〜薫る空〜52話(洛陽編)
[全4ページ]
-1ページ-

 

 

 

 

 

 ――side華琳

 

 

 

 【華琳】「…………」

 

 一瞬、嫌な悪寒が走った。

 気のせいのだとも思える程度のものだったけれど、ひどく気になる。

 

 【華琳】「……急ぐわよ」

 

 行軍速度を上げて、洛陽への足を速める。

 虎牢関を抜けて、そろそろ洛陽が見え始める頃。

 華琳が間に合うかは、微妙なところだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――side薫

 

 

 【薫】「…………」

 

 ――今のって……。

 

 頭の中で、”司馬懿”の声が震えていた。

 さきほど、人ひとり分の意識が消えた。気を失っただけなのか、それとも、もう目を覚ますことがないものなのか。

 それは、内にいる彼女だけではなくて、当然”私”も感じ取ったもの。

 

 【薫】「…………大丈夫……」

 

 自分にも言い聞かせるように呟く。

 

 ――大丈夫って、何!?今のどう聞いたって一刀の!

 

 【薫】「分かってるから!!」

 

 叫びだす薫に怪訝な視線を送る兵達。

 彼らには薫の聞いている声が聞こえるはずもないので、当然ながら、薫の言葉の意味なんて理解できるはずがなかった。

 

 【薫】「わかってるから……」

 

 二度目の言葉は、俯いたまま、静かに口にしていた。

 

 【兵】「司馬懿様!!敵軍が迫ってきています!!」

 

 現状を伝えるために、伝令が飛び込んでくる。

 敵兵はそこまで来ている。

 

 【薫】「そう、ありがとね。休んでていいよ」

 

 薫の言葉に兵は理解できないという顔になる。

 そんな伝令を横切って、薫は前へと出る。

 腰にぶら下げていた、いつか、真桜からもらった黒い扇を持って。

 前へとかざすようにして、叫ぶ。

 

 【薫】「右翼は転進して、敵を迎撃せよ!夏候惇へ合図を送れ!!」

 

 大きく扇を振るう。

 大げさにも見える動きは、兵を鼓舞するためのもの。

 これは勝てる戦なのだと。

 しかし、それでも不安な兵は残るものだった。

 これは……と、不安げな表情を見せる兵。小隊をまとめる立場であるその兵は、他の者よりも、不安は大きいようだ。

 

 【薫】「仮にも曹操軍の精鋭なんだから、都の親衛隊が相手だろうが、総崩れなんてことはそうそうありえないよ」

 

 諭すように、一つ一つ答えていく。

 その合間にも、先ほどまで圧されていた戦は、互角にまで巻き返していた。

 

 【薫】「夏候惇将軍にお願いしたのは、二つ」

 

 一つは、”自身は一部隊を連れて伏兵の中にまぎれる”こと。

 もう一つは、”たとえ負けていようと、絶対に指示を出すな”ということ。

 

 指揮官がいなければ、たとえ強兵といえども、連携の取れた軍相手では戦闘はきびしいものになる。

 当然、こちらが崩れ始める。

 元々総兵数でいえば、こちらが少ないのだから、それは当たり前。

 だから、あえて右翼のほうを少し手薄にする。

 先に崩れ始める右翼を撤退させ、敵軍が追ってくれば、そのまま二分し、追わずに左翼へ向かうようなら、右翼を再び転進させる。

 どちらにしても、敵の左翼が動き出した時が、こちらの勝機になる。

 それが、敵の懐にまで忍び込ませた獅子を、眠りから目覚めさせる合図になるから。

 

 【薫】「獅子埋伏の計とでも名づける?」

 

 ペットに名前でも付けるように、その顔はいつも以上に子供のようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

-2ページ-

 

 

 

 

 

 【春蘭】「……む。合図か!」

 

 戦場を見据えるように、身をふせていた春蘭。 

 その合図に、表情を歓喜のものへと変える。

 

 【春蘭】「行くぞ!!!敵将の頸をあげてやるのだ!!」

 

 春蘭の号令に、兵達は雄たけびで答える。

 その声をきっかけに、伏せていた兵達はいっせいに戦場へと走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――洛陽

 

 【???】「後悔するくらいなら、立ち上がるんだな」

 【賈駆】「あんた……何者よ」

 

