽は俺が何とかする、事が済んだらここに帰ってくればいいんだ!!」

 

白蓮「一刀、今のお前の言葉は、どうしたって詭弁にしか聞こえてこないぞ・・・・・」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

諭すように、白蓮は一刀の肩に手をやった

 

白蓮「一刀の気持ちは嬉しい、こんな部下を持てて私はこの上ない幸せ者だよ・・・・・」

 

一刀「白蓮・・・・・」

 

白蓮「けどな、私も結局一人の女なんだよ、最後は愛しい人の隣で死にたいんだ//////」

 

一刀「・・・・・分かった、もう何も言わない」

 

白蓮「分かってくれたか、私も・・・・・がっっっ!!!!??」

 

いきなり体の芯にまで響く衝撃と共に白蓮の体がくの字に曲がる

 

一刀の拳が白蓮の鳩尾に深く突き刺さった

 

一刀「すまない、それでも俺は、お前に生きていてほしいんだ・・・・・」

 

白蓮「う・・・・・ぐ・・・・・・うぅ・・・・・」

 

ぐったりと白蓮は一刀にもたれかかり、気を失った

 

星「一刀殿・・・・・」

 

一刀「星、白蓮を頼む・・・・・」

 

星「私も伯珪殿と同じで、最後は愛する者の隣で死にとうありますがな・・・・・」

 

一刀「すまない、だが他に頼める者がいないんだ、この落とし前は必ずつける・・・・・」

 

星「では、生きてくだされ、生きて再開する、これを落とし前といたしましょう」

 

一刀「ああ、分かった、必ず」

 

星「ええ、必ず・・・・・では、ご免!!!」

 

そして、星は白蓮を抱え上げ、幽州を飛び出していった

 

瑞姫「ぷはぁっ!!・・・・・ちょっと姉様、どういうつもりなの!!?」

 

傾「妹よ、話がこじれるから黙っておれ」

 

瑞姫「何よぉ、似合わないわね、今更義に目覚めたりしたのぉ?」

 

傾「余等も逃げたとて見付かる可能性が増すのみだ、であればここに残る方が生存率は高いとふんでのことだ」

 

瑞姫「この状況がなのぉ〜・・・・・」

 

傾「ああ、この状況がだ」

 

どうにも姉の考えが見えてこないが、状況はその考察を許してくれそうにない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黄「・・・・・という事にございます」

 

華琳「・・・・・陛下、この者の言は偽らざるものでありますか?」

 

空丹「ええ、間違いないわ・・・・・」

 

白湯「全部、黄の言った通りなの・・・・・」

 

華琳「・・・・・・・・・・」

 

三羽烏が捕らえ袋詰めにされた十常侍達を見て、華琳は開いた口が塞がらなかった

 

秋蘭「なんという・・・・・」

 

春蘭「茶番も良い所であるな・・・・・」

 

桂花「・・・・・・・・・・」

 

稟「権力というのは必ず腐敗すると言いますが、まさかここまでとは・・・・・」

 

風「行くところまで行っちゃったって感じですねぇ〜・・・・・」

 

ここに居る全員が、事の顛末に呆れ返るばかりであった

 

彩香「華琳、今は目の前の問題を優先しましょう」

 

華琳「そうね・・・・・陛下、劉協様、お話は後ほど、今は我々とご同行願います」

 

空丹「一体、何があったの・・・・・」

 

黄「主上様、献帝様、お伝えしていなかったことがございます・・・・・」

 

そして、黄は今の一刀の状況を話した

 

白湯「ええ、どうして教えてくれなかったの!!?」

 

空丹「そうよ、どうしてもっと早く伝えなかったの!!?」

 

黄「申し訳ございません、全ては御身をお守りする為にございます・・・・・」

 

一刀が攻められていると知ろうものなら、この二人は一も二もなく騒ぎ立てるであろう

 

そのようなことになれば、他の十常侍からどんな目にあわされるか分かったものではない

 

事ここに至れば、黄も身を挺して二人を守るつもりであるが、この身一つで他の十常侍からこの二人を守り切れるかと言われれば、それは不可能と言わざるを得ない

 

