真・プリキュアオールスターズ 四章 |
みなとみらいの広大な観光地のなかを姿が見えなくなったシフォンを捜してラブ達4人は手分けしていたが、なんの成果もなく、4人は一度合流すべく最初に分かれた場所へと戻ってきた。
「せつな、美希たん、ブッキー!」
駆け寄るラブに先に合流していた3人が振り返るも、表情は優れない。
「いた?」
息を切らしながら駆け寄るラブに首を振り返す。
「こっちにはいないわ」
「近くは全部見てみたんだけど…」
姿が見えなくなった場所を中心に捜してはみたものの、まったく見つけられず、同じだったのか、ラブも肩を落とす。
「どこに行ったのかしら…人も多くなってきたし…」
憚るように周囲を見渡す。朝方には人通りの少なかったこの近辺も休日の昼ともなれば、観光客や行楽客で溢れてきている。こんな状況でもしシフォンが見られたら、大騒ぎになりかねない。
それを想像したのか、ラブの表情が暗く消沈する。
「どうしよう…あたしがちゃんと見てなかったから…」
あの時もっとしっかり握っておくべきだったと手を見詰めながら後悔と責任を憶えるラブの手が祈里にそっと握られる。
顔を上げると、真剣な面持ちで見詰め返される。
「大丈夫だよ! 絶対に見つかるよ、だから、頑張って捜そ!」
「そうよ、ラブ。諦めちゃダメ」
元気付けるように言葉を掛ける二人にラブは眼元が熱くなる。
「ブッキ〜、せつな〜」
二人の気遣いに感謝するなか、二人の背後から声が響いた。
「大変や〜っ!」
聞き慣れた声に振り返った祈里とせつなは間髪入れず飛び込んできた影に思わず屈み込み、その影はそのまま前に佇んでいたラブの頭にしがみついた。
「わっ!」
「タルト!」
視界が一瞬塞がれ、バランスを崩して尻餅をつくラブの頭にしがみつくのはタルトであり、慌てて引き剥がし、下へと降ろす。
「大声出しちゃダメだって」
フェレットが喋っているのを聞かれたら、それはそれでまた騒ぎになる。軽く嗜めながら4人で囲い、屈み込む。だが、タルトはそんな文句を遮り、口早に告げる。
「大変や! さっき襲ってきた奴が、ワイを追って来とったんや!」
パルミエ王国であった顛末を説明しようとするも、ラブが沈痛な面持ちで告げるのが早かった。
「ねえ、聞いてタルト。シフォンがね…」
タルトが出かけたあと、シフォンがその場から居なくなり、今も所在が解からないことを告げると、眼に見えて動揺をあらわした。
「ええええっ!? シフォンがいなくなったぁ!? どういうことやねぇぇ!?」
縋りつくように問うタルトにラブが申し訳なさそうに俯き、せつなが口を挟む。
「ラブだけのせいじゃないわ。私達、みんな気づかなかったんだから…」
「えらいこっちゃ! とにかく! 早よ見つけんと…シフォンが危ない!」
頭を抱えていたが、首を振って最悪の事態を打ち消し、鼓舞するように告げる。とにかく今は一刻も早くシフォンを見つけるのが先決だった。あの謎の敵が健在である以上、予断は赦さない。
強張った面持ちで頷き、4人は再び周辺の捜索に駆けていった。
時を同じくしてみなとみらいの中心部の遥か上空…真っ青な空が拡がるなかに、突如3方向から飛来してきた金属質の物体が中央で激突するかのようにぶつかり、それは微かな光をスパークさせながら膨張し、やがて融合していく。
それに誘発されるように空は灰色の雲に覆われ、暗雲に包まれていく。振り撒くようにスパークするエネルギーの中心において膨張していたものはやがて一つの人型を成した。
全身を硬いラインで形成された人型を成したフュージョンはその感覚を確かめるように己の身体を動かし、そして拳を握り締める。
全身に漲る力の躍動にその鋭く光る真紅の眼光が妖しくギラつく。
『気ニ入ッタ…プリキュアノ力……』
プリキュアとの戦いで吸収したその力が今までにないパワーを齎す。そして、それはなによりも貪欲に欲する。
『全テ呑ミ込ンデヤル…』
