真・恋姫†無双〜薫る空〜 第61話 覇道編司馬懿√
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以下、オリキャラ注意です。

 

 

司馬懿 仲達(真名:薫)

 

馬騰 寿成(真名:葵)

 

 

 

 

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 【葵】「一刀〜!飯まだかー!」

 【一刀】「すぐもっていくから、ちょっとまってください!!」

 

 一応客将扱いになっている俺が、なぜ彼女の飯の用意をしているかというと、ここの調理風景をみた俺が思わず口出ししてしまったのが運のつきだったんだ。

 そこから、「お前料理できるのか」という話になり、「じゃあ、作ってみろ」と流れ、「お、うまいじゃないか」なんてことになって、「もう一つ頼んだ」でフィニッシュだ。

 馬超の分も考えて三人分は作ったのに、葵さんだけで全部平らげてしまうから、時間はさらにかかる。

 

 【一刀】「よし!」

 

 ようやく出来たものを葵さんのところにもっていく。料理はもともと苦手じゃなかったものが流琉のおかげで少しは出来るといえる程度にはなっていた。

 ずいぶん中華に特化した腕だが。

 

 【葵】「もぐもぐ……ん、翠も食えよ」

 【馬超】「あ、うん」

 

 ぼーっとしていたのか、声をかけられた馬超が気が付いたみたいに反応して、料理に箸を伸ばす。

 

 【葵】「ふぅ……しかし、お前なんでもできるんだな」

 【一刀】「そうでもないよ。全部こっちにきてから教えてもらったものだし」

 

 武術に関しても、料理にしても、文字にしても、全部そうだ。

 

 【葵】「ふむ……。一刀、昼からは人探しをするんだったか」

 【一刀】「そのつもりだけど」

 

 薫を探していることは今朝話した。薫の消息はこのあたりから消えている。だから、ここを拠点に探したほうが効率はいい。どうせしばらくは人質同然の身だ。

 

 【葵】「なら、監視役に翠をつけるから、好きに使え」

 【一刀】「へ?」

 【馬超】「ちょ、なんであたしを――」

 

 監視役なのに、使えなんて言い回しをするあたり、裏がありますといっているようなものだ。

 

 【一刀】「…………わかった」

 【葵】「ま、きにすんな」

 

 そう言って葵は手元に置いていた酒を口に運ぶ。

 ほんとに時間なんて気にせずに呑むんだな……。

 

 【一刀】「じゃあ、さっそくだけど行って来るよ」

 【葵】「あぁ、翠、変な事されないようにな〜」

 【馬超】「な、なななにいってんだよ!そっちが押し付けたくせに!」

 【葵】「あっはっはっは!!」

 

 

 

 

 

 

 ――――。

 

 

 

 

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 【馬超】「心当たりとかないのか?」

 【一刀】「ここに来るまではあったんだけどな……」

 

 昼食を済ませて、馬騰こと葵の言うとおり、馬超を借りて街へとでた。

 それなりににぎやかな街は、許昌にも通じるところがあり、懐かしく感じることもあった。

 薫の手がかりは、涼州へ向かったというものだけで、ここからの情報はまるでなかった。

 

 【馬超】「じゃあ、どうすんだ?」

 

 と聞かれても、思いつくものと言えば手当たり次第に聞いて回る程度しかない。

 それを伝えれば、馬超はやはり困った表情になる。それも当然なわけで、当事者の俺ですら面倒だと思えるような手段に、巻き込まれたも同然の馬超が素直に応じるはずも無い。

 俺だって出来ればもっと効率的な手段で捜索したいけど、こればかりはどうしようもなかった。

 

 【一刀】「あっちのほうから聞いて回るか」

 

 街の一角を指差して、俺は馬超に確認を取る。

 

 【馬超】「そうだな」

 

