DESTINY OR FATE-運命の輪ー第三話
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静かな午後の日差しが煌めく青の海の波間をキラキラと照らし出し、ヒエンと死神をとりまく時間の流れは、なんとも悠々としている。

 

「運命ね・・・・、でもまあ、死神として定められた俺の運命に比べれば、君たち兄妹のほうがまだましかもしれない。俺はずいぶん長い時の中を死者の魂を狩り取るためだけに生きてきた。なぜそんな運命の中存在しなければならないのかも分からず、どこへ自分自身が向かっているのかも分からない......本当にただそれだけ.......。」

 

死神の漆黒の瞳の中に揺らめく海の水面のまばゆい輝きは、とてつもない物悲しさを滲みだしていた。

 

「......死神さん、あなたの悲しみは私にはとうてい計り知れないものなのね.....。いつか、何らかの形で、あなたが本当に笑顔になれる日を心から願っているわ。ところで、狩りとった死者の魂はどこへ行くのかしら?もしかして、天国?」

 

「......そうだな、そう人間が呼んでいるところかもしれないな。」

 

「それってすてきね、死んで肉体を失ったさまよえる魂を、天国に連れて行ってくれるなんて......!」

 

ヒエンは昔から天国に憧れていた。この世の苦しみも醜さも悲しみも、全て消え去った至上の楽園。その憧憬についてはかつてヒスイに語ったことがある。

 

「ねえお兄ちゃん、天国ってどんなところかしら。」

 

ヒエンにとって、それはとても想像することのできない永遠の理想郷。誰にも命を狙われず憎まれることも追い回されることもない。どこまでもきれいに咲き乱れる美しい花畑や景色が広がり、無情なる周囲の冷酷さやしがらみに縛られず邪魔されず、思う存分ヒスイを心から愛することができるパラダイスであった。

 

そんな目も眩むようなまぶしすぎる話を、輝く笑顔で話す妹を、いつも優しい眼差しで受け止めてくれるのもヒスイだった。

 

「さあ、どんなところだろうな.........。」

 

ヒスイのヒエンを見つめる眼差しは、この上ないほどの温かい優しさを秘めるのと同時に、底知れぬ深い悲しみをも併せ持っていた。その憂いほとばしる兄のきれいな瞳が自分だけを映し出す瞬間、その瞬間だけがこの世における唯一の、彼女にとっての最高の楽園なのだ。

 

「......でもね死神さん、私は、血にまみれたお兄ちゃんを愛する限り、私とお兄ちゃんは天国には決して行けないわね。」

 

ヒエンは海を見つめながら悲しそうに死神に呟いた。

 

「........やっぱり知ってるんだな、君の兄貴が何してるのかを........。」

 

ヒスイがハインに与えられた任務それは、ハインの勢力拡大の野望に反する多くの政敵達の暗殺だった。自身の手を血に染めて以来、ヒスイはそれを隠すように黒い服を全身に纏い、ヒエンの真っ直ぐな瞳から目を背けるようになっていた。

 

日に日に取り返しのつかないまでに兄の手は血みどろになっていく現実。後戻りなどもうできるはずもないほどに愛する兄が堕ちていくのを思うと、どうしようもないほどに心が悲しみに引き裂かれていく。でも、たとえどんなに自分の瞳から悲しみと絶望の涙があふれだしても、この悲しみを超えてヒエンは真っ直ぐ、笑顔でヒスイを抱きしめることを決して諦めない。

 

(お兄ちゃんが血にまみれ悪魔になったとしても、私はお兄ちゃんが大好き.........どんな運命が待ち受けていようともヒエンは、決してお兄ちゃんを放さない。)

 

あふれだした涙をぬぐって顔を上げて、彼女のもとに帰ってきたヒスイを、いつも彼女は笑顔で強く抱きしめ続けた。

 

夕暮れの涼しい海風に吹かれながらヒスイを一心に愛するヒエンは気にも留めていなかった。遠くからハインの冷徹な嫉妬の目が、恐ろしいまでに自分と兄を鋭利に捉えていることを.......。

説明
双子の兄妹ヒエンとヒスイは生まれながらにして、人並外れた特殊な能力を有していたため、故郷の人々から忌み嫌われ命の危険にさらされていた。 ある日妹のヒエンを守るため、故郷の人々から放たれた憎しみの矢がヒスイの胸に突き刺さり生死の境をさまようことになる。 そんなとき死神が現れて、兄を必死に助けたいと願うヒエンに、死神が彼女につきつけた条件とは? 双子の兄であるがゆえにどんなに愛しても、愛するほどに拒まれて、求めるほどに遠くなっていく。それでもヒエンは双子の兄ヒスイを、何が何でも愛することも、抱きしめ続けることも決してあきらめない。 数奇な双子の切ないラブストーリー。運命の輪の終着駅は何処に!?
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死神 小説 ラブストーリー ,オリジナル,ファンタジー 双子 

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