なんでもかんでも上に報告すればいいというものではない、自分の行動がどんな結果をもたらすか、常に予測しなければならないのだ

 

空丹「それなら、私が袁紹を説得するわ!!」

 

白湯「そうなの、白達が話せば、きっと分かってくれるの!!」

 

華琳「お二人共、それはなりません」

 

空丹「ど、どうして!!?」

 

華琳「ここまでの事をした以上、袁紹には相応の罰を受けてもらいます」

 

白湯「そんな、だって袁紹は張譲に騙されて・・・・・」

 

華琳「そのようなものは言い訳にもなりません、己の意思で軍を動かした以上、それは全て当人の責任にございます」

 

空丹「・・・・・・・・・・」

 

白湯「・・・・・・・・・・」

 

華琳「よって我等曹操軍は、これより袁紹軍の背後を突き、幽州を救い出します・・・・・麗春!!!」

 

麗春「ははっ!!!一刀、今助けるぞーーーー!!!」

 

対袁紹軍総司令官に立候補していた麗春は、勇んで号令を下すのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天和「皆〜〜、頑張って〜〜〜!!」

 

地和「うわわわ、ちょっと拙いんじゃない〜〜!!?」

 

人和「ええ、これ以上は・・・・・」

 

影和「もう限界です!!」

 

言った通り、この三人が門を抑えていられる時間は僅かであったようだ

 

白蓮と星を逃がし一日が経ち再び門が悲鳴を上げ、敵の破城槌の先端がめり込んでくる

 

一刀「ここが限界か・・・・・はぁっっ!!!」

 

バシュウウウウウン!!!

 

「「「「「ごはあああああああああああ!!!!!???」」」」」

 

地を走る氣弾、地泉戒で、門の向こう側にある破城槌の車輪を破壊する

 

その勢いで破城槌を押している敵兵が吹っ飛ばされた

 

一刀「俺はこれから麗羽の馬鹿に突撃する、何としてもあいつに話を聞かせてやる!!」

 

氷環「隊長様、お供いたしますわ!!」

 

炉青「はいな、とことんついて行くどす!!」

 

菖蒲「私も、参ります!!」

 

風鈴「私達は、徹底的に支援するわ!!」

 

楼杏「はい、道を切り開きます!!」

 

月「詠ちゃん」

 

詠「分かってる、兵法としては邪道だけど、一か八かやってやろうじゃない!!」

 

傾「余は一刀に賭けた・・・・・瑞姫よ、覚悟を決めよ」

 

瑞姫「むぅ〜〜、どうしてこんなことになっちゃったのかしら・・・・・」

 

一刀「行くぞ、うおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

ドガアアアアアアアアアアン!!!!!

 

「「「「「ぐはああああああああああああああ!!!!!」」」」」

 

袁紹軍の中に飛び込み、次々と敵兵を吹っ飛ばし戦闘不能にしていく一刀

 

全身に氣を纏い、次々と相手を薙ぎ倒していく様は圧巻である

 

しかし、戦闘不能とはいっても、相手は気絶したり、行動不能になる怪我を負うまでに留まっている

 

こんな状況下でも、決して人殺しをしないその根性は驚嘆に値する

 

氷環「はあああああああああああ!!!!!」

 

炉青「はいやあああああああああ!!!!!」

 

菖蒲「やあああああああああああ!!!!!」

 

その後に続く形で、三人も敵を蹴散らしていく

 

風鈴「弓隊、あの四人に当ててはなりませんよ・・・・・放てーーーーー!!!!!」

 

詠「四人の右、敵が多い所を狙いなさい!!!!!」

 

二人の軍師が、四人の前進を阻む人間を一人でも減らすよう援護射撃をしていく

 

敵を薙ぎ倒し、麗羽との距離を確実に詰めていく

 

「ごはぁっ!!!・・・・・くそっ、天を語る不届き者が!!」

 

殴り倒した敵兵一人が一刀に食って掛かるが

 

一刀「俺の事をどうこう言うのは構わない、だが死んで楽になろうなんて思うな!!!死んだら後は何もしなくていいんだ、これほど楽なことがあるか!!!」

 

「・・・・・・・・・・」

 

