涼州戦記 ”天翔る龍騎兵”3章12話 |
第3章.過去と未来編 12話 馬超、窮する
望まぬ激突より3日後、曹操は済北、鮑信の居城に居た。
部下達(特に夏侯惇)は馬超が予州へ戻ろうとしているのを知って自分達も戻らないと陳留が危ないと心配していたが、あまり心配していなかった。
なぜなら馬超が予州に戻り全軍を纏めたとしても、今回のことで馬騰はしばらくは戦場に立てないだろうし軍の中核は壊滅しており軍の力としては半減しているも同然だからである。
そのような状態では予州を守るのが精一杯で陳留を攻めるような余裕はない。
それに馬超達には陳留を占拠する利点が余り無いのである。
占拠したところですぐ税収がある訳でなく、徴兵したところで自分達との戦いには間に合わない。
むしろ陳留の維持に人を割かねばならず人的余裕のない馬超達には意味がない。
それよりも董卓や劉備から支援を受けるだろう馬超達とどう戦うかだ。
それについて先ほどやっかいな情報が入ってきた。
放っていた密偵が掴んできた情報では馬超達は孫策と劉g、つまり揚州、荊州との同盟に成功したらしいとのことだ。
これは自分達にとって由々しき事態である。
馬超達は後方を気にする必要がなくなり全戦力をこちらに向けることができるのだから。
董卓は袁紹のことがあるからまだ全戦力は無理だろうがそれでも後方の憂いが除けたからには呂布とか張遼辺りを差し向けることは可能だ。
それらを鑑みると馬超達の動員可能な戦力は5万を超える。
それに対し自分達は今回の消耗分を除くと2万5千、鮑信の兵1万、合わせて3万5千、兵力で負けている。
将や兵の質は同等、ならば数がモノを言う。
青州黄巾党は同じ戦場では使えない、自軍との錬度が違いすぎる、かえって邪魔になる。
う〜ん…!そう言えば
「桂花、馬騰に弓を射たものや兵達を煽ったものについて何かわかった?」
思考の海に沈んでいた曹操は荀ケに問い質す。
「申し訳ありません、華琳様。乱戦となってしまった為どの死体が弓を射たものか判別できませんでした。それと煽ったものですが調査した結果、どうやら我が軍の者ではないようです」
「つまり間者が紛れ込んでいたという訳か。何処の者かはわかったのか、桂花?」
曹操と同じように考え込んでいた夏侯淵が荀ケの報告を聞いて口を出す。
「いいえ、混乱に乗じて逃げられたわ。唯、馬騰達や袁紹でないことは確かね」
首を振りながら夏侯淵の問いに荀ケは答える。
あの扇動はあきらかに馬騰の命を狙ったもので馬騰達の訳がない。
同盟内の主導権争いということが考えられるが馬騰を失っては同盟を維持できない。
董卓や劉備では無理だ。
では袁紹は…あの性格だ、やらないだろうし部下が進言しても許可しないだろう。
当然、自分達ではない。
つまり馬騰達同盟軍、袁紹そして自分達、この3陣営以外の新たな勢力がいることを意味している。
「新たな勢力…五胡でしょうか?」
それまでの話しを聞いて楽進がオズオズと遠慮ぎみに言う。
「いや、これまでにも五胡の侵攻は何度かあったが奴らがそのような謀略を使ったと言うのは聞いたことが無い」
首を振りながら夏侯淵が楽進の考えを否定する。
「まあいいわ。その話しは一旦置いておきましょう。それよりも馬超達とどう戦うかよ。桂花、何か考えはあるのでしょう?」
部下達の議論を聞いていた曹操は間者の話しを打ち切ると荀ケに策を言うよう促す。
それを受けて荀ケが立ち上がり、策について説明し始める。
荀ケが説明する策は史実や演義で曹操と馬超の戦いで賈駆が用いた離間の計と敵の力を分散させるという点ではいっしょである。つまり、
「敵の兵力を分散させる、つまり董卓と劉備が支援できないようにすればいいのよ。劉備達徐州には青州黄巾党を単独で向かわせると共に陳珪、陳登親子に反乱を起こさせる。これで劉備は自領のことで手一杯となり馬超への支援等できなくなるわ」
陳珪、陳登親子…演義では劉備に心を寄せていたが、史実では曹操だったらしい。
