ガールズ&パンツァー〜三者三様の生き方〜8 |
〜麻子の目覚まし〜
ある日の朝、ここは冷泉麻子の住む寮の一室。
朝が苦手な麻子が幾つもセットした目覚しは、どれもが設定時間を過ぎて様々なアラームが鳴り響いている。
1つでも煩いのに、それがいくつもあればどんなに朝に弱い人でも飛び起きてしまうような、もはや近所迷惑と言えるレベルの騒音だ。
そんな騒音の中、麻子は布団の中で身じろぎをするだけだった。
「ん、うるさい……けど、まだ、眠い……」
微睡みの中、布団を頭からかぶって耳障りな音を遮り、再び夢の中に突入しそうになったその時。
「まーこー! いい加減起きなよ! ていうか、外まで目覚しの音がうるさいんだけど!?」
幼馴染にして近所に住んでいる沙織が、ドアを勢いよく開けて入ってくる。
部屋中に響く目覚ましの音に顔を顰めつつも、耳を塞ぎながら目覚しの音に負けないようにと声を張り上げる。
合い鍵は以前、麻子から貰っている。
毎日ではないが、朝に弱い麻子の為に時々こうして起こしに来ているのだ。
沙織がいくつもある目覚し時計を1つ1つ止めていき、ようやく音が鳴り止んだころ。
麻子は布団の中で、もぞもぞと顔だけ出して沙織の方に顔を向ける。
その目はショボショボとしていて、今にも再び寝入ってしまいそうだ。
「……沙織か……おはよう」
「はいはい、おはよう……って、また寝ようとしない!」
目蓋が閉じ再び夢の世界に行こうする麻子を、沙織は布団を引っぺがしながら起こしにかかる。
「……むぅーりぃーだぁー。人間、朝早く起きるなんて出来るわけない」
「いや朝早くって、もうすぐ8時なんだけど。そう言いたいなら、せめて5時とか6時に起きてからにしなよ……って、もうっ! こんなことしてたら、また遅刻しちゃうじゃない! 大会で優勝したらこれまでの遅刻日数がチャラになるからって、この生活続けてたらすぐに戻っちゃうよ!? というか、まだ優勝出来るって決まったわけじゃないのに!」
もちろん優勝する気で試合に臨むつもりではあるが。
しかし優勝出来なければ大洗学園艦は廃艦となり、陸か余所の学園艦へと転校することになる。
だが仮に転校するとしても、麻子の膨大な遅刻日数が消えるわけではない。
このままでは留年確実と言えるほどに溜まった遅刻日数が、次の転校先へと丸々引き継がれてしまう。
引き継がれるだけならまだしも、場合によっては転入考査で落とされて転校自体出来ない可能性すらあるのだ。
それを心配して沙織は必死に起こそうとするのだが。
「大丈夫、やれるさ。私達なら絶対優勝出来る。これまでの練習と、頑張ってきた自分、そして仲間達を信じろ、沙織」
「良い事言ってるみたいだけど、今の状況だとただ二度寝するための言い訳にしか聞こえないから! いいから、起ーきーなーさーいー!」
「むぅ〜」
体を揺さぶられるも、麻子は中々起きることはなかった。
そして10分後。
なんとか起こすことは出来たが、まだ完全に目が覚めてないようで麻子は眠そうにフラフラしている。
しかしそこは慣れたもので、沙織は手早く身支度を整えさせ、引きずるようにして一緒に寮を出た。
走りながらの登校途中、事前に用意していた食パンを麻子に咥えさせて簡単ながらも朝食を済まさせる。
そして学園に付いたのは丁度予鈴が鳴るころ。
沙織の努力の甲斐もあり、その日は何とか遅刻を回避することが出来たのだった。
◇
「……なんてことがあってさぁ」
午後の戦車道の練習が始まる前のこと。
皆でご飯を食べようと車庫にあるW号の所に行くと、中で惰眠を貪っていた麻子さんを見つけた。
そんな麻子さんを呆れたように見て、沙織さんは私達にそんな苦労話を聞かせてくれた。
その時のことを思い出してか、どこか疲れたように溜息をついている。
「えーと、お疲れ様、かな?」
「ほんとだよぉ、あと少しであたしも遅刻するところだったし。もう、いつも起こす身にもなってってのよ」
「あ、あはは(確か原作の後半だと、多少はマシになってたような気がするんだけどなぁ)」
戦車道をしていると戦車以外のトレーニングも含めて中々の運動量になっているため、結構体は鍛えられるのだ。
私自身、少し体が引き締まってきたと思うし、確か麻子さんも戦車道のおかげで朝に弱いのが改善したようなこと言ってたはずだ……本当かどうかはわからないけど。
とはいえまだ始めて1ヶ月も経ってない程度だし、まだまだ麻子さんの体質も改善するには至っていないのかもしれない。
「いやね、別に起こしに行くのはいいんだよ? 相手が彼氏じゃなくて、ちょっと残念だなぁとか思う時もあるけどさ。仮にも幼馴染だし、麻子が朝弱いっていうのも知ってるし。でも、やっぱり起こして学園に来させるまでが大変でさぁ」