 歩いて通りすがる人達を呼び止めては聞いて回る。

 黒髪の女の子を見なかったか、と。

 しかし、黒髪なんていくらでもいる上に、薫の特徴を上手く伝えることができない。言葉だけでいえば、どこでもいる普通の子と対して変わらないのだ。

 だからといって、おおっぴらに目の色が変わるとか、元曹操軍の軍師、そんな肩書きをふきまわるわけにも行かない。

 手当たり次第に声をかけるが、やはり手がかりはない。

 昼ごろにはじめたものだが、夕方近くまで続けて、成果はなかった。

 

 【一刀】「はぁ……」

 【馬超】「ま、まぁ、絶対見つかるって。初日からそんなに落ち込むなよ」

 

 すっかり意気消沈した俺に慰めるように声をかける馬超。

 言葉とか、普段の行動が激しい分隠れやすいんだろうけど、根はすごくいいやつらしい。葵に苦労させられているからか、親よりもずっと素直だ。

 

 【一刀】「あはは……そうだな。ありがとな、馬超」

 【馬超】「いや、別になんでもないよ」

 

 こうやって付き合ってもらったり、こっちに来てから面倒をかけているというのに。

 話しながら歩いていると、聞き込みで疲れていたのか、見えてきた城がずいぶん久々に思えた。

 

 【一刀】「よし、今日はありがとな。助かったよ」

 【馬超】「え、いや、いいよ、礼なんて。どうせ今日だけじゃないんだろ?」

 【一刀】「そうだけど、一応な」

 【馬超】「一応……。ふふ、おかしな奴だな」

 【一刀】「そうか?」

 

 言いながら、そういえば、誰かがこうやってちゃんと笑うところなんて、しばらく見ていなかったなんて思う。

 

 【一刀】「じゃあ、まぁ……よろしくな」

 【馬超】「母様に命じられちゃ、断りようがないしな」

 

 礼に慣れていないのか、照れたように馬超は少しだけ頬を染めた。

 葵の脅しにも似た最初の言い回しには驚いたけど、なんとか上手くやれそうな気がする。

 

 

 

 

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 ――――深夜・天水城内

 

 

 

 一日の疲れがどっと押し寄せ、この日の眠りはいつも以上に早かった。

 寝台に倒れこむように寝てしまうと、睡魔は手加減無しで襲い掛かってくる。

 眠りは深かったはずなのに、どれくらい寝た頃だろうか、扉の外が騒がしくなっているのを感じて不意に目が覚めた。

 窓をのぞく空にはまだ月が高くて、時間にすれば三、四時といったところだろうか。

 まだぼやけている目をこすりながら、俺は部屋の扉を開ける。

 がちゃりと開けてみれば、兵達があわただしく走り回っている。

 何事かと眺めているうちに、丁度馬超が走ってきた。

 

 【一刀】「何かあったのか?」

 【馬超】「ああ、五胡の奴らが攻めてきやがった」

 【一刀】「五胡ってこないだ言ってた?」

 【馬超】「昔からうちの領地を狙ってるやつらさ。あたしも出るから、もういくよ」

 【一刀】「あ、あぁ、悪い」

 

 

 本当に緊急事態らしい。

 元々あわただしい感じの馬超だが、今は余裕すら感じられなかった。

 

 【一刀】「五胡……」

 

 頭に引っかかるその名前。

 馬超の話からすると、昔から争いが絶えないらしいが。

 

 【一刀】「俺も……」

 

 出なければいけない。そう感じた。

 なら、そのためにはまずは――

 

 【一刀】「葵さん……だな」

 

 扉を閉めて、彼女がいるであろう場所へと走った。

 

 

 

 

 

 

 

 城内を走り、兵舎に彼女はいた。

 

 【一刀】「葵さん」

 【葵】「ん、なんだ、起きたのか」

 【一刀】「そりゃ、この騒ぎじゃ……」

 【葵】「俺はもうちょい寝てたいよ……ふぁぁ」

 

 おつかいでも言いつけられたみたいに、めんどくさそうに葵はあくびをする。

 

