真・恋姫†無双〜三国統一☆ハーレム√演義〜 #19 洛陽警備隊|物忌み計画
[全10ページ]
-1ページ-

『大和帝国』建国より一ヶ月。

その新たな体制は次々に各地へと告示され、土台固めは着実に進んでいた。

 

皇帝の精力が数多き后相手にどこまで保つのかと噂されるも、それさえ『和の種馬』北郷一刀は克服しつつあったのだった。

 

-2ページ-

「という訳で。俺がこの『洛陽警備隊』の『総隊長』、北郷一刀だ。みんな、よろしく!」

 

『はあぁぁぁぁぁぁ!!?』

 

九月も中旬に差し掛かろうかという頃。

洛陽の宮殿のすぐ側にある施設の敷地内、千人近い武装した男達(と一部女性達)が整然と並ぶ広場は、彼・彼女らの叫び声を皮切りに喧々囂々となった。

 

ここは、司隷校尉(帝都周辺の守備や行政を担当する中央地区長官)の配下の内、帝都・洛陽の内側の治安を司ることになる、新たな部隊『洛陽警備隊』の本部となる建物である。

 

『洛陽警備隊』は、旧魏都である許昌で凪と真桜、沙和が将軍として直接街の治安維持に関わった部署が一定の功績を残したことを鑑み、それをベースに一刀が『天の知識』から様々な形態などを取り入れて設立することになった、言わば“街のお巡りさん”である。

 

特徴としては、半官半民でありながら司隷校尉――因みに桔梗が任じられている――の直下部隊であること。

大きく分けて『一番隊』から『十番隊』までの十の部隊に分かれており、各部隊を『組長』と呼ばれるリーダーが統率すること(これは将軍や武官でなくとも良い。武力や指揮力を鑑みて任官される)。

権限のひとつに、庶人の(司隷校尉の命があればそれ以上の地位の者に対しても)逮捕権があること。

街の各地に詰め所を設置し、住民の相談なども引き受ける、公的機関への窓口でもあること。

庶人であっても功績を認められれば武官として仕官可能であること。

そして……一番隊から十番隊の組長全員を取り纏める、非常勤の名誉職『総隊長』が存在すること。

 

ところが、この『総隊長』という非常勤職は、裏に手を回した一刀が宮殿を抜け出し外出する方便の為に設けたものであり、当然一刀自身が就任していたのだ。

 

「へ、陛下! これは一体何の冗談ですか!?」

「そやで! なんで治安維持部隊に皇帝が出てくんねん!?」

「この馬鹿お館が! 貴様は外出禁止だろうが!」

 

次々に彼を非難するのは、集まっていた隊員達の中でも最前列にいた一番隊組長の凪、十番隊組長の真桜、そして二番隊組長の焔耶である。

背後に控えている数多くの隊員達も未だ喧騒収まらず、ざわざわと騒いでいる。

……当たり前だ。皇帝陛下をこんなに間近で見たことがある者など、恐らく一般隊員には殆ど存在しないだろう。例外は元蜀兵で成都の警備を担当していた者くらいだ。

 

本来のトップである司隷校尉の桔梗は、別の執務があり都合がつかなかった為、本日の部隊設立の挨拶は『総隊長』が代理で行う手筈だったのだ。

ところがそこに現れたのは、この『大和帝国』の皇帝、北郷一刀だったのである。

 

「だってさぁ。ようやく政治に参画し始めたってのに、民の様子を直に見られないんじゃ、どうやって政を決めたらいいのか分からないじゃないか」

 

筆頭隊長である凪を初め、彼女らから非難を受けた一刀の口から出たのは、彼独自の政治理念であった。

普通なら“阿呆か”と言い捨てられるような言葉だったが、実際彼はこうやって蜀という三国の一を治め、ついには皇帝にまで上り詰めたのだ。文句を付けられるものなど居よう筈がない。……理念自体は。

 

「しかし! この国はまだ建国したばかりで未だ不安定な部分も多いのです!」

「そもそも、このことを桔梗様はご存知なのか!?」

「その“不安定”を見に来たんだよ、凪。桔梗が知ってるかは……内緒♪」

「この馬鹿者がぁーー!#」

「見に来たっちゅうてもやなぁ! 只でさえ、今の洛陽は人口が爆発的に増えとって、治安が悪化しとんねんで!?」

「そう!(びしっ) それを最優先で見る為に来た、と言ってもいい! 挨拶はついでだ」

 

三人もの歴戦の武将から忠言と共に凄まじいプレッシャーを受ける一刀だったが、飄々としたものだ。

寧ろ、後ろで待機中の一般隊員の方がその迫力に腰を抜かしそうであった。

 

洛陽の人口増加は、現在緊急の問題として朝廷内でも話し合われている。

『洛陽警備隊』が取り急ぎ発足されたのは、人口増加による治安悪化に対処する為であったのだ。

この人口増加の内情は単純である。要するに、『大徳』劉玄徳や『天の御遣い』北郷一刀、『治世の能臣』曹孟徳、呉王家たる孫家三姉妹……三国に勇名馳せる面々が揃って洛陽へと移住することになった為、三国から彼・彼女らを慕った民が一気に移住してきたのだ。

 

なお、この提案を一刀から聞いた桔梗は、大笑いで許可した。しかし、それがバレると桔梗にとって(官吏として)不都合が出る可能性がある為、一刀は自身の独断として扱う積もりだった。

 

「駄目です! 危険過ぎます!」

 

強硬な態度を崩さない凪だったが、それまで発言していなかった三番隊組長・沙和がぼそりと呟いた。

 

「……でもぉ、一刀さんと一緒に警邏って、ちょっと逢引みたいでイイかもなの……♪」

「「「…………」」」

 

特に凪と焔耶が先ほどまで放っていた凄まじいプレッシャーによって既に沈黙していた諸隊員にも、はっきり聞こえたその言葉と、それを聞いた途端に静まってしまった凪・焔耶・真桜の三人。

 

『(流石は『和の種馬』、『絶倫タラシ皇帝』……)』

 

一般隊員一同の心中は見事シンクロしていた。風が流した風評は武官のみならず、一般庶民にも相当浸透しているようである。

 

「……い、いや! 危険が予想される以上、なんとしても陛下には引き下がって戴きます! ……たとえ、実力行使してでも!」

 

首を振って誘惑を振り払った凪が、全身から『氣』を発気して構える。

剛毅果断なる勇将として名高い楽文謙が戦闘態勢へ移行したことで、さっきとは違った意味で周囲が大きくざわついた。

しかし、それでも一刀の態度は変わらない。

 

「ふっふっふ。危険があることなど百も承知。当然、対策も講じてあるさ! ――先生、お願いします!」

 

一刀の(時代劇的)テンプレな呼びかけに、のっそりと大部屋へ入って来たのは。

 

「………………どぅれ。……………ご主人様、これでいいの?」

 

やはり同様にテンプレな返しを口にした恋であった。迫力は欠片もなかったが。

 

「おっけー! それでいいぞ、恋! ――という訳で、これが俺の危険対策だ!」

「恋様!?」「「恋!?」」「あ、恋ちゃんなの〜」

 

完全に人任せかつ、情けないことこの上ない対策であるが。その有用性は確かだった。

なにせ恋――呂奉先と言えば三国に知らぬ者無き武将。『万夫不当』、『飛将軍』と謳われた、大陸最強の武士(もののふ)である。

彼女が護衛に付くというのなら、確かに少なくとも“武力”で一刀を害することは不可能と言っていいだろう。

 

「「「…………」」」

「ええ〜! じゃあ一刀さんと一緒に警邏に行けるのって恋ちゃんだけなの〜!?」

「そこかい!(ぺしっ)」

「「……沙和……」」

 

沙和の見当違いな嘆きに、真桜が突っ込んだ。凪と焔耶も呆れて頭を押さえている。

 

「ついでに言うと。恋はちゃんと『洛陽警備隊』の一員だから」

「は!? わ、私は伺ってませんが……」

「うん、特別な扱いだからね。“零”番隊組長・呂奉先。彼女は遊撃単騎として街を見回って貰う予定だ。だから配下は軍師のねねだけ。今回だけ、特別に俺の護衛も兼ねて貰う」

 

「……どうする、凪?」

「……ここまで準備されていてはもう何を言っても無駄だろう……」

「まぁそうやろなぁ……」

「沙和もそう思うの」

 

どうやら組長らも一刀の説得を諦めたようだ。

 

「恋様がいらっしゃるからと油断せず。どうか、お気をつけ下さい。一刀様……」

「うん。心配してくれてありがとう、凪」

 

「は〜、一刀はんらしいっちゃ、らしいわなぁ(苦笑)」

「はは、まあそう言ってくれるなよ、真桜」

 

「恋ちゃん、いいなぁ〜……。そのうち、沙和とも遊んでくれるの?」

「警邏な、警邏。勿論、そのうち頼むよ、沙和。……怠業するなよ?」

 

「という訳で、許してくれよ。焔耶――」

「っ! こんな人前で抱きつくなッ!?////(ボグッ!)」

「ごふぅ!?」

 

一刀が、四人を一人ずつ抱き締めていった。最後の焔耶だけ、恥ずかしがって一刀を殴り飛ばしたが。

 

「…………(じぃぃぃ〜)」

「……ふふっ。今日はよろしく、恋」

「…………////(こくり)」

 

最後に恋を軽く抱き、頭を撫でてやったあと、一刀は思い出したように皆へ声を掛けた。

 

「あ、そうだ。これからこうやって警備隊として仕事するときは、俺のことを“隊長”と呼ぶように」

「た、隊長、ですか? 『総隊長』なのでは?」

「『総隊長』って微妙に堅苦しいっていうかさ。“隊長”の方が気楽っていうか、街の人も“隊長さん”とかなら気軽に呼べると思うんだ〜♪」

 

にかりと笑ってみせる一刀に、周囲の者達も苦笑い。

 

「みんなも、そういう訳だから。この役職でいるときは“隊長”って呼んでくれなー!」

『はっ!』

 

仮にも武官であったり治安に携わろうと言う者達。表情こそ様々だったが、皆揃ってそう返答してくれたのだった。

 

 

 

その日、一刀は恋を供に洛陽の街を巡り歩いた。

人口増加の弊害がどのように出ているか。在来の洛陽の民はどう感じているか。移住者はどう思っているか。

見るだけでなく、一刀は積極的に話し掛けた。それこそが一刀の政の基本だったのだから。

 

武器を携帯しているとは言え、(一刀や蜀の皆と打ち解けて以来の)恋は小動物的雰囲気を持つ為か、余り警戒されずに済んだ……どころか、逆に食品関連の商人には大いに喜ばれた。

 

こうして一刀は街の様子を窺い、情報をその身で“感じて”いった。

 

しかし、払った代償も大きかった。

当然、恋の食費は全て一刀持ちであったし、城へ帰って早々、愛紗・華琳・蓮華の三人から数時間にも及ぶ説教が待っていた。

 

「ふ、ふふふ……。このくらいの代償は、予想の範疇さ……ぐすん」

 

空っぽの財布を放り投げ、石畳で正座し続けて痛む膝と脛、足首を撫でつつ。ようやく自室へ戻った一刀は、負け惜しみのように呟いたのだった。

 

-3ページ-

『和』王朝中枢の官僚には、何人か役職を兼任している者達がいる。

桃香は上公・太傅と秘書官・中書監を兼任しているし、秋蘭も尚書と将軍をやはり兼任している。

また、洛陽警備隊で組長職にある将軍も、将軍としての仕事はまた別にある為、兼任と言えなくもない。

 

そんな者達の中でも、少々趣が異なる兼任をしている者がいる。

皇帝側近である侍中の一人、賈駆こと詠である。

 

その日、陽も落ちかけ、夕闇がその帳を降ろそうとしていた頃。

彼女は蜀時代と同じメイド服に身を包み、盆を両手で持って、そろそろと宮廷の廊下を歩いていた。

本来ならば、侍従が宮廷内をそのようにゆっくり歩けば、周囲から非難されても文句は言えない(それどころか処罰の対象になる)が、そもそも皇帝正室である彼女は宮廷をゆっくりと歩くことを許可されているので、その点に関しては問題はない……のだが。

 

必死の形相で、今にも手にした盆を引っくり返しそうになりながら歩く彼女の緊張感と危うさが、周囲の者にまで緊張を強いていた。

 

「…………?」

 

そんな様子を不思議そうに眺めるのは、丞相・華琳である。

彼女は既に職務を終え、宮廷から後宮へ戻る途中であった。

 

「……詠? 一体、何をそんなにそろそろと歩いているの?」

「かっ、華琳!? 今話し掛けないで――」

 

ほんの一瞬。視線を華琳へ移したその瞬間。

詠の足元へちょろちょろと駆け寄ったのは、小さな鼠。しかもご丁寧に詠の足にぶつかった挙句に纏わり付く。

 

「ひゃっ、な、なに!? あ、あああっ!!?」

 

体勢を崩した詠は、前のめりに倒れ。当然、両手で持っていた盆は、載せられていた茶のセットごと、前方へと放物線を描いて飛んでいく。

 

そしてその先には……丁度政務室から顔を出した一刀の姿。

 

「ああ、詠。遅いから、何やって――」

 

がこっ、ばしゃーん!