「毎度助かってるぞ、沙織。何なら毎日起こしに来てくれ」
「毎日起こしに行ってたら、あたしまで遅刻常習犯になっちゃうじゃない!? ていうか、感謝してるなら少しは自分で起きる努力してよ!」
「努力はしてるだろ、目覚し沢山買ったしな。だが、努力が実を結ぶとは限らないのが人生だ」
「諦めたらそこで試合終了だって、どこかの偉い人も言ってたけど!?」
「諦めず努力した人、その全てが成功を収められるわけじゃない。だけど成功した人はすべからく努力を続けた人だって、どこかの偉い人が言ってた。つまり、私の努力もいつかきっと実を結ぶはずだ……多分な」
何処かで聞いた覚えのある名言を言い合って、麻子さんは薄らと開けていた目を閉じて再び寝息を立て始めた。
それを見て「はぁ〜」と深い溜息を洩らした沙織さんは、自棄飲みとばかりにペットボトルのお茶を一気飲みする。
「心中お察しします、沙織さん」
「冷泉殿のこれは、もはや改善の余地なしかもしれませんね」
「う、うーん。どうだろうねぇ」
確かに今の麻子さんを見てると、将来的に本当に多少でも改善するのか自分の記憶が疑わしく思えてくる。
「これから練習試合も入ってくるし、少しくらい朝に強くなって貰った方がありがたいんだけどなぁ」
聖グロ戦の時のように起こしに行く度に空砲をかましていれば、ご近所さんの迷惑になっていつか苦情がきそうだ。
沙織さんが言うには、継続的に鳴り続ける目覚ましの騒音よりは、1発の空砲の方がまだマシなんじゃないかということだけど。
「……うーん、ちょっと西泉さんに相談でもしてみようかな」
それで解決するとは限らないけど、私達よりも大人だし、もしかしたら何か良い案を出してくれるかもしれない。
一応後で相談してみようと思いながら、購買で買ったパンをモソモソと食べる。
◇
「……えー、そんなことがありましてね。出来れば少々、久子さんに協力していただきたいと思いまして」
「ふん、そんなことの為に態々来るなんて。あんた、とんだ暇人だねぇ」
俺こと西泉幸夫、今回やって来たのは麻子ちゃんのご実家。
目の前にいるのは1人のおばあさん、冷泉久子さん。
鋭い目付きで厳しそうな雰囲気はあるが、その顔立ちはどことなく麻子ちゃんに似てる気がする。
最初こそ若干怪しい人を見る目で睨まれたが、事前に電話でアポは取っていたため結構すんなりと家に上げてもらえた。
普通の一般人という立場ならこう上手くはいかなかっただろうし、こういう時にこそ特別顧問という役職に就いていてよかったと思える。
家の中に入ると事前に用意していたのか、お茶とおはぎを振舞ってもらえた。
原作で見たお手製おはぎに舌鼓をうちながら雑談を交えつつ、俺は本題である柊ちゃんから相談された学校での出来事を話した。
そう、麻子ちゃんの実家に訪問したのは、麻子ちゃんの朝が弱い事への対策として、祖母である久子さんに協力を仰ぐためであった。
しかし話しを聞いた後、久子さんは呆れた表情を浮かべながら口を開く。
「あの子が朝弱いのは昔っからさ。今更あたしが何を言ったって、どうにもなりゃしないよ」
「あぁ、いえ。別に久子さんに説教してほしいわけじゃないんです」
「あん?」
久子さんがどうこう言ったところで、朝に起きれるかどうかは別というもの。
こればっかりは戦車道を通して朝が弱い体質が改善されていくのを待つか、何か工夫を凝らさないとだめだ。
今回は、後者の工夫を凝らす方向で。
「麻子に説教しろってんじゃないなら、いったいあたしに何をさせようってんだい?」
「えぇ、実はですね……」
口にした俺の頼みに眉をひそめて怪訝そうにしつつも、それくらいならと久子さんは協力を快諾してくれた。
あとは、これで上手くいってくれればいいけど。
◇
それはまたある日の朝、麻子が住む寮の一室。
朝が苦手な麻子が幾つもセットした目覚しは、今日も設定時間を過ぎてアラームが鳴り響いている。
そして麻子は今日もまた、布団の中で身じろぎをするだけで起きる気配はなかった。
「ん、朝……まだ、眠い……」
微睡みの中、布団を頭からかぶって耳障りな音を遮り、再び夢の中に突入しようとする。
その時。
『いつまで寝てんだい!? さっさと起きな、この寝坊助!』
「ひっ!? お、おばぁ!?」
アラームの中で聞こえてきた、ここにいるはずのない祖母の声で麻子の眠気は一気に覚めた。
ガバっと布団から飛び起きて周りを見る。
しかしどこを見ても、祖母の姿は見当たらない。
『まだ起きないのかい? まったく、ほんとどうしようもない子だね! 今度、帰って来たら覚えときなよ!?』
「お、起きた! 起きたから! というか、おばあ? ど、何処だ!?」
再び聞こえてくる祖母の声に返答しつつ、声がどこから聞こえてくるのか探す。