 赤い髪に白い衣。

 この時代では見ることのないような形の衣装だ。

 

 【???】「この男は俺に任せろ。君には救いたい者がいるんだろう?」

 【賈駆】「……え……えぇ」

 

 質問には答えず、たずね返してくる。

 何処まで知っているのか。男はまっすぐにこちらを見てきた。

 

 【賈駆】「…………」

 

 ゆっくりと立って、男を通り過ぎるように歩いていく。

 

 【賈駆】「…………その男、もう死んでるわよ」

 

 言い捨てるように、賈駆は告げると、男は静かに呟く。

 

 【???】「彼はまだ死ぬべきではない。……それに彼もまた、その事実を受け入れてはいない。ならば、俺の五斗米道になせないことなど無い」

 【賈駆】「…………」

 

 最後まで聞き届けると、何も言わずに、賈駆は走り出した。

 

 【一刀】「…………」

 【???】「…………」

 

 そして、男が一刀の傷口に触れはじめると、一刀の体が傷口から輝き始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――洛陽・郊外

 

 

 

 

 【春蘭】「はっ!!」

 

 敵本陣に奇襲をかけ、将を討つ。

 それができれば、戦などどれほど簡単なものだろう。

 だが、実際に彼女にかかれば、よほどの軍が相手で無い限りそんな事すら可能だった。

 剣を振るい、敵兵を退ける。

 だが、本陣に乗り込むまではよかったが、未だに肝心の敵将が見当たらない。

 

 【春蘭】「くっ……敵将はどこだ!!この夏候元譲が相手となろうぞ!!」

 

 叫ぶも、群がるのは敵兵ばかり。

 

 【春蘭】「ちぃっ!」

 

 煩わしいほどに食い下がる敵兵。

 本陣を守る兵ともなれば、一振りというわけには行かず、敵の剣を弾いて切りつける。

 しかし、どれほど倒しても、敵将の姿が見えることは無かった。

 

 

 

 

-3ページ-

 

 

 

 【薫】「将がいない?」

 

 伝令から伝えられた前線の状況。

 伏兵に本陣が狙われたことで、敵軍に混乱がみられるものの、大きく決め手になるような崩れ方はしない。

 まるで先鋒が崩れているだけ、というような対応だ。

 

 【薫】「これは……」

 

 【李儒】「貴様は期待はずれだったということだ」

 

 【薫】「な――っ」

 

 後ろから、ありえない声。

 振り返れば、そこにはいるはずの無い、敵将と数騎の敵兵。

 こいつがここにいるということは、本陣を捨てたということ。

 

 【李儒】「軍師”ごっこ”は楽しかったか?仲達」

 

 がさりと、後ろにいた敵騎兵が前にでる。

 

 【薫】「…………」

 

 扇ぐように、上をみる。

 空はもうすぐ夕方になろうとしていた。

 

 【李儒】「ふ…――行け」

 

 その合図を元に、敵兵が一気に突撃を開始する。

 一瞬で距離をつめてくる騎馬術はたいしたものだとおもう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【薫】「クス……―――ばーか♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 薫が笑う。

 

 【李儒】「っ!?」

 

 その瞬間。李儒は目の前の光景が信じられなかった。

 突撃した騎兵は”ある一定の位置”から前へ進めなくなっていた。

 いつの間にいたのか、薫の後ろには、弓を構えていた兵がいる。

 その矢を受け、攻撃を仕掛けた騎兵はすべて、地へと討ち伏せられ、李儒自身もまた、矢を受けた馬から振り落とされてしまう。

 

 

 【李儒】「な……馬鹿な……」

 【薫】「……どうだった?分かりやすい伏兵だったでしょ?あんたも軍師なら、見破った時は嬉しかったよね?」

 

 そんな事をいいながら、実際に楽しそうなのは寧ろ薫のほう。

 元敵兵の屍をまたぐように、李儒へと近づいていく。

 

 【薫】「敵軍を本陣側に引き寄せて、その間に伏兵でしとめる……なんて策だとおもった?」

 

 喜劇でもみているように、笑いは止まらなかった。

 それとは反比例するように、李儒の表情はどんどん凍り付いてく。

 

 【薫】「まぁ、全部……おとりだけどね」

 