 

「あ゛づうぅぅぅぅぅぅぅっ!?」

 

 

 

「あ゛〜、熱かった……」

「………どーしてあの瞬間を狙ったように部屋から出てくるのよ(ぷいっ)」

「詠ちゃんがすみません、ご主人様!(ぺこぺこ)」

 

飽く迄非を認めず謝罪を口にしない詠と、代わりに何度も頭を下げ謝罪する月。

そして、被害者でありながら大して気にもしていない一刀。

 

「なにをやってるのよ、あなたたちは……」

 

蜀では日常茶飯事な出来事であったが、華琳は呆れたようにそう言った。

 

「ほら、詠ちゃんもご主人様に謝らなきゃ」

「ええ〜……」

 

一刀への謝罪を要求する月に、唇を尖らせ不満げに唸る詠。

そして濡れた髪を布で拭きながら、二人の遣り取りをこっそりにやにやと窺っている一刀。

そんな一刀の様子に、華琳は尚更に呆れ顔になった。

 

「詠ちゃん(じいぃぃぃぃぃ……)」

「うぅ……」

「(じいぃぃぃぃぃ……)」

「……。…………。………………ごめんなさい(ぼそり)」

「うん。気にしないで、詠。次は頑張ってな」

「えへっ♪」

 

月の視線の重圧に負け、とうとう一刀への謝罪を零す詠と、それに対し鷹揚に答える一刀。そして二人のその様子に、さも嬉しげに笑顔を見せる月。

 

そんな三人を見て、華琳もとうとう笑い出した。

 

「ぷっ! あはははは! なによ、詠。あなた、完全に月のお尻に敷かれてるのね♪」

「う、うっさい!」

「うふふふっ♪」「はははは!」

 

暫し楽しげな笑い声が部屋に響いていた。

しかし、少し間を置いて華琳が忠言を口にした。

 

「まあ今回は被害者が一刀だったから笑い話で済んでいるけれど。あなたが皇帝付きの侍従であろうとするなら、皇帝に謁見・会合を持った相手に茶を出すこともあるでしょう。その時、同じことをすれば只では済まないわよ?」

「あー……詠ってさ、『不幸体質』っていうか。タイミング――ええっと、間が悪いことが多いんだよ」

「……確かに、さっきのも鼠のせいとも言えるけれど。単なる注意不足じゃない。『めいど』だったからしら? 侍従としては明らかに失格よ、詠」

「くっ……」

 

一刀はフォローするものの、華琳の言うことが正論である為、詠は反論出来ず悔しげに唇を噛んだ。

 

(ドジっ娘メイドは鉄板……なんて言っても、華琳には通じないし。そもそもフォローになってないよなぁ……)

 

このような形で、詠は侍中とメイドを兼任しているのである。昼は侍中として皇帝に侍り、仕事がひと段落すると、月を手伝う為にメイドになるのだ。……今のように逆に足を引っ張ることも間々あるが。

 

なお、月は正室――しかも皇太子の実母――であるが、後宮及び宮廷における皇帝専任の侍従として働いている。

それどころか、後宮やその庭の掃除、天子と皇后らのみならず侍従らの賄いを含めた炊事、衣服の洗濯など。完全に後宮の一侍従であった。

草創期こそ皇后である彼女に対し、畏れ多いと遠慮がちであった低位の侍従である女官・宦官達も、同じ目線・立場として触れ合ってくれる彼女と、この一ヶ月で十分に打ち解けていた。

しかも、高位の官吏や上司が横暴な振る舞いをすれば、月は正妻として“上から”ではなく、一侍従として“配下の分を弁えつつ”真っ向から理を説く強さを見せる程であった。

 

この一ヵ月半で、月は皇后としてだけでなく、侍従としてもその地位・立場を確立していたのだ。

 

その逸話を詠から(自慢たらたら)聞いた一刀は大いに喜んだ。もう彼女は一刀の被保護者ではなく、一人の女性、後宮諸事に携わる者の一人として確固とした“自分”を手にしたことを理解したからである。

月は、それこそ自分が強くなれたのは“詠と一刀という心の支え”あってこそと理解していた。

また、絶対に認めはしないが、詠もまた同様に考えており、月が強くなったことを素直に喜びつつも、内心一刀へ大きな感謝の念を抱いていた。

 

保身しか考えない俗物にとっては、皇后であり、“皇帝付き”侍従でもある彼女に逆うことなど出来よう筈がない。

このような事情から、後宮で皇后との応対を司る『大長秋』や、(同じく正室である小蓮を除く)『中常侍』などの高位の侍従らにとっては、月はとかく扱い難い存在となっていた。

これが皇帝に侍るなりして利権を得たい『九卿』やその配下の官吏に対する抑制力として働いているというのだから、分からないものである。

 

閑話休題。

 

「とにかく。侍従として働くなら、もう少し努力なさいな」

「ぐぬぬぬ……」

 

華琳はそう言い放ち、政務室を退出して後宮へと帰っていった。

後に残ったのは、苦笑いの一刀と月、そして悔しげに呻く詠であった。

 

-4ページ-

さて、そんなことがあってから数日後のある朝。

一刀は、後宮の厠から出た後、洗顔して(水源は例の『湧泉真玉』)身だしなみを整え、朝議に参加する為に大広間へと向かっていた。

本来なら今日は休日の予定だった一刀なのだが、急を要する問題に対応する為、休日出勤することにしていた。

 

(うーん……やっぱり人口増加の影響は相当なもんだ。早急な対処が必要なんだけど……。完全に洛陽という街のキャパシティを超えてるんだよなぁ……)

 

急を要する問題とは、この洛陽の人口増加についてである。

最も簡単かつ単純な対処法は街を拡張すること。

 

予算は正直厳しい。これだけの街を、更に拡張しようという大規模計画だ。その予算は膨大の一言に尽きる。

一刀は、通常の土木予算だけでなく、皇室財源や、皇帝個人としての資産(給与)も運用することで、ぎりぎり可能という試算を得ていた。

 

また“人が増えたので街を大きくします”と言っても、ただ単純に居住区を増やしただけでは、煩雑かつ無秩序な街となってしまい、治安の悪化・人口収納の非効率化・防衛力の低下など、様々な問題が噴出することになる。特に貧民街が形成されてしまうと、そういった問題は加速度的に増えていくだろう。

 

となれば、宮殿を含めて区画整理を念頭においた、洛陽拡張計画となる。

 

しかし、これには官民合わせて反対意見が多くあった。

理由は、この洛陽が中華・中原における、由緒正しき古都であるからである。

正確には、庶人の“古都への愛着”を理由に、この計画によって更に資産を削られることになる高級官吏を初めとした有力者らが“予算の出し渋り”をしていたのだ。

皇帝がその私財を擲(なげう)ち、民へ施そうというのに、その配下が何もしない訳にはいかない。故に官吏達は大反対した(当たり前の話だが)。その為に上記の理由を持ち出し、抵抗していたのだ。

 

(何とか説得材料が欲しいんだよな……。歴史ある街なのは分かるし、そういう“愛着心”を刺激しないような……)

 

と悩みながら歩いていた一刀は、ドタドタドタっと慌しく近付いてくる、後宮の廊下に響く駆け足の足音に気付いていなかった。

そして、そろそろ曲がり角と言うところで、物凄い速度でカーブを曲がり一刀の目前に飛び出してきたのは、何やら酷く慌てた翠だった。

 

「ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ……って、うわぁ!?」

「え?」

 

ドスンッ! ムギュッ!

 

弾き飛ばされた一刀は仰向けに倒れ、しかもその直後、腹部に重い衝撃。

 

「げふっ!? な、なんなんだ……って、翠?」

「い、いたたたた……」

 

仰向けに寝転がった状態の一刀の腹に、大股を開いて跨るように座っている翠。

寝転がった状態の一刀からは、見えてはいけないものがばっちり見えている。

そして、このような好機にそれを堪能しない訳がないのが、北郷一刀という男であった。

 

「(うーん、絶景かな、な〜んて♪)……そんなに慌てて、どうしたんだ?」

「うわああっ!? ごごごご主人様!? どうしてあたしの下にいるんだよ!?」

「ぶつかって来たのはそっちだろう?」

「そ、そっか、ごめん……って、どこ見てんだよっ!? このばかっ、エロエロ魔神!」

「(ちぇっ、もうバレたか) いやー、あんまりいい眺めなもんで。つい」

「見るなよ馬鹿ぁ! ……はっ、あっ、や、ヤバ……イ……」

「??」

 

大股を開いていて丸見えだった翠の下着を堪能していた一刀に気付き、なじる翠だったが。途端に挙動がおかしくなった。

 

「どうした、翠?」

「が、我慢が……もう、む、無理っ……ダメぇっ……」

 

一刀の腹部に温かいナニかが広がっていく。同時についさっき嗅いだ臭いが……

 

「…………」

「う、うう……ぐすっ」

 

余りの事態に言葉が出ない一刀と、羞恥の余り泣き出してしまった翠。

先に正気に返ったのは一刀だった。

 

「とっ、とにかく着替えよう。あと、服やら下着やらの洗濯と……。ほ、ほら翠」

「……なよ」

「ん?」

「だ、誰にも言うなよ!?」

「……分かった。誰にも言わない」

「ほんとだな!?」

「疑い深いな……俺ってそんなに信用ないか?」

「そ、そんなことないけどさ……でも……」

「分かった。天地神明に誓おう。このことは俺と翠の二人だけの秘密だ。……さあ、隠蔽工作しないとな?」

「う、うん……」

 

一刀の“誓いの言葉”(天地神明の意味は翠には分からなかったが)に、ようやく動く気力を取り戻し、翠は一刀の腹の上から立ち退いた。

一刀の上着やシャツは翠の小水で腹部がびしょ濡れであり、もう洗濯するしかない。翠とて下着の交換は必須だ。

一刀は見かけた宦官に、本日の朝議を欠席、政務に遅刻する旨の伝言を頼み、二人はこっそりと色々な後始末に追われたのだった。

 

 

 

全ての隠蔽工作を終えた二人は、一刀の私室に来ていた。

 

「あ、あの……」

「ん?」

「あ、あたしのこと……嫌いに、なった……?」

「なんで?」

「なんでって……。だって、その。汚いだろ? お漏らしなんて……」

「だからって翠を嫌ったりしないさ」

「ほ、ほんとに? ……でも、汚い女だって、思ってるんだろ……?」

「思ってないって。急いでる時に、偶々俺が邪魔しちゃったんだろう。ある意味、俺のせいとも言えるし」

「で、でも……」

「……どうやら口で言っても分かって貰えないみたいだな。ふっふっふ……なら、こうしてやる♪」

「え? ちょ!? きゃあぁぁぁぁ!?」

 

 

……

 

…………

 

 

暫しあって。

二人は寝台で抱き合って寝そべっていた。時間はもう昼近い。

 

「う、うぅぅぅ……朝っぱらからなんて……。このエロエロ魔神めぇ……////」

「はっはっはっは! 恥ずかしがる翠は格別可愛いなぁ♪ もう遅刻すると伝えてあるし、問題ないさ」

「かっ、かっ、可愛いとか言われたって騙されないんだからな! ……ほんとエロいことには元気だよな! 昨日だってたんぽぽたちを相手にしたんだろ!?」

「それはそれ、これはこれ。『留保性交』にも随分慣れてきたし。おまけに今日は夜伽が休みの日だ(いや、今晩は麗羽に付き合う約束だったっけ)。それに、毎日精のつく料理食わされてるしな……。多分、シャオの差し金……じゃなかった、気遣いだと思うけど」

 

そういう方面には、本当に凄まじい才能を発揮する男である。たった十日で『留保性交』を身に付け、見事あれだけの人数の正妻との閨事をこなすことを可能にしつつあった。

 

しかし実は、『和の種馬』と市井でも有名な一刀も、ここ数日で疲労感を感じ始めていた。

しかし、麗羽が持ち帰った秘宝による『温泉』に昨晩から入浴し始めたのだが、“生命力増進”の効能が早速表れたのか、今日は朝から調子が良かったのだ。

……だからと言って、いきなり精力を使ってしまう煩悩への抵抗力の低さ(節操の無さと言ってもいい)こそ、この男が『種馬』と称される原因であるのは確かなところだろうが。

 

それはそれとして、料理に関しては相当に高級な食材を使用しているらしいと聞いた一刀は、公費節約の為にせめて頻度を落としたいと考えているようだったが……それによって夜伽に影響が出ては困る為、一先ず保留としていた。

温泉の効果次第では、少しずつでも節約していく腹積もりである。

 

「あ〜あ、それにしても……。ちくしょー、とんだ弱みを握られちまった……」

「なんだよ、脅迫になんて使わないって。誰にも言わないとも誓っただろう?」

「いいや! その顔はあたしをからかう気満々の顔だ!」

「いやー、恥ずかしがる翠は可愛いからさぁ。二人っきりのときくらいはいいだろ? たんぽぽにだって黙っておくんだし、本当に二人だけの秘密なんだから」

「ま、またそうやって、か、可愛いとか言って誤魔化そうとするし! ……でも、二人だけの秘密、かぁ……。はぁ〜、もうちょっとマシな秘密が良かったよ……。ったく朝からツイてないなぁ」

「――ツイて、ない?」

 

何気なく言ったであろう翠の呟きを聞き、一刀の脳裏に閃くものがあった。

 

「ん? どうしたんだ、ご主人様?」

「……翠。もしかして……朝、俺とぶつかる前。詠を見かけたり、挨拶したりしなかったか?」

「はっ! し、した! 朝餉の前に、挨拶した!」

「ということは……」

「「まさか……今日は『あの日』!!?」」

 

二人の叫び声が重なった。

 

-5ページ-

「緊急発令! 本日、『和』朝廷は『物忌み』とする!」

 