すると、1つだけ自分で買ったものではない時計があるのに気が付いた。
それは昨日、特別顧問である西泉幸夫が「これをあげるよ。ちょっと特別製でね、きっといい目覚めを提供してくれると思うよ」と言って渡してきたものだ。
『麻子! いい加減に起き……』
その目覚しのスイッチ切った時、祖母の声もぱったりと途切れた。
他の煩く鳴り響く時計も全て切り、ようやく部屋が静かになる。
周りの時計を見れば、いつもようやっと目を覚ます遅刻ギリギリの時間よりも、ずっと早い時間に目が覚めたようだ。
「……朝御飯、食べるか」
少し釈然としないものがある中、麻子は布団を片付けて朝食の準備を始めた。
思えば、こんな余裕のある朝食も久しぶりだったか。
コップに注いだ牛乳を飲みながら、そんなことを思う麻子であった。
なお、麻子の早起きは3日でいつもの状態に戻ってしまった。
人とは慣れる生物であるということを実感した幸夫と京子は、これからもあの手この手で麻子を起こすための算段を立てることになる。
きっとそれは原作のように、麻子が戦車道を通して体質が改善されるまで続くのだろう。
〜猛特訓月間〜
「さて、今週の土曜がついに最初の練習試合の日だけど。皆の仕上がりはどんなもんかな? 柊ちゃん」
「実際は最初じゃないんですけどね。まぁ、以前聖グロとやった時よりは、皆も腕は上がってると思いますよ。新しく入った人達も皆に追いつこうと必死に練習について行ってるみたいで、練習試合までにはある程度の連携も取れるようになってるんじゃないですかね?」
「うんうん、それは何よりだ」
そうじゃなければ、せっかくの練習試合の意味がない。
「……と、ところで、そろそろ教えてくれてもいいんじゃないですか? 練習試合の相手について」
「気になるのはわかるけど……前にも言ったろ? 今は自分たちの地力を上げることだけ考えてればいいって。その理由も教えたじゃないか」
「それはそうですけど、どうしても気になって!」
実は練習試合をすると決まった日から、相手チームについては当日のお楽しみということで秘密にしてきた。
今は相手チームに興味を持つより、自分たちの地力を上げることを優先させる必要があると考えたからだ。
ついでに突発的な状況、作戦のわからない相手との試合に慣れてもらうため、情報収集をさせないようにするという理由もあったりする。
先に相手について情報を与えたりしたら、情報収集をするために優花里ちゃんが例の如く突貫していきそうだし。
「(本番の時ならともかく、練習試合でまで潜入させるのもあれだしな。てか、作戦立てさせるのにも、やっぱり地力がある程度は必要だし)」
潜入するにしても時間はそれなりにかかるし、そんなことする時間があるなら今は1人1人の地力をつけさせ、全体の連携を高めることに集中して欲しかったのだ。
それにしてもとうとう練習試合も間近にせまったことで、柊ちゃんもかなり焦れてきているらしい。
何度か説明はしているのだが、今回は中々に聞き分けが悪い。
だけど、俺はニヤリとしながら秘密を貫く。
「まぁ、楽しみにしときなよ。きっとビックリすると思うから」
「……知ってる高校ってことですか?」
「知ってる……あー……うん、まぁ、それも含めて秘密だ」
「えぇ〜」
不満そうにする柊ちゃん。
若干能力が発動してるのか、相手チームについて話してしまいたい気持ちになるが、グッと耐える。
全ては当日の皆、いや主に柊ちゃんの反応を楽しむために。
「(こういうサプライズ、実は結構好きなんだよなぁ!)」
当日のサプライズを楽しみにしながら、柊ちゃんが無意識に発動している能力をなんとか耐え続ける。
そして時はあっという間に流れて、練習試合当日。
練習試合1チーム目
「……西泉さん」
「んー? どしたよ」
「……あの、私がおかしいんでしょうか。それとも、この世界が……」
「……んー」
「ははははは! ゆけ、我が黒の騎士団よ! 大洗の奴等に、本物のイギリス戦車道の戦術を見せつけてやるのだ!」
「了解! フルスロットルで行くよ!」
「ちょっと、ルル! 先行し過ぎよ!? スザクも素直に従ってないで、少しはルルを止めてよ!」
「というか、また黒の騎士団って変な名前つけて。ルルーシュって好きだよなぁ、そういうの」
「まぁまぁ、いいじゃないの楽しければ! ほら、早くしないとルルーシュ達が孤立するわよ? 全軍ルルーシュに続け―!」
一輌の戦車の全速前進に少し遅れながらも、多くのイギリス戦車が追随し砂埃を上げながら進む。
作戦などないかのような動きを見せられ、油断する大洗チーム。
しかし中盤からの彼らの駆る戦車の動きは、歴戦の戦車乗りを思わせる統率の取れたものへと変貌していた。