 見下すように、薫の表情もまた、冷え切っていた。

 夕方に近づいた空は、どんどんその色を変え、やがて紺色へと変色していく。

 それと同時に、薫の瞳は、いつか見た金色へと変わっていった。

 

 【薫】「…………」

 

 そして、少しの間の後に、すべて語るように、耳元で薫は囁いた。

 

 【薫】「ふふっ……期待はずれだったよ。”董卓”さん♪」

 【李儒】「――!?」

 

 李儒が薫の意図に気づいたとき、それが彼の意識が存在していた最後の瞬間だった。

 

 

 

-4ページ-

 

 

あとがきという名の言い訳。

 

 

えー、随分と好き勝手やってしまい、もうしわけありませんですw

あのお方のほとんどチートのような設定がないとこのお話は詰んでいました。はい

もう寧ろ自分を光にしてください(

 

その上で薫の鬼のような設定ですが・・・

つい、やっちゃうんだ★

ああああああ、ごめんなさいごめんなさい!

 

今回の話でお分かりかと思いますが・・・

はい、李儒はどうみてもかませ犬です。

あと、前回の琥珀もそうですが、少しオリキャラが強すぎるんじゃないかと、作者も思い始めてきました。

まぁ琥珀はそこまでチートってわけではないので、次回その辺はっきりさせます。

 

あぁ、薫と馬騰の能力は強すぎるといわれても否定できないので、あきらめちゃってください。

強すぎる理由も、いつか明らかになると思います。

 

では、予定ではあと2〜3話で洛陽編も終わりになると思います。

もう少しですので、更新速度マッハでがんばりますのでヨロシクお願いしますm(__)m

説明
52話です。
えー、最初に謝っておきます。申し訳ないw
もう今回作者の好き勝手やってしまいました。
色々突っ込みどころ満載です。
あとついでに作者のネーミングセンスのなさは許してくださいorz
なにがやっちまったかっていうと、気をつけてたはずなのに、ついやっちまったオリキャラ無双(
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
3503 3011 64
コメント
そこまでチートじゃなくない?(黒土)
薫・・・・何なんだこの寒気は・・・・・・・・・・(スターダスト)
ブックマン様:いつか朱里と薫の戦いが来るかと思うと今から知恵熱でそうです。。。w(和兎)
一流の軍師は裏の裏を読むのですよ。(ブックマン)
Nyao様:あふ そう言って貰えると安心して書けますw (和兎)
FULIRU様:ありがとうございます!がんばりますぜっ(和兎)
ジョージ様:あざっすw 佳境にはいって異常に更新速度あがるのは仕様ですんでだいじょぶですw(和兎)
BLUE様:司馬懿ですからねぇ、チートにたよってばかりもいられませんw(和兎)
jackry様:oh!らんらん○ーってだめですね、この流れはw(和兎)
鮑旭様:どうなんでしょう。貂蝉みたいな存在が結構特異なんであまりそういうキャラを増やすつもりはないですがw(和兎)
thule様:やりすぎた感が否めませんが、それくらいで無いと欺けないんじゃないかとおもいましてw(和兎)
黒羽 剣様:助けてくれるはずっ!(和兎)
このくらいのチートなら全然気にならないですよ・ω・ それ以上に、早い更新にビックリ・・・。(Nyao)
本当に更新早いっすw自分的には嬉しい限りですがw まぁ無理せず頑張ってください^w^(FULIRU)
ものすごい更新速度だことwwwwま、面白いからいいんですけど、無理だけはせんでくださいね? ここの華佗は何か知ってるのか? 蝶蝉か卑弥呼あたりに何か聞いているとか? 次の更新も楽しみに待ってますよ〜♪(峠崎丈二)
さすがは仲達、名前負けしていない見事な策。(青二 葵)
豪華なオトリだな…ケンポー漫画18番とは確か『男塾』や『セイント聖矢』等で死んだと見せかけ実はオニーさんが影で助けていたというパターンです。ハイ(´・ω・`)(thule)
華佗ーーーーー愛すべき種馬(一刀)を助けてくれーーーーー(詠春)
sai様:おとりです・・・w それも含めてごめんなさいorz(和兎)
春蘭は・・・・(八雲)
タグ
真・恋姫無双 カヲルソラ 洛陽編 

和兎(ユウサギ)さんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com