あの後、一刀と翠は押っ取り刀で政務室を訪れた。しかし、政務室にいたのは桃香一人のみ。既に被害は拡大の一途を辿っていた。

事態に気付いた桃香を初めとした旧蜀勢は、すぐさま行動を起こしており、詠を私室に軟禁(なお、月も詠の私室に共に居る)するところまでは対処済みだったが、その影響から逃れることは出来なかったらしい。

今日が詠の『あの日』であることを確認した一刀は、上記の緊急勅令を発した。

 

曰く、『本日、侍中・賈文和を見た者。目を合わせた者。会話した者。該当する者は自宅自室にて“物忌み”せよ』。

 

「現状の被害は!?」

「えっと……報告順でいくね」

 

まず朝。

愛紗が祭に教わりつつ朝餉(因みに餃子。朝から餃子かという話もあるが、炒飯に続いて愛紗が練習中だった)を自炊して、二人で味見。食中毒(?)で診療所行き。その餃子は見た目・香りは良かったようだ。上達の途中とは言え、寧ろ性質(タチ)が悪くなったような。

その後、季衣・流琉・霞が、気付かなかったのか、好奇心に負けたのか。愛紗の作った餃子を味見。全員揃って食中毒(?)で診療所行き。

朱里・雛里が秘蔵の艶本を無くし、探していたところ。なんと穏が拾っており、かつ読了済み。その後、穏は大暴れし、朱里・雛里を初め、蓮華、冥琳、稟を次々と犠牲に。穏本人は最後の犠牲者、稟の鼻血の噴出を真正面から浴びて窒息。犠牲者は私室で寝込み、穏は診療所行き。

思春は穏に襲われそうになった蓮華を庇おうと前に出た瞬間、真上から落下してきた明命と頭を打ち合わせて互いに気絶。明命は木から下りられなくなった子猫を助けようとして足を滑らせ落下したらしい。二人纏めて診療所行き。

 

続いて業務開始後。

訓練中だった焔耶・蒲公英・凪が、騒動(いつもの二人の喧嘩を凪が抑えようとした)の挙句、蒲公英の仕掛けた逆さ吊りの罠に全員で引っ掛かった上、重量過多で縄が千切れ、川に転落。水を吸った縄を解けず溺没。兵に救出されたものの、全員診療所行き。

沙和が愛読書のひとつであった女性用雑誌『趣々』休刊を知り、ショックで寝込む。

真桜が『ウチの夏侯惇将軍の頭が割れたぁ〜……」と、うわ言で呻きつつ寝込む。

桂花が落とし穴の底で、両生類・爬虫類に埋もれたまま泡を吹いて気絶しているのを発見される。診療所行き。

風が飴を喉に詰まらせて診療所行き。

亞莎がおやつに食べた胡麻団子を喉に詰まらせて診療所行き。

怠業して昼寝をしていた小蓮が、一緒に寝ていたペットの白虎『周々』の寝返りに巻き込まれ、潰されて診療所行き。

麗羽・猪々子・斗詩・美羽・七乃が、どこからか入手したという神秘の豆を試食して食中毒。診療所行き。

 

本人は“不運”に巻き込まれていないが、診療所の責任者であり、皇室御殿医である華佗は大忙しである。

 

これだけの状況をたった半日で作り出した詠の『あの日』。即ち、詠の“不運”が他者に伝染する日である(かつ、彼女自身の不運レベルが最大になる日でもある)。この日、彼女を見た者、特に目を合わせた者は、詠が普段受けている“不運”に見舞われることになるのだ。彼女から伝染する“不運”を“穢れ”と見れば、確かにこの処置は『物忌み』と言ってもいいだろう。

 

「なんか、自業自得っぽいのや、詠の影響じゃないのも交じってるような……」

「とにかく、旧蜀勢の何人かは回避出来たみたいだけど、元魏呉の娘は軒並み……」

「うーん……警告が足らなかったかな……」

 

前回の『あの日』は、先月の初頭、帝国建国準備中だった為、魏・呉の者には影響がなかったのだった。

そして、蜀の者達はこの数年の付き合いで、その対処に慣れていた……のだが。

 

「あたしは一応もう“消費”したし、大丈夫……かな?」

 

一定以上の“不運”に遭うと、それ以上のことは起こらないことも確認されている。翠の言う“消費”とはそういう意味である。

 

「油断は禁物だぞ、翠。巻き込まれる可能性もある。……桃香、話に出てない旧魏・呉の娘については?」

 

具体的には、華琳、雪蓮、春蘭、秋蘭のことだ。

 

「情報が来てないよ。今は動かせる侍従さんも限られてるし……」

「そうか。じゃあ“あっち”に行くついでに俺が様子を見てくるよ。とにかく、当初の計画通りにいこう。桃香、ここは任せるからね」

「うん。もう少ししたらねねちゃんも手伝いに来てくれるし。詠ちゃんと月ちゃんによろしくね」

「あたしも軍務にいくよ。今日は将軍が少ないから大変そうだ……」

「悪いけどそっちは頼んだ。紫苑や桔梗は上手く回避したみたいだし、協力を仰いで」

「ああ、了解!」

「……その前に。ねえ、ご主人様?」

「ん? どうしたの、桃香」

「遅刻するのは聞いてたけど。どうして翠ちゃんと一緒なのかな?(ゴゴゴ……)」

「////」

「……このお詫びは、全てが終わってから必ず致しますので、今はどうかご勘弁を……」

 

桃香の冷静かつ怒りの籠もった突っ込みに、翠はすぐさま赤面。こうなっては言い訳は不可能、一刀は徹底的に下手に出た上で素直に土下座した。

 

「うん、楽しみにしておくね♪ じゃあ、二人ともいってらっしゃい(にっこり)」

 

 

さておき、この『不運伝染日物忌み計画』は以下のようなものである。

 

まず重要な情報として、詠の“不運”が伝染しない稀有な存在が三人いる。月、一刀、そして桃香である。理由の詳細は不明、詠との信頼の度合いなどではないかと言われているが、確証は全くない。

ともかく、この三人には“不運”が伝染しない。よって、皇帝たる一刀は詠と共に彼女の私室に閉じこもり政務を通常通り行う。桃香は執務室で朝廷の各部署との遣り取りを行う。そして、この二人の仲立ちを月が担当する。

一刀は政務中、少なくとも諮問出来る相手――つまり詠本人――がおり、外部への連絡は月と桃香に頼む形にすることで、“不運”が伝染するのを最小限に抑え、詠自身の身を守る計画である。

詠が侍中として一刀の側近に抜擢されたのには、発動自体を抑えられない『あの日』に対処する為の、こう言った理由もあったのだ。

 

魏・呉の者達にもこの計画については伝達済みであったが、実際に“不運”に見舞われたことのなかった彼女等はどうも甘く見てしまったらしい。

 

「無事でいてくれよ……!」

 

そう呟きながらも、一刀は早足で後宮へと戻って行った。

 

-6ページ-

後宮には正室一人ずつに私室が割り当てられているが、春蘭・秋蘭の夏侯姉妹の部屋は隣り合った部屋であった。

秋蘭の部屋の扉には鍵が掛かっていた為、続いて春蘭の部屋の扉の前に立つ一刀。

 

「おーい、春蘭! いないのかー!?」

 

確かめてみると、扉に鍵が掛かっていない(実は既に春蘭が壊してしまい、鍵が掛からないだけなのだが)。

一刀は、ゆっくりと扉を開き、もう一度声を掛けた。

 

「春蘭〜? 案外秋蘭もいるんじゃないのかー?」

 

これだけの騒ぎになっているというのに、この二人の姿が確認出来ないのならば、可能性はほぼ二つ。自室で何かしらの事故に遭ったか、護衛として華琳に侍っているかだ。しかし、華琳自身の情報も政務室の桃香に届いていないとなると、既に三人纏めて“不運”でダウンしている可能性も否定出来ず。

華琳の私室を先に確認してみたが、やはり鍵が掛かっており、声も掛けたが応答は無かった。

という訳で、一刀は夏侯姉妹の部屋の確認に来たのだった。

 

「済まないが、確認の為に入らせてもらうよ〜?」

 

声を掛けつつ、一刀が春蘭の部屋へと足を踏み入れる。しかし、部屋には誰もいないようだった。幾つかの小部屋を確認するも、人影も気配もない。

だが。

 

「ん……? なんでこっちの壁に扉が……?」

 

春蘭の部屋でも最奥の端の壁。その向こうは秋蘭の部屋になっている筈の壁に扉があった。

 

(まさか、姉妹が行き来できるよう、勝手に扉を作ったのか? ……まあ許可取ってるなら構わないんだけど)

 

確認してみると、鍵は掛かっていない。一刀は扉を開け、秋蘭の部屋へ入った。

 

「春蘭、秋蘭〜。お邪魔するよ……っと?」

 

こつんと、何かを蹴飛ばした感触。

 

「……なんだ?」

 

大きさはサッカーボールよりも少し小さいくらいだろうか。蹴った感触からするとかなり硬い。相応に質量のある木材か何かのような。

しかし、自分が蹴ってしまったものをはっきりと確認した一刀は、思わず大声で叫んでいた。

 

「かっ、かっ、かっ……華、琳のっ――生首ぃぃぃぃぃぃ!!?」

 

特徴的な金髪くるくるツインテール。円らな瞳。陶磁器のように滑らかで白い肌。

その相貌は確かに曹操こと華琳のもの。彼女の生首は、そんな状態でも美しく、余裕のある笑顔を浮かべている……

 

思わず腰が抜けそうになった一刀だったが。その生首の“首元”を見て、真っ白だった頭に疑問を浮かべることが出来た。

 

(ひび……? というか、折れた木刀のような……)

 

ようやく一刀は、その華琳の“生首”が、彼女を模した木造の人形のものであることに思い至った。

両手でそろそろと持ち上げ、まじまじと見てみる。

 

「ひえ〜……似てるなんてもんじゃないぞ、これ……。こんな間近で見てるのに、本人にしか見えねー……」

 

ここに至り、一刀は部屋を見回す余裕を取り戻した。

そして、床に倒れたまま、微動だにしない春蘭と秋蘭を発見した。

 

「しゅ、春蘭! 秋蘭! 一体どうしたんだ!?」

「「……………………」」

 

二人とも、意識はあるようだったが、話し掛けても反応がない。正に茫然自失といった感である。

 

「…………。……これ、この人形の身体か……」

 

二人の真ん中には、一体の首無し人形が倒れていた。体格・服装からいっても、等身大の華琳人形であるのは確かだった。

 

「こ、これはまた、凄い精度だな、オイ……」

 

倒れていた華琳の人形に触れようとすると、がばりと春蘭が飛び起きた。

 

「――華琳様に触るなァァァァァァ!!」

「うわっ!? わ、分かった! 触らない! ……けど、この“首”はどうしたらいいの……?」

「か、か、華琳様ぁぁぁぁ! 申し訳ございません! こうなっては私もこの首掻っ切って、黄泉路のお供を!」

「だあぁぁぁぁ! 落ち着け! これは“人形”! 勝手に死ぬな! 罰は本物の華琳から貰え!」

「はっ! ほ、北郷!? 何故貴様が此処に!」

「……落ち着くにしても、そこに戻るのかよ……」

「…………む。北郷……」

「ああ、良かった。秋蘭も正気に返ったか」

 

と、一刀が(華琳人形の首を持って、正面を向けたまま)秋蘭へと振り向く。

 

「華琳様! 申し訳ございませぬ! こうなっては――」

「だあああ! 姉妹で同じこと言ってんな! これは“人形”! 落ち着け! 罰は本物の華琳から貰えってば!」

「はっ!? そ、そうだな。済まん、北郷。余りの衝撃に、少々取り乱した……」

 

明らかに少々ではない、と突っ込みたかった一刀だったが、話を進める為に我慢した。

 

「で、二人は……この人形が壊れたことが衝撃で、呆然となっていた訳か?」

「……うむ。情けない話だが、そういうことだ」

「あああああ……華琳様、おいたわしや……」

「で、これ。一体どうしたの。つーか凄い精度だよな。こんなの作れる職人がいるのか」

「北郷。これを作ったのは姉者だ」

 

しーん。

 

「え?」

 

「これを作ったのは姉者なのだ」

「マジで!?」

「うむ」

「私の華琳様への愛に不可能はない!」

「…………華琳限定なあたりが、実に春蘭らしいよ……」

「はっはっは! そう褒めるな!」

「「…………」」

 

ともかく、夏侯姉妹もある程度持ち直したようなので、一刀は現在の朝廷・後宮に『不運伝染日物忌み計画』が発動していることを伝えた。

 

「……確かに、朝に詠と挨拶を交わしたな……」

「くっ、慎重さを信条とする秋蘭をして、ドジを踏ましめるとは……。詠の“不運”、恐るべしということか……」

「…………。……木彫り……。……人形……。……女の子……」

 

どうも、人形を倒し首をへし折ってしまったのは、意外にも秋蘭の方であるらしい。

一方で一刀は華琳人形を凝視し、思索に耽ったままボソボソと何事か呟いていたが、現状を思い出し、二人へ状況を説明した上で、最後にこう言った。

 

「――という状況だ。これだけの“不運”を“消費”したなら、二人はもう大丈夫だと思う。実はまだ華琳と雪蓮が見つかってないんだ。二人はその捜索と護衛を頼むよ」

「なんだと! それを早く言わんか! こうしてはおれん。華琳様、今参ります!」

「北郷、おぬしは例の計画通りに動くのだな?」

「ああ。だから、後はよろしく頼む」

「うむ。承知した」

 