この外史では特にどちらに心を寄せるということはなく、徐州の民達の平穏を願う優秀な官僚だった。
しかし赴任してきた劉備の治世を認めはしたものの劉備自身の甘さには懸念を抱いておりそこを荀ケに付け込まれ今では曹操の方へと心の比重は傾いていた。
「うむ、劉備の方はわかった。では董卓の方はどうするのだ?」
夏侯淵に促され荀ケは説明を続ける。
「袁紹に同盟の使者を送るとともに調略した冀州の豪族に司州を窺うような動きをさせる…そうね、州境を頻繁に偵察でもさせましょうか」
それを聞いて夏侯惇が血相を変えて立ち上がる。
「ち、ちょっと待て!豪族どもは対袁紹戦の切り札じゃなかったのか?そんなことしたら調略されてるのがばれてしまうぞ。それに袁紹は今内部の取り纏めに手一杯で我らと同盟を結ぶとは思えん。前にお前も袁紹軍の酷さを上げて同盟など結べないと言ってたじゃないか」
「別に袁紹と同盟を結ぶつもりはないわよ」
「はあ?」
荀ケに返答に頭に?を浮かべる夏侯惇。
「姉者、つまりだな、董卓に我らが袁紹と同盟を結ぼうとしており、袁紹もその気だと思わせると言うことだ。そうすれば董卓は袁紹に備えなければならず支援できないという訳だ」
「………!そういうことか、わかったぞ」
「ほんとにわかったの?」
見るに見かねて夏侯淵が姉に説明するとしばらくして夏侯惇はわかったと胸を張るが荀ケがちゃちゃを入れる。
「まあ豪族に関しては惜しいことは惜しいが袁紹の兵力を減らせることには違いないのだから已むを得んだろう。いかがですか、華琳様?私は桂花の案でいいと思いますが」
裁可を窺う夏侯淵の声に曹操はしばらく考えた後、
「そうね、桂花の案でいいでしょう。但し青州黄巾党には無理に攻めさせないようにさせなさい。そんなに長くならないでしょうから牽制だけでいいわ」
と方針を決める。
「華琳様〜、長くならないってどうしてなの〜?」
なにやら疑問を感じた于禁が間延びした感じで聞いてくる。
「沙和、会議の初めに細作からの報告があっただろ、馬騰達が孫策、劉gと同盟を結んだと」
「…!そう言えば、あったの〜……でもそれがどうしたの〜?」
「あんなー沙和、同盟結んだからには助けにくるやろーが」
楽進と李典が説明すると于禁はこくこくと頷く。
「そう、余り長くかかると援軍がやってきてしまうわ。だからその前に馬超を叩く!」
その後、詳細を決める為の会議が続き、青州黄巾党の方は張角達が指揮することと軍師として荀ケの姪の荀攸を派遣すること(黄巾党は張角達の言うことしか聞かない為)になり、袁紹への使者は荀ケに一任することになった。
会議が終わり誰もいなくなった部屋に曹操は1人居た。
彼女の脳裏には深手を負った体で仲間を逃がすべく立ち向い満足そうな顔で死んでいったホウ徳の姿が浮かんでいた。
「仲間か…お母様が言ってたわね」
幼い頃、母に聞いたことがある、「なぜ、お母様は何者も恐れぬ強い心をお持ちなのですか?」と。
母親の曹嵩は曹操の頭を撫でながらこう言った。
「ふふ、母様にはね仲間がいるからよ、志しや思いを託せる仲間がね。だから母様は怖いもの無しなのよ」
誇らしげにそう言う母の顔が輝いていたことを今でも思い出せる。
「私には仲間はいない、臣下がいるのみ…」
覇王の孤独を表すかのようにその呟きは虚空に消えていった。
しかし彼女は視野狭窄に陥っていたのかもしれない。
もう少し周りを見回せば彼女の仲間になりうる存在が彼女を心配していることがわかっただろう。
そう扉の影で心配そうに中の様子を窺っている夏侯姉妹や荀ケのような存在を。
それから4日後、徐州は劉備の居城にて
馬超からの支援要請を受けた劉備は直ちに会議を行い、張飛、趙雲の2将と鳳統を1万5千の兵とともに派遣することを決め部隊の編成を急いでいた。
今日、全ての準備が整い、馬超の予州での本拠地である陳へと向かおうとしている張飛達を劉備、関羽らが見送ろうとしていた。