 【一刀】「俺も、でていいかな」

 【葵】「んー?…………ふむ」

 【一刀】「…………」

 

 葵は俺の言葉に、怪訝な目で俺の顔を眺める。

 

 【葵】「一刀、お前どれくらい戦える?」

 【一刀】「…………華雄を生け捕りにするくらいには」

 

 あまり大口はたたきたくないが、ここで変に謙遜したところで意味はない。

 

 【葵】「ほぉ……そういや、お前呂布に滅多打ちにされても生き残るくらいは頑丈だったな」

 【一刀】「あ、ははは……」

 

 そのことは正直あまり思い出したくない思い出ではあった。

 

 【葵】「それじゃ、俺の横についてろ。……あぁ……つっても俺はいっつも前に出るからな……まぁ、いいか。とにかく付いて来い」

 【一刀】「あ、はい」

 

 

 そういうと、葵は俺に馬を用意してくれた。うちの馬は気性が激しいから、振り落とされるなよなんて言葉と一緒に。

 

 

 

 

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 ――涼州・郊外

 

 

 

 夜にも関わらず、侵攻を行ってきた五胡。

 迎え撃つように馬騰の兵達が応戦するが、以前ならば撃退できていたはずの敵が、今日は思うように戦えない。

 突撃を繰り返すだけだったはずの五胡軍。その数は膨大だが、その愚直さ故に常にこの馬騰軍によって漢への侵攻を阻まれていた。

 なのに。

 こちらが攻めようとするところで軍を引かれてしまう。追撃をかければ常に伏兵が待ち受ける。

 迂闊に攻めることができないと待機すればまた強襲をかけられる。

 唯一の武器でしかなかった兵数が、最大の兵器となって、馬騰軍に降りかかる。

 ただでさえ寒さと暗さで精神を削られるものだが、この攻防によって兵達の体力はさらに磨り減っていく。

 

 【馬騰】「ちっ……めんどくさい戦覚えやがって……」

 

 馬騰が不満げに呟く。

 めんどくさい。たしかにこの言葉が今の五胡の作戦には最も適応しているのかもしれない。

 攻撃しては引き、罠を張り、また攻撃を繰り返す。

 コレだけの兵力差がありながら、兵法を使ってくる。今までの五胡ではありえない話だ。

 

 【一刀】「引けば、必ず伏兵に会う……」

 

 もしも、この場で唯一冷静でいられるとすれば、それは最近ここへとやってきた、噂の御遣いだけかもしれない。

 何かが気になるという風に、一刀は脈絡の無い言葉をつないでいく。

 引けば、必ず伏兵に。攻撃を終え、反撃を受ける頃には必ず引く。複雑なように見えて、実はかなり単純な作戦。

 強襲部隊には、攻撃してから逃げろといえばいい。伏兵部隊には敵が見えれば襲えというだけ。

 

 【一刀】「…………葵さん、これ」

 【葵】「…………本当、めんどくさい話だよな」

 

 考えを述べようとした直後に、葵は一刀の言葉を遮って、そういった。言いたいことは理解しているという風に。

 敵の作戦が単純ならば、当然こちらの対抗策も単純だ。

 攻撃の後に必ず伏兵が来るのだから、そこを釣ればいいのだ。

 

 

 【葵】「翠は今どのあたりだ」

 

 葵は伝令の兵にそう聞くと、兵は地図を指さし、その居場所を示した。

 

 【葵】「…………蒲公英は……まだ早いか。……いい、翠を先陣に置く。敵が引き次第、一時待機後に迂回路を取って突撃をかけろと伝えろ。蒲公英にはその後詰をさせる。――俺の部隊は本陣で正面突破だ!」

 

 叫ぶように指示を飛ばせば、それに負けないように兵達も大声で了解を示す。

 各自がそれぞれの持ち場に散っていき、その場には一刀と葵のみとなった。

 

 【一刀】「俺はどうすれば?」

 【葵】「いっただろう、お前は俺についてくればいい。気づいたことがあればその都度俺に言え。さっきみたいにな」

 