春蘭が部屋を飛び出し、秋蘭も姉を追う。それを見届けた一刀も、詠と月が待つ私室へと向かった。

 

 

 

「ごめん、遅れた――って、華琳! それに雪蓮!?」

 

ようやく詠の私室(つまり本日の臨時政務室)へ訪れた一刀だが。入室するなり大声を上げてしまった。其処には発見の報告のなかった華琳と雪蓮が、月・詠とともに卓についていたのだ。

 

「あら、やっと来たのね」

「お疲れ様、一刀」

「ご主人様、おはようございます……と言うにはもう遅いですね、ふふっ」

「遅いわよ! こんなときの為に『物忌み計画』まで立てたのに、あんたが仕事しないんじゃ意味ないでしょうが!」

「ああ、ごめんよ。朝から色々あってさ」

 

と、一刀は朝からの一部始終を(当然、翠のお漏らしと情事を省いて)四人に説明した。

 

「……そう。春蘭と秋蘭ったら、あの人形を壊しちゃったのね。しかも秋蘭のドジで、か……」

「旧呉勢で無事なのって、あと私だけなのね。ふふふ……面白くなってきたわ……♪」

 

神妙に考え込む華琳と、何故か不敵な笑みを浮かべる雪蓮。

 

「なんで二人は此処に? 『物忌み計画』の際は、この部屋には近付かないようにって言っておいただろう?」

「んー? 話によると死ぬようなことはないらしいし、一遍どれ程のモノか試してみたかったのよね〜♪」

「私は正直、そこまで恐れるようなものなのか、疑問があるの。だから……まぁ結論としては雪蓮と一緒ね。自身を以って試してみたかったのよ。大したことがないのなら、効率悪いことこの上ない『物忌み計画』自体を棄却出来るし」

 

さも楽しげな雪蓮と、しれっと答えた華琳。しかし、反論したのは一刀ではなく、詠だった。

 

「くっくっく……。ボクの“不運”を随分舐めてるようね……。今日一日、精々気をつけるがいいわ! あーっはっはっは!」

「詠ちゃぁ〜ん、それじゃ悪役だよぉ……」

 

一刀も月の突っ込みは尤もだとは思ったが、とりあえずそちらは置いておいて。

 

「ったく……既に旧魏・呉勢での“生存者”が君ら二人だけって時点で、もうその脅威の程は分かってるだろう!?」

「そうね。正直、甘くみていたかもね。でも……どれもこれも不注意の嵩じたものばかり。実際、旧蜀勢には回避している者もいるじゃない」

「それは不注意を回避してるんじゃなくて、“詠との接触を避けて、不運を溜めないように”してるんだよ!」

「……どういうこと?」

 

疑問を口にした華琳に答えたのは、やはり一刀ではなく詠。

 

「今日は、ボクを見ただけでも“不運”に見舞われる。目を合わせれば更に確実。そして、ボクとの接触が大きくなればなる程、“消費”しなくてはならない“不運”の度合いは加速度的に大きくなる……! さんざこの部屋で、ボクと会話したあんたたちは……どのくらいの“不運”を溜め込んでるのかしらねぇ……? くーっくっくっく……♪」

「ふふん。それで何事も無く今日一日を過ごせればいいのでしょう? ねえ雪蓮」

「そうね。本当に面白くなってきたわ……♪」

「「…………」」

 

詠は、まるで怪談話のように、おどろおどろしく話す。というか、華琳と雪蓮を脅しているようにしか見えない。

対して華琳と雪蓮も自信満々の態度を崩さない。

一刀と月は、対決でもしているかのような三人を呆れて見るしかなかった。

 

(うーん。やっぱり、どう見ても……)

(詠ちゃんの方が悪役にしか見えないよぅ……)

 

-7ページ-

本日限りの天子の政務室となった詠の私室から退去した華琳と雪蓮は、一先ず華琳の執務室を目指して歩き出した。

いや、歩き出そうとした。

 

「「――!!」」

 

二人はほぼ同時に、床に膝をつき、身を伏せた。

 

――ヒュッ! ドガッ!

 

その瞬間、何処からか飛来した戟が後宮の壁に突き刺さった。

 

「……方天、画戟……?」

「……死ぬようなことはないって聞いてたんだけど……」

「…………二人とも、平気?」

「……恋。一体、何をどうしたら、あなたほどの武人が得物を放り投げるようなことになるのかしら?」

「…………犬」

「「犬?」」

「…………犬を抱こうとして、両腕を開いた。そしたら、飛んでいった」

「「…………」」

「…………恋、これで“不運”使った。もう、大丈夫」

「……そう。よかったわね」

「(こくり)…………恋、行く。二人も、気をつけて」

 

会話の端々に沈黙というか、間が出来るのは、さしもの二人もいきなりの“不運”に少なくない驚きを感じているからか。

ともあれ、警告の言葉を残し、恋は去って行った。

 

「これは……本気で舐めていたかもね……」

「よし! 行くわよ、華琳♪」

「……はぁ」

 

後宮から華琳の執務室までの短い間ですら、二人は様々な“不運”に見舞われた。

 

最初の方天画戟に始まり、必ず死角から襲い掛かる飛来物(鳥の糞・瓦・明命配下の密偵など)。中には何処から飛んで来たのか、不明なものも。

すれ違う人間は必ず躓いて此方へ突っ込んでくる上、手にしていたもの(硯や竹簡など)を狙っているかのように放り投げてくる。

しかし、流石は反射神経も素晴らしいレベルで身につけている二人である。見事な体捌きを見せ、どうにか被害を被らずに済ませ、普段の十倍以上の時間が掛かったものの、無事執務室へと辿り着いた。

 

しかし、執務をしていても油断は出来なかった。

 

誰かが躓いて、その手に持っていたものが飛んでくるのは、廊下でもあった為に二人も予想の範疇だったが。

昨日まで普通に使えていた筈の筆や墨が使い物にならなくなっていたり。

紙の質が悪いのか、墨のノリが悪かったり。一瞬目を離した隙に紙が破けてしまったり。

机に手をついて立ち上がろうとすれば、机の足が折れたり。

華琳が処理済の書簡を部下に命じ棚に収めさせようとすれば、その棚が大崩壊を起こしたり。

実は軍務をサボり中だった雪蓮が「暇だー!」と叫んで寝転んだ瞬間、床が抜けてそのまま落ちていったり。

 

「…………確かに舐めてたわ…………」

「怠業してると知った以上、ざまあみろとしか言わないわよ、雪蓮」

 

しかし、効率こそ非常に悪かったものの、流石は『治世の能臣』と謂われた曹孟徳。日が落ちる前には、なんとか今日のノルマをこなしていた。

ちなみに雪蓮は、今日一日完全に仕事をサボった(何せ、普段注意してくれている冥琳がダウンしているのだ)。見事に“不運”に嵌り床下へ落ちたのが、彼女にとっては“負け”だったらしく、不貞腐れて酒を呑んでいた。

 

(……なんとか、無事に一日過ごせそうね……)

 

(何度もへし折れたりして、本日五本目の)筆を置いた華琳は、自身も気付かず安堵の溜息を吐いていた……のだが。

 

「も、孟徳様! 失礼致します!」

 

執務室へ飛び込んできた一人の男。華琳は彼に見覚えがあった。雛里の配下である尚書の一人だ。

 

「どうしたというの?」

「はっ! 本日は尚書令・士元様が『物忌み』の為、お預けしていた本日が期限の重要な案件に誰も気付かず……! 司徒・孔明様も同じく『物忌み』の為、こうして丞相様までお持ちした次第でございます!」

 

なお、内政(民事)担当を官品の降順で挙げると、華琳→朱里→雛里→尚書(秋蘭、七乃、他四名)→以下多数となる。

ともかく、尚書が提出してきた書類に目を通す華琳。横から雪蓮も覗き見ている。

 

「……これは……まずいわね。私も予定としては知っていたのに……失態だわ」

「あら、劉協が謁見に来るのね」

 

書類によると、来たる九月十七日の昼過ぎ、漢王朝のラストエンペラーであり北郷一刀にとっては先帝となる劉協が謁見に参上する為、その応対準備について書かれていた。

 

『和』王朝は、先帝である劉協を非常に厚遇している。地位こそ一郡の公であるが、本来なら皇帝のみが使用を許される一人称である『朕』の使用許可を初め、様々な計らいをしていた。

それは、彼が一刀の理想を信じ禅譲を決意したという経緯に対し、新皇帝となった一刀を初め、誰もがその決断に敬意を払うが故であり、彼を一刀の『仲間』の一人と見ているからである。

 

そういった事情から、劉協が謁見に訪れるとなると、出迎えの手順から、謁見後の宴会などの持て成し等、準備すべき事項は数多くあるのだ。

 

まして今回は急遽の来訪ということで、早々に準備しなくてはならなかった。

期日までは(今日が十二日であるからして)あとたったの五日。各署への連絡等は既に済んでいるが、今日中に尚書令クラスの官僚による最終確認が予定されていた。少し早いタイミングで最終確認を行うのは、不備があった場合に再準備の時間を確保する為だ。

 

「うーん……。最終確認だけなら、明日に回した方が安全じゃない?」

「……いいえ。今日がこの有様であることから考えても、特に今日用意したものには不備がある可能性が高いわ。少しでも準備時間を確保するには、今から確認しなくては……」

「……逆効果にならなきゃいいけど……」

「確かにその可能性もあるけれど。逆効果になるということは、私が詠の“不運”に負けたということだわ。それは酷く癪な話だと思わない?」

「……ふふっ、ははは! そうね、その通りだわ!」

 

かくして、勇気か蛮勇かは神のみぞ知る、英雄二人の旅(?)が始まった。

 

 

「雪蓮! 伏せなさい!」

「ッ!」

 

咄嗟に跪いた雪蓮の頭を掠めて、どこから飛来したというのか、蜂の巣が壁に当たり、落ちて割れた。

当然、そこから雲霞の如く飛び出す蜂の大群。

 

「――逃げるわよ!」

「ええ!」

 

二人はまさしく疾風の如く逃げ出した。

しかし、廊下の曲がり角を曲がろうとした華琳が足を滑らせる。

 

「なっ!?」

 

床には脂のようなぬめり。料理を零したのか、或いは灯り用の油か。

しかも、廊下には外に落ちないよう柵が設けられているのだが、華琳の軽い身体がぶつかると、まるで根元が腐っていたかのように簡単に壊れてしまった。

 

「くぅっ!」

 

廊下から庭へと勢いよく落ちていった華琳は、身体を丸めて転がることで、落下の衝撃を最小限に抑えた。

だが、身体が転がっていく先には――屎尿がたっぷりと詰まった桶。恐らくは庭園などで肥料として使う為に運ぶ途中、何かしらのトラブルがあり、とりあえず置きっぱなしにされたのだろう。

 

(いやぁぁぁぁぁぁぁ!?)

 

「はあっ!」

 

心中で悲鳴を上げた華琳だったが、転がっていく彼女の身体を押し潰すようにして、飛び出した雪蓮が止めた。

 

「あ、危なかったわね……」

「……ありがとう、雪蓮……。この曹孟徳、一生の恥を晒すところだったわ……!?」

 

冷や汗を掻きながらも起き上がった華琳が見たのは、迫り来る蜂の大群。

 

「――蜂如きが舐めるなッ!」

「ふっ、やってやろうじゃない!」

 

華琳は大鎌『絶』を。雪蓮は宝剣『南海覇王』を。

二人は凄まじい速度で斬撃を繰り出し続け、襲来する蜂を全て斬り落として見せた。

 

「「さあ、いくわよ!」」

 

 

二人は更に進む。

幾つもある目的地(ものによっては城外もあった)に着いては最終確認を行っていく。

 

――時には迫り来る人の波から逃げる為に屋根に飛び乗り。

 

ドドドドドド……

 

「なんの行進なのよ!?」

「華琳! 屋根の上まで放り投げるわ! そうしたら私を引き上げて!」

「分かったわ!」

 

 

――時には大量の木材・丸太の雪崩を避け。

 

「斬っちゃダメよ、雪蓮!」

「ええー!? 全部避けるの!?」

「これも資材なのよ!」

 

 

――時には橋の崩落に巻き込まれ。

 

「「きゃあぁぁぁぁぁ!?」」

 

どっぽーーーん!