どこぞの突撃思考の戦車道チームを彷彿とさせた突撃は、相手の油断を誘うために事前に計算し尽くされた戦術的突撃だったのだ。
「……この世界、ナイトメアフレームってありましたっけ?」
「技術的に、流石にロボットはまだ無理じゃないか?」
ここは戦車道という特殊な競技が盛んな世界のため、様々な方面で技術が発達している。
とはいっても、まだ2足歩行ロボットが自由自在に動き回れるレベルには至っていないだろう。
というかあのレベルのロボットが作れるようになるなんて、数世紀は先な気がする。
若干白目になってる柊ちゃんを横目に、ニマニマしながらそんなことを考えていた。
―――対戦校、アッシュフォード学園―――
そして更に時は流れて、次の練習試合当日。
練習試合2チーム目
「……西泉さん」
「んー?」
「……やっぱり、おかしいですよこの世界」
「……んー」
「……諸君、私は戦車道が好きだ。諸君、私は戦車道が好きだ。諸君、私は戦車道が大好きだ。殲滅戦が好きだ、電撃戦が好きだ、防衛戦が好きだ、包囲戦が好きだ、突破戦が好きだ、退却戦が好きだ、掃討戦が好きだ、撤退戦が好きだ。平原で、街道で、草原で、凍土で、砂漠で、泥中で、湿原で……この地上で行われる、ありとあらゆる戦車道試合が大好きだ……」
ドイツ戦車が横一列に並ぶ中、前に出た隊長車の上で拡声器を手にする丸眼鏡をかけた小太りの男。
その男の試合前に行われた演説は、鼓舞するためとは思えないほどに低く静かで、だがとても力強く周囲に響き渡る。
それは離れた位置にいる大洗チームにも届いており、誰もが緊張のあまり固唾を飲む。
肝が据わっているサメさんチームの面々ですら冷や汗を流すほど、と言ったらその凄さを多少は理解してもらえるだろうか。
相手チームの1人1人が演説により心を震わせ、戦意が高められていく。
そして最後に男は、異様に堂に入った演説で委縮する大洗チームを見つめて……。
「ミレニアム大隊各員に伝達、大隊長命令である。さぁ、諸君……地獄を創るぞ」
「……この世界、吸血鬼とかグールとかっていたりするんですか?」
「さぁて、どうだろう。俺は見たことないけどなぁ」
あの学校では隊長が3人いて、試合ごとにジャンケンで隊長を決めてるらしい。
1人はあの小太りで、眼鏡をかけた白いスーツ姿の男。
1人はがっしりとした体格で、眼鏡をかけ、無精髭を生やし、白いオーバーコートを着た、胸元の十字架のアクセサリーが特徴的な男。
そしてもう1人は丸いサングラスをかけ、血を思わせるような赤いオーバーコートに赤い帽子をかぶった長身の男。
この3人が対戦校の隊長達だ。
3人とも学生にしては些か老け顔で、20代を越えてると言われても信じるだろう。
ちなみに彼等は異様に仲が悪いらしい。
それぞれのパンツァージャケットが統一感のないバラバラなのも、自分の趣味の他に「あいつらと同じ服を戦車道でまで着たくない」という理由からだとか。
パンツァージャケットだけでなく、戦車もそれぞれの趣味に合わせたものというのだから中々に筋金入りだ。
多分その仲の悪さは、あのBC自由学園以上じゃないだろうか。
「(でも隊長以外は、別に仲が悪いっていう話しは聞かないんだよなぁ)」
というか普通に他の人達の仲は良いみたいだ。
試合ごとに隊長となった人が考案したパンツァージャケットを、何の文句も言わずに皆で着てるらしいし。
「というか、何であの人達同じ学校にいるんですか!? 色々おかしいでしょ!?」
「はっはっはっはっは! そーだなー!」
絶叫を上げる柊ちゃんに、その反応が面白くて爆笑しながら答える。
―――対戦校、ヘルシング高校―――
そして更に時は流れ、最後の練習試合当日。
練習試合3チーム目
「西泉さんっ!」
「もういい加減慣れようよ、柊ちゃん」
「……む、む、無理ですぅぅぅぅう!!!」
「はぁ、やれやれだぜってやつだ」
「いっけー! 東郷さん!」
「狙い撃ちます」
「うーん、私達が中学生だからかな〜? なーんか油断してるみたいだね〜」
「まったく、戦車道に中学生も高校生もないっつうの! なめてんじゃないわよ!」
「ふっふっふ、ならば存分にお見せしよう! 私達の女子力の高さを! 樹、総攻撃のチャンスよ! 砲撃準備を呼びかけて!」
「う、うん! 各車に通達! 総攻撃のチャンスです、砲撃準備を整えて合図とともに砲撃を開始してください! よく狙って、正確に!」
『了解!』
相手は中学生チーム、しかも主に日本の戦車を使っている。
そういうことから最初のアッシュフォード学園とは違う意味で、大洗チームの心には油断があった。
「流石に中学生には負けるはずがない」、「日本の戦車はそこまで強くないから撃たれても平気」等々、それぞれの内心は容易に察することが出来た。