一刀「お前達の命が、お前達だけのものだなんて思うな!!!お前達が死んだら、残された家族はどうなる、路頭に迷わせる気か!!!?子供がいるなら猶更だ、女に子供を産ませておいて自分は死ぬとか、とんだすけこまし共だ!!!」

 

「・・・・・・・・・・」

 

一刀「お前達は、家族を養う義務がある、自己満足で死ぬなんざ、許されないんだよ!!!」

 

「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」

 

余りに最もかつ、男気溢れる一刀の弁に食って掛かった兵士を含め、他の兵士達も胸を打たれる

 

しかし

 

麗羽「誇り高き袁家の精鋭達よ、惑わされてはなりません、共の屍を乗り越え前へと進むのです!!!この袁本初の為に誇りを持って死になさい!!!」

 

そんな一刀の善意をあざ笑うかのように、麗羽が無情な号令を下す

 

怪我をして倒れた、治療が必要な兵士達を踏み越えて向かってくる

 

一刀「あの底なしの馬鹿が!!!!!」

 

悠「・・・・・はぁ〜〜〜〜〜〜」

 

その一部始終を見ていた悠が、深い溜め息を漏らした

 

悠「お前等、こいつの相手はあたしがする、お前等は他を当たれ!!!」

 

一刀「っ!!?悠・・・・・」

 

悠「もう見ていられないぜ・・・・・あたしは、一刀一人の為にこの戦をすると決めた」

 

一刀「は、何を別けの分からないことを・・・・・っ!!!??」

 

鉤爪風月を一刀の喉めがけて、本気で振り抜いてきた

 

それを紙一重で躱すが、更に悠が追撃してくる

 

その攻撃のどれもが一刀の急所を狙ったもので、殺意がありありと伝わってくる

 

悠「いつまでそんな甘っちょろい事をしているつもりだ、いい加減目を覚ましやがれ!!!」

 

一刀「目を覚ますのはお前らの方だ!!!」

 

悠「この期に及んでいつまで幼稚な事を言っているんだ!!!??」

 

一刀「幼稚だ!!!??お前達こそが幼稚極まることをしているしているんだろうが!!!」

 

悠「その言葉そっくり返すぞ、お前こそが幼稚な事をしていることに気付いていないんだよ!!!」

 

一刀「俺を幼稚だというなら、お前達は野蛮人だ!!!人の命を省みない夷人共だ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

斗詩「・・・・・麗羽、様・・・・・もう私、無理です・・・・・一刀様とは、戦えません・・・・・」

 

猪々子「あたいも、正直姫について行ける自信ねぇわ・・・・・」

 

麗羽「お二人も、あのような虚言に惑わされていますの!!!??根性無しも良い所ですわよ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガキイイイイイイン!!!

 

菖蒲「きゃああああああああああ!!!」

 

一対の戦斧、鬼斬の一本を弾かれる

 

もう一本の戦斧もボロボロであった

 

氷環「菖蒲さん!!?」

 

炉青「助けるどす、菖蒲さん!!」

 

それを期に、次々と敵兵が三人に群がっていく

 

一刀「菖蒲、氷環、炉青!!!??」

 

悠「どうする一刀、このままじゃお前の大事な女達が死ぬぞ!!」

 

一刀「うぐ、ぐうううううう・・・・・」

 

悠「まだ覚悟が決まらないってか、ならどうすればいいか教えてやる・・・・・櫓を壊したあの技で、麗羽を撃ち抜けばいいんだよ、それでこの戦はお前達の勝ちで終わる、それでいいだろうが!!」

 

一刀「うあ・・・・・ああああ・・・・・」

 

悠「何を迷う必要がある!!?そら、お前が迷っている間に、あの三人は死ぬぞ!!」

 

氷環「きゃああああああああ!!!」

 

炉青「触るなどす!!!」

 

菖蒲「ああああああああああ!!!」

 

兵士達にその場に押さえつけられ、武器を突き付けられる

 

一刀「〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

 

今にも殺されそうな三人に歯ぎしりをしながら、右手を麗羽に向け氣を集中する

 

ここまでの距離を詰めれば、普通の氣弾でも人一人を仕留めるには十分である

 

そして、右手から氣を発射しようとした

 