翳す両手から禍々しい光が迸り、全身に溢れる力が膨張し、両手に収束していく。それを集中し、両手のなかに生成される光が大きく膨らみ、そして妖しく光る。
『全テノモノガ私ノ一部トナリ…私ノ力トナルノダ!』
零れ落ちるように放たれた光が凄まじいスピードで落下し、みなとみらいの大地で爆発する。太陽の爆発かと錯覚するような閃光に人々は驚き、そしてその場にいたラブ達も突如起こったその現象に眼を見開く。
閃光が収束し、その後から沸き出るように黒い闇が溢れ、喰らいつくすように呑み込んでいく。ビルも、車も、木も…そして、人さえも……人々は突如として発生したその得体の知れない闇に慄き、逃げ惑う。
だが、それらは無常にも緩慢に拡がっていく。まるで、その恐怖を煽り、貪るために―――
悲鳴だけが飛び交い、そしてみなとみらいは完全に闇に呑まれた。
みなとみらいが混乱に陥るなか、フュージョンを退けたのぞみ達は公園の一画で助けたルルンから事の顛末を聞き入っていた。
そのなかで驚愕の事実を知ることになる。
「私達の他にもプリキュアがいたなんて…」
「驚きです」
それが全員の代弁だろう。ルルンから語られた自分達以外のプリキュアの存在。今まで知る由もなかった事実に誰もが驚き、そして呆然と佇んでいる。
そして、それは危機が迫っているこの世界に対してもだった。
「みんなが危ないルル、助けてほしいルル」
説明を終えたルルンは必死に逸れた仲間とその助勢を訴えるも、彼女らの表情はどこか渋い。
「助けてあげたいですけど…」
「具体的にどうすればいいのか」
「それに、皆がどこにいるかも解からないし…」
自分達以外のプリキュアの力が必要と問われても、イマイチ実感が持てない。これまでまったく知りもしなかっただけにそれも仕方ないだろう。
そして、彼女らがどこにいる誰で、どうやって捜せばいいのか見当もつかない。それ故に応える彼女らの口調も歯切れが悪い。
そして、ルルンもそれ以上何も言えず、ただ潤む瞳を堪え、口を噛む。
「ルル〜…」
そんな落ち込むルルンに優しい声が掛けられる。
「大丈夫だよ」
「ルル…」
顔を上げると、のぞみが静かにルルンを持ち上げ、元気付けるように微笑む。その様子に一同は揃って首を傾げ、りんが思わず問い掛ける。
「のぞみ、何か解かったの?」
「ううん、全然」
笑顔で告げるのぞみに思わず口を引き攣らせる。
「はは、なんだいそりゃ」
結局のところ何の解決にもなっていないのではないだろうかと突っ込みそうになるが、それを気にせず、のぞみはルルンに優しく語り掛ける。
「でも、こうしてルルンと出会えたんだもん。他の皆にも絶対会えるよ!」
「本当ルル?」
「うん」
ハッキリと頷くのぞみに呆れたようにりんが嗜めた。
「あのねえ、のぞみ…その皆がどこにいるか解からないから困ってるんじゃない」
どうにかしたいのはりん達とて同じだ。だが、どうしていいか解からないからこそ悩んでいる。だが、そんな不安に対し、のぞみが答えたのは至極単純なものだった。
「この空の下にいるよ」
「え…?」
なんの迷いも躊躇いもなく告げたのぞみは空を一瞥し、仲間に向き直り、笑い掛ける。
「だって…ルルンも私達も、この空の下で出会えたんだもん。だから、他の皆も絶対に同じこの空の下にいるはずだよ!」
その言葉に何かに気づかされたよう全員がハッと眼を見開き、のぞみに視線が集中する。なんの自覚もないのだろう…だが、のぞみはそれを心の奥でハッキリと理解している。何をすべきなのかを…そして、それが今まで幾度もあった困難を乗り越えるための力になったことを……その彼女の言葉と笑顔があったからこそ、彼女達はプリキュアとして纏まり、戦ってこれたのだ。
改めてそれを自覚し、全員の顔が柔らかくなる。
「まったく、かなわないなあ…のぞみには」
そんな姿を羨ましく…そしてどこか誇らしく思うのは、『影』であったはずの自分さえも仲間として受け入れてくれた彼女の優しさに救われたからだ。軽く肩を竦めるノゾミに続くように頷き合う。
「そうよね、空はどこまでも繋がってる」