しかし蓋を開けて見れば、誰もが驚愕することになる。
急所を狙った正確無比な砲撃は、まさに一撃必殺。
連携の取れた動きは徐々に大洗を追い詰め、経験の浅さと動揺している隙を見逃さない勘の良さでチャンスをものにする。
中学生だからと油断など、ましてや侮っていい相手ではなかった。
彼女達は練習試合をした他の高校生チームと比較しても、勝るとも劣らない強さを持った強豪チームだったのだから。
「(……というかこれまでの相手の実力や練習試合の目的を考えて、俺が油断して勝てるような相手を選ぶわけないって気付いてほしかったんだけどなぁ)」
とはいえ結果としては負けたものの、途中から気を引き締められたのかそれなりに接戦出来てはいた。
今回もいい経験にはなっただろう。
「バ、バーテックスが攻めてくるのって西暦の何年でしたっけ!?」
「えーと……確か2015年、だっけ? そこら辺の細かい所までは、流石にあんまり覚えてないけど」
「あと3年……3年でどうにか! ……どうにかって、どうすれば!?」
「そもそも西暦時代と神世紀時代の子達が勢ぞろいしてる時点で、原作なんかすでにぶっ壊れてるって気付こうよ」
おまけに人によっては住んでいた地域が違うはずなのに、みんな同じ中学に通ってるという事実。
ゆゆゆい時空かよと。
最初彼女達の存在を知り、友奈ちゃんズが勢ぞろいしてるところを見て、ちょっとした感動を覚えてしまった。
おまけに銀ちゃんも一緒に中学に通ってるのを知った時は、不覚にもほろっと涙が出てしまったものだ。
銀ちゃん、結構好きなキャラなんだよなぁ。
「西泉さん! 私、一体どうすればいいんですか!?」
「知らんがな」
流石に3度目ともなると柊ちゃんのリアクションにも慣れてきて、俺の対応もいつも以上に雑になってしまう。
慣れって恐ろしいな。
―――対戦校、讃州中学―――
ズズッとコーヒーを啜る。
うん、今日もいい感じに淹れられた。
「ま、ちゃんといい練習にはなっただろ?」
「それは、まぁ、そうなんですけど」
予定していた練習試合が全て終わり、場所は大洗学園艦に戻り顧問の待機室。
そこで俺と柊ちゃんは向かい合って座っていた。
納得いかないという思いがありありと伝わって来る不満顔で、柊ちゃんは俺が入れたコーヒーを静かに飲む。
個人的に柊ちゃんが俺の淹れたのを飲んでくれるようになったのが、ここ最近で一番うれしい出来事だったりする。
警戒心の強い小動物が、少しだけ心を許してくれたみたいで微笑ましさすら感じる。
「柊ちゃんも、色々タメになったんじゃないか?」
「否定はしませんけどね。実際、大洗だけで練習してただけでは、わからなかったことも多かったと思いますし」
これまでやってきた3回の練習試合は、試合もだけどそれ以上に試合後の感想戦に重きを置いてやってきた。
フィールドマップを用いて、お互いの動きを始めから終わりまで見直すのだ。
お互いにどういう作戦をもって行動していたのか、各々の動きの是非、改善点の洗い出し等々。
他にもそれぞれの役割ごとに集まっての意見交換会、という名のお喋りは中々に話が弾んでいたようだ。
アッシュフォード学園とヘルシング高校の2校は男女混合メンバーという関係で公式戦への出場経験自体はないが、非公式で行われている様々な大会にはよく出場している。
非公式ということで、たまに大人も混ざってくるような大会もあるにもかかわらず、2校とも普通に大人チームを倒したりするなど戦績もかなりいい。
もし公式戦に参加していても、普通に上位を狙えるレベルはあるだろう。
そして讃州中学は、なんと去年の戦車道全国中学生大会において、準優勝した実績がある学校なのだ。
今回の練習試合を見ても、他の2校同様に高校生大会の上位校とも渡り合える実力はあるというのが俺の見解だ。
特にあの正確無比な東郷ちゃんの砲撃は高校生、いや学生どころか大人チームの砲手と比べても引けを取らない腕はあった。
いやはや、末恐ろしい実力だ。
「(それにしても讃州中学の子達、自分達も今年の大会の調整とかで忙しいだろうに。よく今回の練習試合に参加してくれたなぁ)」
掲示板で打倒黒森峰を掲げていたから、それで応援してくれたという予想が濃厚だ。
彼女達も俺達同様に、打倒黒森峰を目標として掲げているだろうから。
なにせ前回の中学生大会において準優勝は讃州中学であり、優勝は黒森峰の中等部だったのだから。
「(他の2校と戦った後で、大洗の子達も実力がついてきた頃の試合だったからな。きっと讃州中学の子達にとっても意味のある試合だった、よな?)」
そうであったらいい思う。
たまに油断やちょっとしたミスもあるけど、大洗の子達もやる気やその才能もあってか、最初の頃と比べて本当に成長したと俺の目から見ても思えるから。