 

 

――時にはナンパされ。

 

「「一昨日来なさい!(カッ!)」」

 

 

 

完全に日も落ちて、星々が瞬きだした頃。二人はようやく全ての確認作業を終え、宮廷へと戻って来ることが出来た。

やはり、今日用意された資材や食材などには不備が数多く見られたが、華琳は不備を発見する度に指示を出し、間違いを修正した。

 

「お疲れ様、華琳。雪蓮」

 

そんな二人を出迎えたのは、夫であり皇帝である一刀だった。

 

「……一刀」

「あはは……ただいま」

 

数々の障害を乗り越えた二人は、見るからにボロボロだった。途中、川に落ちてもいる。

 

「大変だったみたいだけど……大事なくて良かった……」

 

一刀はそう言って二人を抱き締めた。

 

「……ええ。正直疲れたわ……」

「これがご褒美なら、まあいいかな? うふふっ」

 

まんざらでもなさそうな二人だったが。

 

「……でも、確認作業なら“不運”の影響を受けない桃香か俺に頼めば良かったのに」

「「!?」」

 

「そ、そんな簡単なことに頭が回らなかったなんて……」

「あの苦労はなんだったのよ……」

 

一刀のその言葉を聞いた二人は、思わず脱力し、その場に尻餅をついたのだった。

――詠の『あの日』は、今後細心の注意を払おうと決心しながら。

 

-8ページ-

その夜。

流石に一刀は華琳のように凄まじい速度で仕事をこなすような真似は出来ない。

『物忌み』の為、とかく不足する人材に困りながらも、少しずつ仕事を片付けていった。

 

帰還した華琳と雪蓮に協力を頼みたいところだが、残念ながら彼女らは疲労の為、既に就寝している。

しかし、日が落ちてからは診療所から戻ってきた者もあり、少しずつペースは上がっていった。

 

という訳で、多少余裕を取り戻した一刀らは、雑談混じりにまだ少量残っている政務を続けていた。

 

「それにしてもさ」

「……あによ」

「詠ちゃん。ご主人様にそんな言葉遣いしちゃ駄目だよ。もっと女の子っぽくしなきゃ」

「どーしてボクがこんな奴の為に女の子らしくしなきゃならないのよ!」

「もう、詠ちゃんたら……私達、ご主人様の“后”なんだよ?」

「ぐっ!?」

 

いきなりの切り札に、詠が言葉を詰まらせる。

そんな様子をにやにやと見ている一刀に、詠は尚更語気を荒らげる……というのがいつものパターンであるが。

 

「まあまあ。でさ、大半は診療所から戻って来たり、寝込んだ状態から復帰したけど……」

「……そうみたいね。ようやく仕事の終わりが見えてきたわ……」

「でも、まだ復帰出来てない娘もいるだろう?」

「そうですね……。華佗先生によると、愛紗さんの料理を食べた方々は、二、三日お休みになるかもしれないそうです……」

 

恐るべきケミカルウェポンである。

 

「……愛紗に料理させるの、禁止した方がいいんじゃないの?」

「でも、炒飯は普通になったし。練習次第なのが分かったからね。本人も凄い喜んでたし」

「(喜んでたのは、アンタに自分の作ったご飯を食べて貰えるからに決まってんでしょうが、このにぶちん!)」

「……なに?」

「なんでもないわよ!」

「うふふ♪」

 

詠の内心は、月には筒抜けのようである。

 

「あと、まだ復帰されてないのは……朱里ちゃん、雛里ちゃん、蓮華さん、冥琳さん、稟さん……ですね」

「そうなんだよ。これって凄いと思わないか、二人とも」

 

一刀は、一旦筆を置いて腕を組み、自分の顎を撫でながら、唸るように言った。

 

「その五人ってさ。全員、穏にヤられちゃった娘たちなんだよね」

「「――!?////」」

「俺も随分頑張ってる積もりだけど、丸一日復帰出来ない程のテクニック……えっと房中術? 今度、穏に教わろうかなぁ……」

「へ、へぅぅ……////」

「こっ、この、変態チ●コ皇帝がぁーーー!! 女性に対して、配慮ってモンがないの!?」

「ええ〜? 二人だって興味ない?」

「////」

「死ね!(ドゴッ!)」

「ごふっ!?」

 

最早言葉も無くただ赤面して俯くしかない月と、机を飛び越えての真空飛び膝蹴りという高難度な攻撃をかます詠。

さりとて一刀も詠の攻撃には慣れたもの。胸を膝で強打されつつも、飛び込んできた詠を逆に抱き締め、座ったまま膝の上に乗せてしまった。

 

「きゃ、きゃあぁぁぁっ!?////」

「なんだよ〜。そんな悲鳴あげられると、ちょっと悲しいぞ、詠」

「だっ、だって! この体勢って……!?」

「へぅぅ……詠ちゃん、いいなぁ……」

「お? じゃあ月もおいで」

「よ、宜しいんですか?」

「勿論」

「え、えへへ……。お邪魔します////」

 

という訳で、詠と月を膝に乗せ、その肩に手を回す一刀。

最初はぎゃあぎゃあと騒いでいた詠も、すっかり大人しくなってしまった。

 

「……でも、ご主人様。私は……私達は、ご主人様のご寵愛を受けることが出来るだけでも十分幸せです……////」

「ゆ、月ぇ〜〜〜……」

「うん。ありがとう、二人とも。でもね、やっぱり現状に満足するだけじゃ駄目だと思うんだ。もっと“上”があるのなら、手を伸ばしてみるのって、結構重要なことだと思うんだよ」

「……単なる高望みっつーか、背伸びにならなきゃいいけど。それに……人間の欲望ってのは、本当に怖いものよ。“向上心”と呼べる内はいいけど……“根”が腐れば、それはただの“強欲”に成り果てる……」

 

一刀の言葉に、房中術だけでない様々のものを含めた意味を感じた詠が、警告の言葉を掛ける。

 

「……俺は大丈夫さ」

「そんなこと言う奴が一番――!」

「だって、俺には――詠が、月が、みんながいる。俺が間違ったとき、容赦なく叩いてくれる『仲間』が。そうして俺を正しい方向へ導いてくれる、愛するみんながいるから。だから、俺は大丈夫さ♪」

「なっ! ……はぁ。ばっかじゃないの……////」

「うふふっ。詠ちゃん、嬉しそう♪」

「ちょっと、月ぇ!?」

「はははっ! これからも宜しくね、二人とも」

「はい……♪」

「ふんっ!」

 

二人を背後から抱き締める一刀。素直に受け入れる月と、口では反発しつつも拒否はしない詠。

 

「……で。どうせなら二人ももっと俺が“上手く”なった方が――」

「話を混ぜっ返すな!(ゴスッ)」

「ごふぁっ!?」

 

詠が肘で一刀の鳩尾を痛打し、話を無理矢理打ち切らせた。

 

「ん……?」

 

一瞬途切れた会話。その沈黙の中、室外からの泣き声が一刀の耳に届いた。

 

「失礼致します。仲穎様、董白様がおむずかりでらっしゃいまして――」

「あ、はい」

 

仕事も終わりが見え、和んでいた三人は完全に油断していた。

まだ『あの日』が終わった訳ではないのだ。

にも関わらず、董白を預かっていた侍従から母を求め泣く赤子を受け取る為に、月が部屋へ侍従の宦官を引き入れてしまった。

当然、侍従は月のみならず、詠の姿も見てしまう。それどころか、泣き声が気に掛かった詠は、思わずそちらへ向いており、侍従と目を合わせてしまった。

 

「――あっ」

 

気付いたときにはもう遅かった。

董白を月に渡した侍従が、詠を膝に抱えた一刀の姿を微笑ましげに見遣り、一礼して部屋を退出しようとする。そして、扉を閉じようとするが……

 

「ん? か、固いな……くっ!」

 

何かに引っ掛かっていたのか、動かなかった扉を動かそうと力を込める。その瞬間、何の抵抗もなく動いた扉は、勢い余ってバタンと大きな音を立てて閉まった。侍従は反動で廊下を飛び出し、庭まで落下してしまった。

そして詠の私室では、まるで閉じた扉に連動するように、みしみしという音が室内に響き始めていた。

 

「なっ、ま、まさか!?」

 

響く崩壊の音。

次の瞬間、一刀と詠の上に天井が崩れ落ちてくる。

 

「きゃあぁぁぁぁ!」

「――詠ッ!」

 

膝の上のままだった詠を庇うようにして、一刀はとっさに机の下へと退避した。

轟音を立てて木材や瓦が落下し続け、室内にもうもうと埃が煙のように充満した。

 

「げほっごほっ……詠ちゃんっ! ご主人様ぁ!」

 

全く見えないが、容易に想像できる惨状に、入り口付近にいた月が悲痛な叫び声を上げた。

外から見ると、部屋の壁はそのままに、屋根だけが崩落して無くなった状態だった。

 

「こ、これは一体どうしたというのだ!?」

 

最初に現場に来た皇后は焔耶だった。その剛力で最早用を為していない扉を破壊し、室内へ飛び込んで来た。

 

「焔耶さん! え、詠ちゃんと、ご主人様が! 瓦礫の下敷きに……!」

「なっ、なんだと!? くそっ! お館! 詠! 返事をしろ!」

 

未だ室内には埃が立ち込めており、視界が利かない。

しかし、焔耶が扉を破壊したことで風が通り、ようやくその惨状が目の当たりとなった。

 

梁は斜めに崩れ落ち、屋根を覆っていた瓦がそこら中に散乱している。

一刀と詠、二人の姿は見えず、目の前には瓦礫の山があるのみ。

董白を連れて来た侍従に伝染した“不運”を切っ掛けに、詠本人の最大レベルの“不運”が呼び起こされた結果だった。

 

「お館! お館ぁ! 返事をしてくれ!!」

 

焔耶は片っ端から瓦礫をどけながら、声を上げる。

 

「詠ちゃん! ご主人様! お願い、返事をして下さい!」

 

月も、我が子を抱いたまま、呼びかけ続ける。

 

「きゃあぁぁ! な、なんなの、これぇ!?」

「沙和! 喚く暇があるのなら手伝え! お館と詠が下敷きに……!」

「なっ、なんやて!? ど、どないしたらこないなことになるねん!?」

「落ち着け、沙和、真桜! とにかく今は救出が最優先だ!」

 

続いて現れた沙和と真桜が恐慌に陥りかけたところを、同じく駆けつけた凪が諭す。

 

「う、うん! 隊長、詠ちゃん! 今助けるの!」

「こら、『螺旋槍』で一発って訳にはいかへんで?」

「ああ。瓦礫を吹き飛ばせれば早いが……この状況では無理か……。とにかく瓦礫を退かそう!」

 

三羽烏が作業に加わる。

騒ぎを聞きつけた、或いは崩落の轟音を聞いて、次々に人が集まり出していた。

 

すると……

 

「くくっ……くくくっ……」

 

確かに瓦礫の下から人の声がした。

 

「お館か!?」 「「「隊長!」」」 「ご主人様!」

 

同時に声を掛けた皇后たち。

 

「おー、その声は焔耶たちかぁ。悪いけど、もうちょっと頑張ってくれ〜。とても俺の腕力じゃ脱出は無理っぽいから〜」

 

確かに返ってきたのは、そんな一刀の暢気な声。

 

「……こんな状況だというのに、お気楽な声を上げるな! 馬鹿お館が!」

 

半泣きで怒鳴りながらも、焔耶は次々に瓦礫や木材をどけていく。

 

「沙和、真桜。私達は一旦下がろう。焔耶の退かしたものを運び出すんだ」

「わかったの!」「あいよ!」

 

暫く四人が瓦礫の撤去作業を続けた。

すると、意外とすぐそこから一刀と詠が顔を出した。

 

「ふぅ。いや、助かったよ焔耶。梁なんて重くてとても動かせなかったからさ」

「げほげほ……全く、最後の最後でとんだ目に遭ったわ……」

「お館! 詠! 怪我はないか!?」

「ふえぇぇぇぇん! 詠ちゃぁぁぁん! ご主人様ぁぁぁぁ!」

「ああ、俺らは平気。怪我もしてないよ。な、詠」

「うん。心配掛けて、ごめんね。月……」

 

月が詠を抱き締める。一刀も、服の埃を叩き落とし、手の汚れを拭いてから焔耶の髪を優しく撫でた。

 

「ありがとう、焔耶」

「ふ、ふん! ……無事なら、いい……////」

「……月。俺は大丈夫だよ。それよりも、月も、董白も大丈夫だったかい?」

「ぐずっ……はい。私は全く問題ありません。この娘も……この通りで」

 

見ると董白はきゃっきゃっと笑っていた。

 

「ぷっ! あはははは! 大した娘だな、董白は!」

 

大笑いした一刀に釣られ、周囲の者達にも笑顔が広がった。

 

「凪、真桜、沙和。お疲れ様。心配かけたね」

「ご無事で……何よりです」

「ホンマやで……勘弁してやぁ……」

「心配しまくったの〜〜!」

 

「……みんな。俺も詠――賈駆も、怪我はない。心配は無用だ」

 

二人の頬を撫で、そして集まった者達へ声を掛けた。

そして、一刀は改めて部屋の惨状を見遣る。

 

「おーおー、派手に壊れたもんだ。くくっ、くくくく……」

「お、お館?」

「ご、ご主人様?」

「くっくっくっ……あーっはっはっはっは!」

「なんで笑うてんねん!?」

「た、隊長!? やはり頭を打ったのでは!?」

「隊長がおかしくなっちゃったの〜〜!?」

「ちょっと、瓦礫……机の下でも笑ってたけど! とうとうイカれちゃったの!?」

 

心配する周囲の者をさておき、詠の突っ込みに悪い笑みを顔に貼り付けつつ、一刀は畏まった物言いを始めた。

 

「――侍中、賈文和に諮問する。……此処は何処だ?」

「は!? 何処って……後宮の私の私室……」

「そうであるな。本来ならば、我が皇后の住まうこの後宮は、この国で最も安全でなくてはならぬ。そうだな?」

「……ま、まあそうだけど……。なに、その似合わない口調……」

「だが、皆も見よ、この惨状を。どうやら、洛陽の後宮は随分と老朽化しているようだ。この分では宮廷も危ういやもしれん。そうは思わないか、賈文和よ(ニヤリ)」

「ハッ!? あ、あんた……」

「確かに洛陽は、中華のみならず大陸にその名も高き古都だ。だが、新たなる帝国の皇帝として、その宮殿および街々の老朽化は大きな懸念である。そうだな?」

「……御意」

「――今すぐ、朝廷の中枢たる官僚らを集めよ! この老朽化について、緊急の会議を執り行う!」

 