「きっと皆、同じ空の下に、いるわよね」
こまちとかれんが頷き、りんも呆れながらもどこか同意するように空を見上げる。
「言ってることはムチャクチャだけど…でも、同じ空の下…か……」
全員の視線がどこまで拡がる青い空に向けられる。彼女達も、この空の下で出会い、そして『現在』がある。
たとえ何処にいようとも、彼女達もこの空の下で確かにいるのだ…まだ見ぬ仲間を思い、感慨に耽るなか、ふと視線を逸らしたうららが微かに息を呑んだ。
「あ、あれ…何ですか?」
それに反応して全員の視線がその方角へと向けられる。街の彼方…その奥から立ち昇る暗く淀み、そして圧迫されるような重苦しさがひしひしと伝わってくる。
その不快感を憶える空は、おおぞらの樹のなぎさ、ほのか、ひかり…ナッツハウスの咲、舞、満、薫……彼女達もまた、その空に緊張を伴った険しい面持ちで見詰めていた。
その薄気味悪さに悪寒を憶え、ルルンは震えながらのぞみに抱きつく。その不安を和らげるように強く抱き締め、のぞみは決然と顔を上げる。
「行こう…皆きっと、あそこにいる……!」
全員が頷き、彼女達は駆け出していく。たとえ、場所は違えども…同じ決意を胸に、プリキュアの少女達は運命に導かれ、走り出す。
人の気配が消え、静寂が拡がるみなとみらいの街並みはあまりに混沌とした廃虚と化し、もはやそこには破壊の爪跡しか残っていない。
その場所へと歩み寄ったラブ達はその惨状に眼を見開き、掠れた声を漏らす。
屈み込み、足元に落ちていた人形を拾い上げると、それは脆く崩れ、手から零れていく。それが言い知れぬ悲しみを憶えさせる。
「ヒドイ……」
そして、この惨状をつくり出した相手に対し、怒りが沸き上がる。キッと顔を上げる4人の視線は、
横浜ランドマークタワーの頂上部に向けられる。
ここからでもよく解かるその超高層の空から発せられるエネルギーのプロミネンスが途切れることなく走り、迸っている。
そこに、あの時戦ったあの敵が存在していることを如実に物語っていた。
「アイツが…」
「もしかしたら、シフォンもあそこに…」
確証はないが、シフォンがもしもあの敵に捕まっているのだとしたら…なんとしても助け出さねばならない。
そして、倒さなければならない…4人は決意を胸に、口を噤む。
「行こう、皆!」
一斉に駆け出し、向かうなか、4人はプリキュアへと変身する。真っ直ぐに廃虚の上をビルへと向かって走るなか、突如ビルの上空から何かが急降下してきた。
大地を大きく穿ちながら降り立ったそれは、人型を成すフュージョンであった。以前見たときよりもより明確な姿形とひしひしと感じる殺気に4人は粟立つ身体で身構える。
タルトはその姿に慄き、慌てて岩陰に身を隠し、様子を窺う。警戒した面持ちで身構えるなか、濁ったような低い声がフュージョンから発せられる。
『プリキュア…ワザワザ自分達カラヤッテ来ルトハ…手間ガ省ケル……』
なんの感情も込められていない無機質な声…それは、生命の息吹を感じさせない。そして、その得体の知れない存在に対する不安が沸き上がる。
そんな負の感情をさらに煽るかのごとく、立ち昇るオーラがフュージョンの背中から4つの影が浮き立たせる。それは、負のエネルギーの象徴――『ザケンナー』、『ウザイナー』、『コワイナー』、『ホシイナー』…プリキュアに倒されし、深く積もり募った怨念だった。
その禍々しさに圧倒され、息を呑む。
「なに、アレ…」
震える口調で慄くなか、ベリーが気丈に感情を抑え込み、問い質す。
「シフォンは…シフォンはどうしたの!?」
『シフォン…?』
その名にフュージョンは思考を巡らせる。遥か遠き世界に残せし己が一部が狙う力…その光景が脳裏を過ぎる。
『アノ力モモウスグ私ノモノトナル…オ前達トトモニナ…!』
その言葉に強張っていた表情に微かな安堵が生まれる。
「ということは…」
「シフォンはまだ呑み込まれてないわ!」
「なら、全力で戦えるわ!」