「……思い返せば、ずいぶんハードスケジュールでやってきましたよね。2週間おきに1度のペースで練習試合とか」
「それくらいやらないと不安だろ? 皆が、というか柊ちゃんがさ」
「ははは、流石西泉さん。よくお分かりで」
「なんだかんだで1ヶ月以上は一緒に行動してるんだ。それくらいは分かるさ」
実際、普段の練習の後も柊ちゃんに付き合わされて一緒に他校の試合映像を見たり、指揮の練習として兵棋演習を何度もやらされてきた。
慣れてない俺じゃなく、過去に色々と逸話のある蝶野さんに付き合ってもらえばいいのに、と思ったら蝶野さんが来てる時は普通に蝶野さんともやってるらしい。
他にもここにある資料を読み漁ったり、通販で専門書を購入して読み込んでいるという。
学校の勉強もあるだろうに、柊ちゃん個人のスケジュールが本当にハード過ぎる。
「(俺が休むように言っても、目の届かない所で無茶されるとどうしても管理しきれないし。ほんと皆には感謝だなぁ)」
皆の話しによると俺が休むように説得した後、放課後に別の場所で戦車道の勉強をしていると聞かされたことがある。
だから俺の目の届かない所では他の子達にフォローを頼んで、休む時にはしっかり体を休めてもらうようにしている。
そのおかげか疲れは見えるが、今のところ体調を崩した様子はない。
「(柊ちゃんの頑張りに引きずられてか、他の子達の実力もめきめき上がってるし悪いことばかりじゃないとは思うけど。それで体を壊したらことだしなぁ。やっぱ、どれだけ練習や勉強しても、不安が拭えないんだろうな)」
自分の指揮にかかる責任の重さもあるが、心の中での比較対象が大きな存在だからだろう。
柊ちゃんが比較しているのは、間違いなくみほちゃんだ。
小さい頃から戦車道に関わり続けてきた、本来なら大洗にいたはずの原作主人公。
作中の様々な活躍から、ガルパンファンの間では軍神とまで呼ばれている。
経験も、才能もみほちゃんに敵わない。
その差を少しでも埋めるためには、もっと努力しないといけない。
そう思っているに違いない。
「(……俺の目から見れば、いい勝負出来ると思うんだけどなぁ。今のみほちゃんと柊ちゃんだったら)」
口には出さないが、俺としては内心そう思っていたりする。
妹贔屓だったり原作知識を抜きにしても、みほちゃんは才能に溢れた子だとは思う。
だけどその才能を本当の意味で開花させたのは、西住流に染まった黒森峰から離れて大洗に来てからだ。
むしろあのトラウマとなった出来事を見事に乗り越えた精神力、仲間と繋いだ絆、信頼関係により出すことの出来る自信を持った指揮、西住流に囚われない柔軟な思考等々、原作と比べて今のみほちゃんに欠けている点はいくつもある。
「(というか俺からすれば、柊ちゃんもみほちゃんに負けず劣らず才能があると思うんだけどなぁ)」
本人に言っても信じないだろうから言いはしないけど。
柊ちゃん自身の勤勉さもさることながら、練習や練習試合を繰り返していくごとに自信もついてきたらしく指揮に迷いも無くなってきた。
なにより原作のみほちゃんを彷彿とさせる直感力が、この短い期間の中で目覚めつつあるのに俺は気づいていた。
事実、讃州中学戦で百発百中と思われた東郷ちゃんの砲撃を何度も回避し、相手戦車に近づいて近距離での激戦を繰り広げていたし。
その姿に最初の頃の柊ちゃん達を知る蝶野さんは、本当に驚いた様子で「凄いわね、まるで別人みたいよ」などと言葉を漏らしていた。
「(能力の影響も多少はあるんだろうけどな……だけど、みほちゃんばっかり意識してるけど、他にも気を回さないといけないことはあるんだぞ? 柊ちゃん)」
それは黒森峰にも同じ転生者がいるかもしれないということ。
俺や柊ちゃんと同じとすれば、何かしらの能力を持ってる可能性はあるだろう。
そしてなにより、実際にはみほちゃんだけじゃなくて、まほちゃんも含めた黒森峰が相手ということ。
転生者の存在に加え、まほちゃんとみほちゃんという西住姉妹のいる黒森峰は、原作よりも攻略難易度が高くなっているはずだ。
「(俺の見立てだと皆の練度は、もうとっくに劇場版レベルはあると思うけど……)」
俺も手を貸して各戦車の改造は終了済みだし、途中参加のメンバーもすでに揃っている。
練習試合を通して、実戦経験も着実についてきている。
それでも相手の事を考えれば、大会で優勝するにはまだ物足りなく感じてしまうのが実情だ。
それに黒森峰だけでなく、他の学校だって決して弱くはない。
どれだけ準備を重ねても、どれだけ練度を上げていても、万が一がないと言い切れないのが戦車道の怖い所だ。
だからこそ、そんな不安を払拭するための最後の1押しは必要だろう。
「そうだ、柊ちゃん。言い忘れてたけど最後にもう1試合、練習試合が入ったから」