 本当に、洛陽での彼女と天水での彼女を見て思ったことでもあったが、戦での葵は生き生きしすぎだと思う。

 口ではめんどくさいといいながらも、目はどうみたっておもちゃを見つけた子供だ。

 

 【葵】「行くぞ!馬寿成、出陣する!」

 

 剣を抜いて、葵は馬を駆り出す。それに追いすがるように、必死に馬を操ってくらい付く。付いて来いというのが命令なだけあって、本当に葵の馬術はすごい。全力で手綱をしごいているのに、距離を保つので精一杯だ。

 元々の馬の能力もあるかもしれないが、この差は明らかに腕の差だった。

 そして、高速で景色が流れていく中で、正面に敵……すなわち五胡の兵が見えてきた。

 ――と、思えば、葵は既にその軍の中に突撃していて、彼女の周りからは血しぶきが舞い上がっている。

 

 【葵】「ははははは!!おらおらぁっ!」

 

 改めてみて、やっぱり彼女は強かった。春蘭や関羽とも違う、呂布とも違う何かがあった。

 葵が作った血の道を辿って、ついていく。

 さすがに引き始めた五胡だが、葵の勢いはとめられず、血の道はどんどん広がっていく。だが、それでも五胡の動きは変わらない。まるで、この状況ではこうしろといわれているようだった。

 

 【一刀】「なんだ……」

 

 逃げる五胡兵。追う馬騰軍。

 だが、負けているのは馬騰軍のほうだ。

 追っているのに負けている。そんな矛盾が一刀の頭の中に広がっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ――――???

 

 【???】「暗鬼霧想の陣……ってとこかな」

 

 矛盾は必然。

 引けば引くほど、勝ちは近づく。そんな策がもしもあるとすれば。

 そして、その最後に待っている者。

 

 【???】「なるほど、馬鹿ではあるけど素直な分かなり使える」

 

 暗い中で松明の灯りを頼りに、地図を眺める。どんどん五胡の領地へと入っていく前線。だが、それでよかった。

 このような真夜中にかけた強襲の意味はすべて最後の一手に決まっている。

 そして、”夜の戦”において、その金色の瞳から逃れられるものがいるはずも無い。

 

 【???】「…………ふふ、攻めて来るんだ……悪いけど、一刀」

 

 夜の中でもはっきりと見えるその黒い翼は次の指示を示す。

 

 【???】「西涼軍……最初の踏み台にさせてもらうよ」

 

 

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 前へ、前へと葵は突撃をかけ、逃げ惑う五胡兵を蹴散らしていく。

 だが、それもいつまでも続かず、戦が始まってからずっと苦しめられてきたものが、姿を現す。

 

 【一刀】「はぁ……はぁ……これは、銅鑼……」

 【葵】「来たな」

 

 静かな夜にうるさく鳴り響く銅鑼の音。

 それが伏兵の合図であることは、確かめずとも分かってしまうことだった。

 がやがやと動揺する兵士をなだめながら、葵は大きく息を吸い込んだ。

 

 【葵】「馬超に合図を送れ!かかった獲物はすべて狩れ!間抜けにも釣られた敵に怖気づくな!お前らの大将はこの西涼が王、馬騰ぞ!」

 

 大地が震え上がるかと思えるほどの怒声。

 

 【葵】「奴らに教えてやれ!本当の”戦”というものをな!」

 

 馬騰の鼓舞に、動揺していた兵達は一瞬の静寂を作り、やがてそれははちきれたように、雄たけびをあげて爆発した。

 

 ――おおおおおおおおおおおおお!!!!!!!