気掛かりではあるが、それでもこの敵に対して余計な気負いはない。そして同時に絶対に負けられない思いも強くなる。
「シフォンには指一本触れさせない! 街もメチャクチャにして…あんたの勝手にはさせないんだからね!」
憤り、ピーチが構えた瞬間、フュージョンは大地を砕くように蹴り、一気に接近してくる。
『ヌオオオオッ!』
咆哮を轟かせ、その巨大な腕を振り被る。予想もしていなかったスピードにパッション達は反応できず、標的にされたピーチはなんとか防御するも、打ち放たれた一撃の重みと勢いに大きく吹き飛ばされる。
「きゃあっ!」
「「「ピーチ!!」」」
大地を抉り、そして土煙を上げながら瓦礫へと激突し、身を強かに打ちつける。
その痛みと相手の強さに歯噛みし、僅かに遅れて反応した3人に向かってフュージョンの拳が振り下ろされる。
3人は間一髪で跳び、回避するも目標を見失った拳は豪速で大地を砕き、破片を撒き散らす。それらの礫が跳ぶ3人に吹き掛かり、礫を身に浴びながら吹き飛ぶ。
その光景にピーチが歯噛みし、大地を強く蹴ってフュージョンに突貫する。
「はぁぁぁぁっ!」
そのピーチに続くように吹き飛んでいた3人も体勢を立て直し、大地を蹴って駆け出す。4方向から向かうプリキュアに対し、フュージョンは臆することなくその液体筋肉を膨張させ、気迫を撒くように突撃する。
それらが激突し、その衝撃波が周囲に拡散し、大地を抉る。仕掛けるピーチが拳を繰り出し、フュージョンの身体を叩き、そして蹴りで弾く。息つかせぬほどの連撃を打ち込むも、まったく意にも返さず、フュージョンの繰り出した豪腕がピーチの華奢な身体を弾き飛ばす。
その空いた背中にパッションが蹴りを叩き入れ、蹴撃を絶え間なく浴びせるも、フュージョンの背中が隆起し、伸びる触手がパッションの身体を弾き飛ばす。
その光景に動きを止めるパインに向かって横殴りに蹴りを叩き入れる。反応が遅れるも、なんとか受け止め、その脚を掴んで動きを止める。その隙を衝いてベリーが急降下で蹴りを頭部に打ち込み、その首があり得ない方角に傾くも、相手は毛ほども感じておらず、むしろその折れた首が勢いよく戻り、その作用でベリーが体勢を崩す。
歯噛みし、足をついて回し蹴りを放つも、それを悠々と受け止め、逆にその脚を掴み、勢いよく振り回し、固めていたパインに向けて叩きつけた。二人は激突し、そのまま鋭く吹き飛び、大地を抉りながら倒れ伏した。
圧倒され、痛みに呻くも、上げた視界にフュージョンの姿がなく、4人は周囲を見渡す。
『オ前達ハ私ノ中デ…一ツニナルノダ!』
上空から響く声にハッと顔を上げると、空中に滞空するフュージョンが変質し、無数の触手となって降り注ぐ。
4人は慌てて身を翻すも、その触手は無数に枝分かれし、また鋭く後を追ってくる。それをよけ、または捌きながら相手の意図を図りかね、混乱する。
「いったいどういうこと!?」
「貴方の中で一つになれですって!?」
「ひとつって何!? 皆消えてしまうのっ!?」
複雑な動きで翻弄され、次第に追い詰められていく。ピーチはフュージョンの言葉に最悪の可能性を浮かべ、表情が絶望に染まっていく。
「消える…シフォン……!?」
相手はシフォンが間もなく自分の力になると言った…なら、シフォンの存在はもうこの世界に存在していないのではないのか…そんな可能性に身を震わせる。
刹那、触手が一斉に収束し、4人に襲い掛かり、4人はよけきれずに吹き飛ばされる。その光景を一瞥し、フュージョンは再び大地に降り立ち、弾かれた4人はなんとか着地し、唇を噛む。悠々と佇むフュージョンの背中に分裂していた触手が吸い込まれるように消えていく。
『オ前達ノバラバラデ下ラン個性ヲ…私ノ中デ一ツニスルノダ!』
完全に人型へと戻ったフュージョンは何の疲れも感情の乱れもない…まるで機械のように変わらぬ口調で佇む。
『ソウスレバ、他人ニ責メラレテ傷ツクコトモ…自分ヲ責メルコトモ無クナルノダ!』
それが絶対不変の理だとでも断言するようにフュージョンは告げ、そしてピーチを指差す。