「……は? ちょ、そんな急に!?」
「いやぁ、大会前の最終調整に、もう1試合どうかって言ってくれてさ。協力してくれるっていうのに、断るのも悪いかなって思って」
「もう1試合どうか? ってことは、前にやった3校のどこかですか?」
「いや、どこかっていうか……3校全部?」
「……え?」
「最後の調整相手は、アッシュフォード、ヘルシング、讃州中学の連合軍。大会決勝戦のルールを採用して、20輌相手のフラッグ戦だ」
「……え、えぇぇぇぇ!?」
3校の精鋭が集まる最後の練習試合。
しかもその最後のために、合間を見て集まって足並みをそろえる練習もしておいてくれるという。
つまりチームワークも万全、とは言えないにしろ整った精鋭が相手になるわけだ。
大会前の最後の調整相手として、申し分ない相手だろう。
「(頑張れよ柊ちゃん、君はもう十分に隊長として成長してるんだ。あと必要なのは仲間を信じて、ここぞって時に1歩を踏み出す勇気を手に入れること。それが出来るかどうかが、優勝を決めるカギになる……んじゃないかなぁ?)」
真っ白に燃え尽きたボクサーのように突っ伏している柊ちゃんを他所に、内心で曖昧な応援をしながら俺は再びズズッとコーヒーを啜るのだった。
〜辻廉太は評価する〜
文部科学省学園艦教育局長室。
その部屋の主である男、辻廉太はいくつもの書類に目を通していた。
内容は各学園艦のこれまでの実績、在校生の数、来年の入学希望調査といった、現存する全ての学園艦の詳細な情報が書かれたものだ。
「ふむ、この学園も近年の入学者減少が著しい様子ですね。ここも候補の1つとしましょうか」
使い慣れた万年筆でサラサラと文字を書き、分けられた紙の束の1つに置く。
学園艦の統廃合を進める中心人物である辻は、こうして全体の学園艦の現在の様子を見て廃艦候補となる学園艦を探していた。
文科省が掲げている学園艦の統廃合政策。
維持費や運営費を削減して国の財源を確保するため、かねてから少しずつ進められていた政策だ。
学園艦に住む人員の移動手続き、廃艦後の受け入れ先の調査、職の斡旋と、やることも多いためいくつもの学園艦を廃艦にするわけにもいかないが1、2艦でも廃艦させられれば、それだけでも少なくない費用が削減出来る。
「やれやれ、ようやく形になってきましたね。ずいぶんと手間がかかってしまいましたが……ふふふ、これで私の発言力もさらに上がる事でしょう」
この政策は以前、辻が議会で立案した政策だ。
主目的としては言った通り、自身の発言力を上げ、立場をより確実なものとするためという裏があった。
とはいえこの政策が成功すれば国の財源を増やし、他の政策に資金を回すことが出来るようにもなるため、間違いなく国のためになる政策と言えるだろう。
「これは必要な事なのです。そう、国のためにもね」
そう呟きながらほくそ笑んでいると、ドアをノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
「失礼します、局長」
「どうかしましたか?」
浮かべていた笑みを消し、入室して来た男に対応する。
その男は各学園艦の情報を調べさせていて、辻にとって有能な右腕と言える存在だった。
「大洗の学園艦の件で報告が」
「大洗? ……あぁ、そういえば彼女たちの動向を調べさせていましたか」
大洗学園艦、それは辻の中で廃艦候補から廃艦決定へと認識を移行していた学園艦の1つだ。
部活動でろくな成績も上げられず、年々入学者数も減少し、無駄に歴史だけはあって艦の老朽化もそれなりに進行してきている。
まさに廃艦第1号としてぴったりな学園艦だと思い、少し前にその旨を大洗女子学園の理事長に伝えたのだ。
だが、そこに反対の声が上がった。
大洗女子学園の生徒会が、わざわざ出向いて抗議してきたのだ。
だがすでに廃艦の準備のために、各方面への根回しは進めている状況で撤回など出来ようはずもない。
そんなことをすればこれまでの根回しが全てパーになり、下手すれば自身のキャリアにも傷がついてしまう。
なんとしても説得しなくてはならなかった。
しかしどれだけ理路整然と説明しても聞き分けが悪く、彼女達は頑として諦める様子を見せない。
そんな彼女達にイライラして、つい「戦車道の大会で優勝でもすれば考えましょう」などと口を滑らせてしまったのだ。
「あれから何か変わった事でもありましたか?」
「はい。先日、アッシュフォード学園と練習試合を行ったようです」
「……アッシュフォード、学園? はて、とんと聞き覚えがありませんが。いったいどこの学園艦でしたか?」
「学園艦ではなく、陸の学園です。男女混合のチームで公式大会には出場記録がありませんが、非公式の大会には何度か出場しているようです」