-9ページ-

そう。一刀は詠の“不運”によって引き起こされたこの後宮の一室の崩落を、強引に“街全体の老朽化”に結び付けることで、古都であることに拘る反対意見を宥め、街の拡張・区画整理を実行する積もりなのだ。

 

その晩、緊急に開かれた会議以降、洛陽拡張計画は急速に推し進められることとなった。

 

前述の通り、反対意見の大半は庶人の“古都への愛着”を理由に、この計画によって更に資産を削られることになる有力者らが“予算の出し渋り”をしていたものだ。

 

しかし、街を見回った一刀が最も懸念していたのは、人口が多すぎることによる弊害の連鎖……未だ職を持てない流入者が多いこと、それにより流入者の基本的生活水準が低いこと、洛陽に入り切らない流入者による貧民街が形成されつつあること。そして何より、このまま冬となれば、貧民街で多数の凍死者が出るであろうことだった。

洛陽では、秋は日照時間が長く暖かいが、冬は非常に寒くなる。雨(雪)こそ少ないが、貧民街のような雨露を凌ぐことさえ出来ない住居では、凍死者が出るのは自明であった。

 

一刀は、“老朽化による後宮の崩落によって皇帝と皇后が危険に晒された”という一種の既成事実を盾に、反対意見を抑え、有力者らの反対を打破したのだった。

 

一刀としては官吏もまた民であり、官吏だからといって裕福な暮らしをしている訳でもないことも重々承知している。

故に無理に出費させる気は全くなかった。よって計画への予算寄付については匿名制とし、その額についても公表しないこととした。僅かでもいいから施せば、面目が立つようにしたのだ。

 

 

こうして帝都・洛陽の拡張および区画整理計画はスタートを切った。

 

大まかに言ってしまえば、宮殿の位置を現在より西に移し、現在の洛陽の街を『北東部』とする。そして『北西部』『南東部』『南西部』を増設。現在の四倍もの広大さを持つ街を目指す。こうして『北東部』を残すことで、現在の宮殿や庭園を保持出来れば、正に“由緒正しき古都”はその姿をそのまま残すことが出来る。そうすることで古都に拘る庶民の不満をある程度抑えようという意図である。

 

勿論、いきなり四倍に出来る訳がない。計画ありきで少しずつ拡張していくことになる。

最終的には、日本人にはお馴染みの『平城京』や『平安京』のように、城郭(街の外を覆う城壁)の中央北部に官庁組織を集中させ、民間居住区と行政府を区別し、東西南北を碁盤の目のように分けた形態の街並みになる予定だ。

 

何より、この市街拡張工事という公共事業自体が、流入者の仕事となり、収入源となる。収入が得られるようになれば、ライフラインに関わる商人らの仕事・収入が増え、それがまた流入者の雇用先ともなる。流入者が職を得られるようになれば、貧民街の形成を防ぎ、居住区の整理もスムーズに進むようになるだろう。

また、街の規模が大きくなるのに合わせて、『洛陽警備隊』の一般隊員も募集し、治安維持に努めつつも、更なる雇用を作り出す方針だ。

 

無論、蜀都成都でも行っていた町割などのアイディアも取り込んでいく。

流入者も、自分の求める職種によって、街の何処へ行けばいいのか分かり易いし、同種の職人が集まる場があれば新たな職場を見つけ易くなるだろうという目論見である。

 

 

 

「それにしても、強引な理屈をつけたものね」

 

呆れたようにそう言うのは華琳。

ここは後宮の中庭。月初に執り行う『頂議』のメンバーが集まり、休憩がてらの雑談中である。

 

「まあね。でも、最優先すべきは、流入民達が凍死しない為の環境整備だ。多少官吏たちに恨みを買ってでもやるしかなかったんだよ」

「言いたいことは分かるけれど。余り一部の俗物らを刺激するのは感心出来ないわ。それに、官吏は“国を運営している”という自負があるからこそ天子への忠誠を維持出来るのよ。その褒美である官給を削っては、求心力の低下にも繋がりかねないわ」

「うーん、それこそ分かってはいるんだけど……急がないと冬に間に合わないからな。人命が懸かってる以上、今回は引き下がる訳にはいかなかったんだ」

 

口や態度では厳しく当たる華琳であるが、実際の官吏全体の忠誠心、つまり皇帝としての北郷一刀の求心力はこの一件で更に強まったと考えている。

 

一刀は、この計画を実行するにあたり、官吏を一堂に集め、洛陽の現状から対策、その理想を自ら語った(人数が多すぎるので、文官と武官で二度に分けたが)。

“自らが国を運営している”と自負する、志ある名士層の官僚ならば、寧ろ私財を擲(なげう)ち、清廉たる態度を見せた天子に尊敬と共感の意を示すだろう。何故なら、名士層というのは基本熱心な儒学者であり、自身は清貧であることを好しとし、私財を溜め込まず、民に施すことを理想とするからだ。

 

華琳が問題視しているのは、先の言葉にもあった“俗物”の官吏である。彼らは自身の私腹を肥やすことこそが最優先事項であり、常に利権を求めている。

故に、一刀の演説は彼らには逆効果となっている筈。この二ヶ月弱ですら、相当の反発があったのだ。今は付け込む隙がない為に大人しくしているが、万一この計画が頓挫すれば、途端に牙を剥くことだろう。

 

だからこそ、内政の最高責任者として、華琳は一刀に辛辣な言葉を掛ける事を躊躇わなかった。

そして一刀もまた、華琳のその立場を十分に理解していた。

 

「演説してるご主人様、格好良かったよ♪」

「あはは、ありがと。桃香////」

「……何をでれでれと。華琳様の仰ったことは至極ご尤も。肝にお銘じ下さい、陛下」

「はい、すいません……。というか、稟も堅苦しい言葉遣い止めて欲しいんだけど……」

「公務中は拒否致します」

 

そんな華琳と一刀の二人を微笑ましく見つつも、雰囲気を和らげるように桃香が一刀を褒めたのだが。生真面目な稟には逆効果だったようだ。……微妙に嫉妬のようなものも透けて見えるが。

そしてとうとう誰より一刀に反発する娘――土木を司る三公たる司空・桂花が吠えた。

 

「大体ねぇ! この短期間でこんな大規模な計画作れなんて、土木を司る私の苦労も考えなさいよ、この無差別種馬下衆男!」

「ああ、ごめんな、桂花。今回は一番苦労させちゃってるよなぁ……。それはそれとして種馬はもう勘弁して……ホント何処行っても言われるんだよ……」

「くくくっ、いい気味だわ♪」

「自業自得です(ぷいっ)」

「これ程早く、宮廷のみならず市井の隅々まで広がるとは。風も驚きなのですー」

「いや、全然驚いてないだろう……? そう言えば、言いだしっぺは君だったね、風……今度反撃していい?」

「夜伽でなら大歓迎ですよー? ふっふっふ」

「やめてー! みんながいる前でそういうこと言うのナシ!」

 

『…………(じとー……)』

 

「ほらぁ!(涙)」

「大体、噂が早く広まったってことは、それを納得するだけの理由があったってことよ。ち●こ皇帝陛下?#」

「詠まで! これ以上、変な渾名広めないでくれぇ〜!」

「ねねも恋殿と一緒に警邏するついでに、街中に“へぼ皇帝”と広めまくってやるのです。くっくっく」

「ねねもか!? ……“へぼ皇帝”が随分マシに感じる俺は、もう駄目なのかも……」

「あはは♪ 旦那様、皇帝陛下のご威光は、思われている以上に庶人にまで広まっていますよ〜。だから“へぼ皇帝”は浸透しないんじゃないかなー?」

「は、はい! 私も穏様の仰る通りだと思います! 市井では一刀様――陛下を褒め称える言葉を良く耳にすると、明命も言っていました!」

「うっ……残念無念なのです」

「と、とにかく。なんとか予算を賄えそうで良かったよ。計画とか大変だろうけど、よろしくな。桂花」

「ふん! これも華琳様の御為。あんたに言われるまでもないわ!」

「軍部としては余り協力出来ず、申し訳ありません……」

「それこそ、この時期に軍費を削る訳にはいかんからな。洛陽警備隊の予算増額で限界だ」

「愛紗、冥琳。気にしないで。寧ろ、みんなにまで出費を強いちゃってごめんな。年末くらいまでは我慢してくれ」

「はわわ! そんなことありません! 誰よりも、ご主人様が一番寄付されてるのですから!」

「……正直、普段が赤貧過ぎると思うわ。あんまりアレだと奢らせるのが悪く感じちゃうわね」

「伯符、そう思うなら北郷にたかるのを止めろ。祭殿や霞にも随分言ったのだが、『蛙の面に水』なのだ」

「奢りの酒ってのは、また格別なのよ〜♪」

「……二人と全く同じことを言いおって……(嘆息)」

 

今回、一刀が寄付した額は、大人の男性が二十年近く暮らせるだけのものだったのだ(人数基準で換算すると、庶人二百人以上の月給に当たる額)。

というのも。一刀は皇帝としての本来の収入の大半を貯蓄し、“小遣い”としての分だけを実際の給与として貰っていたのだ。

そして先月・今月の貯蓄分を纏めて今回の計画に寄付した為、相当な高額となったのだった。

皇后である面々も、自身の官職の給与のうちから寄付している。額は個人に任されたので様々だが。

 

「まあまあ冥琳。これでも蜀時代の三倍も小遣い貰ってるから、俺は、問題、ない、さ……」

「……で、でもご主人様。“お付き合い”のお相手が増えた分、出費も増えているのでは……?」

「それを言わないで、雛里……(遠い目)」

「あわわわ……ごめんなさぁい」

 

食費としては、鈴々、恋、翠、猪々子という、只でさえ常人の数十倍も食う連中に散々たかられていたが、今やそこに季衣、沙和、真桜が加わった。凪など抑えに回ってくれる娘もいるにはいるが、甘い一刀はすぐに纏めて奢ってしまう為、食費には凪(などの抑え役)も含めて考えた方がいいだろう。

食費以外でたかる娘は蒲公英くらいだったのが、沙和や真桜、小蓮が加わった。

偶に星や紫苑、桔梗に酒を奢ることもあったが、これも霞や雪蓮、祭のウワバミ連中が加わった。

また、機嫌を損ねた桃香、愛紗、華琳、蓮華など、情が深いが故に怖くもある妻への謝罪・ご機嫌取りの贈り物が必要になることもしばしば。

いずれはこれに張三姉妹――特に天和と地和――や、袁家の“お嬢様”こと美羽(因みに七乃は今のところ一刀を“恩人”扱いしている)も含まれるようになるだろう。

何より、なにかといっては贈り物(自作意匠の服飾など)をしてしまう一刀である。

……蜀時代の三倍程度では明らかに赤字なのではなかろうか。

 

なお、この凄まじい額の貯蓄を管理するのは、蜀時代から小遣い管理役だった愛紗である。清廉さにおいて彼女の右に出る者は無く、誰にも異論はなかった(つまり、不正などしないという信頼感があるということだ)。

また、厳しさ(或いは嫉妬深さ)に定評のある彼女を説得出来ねば、一刀は貯蓄から引き出して私用に使うことすら出来ない。……財布の紐を妻に握られた夫の図、そのままである。

 

「で、でもさ。特に今はちょっと忙しくて余り街に出掛けられないから。実は殆ど使ってないんだよ。この間、護衛のお礼がてら恋に奢ったくらい?」

「……そう言えばご主人様。大将軍たるこの私にすら内密で、『洛陽警備隊』にご自身の職を設けられたとか」

「薮蛇!?」

「……全く。街へ出る際は、必ず武官の誰かを護衛としてお連れ下さい。せめてそれだけはお守り下さいね……」

「……うん。ありがとう、愛紗」

 

一刀は立ち上がりながら愛紗の前髪を軽く梳き。その場の皆を見回して“にかり”と笑い、言い放つ。

 

「俺達を慕って来てくれた民を。洛陽で生活する全ての民を。いずれは大陸に生きる民全てを。

 ぜーんぶ纏めて面倒見られなきゃ、俺が劉協から皇帝を引き継いだ意味がない。――みんな、頼りにしてるぜ!」

 

 

 

続。

 

-10ページ-

諸葛瞻「しょかっちょ!」

曹丕「そうっぺ!」

周循「しゅうっちの!」

 

三人「「「真・恋姫†無双『乙女繚乱☆あとがき演義』〜〜〜☆彡」」」

 

諸葛瞻「お読み戴き多謝でしゅ。諸葛亮こと朱里の娘にして北郷一刀の第23子、しょかっちょでしゅ!」

曹丕「乱文乱筆なれど楽しんで戴けたかしら。曹操こと華琳の娘にして北郷一刀の第9子、そうっぺよ♪」

周循「少しでも面白いと思って下されば重畳。周瑜こと冥琳の娘にして北郷一刀の第25子、しゅうっちで〜す☆」

 

 

諸葛瞻「こほん。まずは前回、あとがき演義にて公表した題名から変更になったことをお詫び申し上げます。書いていて気付いたら容量をオーバーしていたとか。色々考えた結果、今回の話と次回の話の筋やら順序やらを色々弄ったそうです」

 

周循「そもそもプロット不備もあったとか。しっかりして欲しいものですね。さて、今回でようやく父さんが『隊長』と呼ばれるようになりましたね。以来、父さんの外出癖が酷くなったと愛紗様から聞いたことがありますが。なお、父さんを『隊長』と呼ぶのは、原作通りのお三方、凪様、真桜様、沙和様です。プライベートだと名前で呼ぶ場合もあります。焔耶様と恋様には馴染まなかったようです」

 

曹丕「今回の裏主題としては“洛陽の拡張計画”ね。本来なら、公共事業に官自ら寄付というのは有り得ないのだけど。そうでもしないと予算が足らない故の緊急処置ということで、お目溢し願いたいわ。イメージとしては企業の業績悪化による役員の給与カットに近いわね。それを任意の寄付という形にしたものよ。作中のメリット・デメリットはお母様の仰った通りね」

 

 

------------------------------------------------------------

 

曹丕「ではゲストコーナーにいきましょう。さあ、自己紹介なさい」

 

 

張虎「はいな。張遼こと霞の娘にして北郷一刀の第17子、張虎(こ)やで! 諱は史実の張遼の実子そのまんまやな」

 

葉貴「はい、お姉さま。葉雄こと……って、まだ作中で母さんの真名が出てきてないじゃないの!? このタコ!(げしっと筆者を蹴る)」

 

諸葛瞻「……葉貴ちゃん、『天の声』を蹴るのは止めて下しゃい。あと、被った猫が剥げてましゅよ……。仕方ないでしゅから、しょこは伏せておいて下しゃい」

 

葉貴「ハッ!? ゴホン、失礼しました。葉雄と北郷一刀の娘、葉貴(き)です。既に年下の皇女が出演していますので、生まれは内緒で。学年は年少下級です。諱は……また『中の人ネタ』らしいですね。とあるキャラが“姉貴”と呼ばれており、そこから取られたとか」

 

 

周循「張虎姉さんはそうっぺと同じ年長下級。葉貴は、自己紹介にあった通り、年少下級です。正確な序列等は、子供編を執筆出来るようになったら改めて公開するそうです」

 

 

------------------------------------------------------------

 

○質問:特技・特徴は何ですか?

