ジャズの流れる喫茶店と翼の生えた楽器の往く先(How the trumpet with wings gets its groove back)
説明
「「唄う港町」郊外の海沿いの道路脇に建つ、
蓄音器を改装した喫茶店からは、
店主のコレクションでもある
ジャズのレコードの音色が、
いつも店の外にまで聴こえていた。
そこにふらりと
翼の生えたトランペットが
店を訪ねて来た。
「よぉ、ヒマそうだな」
どうやらトランペットと店主は
顔なじみのようである。
「随分なご挨拶だな。
夕方から忙しくなるから
今の内に休んでるのは
分かってるだろうが」
店主は新聞から目も離さずにぶっきらぼうに応えた。
「お前さんこそ、マリンブルー通りで演奏してたんじゃないのか」
「マリンブルー通り」と言うのは「唄う港町」の
商業が盛んな地域にある通りで、
多くの観光客や買い物客(や酔っ払い)、
そしてストリートパフォーマーで
一年中賑っている所である。
翼の生えたトランペットも
いつもであれば今頃は
観光客相手に
「マリンブルー通り」で
演奏をしている筈なのだが―
「いやさ...今日もいつもの場所で
演奏しようと思ったら、
先客が居てさ。
何か先進諸国か何処かから来た
ジャズバンドらしいんだけどさ。
しかもソイツらいつまでも退かないし、
人だかりも凄いし、
だからと言って他で演奏しようと思っても、
既に場所を取られてたり、
そうじゃなくても普段から混んでるしそれに―」
「演奏も敵わないから、
その場をすごすごと退散した...と言った所か」
「......。」
どうやら図星だったようだ。
トランペットは暫く口(?)をパクパクするような
仕草を見せた後、
「いや、だって...ソイツらさぁ、
「エヌエスエヌ」だか「チックタック」だか
何だか知らないけど
そう言うのを活用してて
人気なんだとかで
それであんだけ人も集まって―」
「彼らが何を活用して
人を集めているのかはどうだっていい。
演奏はどうだったんだ!?」
トランペットは暫し黙りこくった後、
こう続けた。
「...最高だったよ。
特にトランペットのソロなんか
オレがどんなに頑張っても出せない音―
いや、あれはグルーヴ感って言った方がいいのか?
勿論、観客だって大盛り上がりさ。そして―」
言葉を切ってからさらに続けた。
「悔しい、なんて感情すら微塵も起きなかったさ。
ただ、『オレは負けた』って感じだったね。
オレはソイツらに
演奏面でも技術面でも―
それに熱量さえも...
どんなに逆立ちしたって敵わないって...」
トランペットの声(音)は徐々にか細くなって
消え入りそうになっていたが、
すぐに元の調子に戻って言った。
「ああ、オレ様の
マリンブルー通りのトップパフォーマーとしての活動も
これで終わりだな。
それはそうと、この店で今
ライブミュージシャンを募集していたり...ってのは―」
トランペットは何やら
上目遣いらしき仕草をしているのであろう角度を取って
店主を見つめたが、
「専属のプレーヤーだったら間に合っているぞ」と言う
素っ気ない一言だけが返ってきたのだった。

「はぁぁぁ...、
オレ、遂に音楽の神様からも
見放されちまったのかも知れないなぁ。
こうなったら演奏活動、マジで止めよっかなぁ...」
「楽器が演奏を止めてどうするつもりなんだ?」
「どうする...って...まぁ、何かかんか旅にでも出たり、
魔法生物らしさを生かした何かでも
始めてみる、とか...。
あ、先進諸国で話題になってるらしい
「ブイチューバ」ってのもやってみよっかな。
そもそもそれが一体どう言うヤツなのかは
全然知らないけど」
「まぁ、お前さんの選択には
こちらがとやかく言うつもりはないが、」
店主は新聞から目も離さずに言葉を続けた。
「何になったとしても、
オイルとグリスを塗るのとプロ意識は忘れるなよ」

店主は時折コーヒーを啜ったり
煙草を吸っている間
相変わらず新聞から
片時も目を離さなかった。
翼の生えたトランペットは
暫くその場に留まって
店内で流れ続けているレコードを
黙って聴き続けていた。
前に店主が一番のお気に入りだと
話していたレコード。
音盤に記録されている
その場でしか奏でることの出来ない音、
そして初期衝動。
やがてトランペットが呟いた。
「...オレ、明日またマリンブルー通りで演奏してみよっかな...。
どんなに「エヌエスエヌ」や「チックタック」ってのに頼ったり
ソイツらに敵わなくたって、
オレはオレのその時にしか出せない音や瞬間で
お客さんを楽しませてみたいな、って。
このレコード盤での
白熱した即興演奏みたいにさ。
柄にもなくこんな事言うのも
何だかこっぱずかしいんだけどさ...。
まぁ、「エヌエスエヌ」や「チックタック」ってのも
何なのかは全然知らないけど楽しそうだし...」
「そうか」
店主は読み終えた新聞を脇に置くと、
夕方の営業の支度を始めながら
こう言った。
「ま、お前さんのいつもの事だ。
演奏をやめる、などと言って放り出しても
暫くしたらまた演奏したくなるだろうとは
思ってはいたし、
グチを吐くためだけにここに来るなって
何度言っても
また来るんだろうな...。
好きにすりゃいいさ。ただし」
そこまで言ってから一言、
釘を刺しておくことを忘れなかった。
「何度でも言うが専属プレーヤーだったら間に合ってるからな」」


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The trumpet with wings seemed to have
something on his mind
when he stopped by a coffee shop
where jazz music could be heard.

(※BingChat、DeepL翻訳を使用・一部改変しております)
(BingChat, DeepL translation used and partially modified)

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完成後にA4(210×297)サイズ程に切り取った水彩紙に
水彩絵の具、水彩色鉛筆で描いたもの。
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