「鈴々ちゃん、星ちゃん、雛里ちゃん、がんばってね。でも無理しちゃ駄目だよ」
「鈴々、雛里の言うことを聞いてしっかりとやるのだぞ」
「にゃはは、心配無用なのだー」
「……星、鈴々を頼むぞ」
遠足気分なのか喜色満面の張飛に関羽は額に手を当てながら趙雲に張飛のことを頼む。
「ははは、任せておけ。しかし菖蒲殿の容態が気になるところではあるな」
「ああ、伝令の話しでは一命は取り留めたということだが…」
自信満々で言う趙雲だが馬騰の話しになったところでやや不安げに口調が変わり、関羽も同調する。
「唯、今回の戦いに菖蒲殿が出ることは無理だろう」
「となると総指揮は翠が取ることになるか」
それを聞いて関羽は益々不安げな顔になる。
「翠個人の武は認めているが、翠は猪突なところがあるからな。それに北郷殿も今は傍にいないようだし」
「ははは、それに関しては心配はしておらんさ。翠の所には凄腕の軍師が2人いるからな」
関羽の不安を吹き飛ばすかのごとく豪快に笑った趙雲は郭嘉と程cのことを持ち出す。
「稟と風か。普段の彼女達を見ているととてもそうは思えないがお前がそう言うからにはそうなんだろうな。ま、がんばってこい!」
郭嘉と程cは関羽とも既に何度か会っており、関羽も2人の文官としての手腕は十分認めているのだが、なぜか例のアレ(鼻血と居眠り)とよく遭遇しており生真面目な彼女としてはなんだかな〜という認識なのである。
「?ま、任せておけ。愛紗こそ桃香様のこと、宜しく頼むぞ。さてそろそろ…んっ?あれは伝令か?」
出発しようと前を見た趙雲の目に砂埃を上げてこちらに向かってくる伝令と思われる騎馬が映った。
こちらへと向かっていた騎馬はやがて城門の所に劉備や関羽ら首脳陣がいるのに気づき、下馬してこちらに駆けて来る。
「申し上げます!青州との州境に黄巾党と思われる一団が集結しつつあり、こちらを窺う様子をみせております」
伝令の伝える内容に劉備は信じられないという顔になる。
「えっ?う、うそっ、だって彼らは調練が済んでないから今回は出てこないんじゃなかったの?」
辺りは騒然となっていたが1人、いや2人、諸葛亮と鳳統は落ち着いていた。
今回ははわわとあわわではないようだ。
「桃香様、落ち着いてください。こうなることも可能性として考えていましたので問題ありません」
「桃香様、対応策は考えてありますので安心してください」
劉備は浮き足立ちそうになっていたが諸葛亮と鳳統の落ち着いた声に次第に落ち着いてくる。
「う〜ん、さすが朱里ちゃん、雛里ちゃんだね!」
「えへへ、愛紗さん、兵1万を率い、途中で陳珪さん、陳登さんと合流して州境へ向かってください」
照れ笑いしながら出した諸葛亮の指示に関羽は頷く。
「応!周倉、周倉はおるか!」
「はっ、ここに」
「青州黄巾党が徐州に侵攻しようとしている、迎撃に向かうぞ。急ぎ我が隊の兵を招集せよ。後、陳到殿にも急ぎ兵を集めて我と合流するよう伝令を出せ」
「はっ!」
周倉と呼ばれた関羽の副官は踵を返し城内へと走っていく。
それを見届けると関羽は劉備の方へ顔を向ける。
「では、桃香様。私も出陣の準備を行いますので失礼します」
「うん、愛紗ちゃんもがんばって……あれ?愛紗ちゃん、朱里ちゃんまた伝令さんみたいだよ?」
「「えっ?」」
先ほどの伝令と異なる方向からやってきた伝令は慌てた様子で劉備達の下へとやってきた。
「申し上げます!陳珪殿、陳登殿が反乱を起こし彭城を占拠しました!」
「「「えーー」」」
今度は皆騒然となった。
劉備達と旧陶権家臣との間は劉備達が相手を立てていたことと関羽に代表される武官や諸葛亮に代表される文官の能力の高さ等から徐州の統治はうまくいっており、いや寧ろ陶謙の統治よりも豊かになりつつあり旧臣達も彼女達の力を認め、至極うまくいっていた…はずだった。
しかし残念ながら彼女達は経験が不足していた、徐州のような広大な領地と大勢の人々を統治するという経験が。