『ソウ…今ノオ前ノヨウニナ……』
「あ……」
その指摘に鋭いメスを突き入れられたようにピーチは胸の内に傷みを憶え、息を呑み、身を震わせる。
「そうだ…私が、シフォンをちゃんと見ていなかったから……」
足元が抜けるような後悔に打ちのめされ、動揺するピーチに3人が慌てて叱咤する。
「ピーチ、貴方のせいじゃないわ!」
「そうよ、自分を責めないで!」
「しっかりして、あいつに惑わされないで!」
だが、仲間の言葉も今は慰めにもならず、ピーチは戦意を喪失させ、その隙を逃すほど甘くはなかった。
『ムダダ…』
フュージョンの姿一瞬視界から掻き消え、ハッと気づいた瞬間には、4人の背後に回り込まれていた。慌てて振り返ろうとしたが、フュージョンの手からエネルギーが迸り、その閃光に思わず視界を覆う。
痺れるような感覚を味わい、次に眼を開けると、プリキュア達の周囲にはドーム型の空間が張られ、その中へと閉じ込められた。
「プリキュアはん!」
タルトが叫ぶも、4人は突如周囲を覆ったシールドのようなものに戸惑い、そして警戒する。透明だった内部がやがて圧迫されるような暗闇に覆われ、一寸先すらハッキリしないほどに視界が閉じられ、恐怖と不安を煽る。
「何これ!?」
「気をつけて!」
状況を確認しようと、周囲を窺いながら手探りで構えている耳に、哄笑がこの空間に木霊するように響く。
『シフォント言ッタカ? ソイツトモモウスグ逢エルゾ…私ノモトデナ……フハハハハ…』
その哄笑がピーチの心持ちをさらに堕としていく。
「そんな…シフォン……助けないと…どうしよう……」
足元が抜けるようにフラフラと…そして、後悔が思考を塗り潰し、より絶望に染めていく。その弱々しい呟きに、パッションが振り返る。
「ピーチ? ダメ…しっかりしてっ」
今ピーチから離れるのはマズイと、慌てて駆け寄ろうとした瞬間、突如ピーチの足元が緩み、沈みはじめた。
「何っ!?」
その嫌な感触に呆然となっていた思考が僅かに戻るも、足元から拡がる闇はまるで底なし沼のごとくピーチの身体を呑み込み、抜け出そうともがくも、足は動かず、やがて立っていられなくなり、ピーチはその場に倒れ込む。
『サア私ニ呑ミ込マレ、一ツニナルノダ!」
絡みつくように闇がピーチの身体を縛り、そして引きずり込んでいく。抜け出そうともがくも、闇は離れるどころかさらに拡がり、身体を覆っていく。
「うぁっ」
「ピーチ!」
「ピーチ! きゃぁっ」
ピーチの異常に慌てて駆け寄ろうとしたパインの足元も拡がった闇の沼に足を取られ、身体が呑み込まれていく。
「パイン! っ!」
それに気を取られた瞬間、さっと拡がった足元の闇に離れようとするも、既に逃げ場はなく、ベリーの身体も呑み込まれていく。
「ベリー! パイン! ピーチ!」
パッションが3人の身を案じるも、最後に呑み込もうと拡がる闇から逃れようとパッションは跳ぶ。だが、逃すまいと闇が噴き出し、伸びる触手がパッションの足首を掴み、それに引っ張られる。
「うっ、きゃぁっ」
引き寄せられ、パッションもまた闇のなかへと落ち、身体を呑み込まれていく。
「ベリー! パイン! パッション!」
3人の悲鳴にピーチが名を呼ぶも、既に首元まで呑み込まれ、動くのままならない。3人はピーチの許になんとか駆け寄ろうと闇のなかをもがくも、思うように進まない。
そんな彼女達を嘲笑うかのごとく闇の沼が大きく波立ち、3人の身体を押し流していく。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
中央にできた渦が回り、闇を吸い込んでいく。4人を呑み込んだまま、闇がその身体を押し流し、プリキュアの悲鳴が闇のなかに木霊し続けた。
説明 | ||
今回はフレッシュVSフュージョン2回戦 次回でようやくプリキュア達の合流です。 |
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