 

 その雄たけびをきっかけに、横撃をかけてくる敵兵からさらに後ろ。

 兵達の高揚に答えるように、銅鑼が何度も響き渡る。

 

 【馬超】「お前達、あたしに続けーー!!」

 

 白銀の槍を構え、敵伏兵のさらに後ろへ突撃をかける馬超。

 今まで成功してきた伏兵が、さらに伏兵にあった事で五胡は明らかに同様している。さらに、撤退、伏兵、強襲のリズムが崩れたことで、その動揺は混乱へとつながり、統率をまったく失ってしまう。

 

 【一刀】「これで、どのくらいの損失を与えられるか……」

 【葵】「まぁ、よくて三割だろうな」

 

 決定的にも思えるほどの光景だが、これでも五胡の全軍ではない。

 この作戦がどの程度の兵数で行われているかはわからないが、少なくとも、三つの役割がある以上、この三倍があることは確実。それ故の”よくて三割”。

 下手をすれば、この戦に出ている総兵数事体が、五胡全軍の一部である可能性もある。そう考えれば、単純に楽観視もできるわけがなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――???

 

 

 【???】「そう……さすがにそう何回も通じるほど甘くはないか」

 

 一人の伝令が、五胡の本陣へと届いた。その内容は前線での伏兵及び強襲部隊が全滅したとの知らせだった。

 

 【???】「これでこちらへの道は出来たわけだけど……どう出るのかな。馬の王様は」

 

 地図を片付け、作戦を立てる天幕から外にでる。

 見上げる星空には、これでもかとうるさく星が輝いていた。

 

 【???】「そろそろいいか。……あの子に伝令送ってください。攻撃を開始するように」

 

 その言葉に、知らせを届けた兵は、再び夜の中に消えていく。

 

 

 

 

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 ――天水・近郊

 

 

 【???】「ようやく知らせが来たのです」

 【???】「…………」

 

 黒い外套を覆った二人。ひとりはとても小さく、もうひとりは背が高い。

 背の高いほうは、その体よりもさらに大きい戟を構え、頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【馬超】「母様!無事か!」

 【葵】「アホか。なんで翠に心配されなきゃいけないんだ」

 

 ぐりぐりと馬超の頭を手のひらで押し込んでいく。

 

 【馬超】「ちょ、痛いっ……痛いってば!」

 【葵】「はははっ。ま、皆無事で何よりだ。で、こっからどう攻めてやるかだけどな……」

 

 真剣なときとふざけている時の区別がほとんどつかず、馬超も苦労しているようだった。

 そんな葵だが、次の行動を示そうとしたところで言葉が詰まる。

 

 【一刀】「なんだ……」

 

 急に、背中に寒気が走った。

 いや、それ以上の何かかもしれない。そしてこれは、以前にも経験したものだ。

 それはほんの数ヶ月前、あの砦でおきたこと。たった一人の武将に数十万もの兵がひれ伏した、圧倒的な気配。

 

 【葵】「おいおい……なんでこいつが五胡についてんだ……」

 【馬超】「…………なんて闘気だよ」

 

 葵も、馬超も、すでにその正体には気づいている。

 当然だ。たとえ外套で顔を隠していたとしても、この威圧感だけは忘れるはずが無い。

 その大きな方天戟もそうだ。

 

 【一刀】「呂布……」

 【呂布】「…………」

 

 一瞬、気が緩んだ気がした。

 だが、それは本当に刹那と呼べるもので。

 

 【葵】「散れ!翠、一刀!」

 

 はっとした時、二つの刃は数回にわたって激突していた。

 

 

 

 

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 ――???

 

 【???】「さて……恋とねねも動いたし……」

 

 この作戦を決行するまでには随分苦労した。

 まずは頭の固い五胡を従えるために、自分達の力を見せる必要があったんだ。

 元々いた五胡の王は恋に敗れた。

 頭のいない大軍っていうのは、ひどく脆い。

 その程度は前回の連合で嫌というほど見ている。

 だから後は追い込んで、逃げ道を作ってあげればいい。そうすれば、彼らはそこへ逃げ込むしかなくなる。

 呂布の力を目の当たりにした連中が生き残る術は二つ。勝ち残るか、従うか。

 呂布を相手に勝ち残るのはまず不可能。だったら彼らが生きるには従うしかなくなる。

 少しの煽りはいれたが、結果的に彼らはほぼ全員あたしの下についた。

 ま、あたしの目的が彼らと被ってたっていうのもあるんだけど。

 