その為大勢の臣下全てに目を光らせることが出来ず今回のようなことが起きてしまった。
「えーー、うそだよ!?珪おじいちゃんが反乱なんて」
「はわわ、陳登さんはわかりますが陳珪さんまでというのは…」
劉備と諸葛亮は混乱していた。
そう、読者の皆さんには少し訂正をしておこう。
曹操陣営の時や先ほどの伝令でも陳珪、陳登親子の反乱と言ったが実情は少し違う。
曹操に取り込まれたのは息子の陳登で父親の陳珪は取り込まれてはいなかった。
彼も劉備の甘さは懸念していたが息子とは違い、ならばよりよい君主となるよう指導していけばいいと考え実践していったのである。
劉備も素直な性格であるので陳珪の意見をよく聞き、そうなろうと努力していた為、2人の関係は祖父と孫娘のような関係になっていた。
唯、その為息子の行動が影に隠れ見えなくなっていたのは皮肉な話しである。
荀ケより指令を受けた陳登は反乱を起こすべく行動に出ようとしたが自分の名前だけでは家の者や部下達が付いてこないと判断し父親の名を使うことにしたのである。
唯、黙って名を使われる父ではないことを知っているので一室に軟禁し病気だと称した。
陳珪の名を聞いた家の者や部下達は陳珪様がそういうのならと反乱に参加したのである。
「桃香様、しっかりしてください。朱里、どうする?」
顎に手を当て考え込んでいた諸葛亮は顔を上げる。
「放置する訳にはいきません。鈴々ちゃん、星さん、雛里ちゃんは陳到さんと合流の後、州境へ援軍として向かってください。愛紗さんは彭城へ向かってください、私と桃香様で5千を率いて同行します」
「朱里ちゃん、翠ちゃんの方はどうするの?」
そう、徐州の旧陶権軍を吸収し一気に拡大した劉備軍であるが、二方面に兵を回すのが精一杯でこの上馬超のところに援軍を回す兵の余裕はないのである。
「桃香様、すみません。州境と彭城で手一杯で翠さんに援軍を出す余裕はありません。孫乾さんに事情を説明しにいってもらいます」
「そんな…」
諸葛亮の断言に悲痛な顔になる劉備だが、劉備自身もそのことはわかっていた。
天然だとか、甘ちゃんだとか言われる彼女だが徐州に来て陳珪に指導してもらい君主として成長しているのだ。
この世には出来ることと出来ないことがあるという現実を知り、理想も大切だが君主として今の現実から目を逸らしてはいけないということを学んだ。
「桃香様、大丈夫ですよ。月殿達がいます。しばらくは負担をかけることになりますが、我々は一刻も早く事を片付けることを考えましょう」
「…うん!そうだね。月ちゃん達には迷惑かけるけど、私達は私達のできる事をがんばろう」
顔を上げ元気を取り戻す劉備だがその横で諸葛亮は考えていた。
「(私達だけというのは考えにくいです。多分月さんの方にも何か仕掛けているはず、風さん、稟さんすみませんが、がんばってください)」
馬超達はあの後、泰山の麓を経て予州へ入りやっと本拠地である陳に辿り着いていた。
途中、沛にて馬騰を医者に診せ矢を取り除いてはいたのだが意識不明となっており止むを得ず生き残りの3百騎を護衛につけ体にさわらないようゆっくりと移動させ自分達は一足先に陳へと戻って来たのだった。
「風、風はどこだ!」
本拠地の城に辿り着いた馬超と郭嘉は馬を部下に任せると程cを探していた。
「は〜い、ここにいますよ〜」
「風、軍の集結具合はどうだ?」
馬超は焦った様子で自軍の様子を尋ねるが程cは難しい顔になる。
「む〜、我が軍の9千騎と予州で徴兵した歩兵5千は集結済みですが…」
「えっ?どうしたんだよ」
程cは懐から書簡を2つ取り出し馬超に渡してくる。
1つ目の書簡を開いて中を読んでいく馬超だが「えっ!!」という驚きの声とともに閉じ、2つ目の書簡を開いて読んでいく。
しかし読むに従って馬超の顔色は蒼白になっていく。
「ちくしょう!桃香も月も支援できないってどういうことだよ!」
「えっ?支援できないって……やばいじゃん!」
片膝を付き、がっくりと肩を落とす馬超の横で驚いた顔で慌てる馬岱。
