「まどろみみっく」のどま 1
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「ほた〜」

パチパチ、あいつが目を覚ましました。

「ほた〜、ホタルおはよう。」

自分が言うと、あいつは宙に浮かびながら笑顔で腕を振るじゃないか。

腕の吸盤に吸い付かれたかのようにあいつと迎える日常の連続が自分を離してやみません。

 

姿見の前に立ち、ヒレと腕のしなやかさを確かめます。

ヒレをパタパタ扇ぎます、自分の周りが温かくなってきました、これでよし!!

ヒレには青緑色の光球(ひかりだま)があり、刺激すると熱を帯びて温かくなります。

次に10本ある腕をなわとびのようにぶるんぶるん振り回します、腕が一段と伸びてきました、これでよし!!

腕はものを持ったり、獲物を捕まえるために使います。今は海の中ではなく人間の家での暮らしです、もっぱら日頃の食事で使います。

10本もありますもの、2本の腕で食べ物を取り、食べ終わったら余った4本の腕でお皿を洗うことができます。便利でしょ。

 

「今日の僕もカッコイイほた〜」

 

そう自画自賛する彼は「魚戸ホタル」といいます。

イカのような姿をしたヘンな生き物です。2年前から自分に取り付き、一緒に暮らしています。最近仕事の都合でお引越ししました。まだまとめられていない段ボールが積み重なっています。姿見を新しく買ったので自分は起きた後に身だしなみが大丈夫か確認しています。あいつはというと「自分大好き〜」と自分に夢中になるために使っています。

 

そんなかっこいい姿を見つめた後、ベランダに出たいと聞こえたのでロックを外しました。

ふぅと息を吐くと、黒いもやがハートの形になって空に消えていきます。

イカと似た生き物なので墨吐くことだってできます。

相手の視界を遮ったり、ハートを作ったようにコミュニケーションに使います。

今日もハート、そんなに新しい生活が好きになったのかな。

 

仕事の時間になったらそそくさと姿が見えなくなります。仕事の間は自分にとってもあいつにとっても自分だけの時間です。すっといっしょにいるわけじゃない。お互いの仕事が終わったら住処に戻ってきて団らんのときを過ごします。

ありのまま、ほしいまま、今を楽しむのが大事!!

 

あいつのことはよく分かっていない<ままですが、1つ分かっていることがあります。

自分の望んでいるものを自分に与え続ければ、あいつは何倍にも返してきます。

 

今自分が望んでいたのは新しい物語です。

 

ホタル、おかげさまで新しい生活ができています。ありがとう。

説明
魚戸ホタルたち「まどろみみっく」が今をうぃーうぃー楽しく過ごすお話です。
ホタルと新しい場所に引っ越しました。
そこでものんびり、ありのまま。
イカのような変な生き物、よく分かりません。でもそれでいいんです。世界には不揃いな窓があります。全部同じ形だったらつまらないでしょ。
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エッセイ 小説 まどろみみっく 魚戸ホタル ありのまま 架空生物 

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