 ――司馬懿様。

 

 そう呼ぶ声が聞こえて、あたしは振り返った。

 

 【司馬懿】「何か、ありましたか?」

 

 という質問は無駄だというのはまだ彼らには話していない。

 一応使えるようになったこの変な力のおかげで、戦況は全部把握しているけど、これはある意味切り札に近い。できるだけ他人には知られたくはない。

 恋と音々音には伝えてはいるが。

 

 ――陳宮様の軍が天水への攻撃を開始しました。

 

 【司馬懿】「そうですか……わかりました。では、こちらも向かいましょうか」

 

 あたしの目的――――。

 彼女から伝えられた事実は、まだ信じられたものじゃない。

 それくらい現実離れしていて、あたしには受け入れがたいものだったから。

 でも、これが本当の事なら彼女の変な行動も納得できた。それなら仕方ないなって。

 

 

 それは、彼の消失。

 彼女が言うには、それは何度も繰り返された事実で、彼女はそれが嫌だった。

 自分が生まれた起源がそこにあるのに、それをとめようとしていた。

 なぜなら、彼女は彼と同じくらい、あの人も好きだったから。

 彼が消えて悲しむのは自分だけじゃない。自分以上に悲しむ人が、あたしのいたあの場所にはたくさんいる。

 彼が消えた理由がこの外史を変えたからだというのなら。

 本来ある歴史から遠ざけたからだというのなら。

 彼の知らない治世が訪れたからだというのなら。

 私(あたし)がそれらを消してやろう。

 外史に変化を与えられないほど、彼の動きを封じてやる。

 歴史を変えられないほど、私(あたし)が変えてやる。

 治世なんて、訪れなければいい。

 ――役目をすべて、終えたからだというのなら。

 …………そんな役目は果たさせない。

 

 

 ――それが私の役目。

 

 そして、あたしの目的。

 

 

 

 

 

 

説明
ひたすら薫がメインなので、二次小説とするのが心苦しくなってきた今日この頃。
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コメント
一刀のために自ら泥をかぶるのか。(ブックマン)
薫のこの行動も一刀を愛するが故なんだろうけど・・・・・・・悲しい結末しか思い浮かばねえよ(スターダスト)
木に緑りて負を求む(意味・・・いくら頑張っても、その方法が間違っていては成功は望めない。)この方法が間違っていなければいいんですが・・・・・・(青二 葵)
あ〜あ、馬鹿野郎。 そんなんで誰が喜ぶんだよ・・・・そんなんで救われたって一刀は喜ばねえし、みんな辛い思いをするだけだって。 とはいえ、今のところ一刀が消えずにすむ方法も判んねえし・・・・ヴァアアアアアアアアアアア!! どうすりゃいいんだこれはっ!?!?!?(峠崎丈二)
薫は相手に尽くすタイプのヤンデレですねww 全ては一刀たちのためであっても、そのやり方では断じてハッピーエンドにはならないんですよね・・・。 薫が反逆者だとバレる前に助けないと取り返しがつかなくなりそうです。(sasa)
薫は是非とも一刀に連れ戻されて欲しいですなw そして一刀は消えずに済む・・・そんなストーリーになればいい、と願っております;; 次回も期待して待っていまッス!!(FULIRU)
葵さんは見た目通り(?)色んな意味でズボラな人ですねぇ…一刀君、この『外史』で色んなスキルを身につけておいて良かったですね。薫さんは『既に』五胡を掌握済みとは…やはり司馬仲達の名はだてでは無い…あえて自らが『役目』を引き受けることで運命を変える…『前回』と同じく『悲しい』結末とならなければ良いのですが…(レイン)
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