「はぁ、なるほど。それで、試合はどうなったのですか?」
「大会と同様にフラッグ戦を行っていたようです。開始から3時間経過後には大洗の半数が戦闘不能に追いやられ、最終的にフラッグ車も撃破され大洗の敗北となりました」
「……まぁ、そうなるでしょうね。むしろ3時間も良くもったと言うべきか。それとも相手の学園も、大洗同様に弱小集団だったのでしょうかねぇ。大会への出場経験すらない学校のようですし」
スッと眼鏡の位置を直しながら、辻は小馬鹿にしたように感想を零す。
「戦車道連盟の知り合いに秘密裏に問い合わせたところ、どうやら大会までにあと何度か練習試合を計画しているようです」
「くっ、ふふっ……なんとまぁ、諦めの悪い子達でしょう」
男の言葉に思わず失笑してしまう。
辻は戦車道の事はよく知らない。
なにせ子供の頃から、ろくに部活にも入らず勉強漬けの日々だった。
しかしそのおかげで良い高校、良い大学を卒業し、そのままエリートコースを驀進して今の地位に上りついたのだ。
2年後に日本で行われる戦車道世界大会に際し、国内のプロリーグ設立に携わる立場となったため少しは調べはしたが、それでも所詮は素人に毛が生えた程度の知識でしかない。
そんな辻ではあるが、念のためと警戒して見ていた聖グロとの試合内容は、未熟な知識しか持たない辻にでもわかるくらい無様なものだった。
「もはや、ここまで来ると憐れみすら感じてしまいますね」
戦車道の事をよく知らない辻ではあるが、簡単に努力が実るものでないことはよく知っている。
これまで娯楽という娯楽を全て投げ捨て、勉学に身を捧げ、そうまでしてようやく今の地位に就くことが出来たのだから。
今更何度か練習試合を入れたところで、いったい何が変わるというのか。
「今後はどうされますか? 大洗の調査は続けた方がよろしいでしょうか?」
「いえ、もう放っておきましょう。契約書まで書かされてしまった以上、警戒を怠らないようにしていましたが……ふっ、彼女達にはその手間すら不要です」
聖グロとの試合の後、再び訪れた大洗の生徒会、そして戦車道の隊長を名乗る少女。
彼女達の涙ながらの懇願に仕方なく契約書を書いてしまったことは、後になって迂闊な事をしたと後悔したものだ。
正式な契約書を書いてしまった以上、彼女達が優勝してしまったら本当に廃艦を撤回しなければならなくなる。
生来の性格からか、辻は慎重だった。
もしあの無様な試合が辻に自分たちの実力を見誤らせ、契約書を書かせるためのブラフだったら?
そんな“if”が頭を過ぎり部下に調査をさせていたが、今回の知らせを聞きその心配は杞憂だったと判断を下す。
そもそも大会でも優勝候補とされる聖グロとせっかく練習試合が出来るというのに、わざとあのような無様を晒す必要はないはずだ。
それに大洗が今年出来たばかりの素人集団ということも失念していた。
迂闊にも契約書を書かされてしまったことで、どうやら自分は少し慎重になり過ぎていたようだと辻は自嘲する。
あれが大洗の実力、そこに間違いはないだろう。
「ふふふ、今更ですが契約書を書いたことは正解だったかもしれませんね。これで彼女達に、すんなりと廃艦を認めさせることが出来るのですから。さて、大洗の調査は終了とし、貴方には別の案件をお任せするとしましょう。この学園について、少し調べて来てもらえますか?」
「承りました」
男は辻から書類を預かると、一礼をして部屋から出て行った。
1人になった部屋の中で、辻は立ち上がり窓から外の景色に目を向ける。
「……彼女達では大会で優勝するなど夢のまた夢、1回戦ですら突破することなど叶わないでしょう。まぁ、1回戦でもし万が一勝つことが出来たら、少しは有名どころの学校への編入を推薦してあげましょうかね」
窓ガラスに反射して映るのは、自身の勝利を微塵も疑っていない辻の不敵な笑みだった。
(あとがき)
久しぶりにガルパンの小説を投稿しました。
今回は他の作品との若干のクロスオーバー。
この3作品にしたのは最近久しぶりにアニメで見たからとか、その作品の小説を書いていて印象に残っていたからという理由で深い意味はないです。
なお、あくまでもキャラクターだけクロスであり、別にこの世界にオカルト関係の存在があったり、バーテックスが攻めてきて世界を火の海にしたり、超科学で裏ではとんでもロボットが作られていたりとか、そういうことはありませんのであしからず。
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8作目 | ||
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