 

張虎「おう、ウチの特技ちゅーたら『芸術』やな。文筆と絵画と彫刻の三つと思うてくれたらええ。音楽系はからっきしや」

 

曹丕「お父様の『天の知識』による絵の具の開発もあって、張虎の絵は本当に素晴らしいと思うわ。絵画に関して言えば正に天才、大和帝国随一の絵師でありパイオニアよ。基本は写実主義ね」

 

周循「彫刻に関しては、なんでも春蘭様の“華琳様人形制作”を見て、見よう見まねで習得したとか。やはり天才と呼ぶに相応しい能力ですね。勿論、相当の努力あってこそですが」

 

諸葛瞻「文筆は……正直、子供が創作する話ではないでしゅよ……。お母しゃまや雛里しゃま、真桜しゃまも大ファンの大文豪……と言えば作風は分かって頂けるでしょうか……////」

 

張虎「にゃはははは! 煩悩は人間の本質、そして禁忌は甘い蜜……♪ 幸い、おとんはイケメンやし、モデルにはこと欠かんで!」

 

曹丕「やはり、あれらのモデルってお父様なのね……。という訳で、張虎は官能小説家としても大陸に名を馳せているのよ……。皇女が官能小説家って、とんだ醜聞だという気もするけれど……」

 

張虎「芸術と煩悩は切っても切れん蜜月の関係なんやで〜(にやにや)。あと、趣味はおかんの影響もあって、馬での遠乗りや。創作に詰まったときは、思いっきり馬を走らせて気分転換が一番(いっちゃん)やねん!」

 

葉貴「……張虎姉さん。お願いだから、それにアタシを巻き込まないで欲しいんだけど……」

 

張虎「えーえーえー。一人っきりだと寂しいやん。つきおーてくれてもええやんかぁ〜」

 

葉貴「体力が持たないのよ! いつもいつも、一日で何百里(当時は1里=約433m)走らせる気よ!? アタシは張虎姉さんみたいな体力バカじゃないのよ!」

 

諸葛瞻「丁度いいので葉貴ちゃんの解説を。葉貴ちゃんは実母であられる葉雄様とは真逆。運動神経や体力はからっきしで、頭脳特化型でしゅ。しょかっちょと一緒でしゅね♪」

 

葉貴「いいんですよ、思遠お姉さま――じゃなかった、しょかっちょ。今や泰平の世、必要なのは知識です! そう言う意味では、このあとがき演義のお姉さま方は、本当に素晴らしい方ばかりです!」

 

曹丕「……あと、葉貴と言えばこの『二面性』かしらね。相手の“知性の度合い”で態度が全く変わるのよ。相手の知性が低いとみると、年功構わずタメ口になるし。悪癖だから直しなさいと何度も言っているのだけれど」

 

葉貴「バカの相手なんて時間の無駄です、お姉さま方。それに普段はちゃんと猫を被ってますから♪」

 

周循「あと、特筆すべきはその『無限の根性』だろうな。体力は一般女子以下、というか虚弱と言っていいレベルだというのに、張虎の遠乗りに“根性”のみで最後まで付き合うのだからな」

 

葉貴「置いていかれたらコイツに負けたことになりますから! とは言え、本当にもう止めて欲しい……。アタシは頭脳派なのよ、張虎姉さん! これでも年少下級随一の成績なんだからね!」

 

張虎「ちぇ〜ちぇ〜ちぇ〜……一人やとホンマ寂しいやけどなぁ……」

 

葉貴「……。…………。せめて、月に一遍にして頂戴!」

 

諸葛瞻「(あと、なんだかんだと言って、凄い『家族思い』なんでしゅよ♪ 聞かれると怒るので、こっしょり)」

 

葉貴「あと、琴の演奏が特技です。これだけに限れば陳律【音々音】にも劣らぬと自負しています」

 

曹丕「そうね。この時代、琴は主に自己修養の為に弾かれたので、他人に聴かせるものではなかったのよね。故にその琴の音を知る程に親密な友人を『知音』と言うようになったとか。という訳で、葉貴も家族以外にはほぼ演奏を聴かせることはないのよ。――私が聴いた限りでは、確かに陳律【音々音】にも劣らぬ見事な演奏だったわ」

 

葉貴「ありがとうございます、そうっぺ(ぺこり)」

 

 

------------------------------------------------------------

 

○質問:特に仲の良い姉妹は?

 

張虎「ウチは創作活動で籠もりがちやから、そんなに仲がイイのはおらへんなぁ。乗馬仲間としてなら、董白様【月】、馬秋【翠】、馬承【蒲公英】辺りやな。ああ、夏侯衡【秋蘭】と乗ったこともあったわ。いやー、アイツは美形やから眼福やった〜♪ 一遍、裸婦画でも描かせてくれへんかな?」

 

曹丕「……それは私も是非欲しいわね……出来たら張苞お姉様【鈴々】と絡ませて!」

 

張虎「ほっほー! ええね、ええね!」

 

周循「お二人とも、落ち着いて下さい。今はそういう話をする場ではないです……」

 

張虎「おっと、こらえらいスマン。あと、すっごい気に入ってんのが……(ちらり)」

 

葉貴「……いい迷惑だわ」

 

張虎「にゃはは♪ 嫌よ嫌よも好きのうち〜、つってな?」

 

葉貴「ほんっっっっっとうに迷惑だわ!」

 

諸葛瞻「で、葉貴ちゃんはどうでしゅか?」

 

葉貴「あ、はい。しょかっちょ。先程そうっぺより『二面性』を指摘されましたが、同様に友好関係も二極です。一定の知性ある方とは仲良くしてますし、バカは相手にしてません」

 

三人「「「…………」」」

 

張虎「なーなーなー。ウチはどっちに入ってん?」

 

葉貴「バカの方に決まってんでしょうが!」

 

張虎「えー? 仮にもウチ、実際に書を売ってる小説家やで?」

 

葉貴「ぬぅぅぅ……!? い、いや! アンタ、学校の成績ボロボロじゃない!」

 

曹丕「そうね……張虎は創作活動で常に〆切に追われてるから、学校はサボりがちなのよね」

 

張虎「ちぇーちぇーちぇー……」

 

葉貴「……。まあ、その……。『芸術家』や『文筆家』としてのアンタは、一応……評価してるわ」

 

張虎「にまー♪」

 

 

------------------------------------------------------------

 

○アンケート:次回、読んでみたい姉妹は?

 

諸葛瞻「毎度恒例、ゲストのリクエストを募集でしゅ! 以下の二つからお好きな方をお答え下さい。コメントの端に、ちょろっと追記戴ければ幸いでしゅ。リクエストのみでも全然OKでしゅよ! 皆様のご回答をお待ちしておりましゅ(ぺこり)」

 

A:蓮華・思春の娘達

B:雛里・麗羽の娘達

 

 

 

諸葛瞻「今回も容量ギリギリでしたねぇ。ギリギリ一杯だと訂正しゅるときに困ると前回学んだ筈なんでしゅけど」

 

曹丕「また苦労するようなら、それは自業自得というものよ。で、次回こそは日常の話と聞いていたのに。題名が『洛陽の日常|華蝶仮面vs呉勇士』なんだけど……」

 

周循「は、ははは。まあ今(黄平12年)でも現役ですし、日常は日常なんじゃないですかね……? そ、それではまた次回! せーのっ」

 

 

五人「「「「「バイバイ真(ま)〜〜〜☆彡」」」」」

 