その時

 

一刀「(あ・・・・・)」

 

プツンと、意識が途切れ、一刀はその場にうつ伏せに倒れ伏した

 

悠「おい、一刀!!!??」

 

氷環「隊長様!!!??」

 

炉青「あに様!!!??」

 

菖蒲「一刀様あああああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鴎「ちょっと、もう流石に無理よ!!!」

 

思春「くそっ、もっと早くに行くべきだった!!!」

 

明命「一刀様、助太刀します!!!」

 

武器を構え森林から飛び出そうとする細作達であったが

 

鴎「って、ちょっと待って、あれって!!」

 

思春「あ、あれは!!?」

 

明命「はうあ、まさか!!?」

 

袁紹軍の後方から現れた軍勢に三人は仰天する

 

三人が見たのは、袁紹軍を後ろから蹂躙していく曹の旗印だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麗羽「んな!!!?あんのクルクル小娘、なんて卑劣な!!!・・・・・皆さん、後ろの不届き者を止めるのですわ!!!」

 

そう命令を下すも、誰一人動こうとしなかった

 

麗羽「ちょっと、これはどういう事ですの!!!? 」

 

斗詩「あんな無茶な号令を下したんです・・・・・士気が下がるのは当たり前です・・・・・」

 

元々、袁紹軍の士気は高いと言えるものではなかった

 

反董卓連合にて一刀の治療を受けている者も多いため、今回の戦争の大義名分に疑問を持つ者が大半であったのだ

 

それに加え、あのような味方を省みない作戦とも言えない作戦を敢行しようものなら、人心が去っていくのは自明の理である

 

麗羽「猪々子さん、後ろをお守りなさい!!!」

 

猪々子「あたい一人で何が出来るって言うんすかぁ〜〜・・・・・」

 

麗羽「ああもうっ、どいつもこいつも役に立ちませんわね!!!真直さん、真直さんはどこに居ますの!!!??」

 

斗詩「真直ちゃんは、麗羽様が牢屋に入れましたよ・・・・・」

 

麗羽「ううううぅ〜〜〜〜〜!!」

 

ギリギリと歯ぎしりをしながら、麗羽は何もかもが上手くいかない現状に憤る

 

そして

 

凪「袁紹、覚悟ーーーーーーー!!!!!」

 

沙和「年貢の納め時なのーーーーーーー!!!!!」

 

真桜「神妙にせいや、こんのスカポンタンがーーーーーー!!!!!」

 

麗羽「きゃあああああああああああああ!!!!!」

 

大した抵抗も出来ず、袁紹軍幹部達は次々と曹操軍にお縄となっていったのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

華琳「麗春、袁紹は!!?」

 

麗春「ははっ、確保しております!!」

 

華琳「一刀は!!?」

 

麗春「まだ報告が上がってきていません・・・・・一刀ーーーーー、どこだ、どこにいるんだーーーーー!!!!!」

 

桂花「ちょっと、あんたこの戦の軍師なんでしょ、自分で立候補しておいて持ち場を離れてるんじゃないわよ!!!」

 

一刀を探しに走り去っていく麗春を桂花が叱咤するも、今の麗春の耳に入るはずもなかった

 

華琳「まったく・・・・・しかし、この戦いの趨勢も決まったことですし、良しとしましょう」

 

麗羽を確保した時点で、麗春はお役目をしっかり果たしたと言えるであろう

 

自分も一刀とは話したいことや話さねばならないことが沢山あるため、好きにさせようと思った

 

その時

 

桂花「華琳様、関に何やら動きがあります!」

 

華琳「なんですって!?」

 

よく見ると、幽州の奥から見慣れぬ軍勢が迫ってきているのが見て取れた

 

風「あれは、烏丸の民族ですね〜、あの様子・・・・・幽州の兵士達と戦っているようです〜」

 

稟「・・・・・どうやら、袁紹と戦っている幽州の背後を突いたようですね」

 

華琳「まったく、次から次に、これではおちおち話も出来ないわね・・・・・風、稟、曹孟徳の名のもとに命じる、全軍を率い、北の蛮族、烏丸を・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                              殲滅せよ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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絶望の修羅
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