劉備の方の状況は先に述べたのでここで董卓の方の状況を少し述べておこう。
劉備の処に黄巾党侵攻の知らせが来る1日前のこと。
馬騰達への援軍(まだ彼女達は馬騰が重傷を負ったことを知らない)の準備が整い、呂布と陳宮が2万の兵を率いて出陣しようとしていた。
「詠ちゃん…どこいったのかな?」
出陣する呂布と陳宮を見送る為城門へと出ていた董卓だが後から来ると言っていた賈駆が中々現れず辺りをキョロキョロと周りを見回していた。
「月、いってくる」
「月殿〜、お任せなのです!恋殿が行けば曹操などちょちょいのちょいなのです」
「がんばってねって、詠ちゃん!どこいってたの?」
っとそこに難しい顔をした賈駆がやってきた。
「ねね、中止よ。出陣中止」
「ななな、なんですとーーー」
「え、詠ちゃん、どういうこと?」
突然の中止に陳宮、董卓は賈駆に問い質すのだが
「とりあえず、出陣は中止して。後、会議室に集まって、霞や華雄も既に集まってるわ」
と賈駆に言われ、一同は会議室に集まる。
会議が始まると同時に陳宮が賈駆に問い質す。
「詠、一体なにがあったのですか?」
「数刻前に冀州との州境と并州から知らせが届いたのよ」
その知らせの内容とは州境において袁紹軍と思われる騎馬の偵察がかなりの数出ていることと付近の城に兵の集結が見られ、また食糧等も大量に運び込まれているということだった。
「お、おい、詠!それは袁紹がこちらに攻め込もうとしているということか!?」
「この報告からすればそういうことになるわね」
内容を聞いて驚く華雄に賈駆は冷静に対応する。
「でも、詠っち。おかしいんとちゃうか?1ヶ月ぐらい前に聞いた話やと仲間割れしとってうちらにちょっかいだすような余裕はないっちゅうことやったやんか」
皆が疑問に思っていたことを張遼が代表して聞いてくるが賈駆は少し考えた後、自分の考えを説明していく。
「そのことは裏も取ったから確かなはずよ。だから考えられるのは曹操が何か仕掛けたということになるわ。」
そしておそらくそれは取り込んだ豪族を使って侵攻してくるように見せかけ支援できないよう牽制することだと説明を続けた。
「詠、牽制だけならば気にせず出陣してもいいのではないですか?」
「そう言う訳にはいかないわよ」
陳宮の問いに賈駆は首を振りながら否定する。
出陣したところを見計らって本当に侵攻してくるかもしれない、それに曹操が取り込んだ豪族の数は把握できていない。
もし、かなりの数の豪族を取り込んでいて散開させて侵攻してきた場合全軍そろっていなければ対応は難しいものとなる。
それに我ら同盟が他諸候に対し優位な点として皇帝と洛陽を擁していることが上げられる。
今は我らがしっかりと守っているから我らに好意的だが、万が一にも洛陽が攻められるようなことがあればどうなるかわからない。
今、危険を冒すわけにはいかないのである。
「わかったわ、詠ちゃん。恩を返すいい機会だったけど私達の役目も重要だものね、今回は桃香さんを頼ることにしましょう」
こうして董卓は皇帝と洛陽防衛の為支援できなくなった。
「ちくしょう、どうすればいいんだよorz」
現在の状況を再度改めてみよう。
曹操軍は鮑進の軍を取り込み約3万5千、馬超は程cが手際よく全軍を集結してくれたので騎馬9千、歩兵5千の1万4千。
当初はこれに董卓の2万、劉備の1万5千の支援により約5万となるはずだったが曹操の策略により支援は得られなくなった。
また将に関しても曹操は夏侯姉妹や楽進等十分そろっているのに対し馬超は要ともいうべき馬騰が重傷の上、騎馬隊をまとめる中核ともいうべきホウ徳や閻行等の馬騰隊の面々が討ち死にし馬超と馬岱ぐらいしかいない。
曹操を追い詰めていたはずが気がつけば自分達が追い詰められていた。
どう見ても勝ち目がないと思っていた馬超に郭嘉が声をかける。
「翠殿、勝ち目はあります。少し私の話しを聞いてもらえますか」