説明
第19話を投稿です。
新年あけましておめでとうございます。本年も恋姫が盛り上がりますように! ついでにFD熱望!!
今回、プロットに不備がありました為、予告より題名が変更されております。日常(?)の話は次回に。悪しからずご了承下さい。
さて、やはりハーレムは書きたいシーンが多い! いつの間にやらまた容量ギリギリ、99%ですww
ついでに、本当に“北郷一刀”という男の子は書いていて楽しい主人公だなーと実感した次第です^^
――いつの世にも悪は絶えない。その頃、大和帝国は洛陽警備隊という特別警察を設けていた。帝都治安維持の為である。
  蜀END分岐アフター……独自の機動性を与えられたこの洛陽警備隊の総隊長こそ北郷一刀。人呼んで『和の種馬』である。
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
42364 28854 180
コメント
XOP 様>完全に私のミスです。正しくは西となります。ご指摘ありがとうございましたm(_ _)m(四方多撲)
宮殿の位置を現在より北西に移し→このあとの説明を読むと宮殿の位置は今の位置の北西ではなく西ではないか?北西だと新宮殿の東で旧洛陽の北の区画が空白に・・・それとも宮殿の部分が北に飛び出ていてそれ以外の区画だけで長方形になる?(XOP)
XOP 様>言ってることが矛盾してしまった…。し尿処理、肥料利用などについては、しっかと調べてから改めて本編で描写したいと思います。一先ずは実験的に用いていた、としておいて下さい。申し訳ございませんでした。(四方多撲)
「恐らくは庭園などで肥料として使う為に運ぶ途中」と明記されていますよ?…豚に汚物を処理させて更にその豚を食料として使った例は洋の東西を問わず見られますが、屎尿を肥料として徹底的に活用して汚物が河川に流入しないようにしていたのは日本だけなんですよね (XOP)
XOP 様>残念ながら、漢代のし尿処理(下水とか)についての資料が見つかりませんで、そこまで詳細には決めておりませんでした。下水道整備は無理がありそうなので、単純に廃棄途中として下さい。アニメでは豚便所が出てましたが、古代、市街では川にそのまま流すのが基本かな、と。衛生面とか、内政ネタになりそうなので、もっと調べてみます。(四方多撲)
屎尿がたっぷりと詰まった桶→屎尿(ヒトの大小便)を肥料に活用していたのは中国東部や朝鮮、日本。洛陽のある中原ではあまり馴染みがないはず。一刀の発案?それともこれは家畜のでしょうか? (XOP)
XOP 様>怪我など、直接的な被害はいかなる場合でも無さそうですが、例のようなパターンはありそうですねw 萌将伝ではどんな不幸が起こるのか、とても楽しみですww(四方多撲)
月が『二次災害に巻き込まれない』ってことは三次災害以降なら・・・詠の不幸→誰かが被害→余波で予定していたデートの行き先が大破→月涙目・・・などはありうると(XOP)
XOP 様>完全に筆者の思い込みでした。「むずがる」なんて日本語はない−−; 修正致します。ご指摘ありがとうございました!(四方多撲)
董白様がおむずがりで→「むずがる」ではなく「むずかる」なので濁音にならないはず。(XOP)
XOP 様>これじゃ命令しちゃってますな−−; ご指摘ありがとうございます!(四方多撲)
肝にお命じ下さい、陛下→お銘じ下さい(XOP)
XOP 様>見目って「外見・容姿」がメインなんですね。修正致しました。雇用の「つくる」ですが、「創」は既存でないものをつくる=創造、創作という意味で使用したいと思います。雇用に関してはこのまま「作り出す」とさせて下さい。ご指摘ありがとうございます!(四方多撲)
その餃子は見目→見た目:雇用を作り出す→創り(XOP)
frauhill0314 様>ネタバレですが、言っちゃいます。漢女たちはいずれ出てきますww 出番は然程多くはありませんが…キーマンであるのは確かです。リクありがとうございます!(四方多撲)
アンケートはAでお願いします。それと、ひとつ私から提案があるのですが…。ストーリーがここまで面白くなってますし、ここは思い切って漢女道も登場させてみられては?(frauhill0314)
kau 様>数あるSSでも、華蝶に参加している一刀は見たこと無いっすねぇww(私が知らないだけかもしれませんが) 麗羽については、確かにそうかもw でも逆にフォローで一対一(詳細は察して下さいw)は寧ろ幸運?ww(四方多撲)
「ばれなきゃいいんだろ」的に”刀”華蝶参上とか思ってました、凪たち引き込んで、戦隊組めば「隊長」呼ばせるし。警備隊に出張るとは無茶しよる。麗羽の真の不幸は夜伽が飛ばされた事?w(kau)
鮑旭 様>わざわざのリコメントありがとうございます! まだ(最低6話分)続きますので、これからもよろしくお願いします! ……よろしければ、懲りずに感想コメントもw 今回大仰になってしまったのは筆者が「一刀が嫌われてしまう〜!?」とテンパった結果でもありますので−−;(四方多撲)
XOP 様>ご尤もです。容量が限界なので、あとがきのあとには追記できず。一作投稿するにもどうかと思い、このようにしたのですが、予想以上に読み難いですね…。余り言い訳用の投稿はしたくないものですが、今後はそうしたいと思います。今回はこれでご勘弁下さい。(四方多撲)
四方多撲様、あとがきに書くなり解説用の1話分を投下するなりしたほうがいいよ。少なくともここのコメント欄を使うのは読みにくいから避けたほうが良い。(XOP)
ブックマン 様>リクありがとうございます!(四方多撲)
容量が限界だったこともあり、説明不足に過ぎたこと。会話を重視し過ぎ、描写すべき順序を間違えたこと。結局のところ筆者の力量不足によるものです。鮑旭 様を初め、彼の方策に違和感や拒否感が出られてしまった方々には、全くもって申し訳ございませんでした。どうか愚作をこれからもお読み戴けます様、お願い申し上げます。四方多撲(四方多撲)
勿論、建国から僅か2ヶ月、予算が足りていないというのが大きな理由であることは代わりません。しかし、放置すれば五桁に届く凍死者が出る可能性がある以上、北郷一刀ならば如何なる手段を用いても必ず救済の手を差し伸べるだろう、というのが筆者の思いでした。(四方多撲)
とまあ、このようなイメージなのです。正直、私が当時の官吏でも『状況がマズイのは分かるけど、ちゃんと働いてるこっちの給料削るなよ!』と思うでしょうが……。当時の道徳観念が『儒教』であり、私財を溜め込まずに施すことが美徳であったというのも、この一刀の政策に華琳・雪蓮らが反対しなかった理由です。(四方多撲)
『不況を乗り切るプロジェクトの為、給与カットをしない代わりに寄付して欲しい。額は任意、一切のプライバシーは遵守する』と(この時点で凄い違和感ですけど)。既に社長は多額の寄付をしていると噂されており、向上心や上昇志向の強い連中(=当時の理想に燃えていた連中)はこぞって彼を褒めています。(四方多撲)
庶人=最低賃金、月収15万とします。恐らく家族を食わせていくだけで精一杯、貯蓄は難しいでしょう。それを基準にしますと官吏らは月収75万。生活水準も高くなるでしょうが、自由になる金額が30万を下ることはないでしょう。そして、会社の社長から告示が出ました。(四方多撲)
鮑旭 様>まずは愚作により不快感を与えてしまったことをお詫び致します。その上で、どうか言い訳をさせて下さい。 まず、宮廷に携わる官吏(文官+武官)は最低ランクでも庶人の5〜10倍の収入を持っています。説明材料としては不適格でしょうが、現代日本に照らし合わせてみましょう。(四方多撲)
両さんの3月3日を思い出しました。アンケはBでお願いします。(ブックマン)
sion 様>ほ、本当にsion 様は私の心が読めるのか!?というくらい鋭くてらっしゃるww 次回、劉協再登場ですよ〜! 日常話は膨らみすぎて前後編になりそうな勢いです(苦笑)(四方多撲)
真 様>リクありがとうございます!(四方多撲)
この小説は「ハーレム」なわけで、現在進行形で話が進んでいるわけですが、劉協は今後また登場するんですかね〜。個人的にには一刀、劉協、華陀、恋姫で数少ない男性側から見た乙女達の後日談なども見てみたいですw(Sirius)
A(真)
S木 様>リクありがとうございます!(四方多撲)
Aを希望します。(S木)
kanade 様>筆者が調子に乗った結果でございますw 月によって不運の強さに波があることにしておこうかなw リクありがとうございます!(四方多撲)
Nyao 様>いつ発動するか分からないのが最大の恐怖w リクありがとうございます!(四方多撲)
バッキー 様>リクありがとうございます! ……申し訳ないのですが、筆者も「くっ」の意味が分かりません……。中の人ネタならば尚更気になるぅ〜! 是非お教え下さい!(四方多撲)
XOP 様>「思春、明命!」「あら〜。侍従さんにお二人を診療所へ運んで貰いましょう〜」「そ、そうね。誰かある!二人を診療所へ運んで頂戴!」「……それはそれとして。蓮華様、穏はまだ物足りないのですぅ〜♪」「きゃぁあああ!?」 と言った感じでしょうかww(四方多撲)
シュレディンガーの猫 様>筆者が書いていて楽しかったもので、ちょっと調子に乗りすぎましたかね^^; というわけでリクありがとうございます!w(四方多撲)
A希望。しかし、詠の不幸′エ作よりも強力になっている気が・・・怖っ(kanade)
hokuhin 様>恋が零番隊組長であるのは元々決まっていたのですが、あの登場シーンについては笑いのマイナーゴッドが囁いてくれましたw リコメで前述の通り一刀くんは悪知恵スキルが上達してますw リクありがとうございます!(四方多撲)
詠の不運・・・恐ろしい子orz アンケートはAで!(Nyao)
Aで!「くっ」に反応したのは自分だけ!?中の人は稟の人ですが(汗)いつのまにか更新されててビックリ!(バッキー)
kayui 様>一刀くんは禅譲のとき既に皇帝として生きる覚悟を決めてますしね^^ 英雄二人のアクション?は楽しんで戴けたようで何よりですw リクありがとうございます!(四方多撲)
気になったのですが・・・穏は気絶した思春・明命に見向きもしなかったのでしょうか?それとも診療所へ送る手配をする間はクールダウンしてそれから蓮華を襲ったのでしょうか?(XOP)
moki68k 様>さ、さすがにそれは…(汗) ちょっとやり過ぎちゃったかな?書いていて楽しかったもんでw 反董卓連合辺りについては、また第22話くらいで。(四方多撲)
霊皇 様>リクありがとうございます!(四方多撲)
nanashiの人 様>地位は高くなったんですけどねぇww(四方多撲)
tubasa 様>一日全く仕事が進まないし、怪我人続出ですねぇw その為の「軟禁」ですけれど。何気に月は待ち遠しく思っているかもしれませんねw リク了解です!(四方多撲)
トーヤ 様>無印よりちょっと実害が増えている気がしますw(四方多撲)
libra 様>誤字報告ありがとございます! 翠のお漏らしネタも「真」では削られてしまって、個人的に寂しかったのでww(四方多撲)
詠の不幸体質、ここに極まれり。ここまでくると、本気で人死がでそうでコワッ!!!!!てことで、Aに一票(シュレディンガーの猫)
jackry 様>后で組長なのは、凪(1)・焔耶(2)・沙和(3)・真桜(10)・恋(0)です。馬上戦闘の達人たちは街の外に対する防衛軍の将軍として働いてます。恋はすぐ仕事をサボるのであの扱いなのですw 年長組や春蘭はもっと上位の武官です。星はアレだし(次回参照w)。猪々子と斗詩は一刀の計らいで麗羽の側近がメインです。リクありがとうございます!(四方多撲)
nayuki78 様>“死なないけど酷い目に遭う”ということで、実は一刀が庇わなくても詠は軽い怪我をするだけで済んだのですw また一刀くんはもう2年以上政に携わり、華琳・雪蓮から帝王学講座まで受けてますので、原作中よりも悪知恵が働くのですww(四方多撲)
arukueid 様>無印を参考に、色々考えてみましたw リクありがとうございます!(四方多撲)
sion 様>一刀(筆者)のうろ覚えな新撰組の知識が流用されてますw 穏はアンソロだと凄い勢いで襲ってますので、違和感がありませんねぇw ドタバタを楽しんで戴けたようで、良かったです! (四方多撲)
晃 様>リクありがとうございます! A強いなぁ。母親の人気か、中の人の人気かww(四方多撲)
むんす 様>リコメでも書いておりますが、悩んで戴けるだけで嬉しいのは親心?w リクありがとうございます!(四方多撲)
tomato 様>リクありがとうございます!(四方多撲)
逢魔紫 様>はっ、リクありがとうございます!(四方多撲)
自由人 様>あ、XOP様からも突っ込まれてますが。描写・報告のない旧蜀勢は、桃香が「旧蜀勢の何人かは回避出来た」と言っている通り、影響を受けないか最小限に抑えて、仕事をしています。『和』王朝は月一で効率の落ちる日があるのですなww リクありがとうございます!(四方多撲)
恋の先生役に笑ってしまった。あと詠の不幸を利用するとはさすが一刀だな。アンケはBに投票します。(hokuhin)
akane7845 様>ありがとうございます! まあ詠の不運では、死ぬことはないそうですからw(四方多撲)
XOP 様>えー、容量の問題で削ってしまったのですが。唯一、月のみは二次災害にも巻き込まれることはない、と設定しております。なお、桃香が(一次的)影響を受けないという設定も含め、筆者のオリジナル設定となります。「真」では詠の不幸体質の話は削られてしまったので……。リクありがとうございます!(四方多撲)
XOP 様>『流石〜』は一般兵全員ということで複数人の感情表現とご解釈下さい。「茫然」茫然自失はこの漢字のみで、「呆然」は茫然自失と同義っぽいのですが、「茫然」には「漠然としてつかみどころのないさま」という意味がメインのようですので、このままとさせて戴きました。その他誤字等、修正致しました。いつもありがとうございます!(四方多撲)
零壱式軽対選手誘導弾 様>確かに「呪い」に近しい感じですねぇw ようやくちょっとだけデレ焔耶が書けました^^; リクありがとうございます!(四方多撲)
tan 様>「真」では(話としては)削られてしまったので、「無印」から持って参りましたw リクありがとうございます!(四方多撲)
しゅう 様>悩んで頂けるというのは娘達もキャラクターとして幸せなことだと思うのです…^^ リクありがとうございます!(四方多撲)
ゲストさん。 様>特に狙った演出ではございませぬww(四方多撲)
COMBAT02 様>リクありがとうございます!(四方多撲)
shun 様>これまた熱烈なw リクありがとうございます!(四方多撲)
Hrw 様>更新を待って頂けているというだけでも幸せです^^ リクありがとうございます!(四方多撲)
詠お、恐ろしい・・・でも一刀も治世の王としても男としてもww高みに向かってますね。やっぱり子供が生まれたからでしょうね^^)雪蓮と華琳は面白かったです。アンケはAでお願いします(kayui)
この詠をみていると反董卓連合の原因が詠でもおかしくなく思えてしまう…(moki68k)
Aですな(霊皇)
ふう 小一時間×3か・・・皇帝になってお説教量もスケールうpしたなぁw(nanashiの人)
詠の不運体質……一歩間違えれば、朝廷が滅ぶな…… PS:Bで!Aはゲームで登場しているので、後でも良いと思います。(tubasa)
詠の体質の恐ろしさがよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜く解りました。(トーヤ)
6p済まん、本郷→済まん、北郷  ふぅ…しかし翠はけしからんなぁ。いいぞもっとやれ。(libra)
詠の不幸体質・・・(^^; 後宮(の一部まで)崩壊させるとは(^^; それを既成事実として洛陽拡張計画を開始させるとはw(nayuki78)
詠の不幸体質はすごいですね〜wアンケはAで。(arukueid)
洛陽警備隊=新撰組・・・?wそれに穏・・かつて自身が仕えた蓮華、冥琳にまでその魔手を伸ばすようになってるとは・・悪化(進化?)してますね。元王の華琳と雪蓮が後宮内外をまるで障害物競走のように走り回り、最後に落胆する様は、読んでいて面白かったですw(Sirius)
今回のアンケートは難しいな………僅差でAかな(むんす)
A(tomato)
Aしか見えません(トウガ・S・ローゼン)
白蓮も見当たらないのは仕方がないとして、詠の『あの日』こそ何とかすべきですよねwアンケートはBで!(自由人)
面白かったです。なんか映画のデッドコースターを思い出したw(akane7845)
一刀も二次災害には巻き込まれると・・・月も桃花も巻き込まれる可能性があると。アンケートはA(XOP)
様子を直に見れない→ら抜き:『(流石は〜タラシ皇帝』……)』→最初と最後の『』は「」でよいのでは?:報告順でいくね→鈴々・星・恋・音々音の報告なし:茫然自失と・衝撃で、呆然と→統一しよう:…私は、これで“不運”→恋の台詞なら「私」ではなく「恋」では?:瓦礫をどけてながら→どけながら:纏めて面倒見れなきゃ→ら抜き:馬承【蒲公英】当たり→辺り(XOP)
もちAで!!!にしても詠の呪い?はすさまじいですね〜〜それに心配している焔耶に萌えた!!!(零壱式軽対選手誘導弾)
詠・・・恐ろしい子!!! 後アンケートはAで!(tan)
これは難しいアンケートだ。悩んだ末、A でお願いします。(しゅう)
すごい最終回っぽい雰囲気でしたwww(ゲストさん。)
Aで(COMBAT02)
AAAAAAAAAAAAAAAAA~~~~~~~~~~~~~~(rababasukan)
更新乙。Aでお願いします(Hrw)
タグ
恋姫 恋姫†無双 真・恋姫†無双 三国統一 ハーレム 三羽烏・焔耶・恋  詠・月 華琳・雪蓮 

四方多撲さんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com