現状だけを見ればかなり厳しいことは確かである。
しかし既に程cが一刀を通して孫策、劉gに支援要請を出している。
また董卓は無理にしても劉備の方は青州黄巾党か陳親子のどちらかが片付けば援軍を出すことは可能だ。
唯、孫策、劉gにしても歩兵主体の軍である為こちらに着くまでそれなりの時間がかかる、伝令が届いてから出陣準備するとして到着まで10日以上はかかるだろう。
要は援軍着陣までいかに時間を稼ぐかにある。
「えー、でもお姉様攻めるのは得意だけど猪だから守るの、防衛戦って苦手だよ?」
「…うるさい!(ゴッ)誰が猪だ。苦手だ何だと言ってる場合じゃない、希望があるのならやるだけだ」
「いた〜〜い、お姉様が殴った〜」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ馬岱を無視して馬超は郭嘉の方を向き続ける。
「稟、風、何か策はあるんだな。ならば指示を頼む、あたしは馬鹿だから策なんて考えられないよ。だから2人に任す」
「はい、わかりました。ではさっそく準備に入りましょう」
そういうと馬超と郭嘉は部屋を出て行った。
後に残った馬岱と程cはというと
「え〜ん、いたいよ〜風ちゃん〜」
「むーー、なんとなく釈然としないものはありますが…よしよし」
まだ騒いでいた。
<あとがき>
どうも、hiroyukiです。
年末舐めてました。
仕事が次々舞い込むわ、インフルエンザらしきものになりかけるわでSSの方へ目を向ける余裕がなくなり、なんとか時間を作ってさあやろうとすると何も思い浮かばないわで全然筆が進みませんでした。
この時期に次々更新している作者さんすごいです。
今回は馬超と曹操の激突前夜みたいな感じで書いてみました。
馬超と曹操の戦いというと潼関の戦いが有名ですがこの作品では違う流れになります。
まあ、ここまでの流れが史実や演義とはまったく異なる訳ですから違う場所になるのは当たり前かもしれませんが。
最終的な決戦の場所は陳留と予州の陳の間くらいになると思います。
なぜここにしたかというとある理由がある訳ですがそれは次回で明らかになる予定です。
後、陳珪、陳登の親子を今回出しました。
彼らには劉備、桃香の成長を表す為に蜀でのある故事を再現してもらいます。
さて、次回は今回お休みしていた一刀君にかっこよく再登場してもらいます。乞うご期待!
では、あとがきはこのくらいにしてまた次の更新でお会いしましょう。
説明 | ||
えー、遅くなりました。申し訳ありません。 3章12話です。 |
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ブックマン様:実はもう打ってます。(hiroyuki) 孤立無援ですか、起死回生の一手はあるのかな。(ブックマン) nanashiの人様:なんといっても凄腕の軍師さんですからね。(hiroyuki) ケフィアこえぇぇ 身内になると結構だめな子になる事しばしばだが、敵にするとこわいおww(nanashiの人) 夜の荒鷲様、Nyao様:次回、かっこよく一刀君は戻ってきますのでしばらくお待ちください。(hiroyuki) 女性のピンチにかっこよく現れるのが一刀・・・。次も楽しみです(・ω・)(Nyao) 一刀、嫁がピンチだぞ!!何とかしてくれぇ〜(夜の荒鷲) yosi様、jackry様:次回一刀が戻ってきますので活躍してくれるでしょう。(hiroyuki) とらいえっじ様:それは派遣軍師の荀攸もわかってますので真ともには戦いません。2週間も引付けておけばいい訳ですから(hiroyuki) ここからどう対抗していくのか、一刀さん無双に期待(yosi) 年末が忙しいのは仕方ないね。…武将がいない青洲黄巾党なんかはあっさり鎮圧されそうだな(とらいえっじ) |
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