真・恋姫†無双〜薫る空〜第64話 覇道編司馬懿√ |
お久しぶりです。
えーと、今回から、って言ってもかなり今更ですが、書き方変えてます。
以前の台詞の前につけていた【名前】をはずしました。
一応、続き物って事でつけてきてたんですが、書いてるうちに非常にめんどくさいのと、
今のHPの小説が文字数制限がかかっているので、それにあわせて、無駄な文字は消したのが、主な理由です。
では、相変わらず亀どころではない更新ですが、ヨロシクお願いします。
貂蝉から、薫の話を聞いて数日が経った。
世間は動き出した呉や劉備の空気に敏感で、ぴりぴりとしたものに包まれている。
そんな夜、俺はいつか薫と別れた場所に来ていた。
「めずらしいわね」
「それは俺の台詞だよ。華琳」
遠くを眺めていると、華琳が後ろから話しかけてきた。
「そうかしら?」
「……いや、どっちでもいいかもな」
「ふふ」
挨拶代わりに、適当に言葉を交わして、華琳は俺の隣に座る。
「なぁ、華琳」
「?」
「俺達の敵って、誰なんだろうな」
「…………味方にならない者すべてよ」
「はは……それもそうだな」
「……一刀」
「うん?」
「今の世、敵と味方を考えて、勝ち抜けるほど甘くは無い。……私はずっとそう思ってきたわ」
「うん」
「目指すものを見据え、そこまでの道を定め、その途中に存在する障害はすべて倒す。それが正しいことだと、思っていた」
「正しいと思うよ。俺も」
「けれど、思ったより、辛いものね。信じたまま突き進むというのも」
「……でも、止まらないだろ?」
「もちろん……。止まらない。止まれない。この先、何があっても」
「華琳」
「何?」
「以前、俺に言ったよな。俺の知っている知識は、私に教えるなって」
「えぇ」
「でも、言うよ。この先の事。……今は、必要だと思うから」
「そう……。わかったわ、聞かせなさい。一刀」
「――……あぁ」
それから数日して、華琳の下に一つの伝令が飛び込んだ。
玉座でそれを聞いた華琳は、いつも以上に、静かに受け答えていた。
「…………黄蓋……。呉の最古参の一人である宿将が投降……ね。何があったのかしら」
あまりに突然だった、黄蓋の来訪。
河を渡り、やってきた彼女が知らせたのは、曹操軍へ降るというものだった。
「何が……とは。もはや虎の牙無きあの国に、愛想が尽きたというだけの事」
黄蓋は重い声で、そう告げた。
「…………」
「……お前ほどの将が長年仕えた国に愛想が尽きたと?」
疑念を隠せない秋蘭が口を開く。
「新参者にいいように弄ばれ、あそこに儂の愛した国の面影はもはや潰えた……。ならばせめてこの手で葬ってやろうという心、お主らには分からぬか?」
「…………」
共感するものがあるのか、春蘭は何も言わず、黄蓋を見つめている。
「分かったわ。そうまで言うのなら、江東の虎への貴女の忠義、見せてもらいましょう」
「応」
「風、彼女を案内してあげて」
「はい〜」
風につれられ、黄蓋は踵を返す。
「…………ん、琥珀?」
と、風と黄蓋が歩く向かい側に琥珀が立っていた。
「…………」
「…………ほぅ」
琥珀を見た黄蓋が、何かを呟く。
――すれ違いざま。
「――」
「…………」
特に何事も無く、二人は去っていく。
「華琳様、何故黄蓋の投降をお許しに?」
「……嘘だろうと真だろうと、これで呉は大きく動く。それを見定めてからでも、遅くは無いでしょう?」
「……なるほど」
黄蓋の件がひとまず片付き、広間には華琳と一刀だけが残っていた。
「…………あなたの言ったとおりになったわね」
「……ごめんな」
「あら、悪いとおもっていたのね」
「それなりに」
「なら、黄蓋のほうは頼んだわよ」
「わかったよ」
「それと」
「一緒に来た、もう一人の方も、だろ?」
「えぇ」
――某所
「さて、もういいぞ」
風に案内され、見張り付きとはいえ、一人になった黄蓋は窓に向かって小さく話しかける。
「……ありがとうございます」
「いや、そちらはうまくいっておるのか?」
「はい。滞りなく」
「そうか。……ところで、あの北郷とかいう奴には気をつけろ」
「……?軍師達ではなく、ですか?」
「お主が他の軍師共に遅れをとるとは思っておらん。が、あの手の者は時に策の外側を行く場合がある」
「…………わかりました」
「頼んだぞ」
「はい」
――涼州
「やっと揃ったわね」
「うん」
司馬懿と呂布。
二人の前には、かつては五胡とよばれた兵士達が数百騎と並んでいた。
しかし、その面影はほとんどなく、鎧や装飾などは黒一色に統一されていた。
「この隊、呂布にまかせるわよ」
「わかった」
明らかに他の兵とは異彩を放っている騎兵。
呂布が自ら育てた兵の武力は、実に一人ひとりが他の兵百人に匹敵するものになっていた。
「恋殿がこの部隊専属になると、他の指揮系統はどうするのです?」
「他は私がすべて持つ」
「なっ」
「大丈夫。私ならできる事、陳宮も知っているでしょう?」
「それは……そう……ですが……だったら!」
「陳宮には防衛のほうをお願いしたいの」
「…………っ!」
陳宮は思い切り、司馬懿の頬を叩いた。
「…………」
たが、司馬懿は何事も無かったように、平然としていた。
「後、何が残っているのですか」
「見て、聞けて、話せるよ」
「…………わかったのです」
「ありがとう……」
陳宮がしぶしぶ納得したところで、司馬懿は再び呂布のほうへ向いた。
「最強の遊撃隊。任せたからね」
「……(コク」
――数日して、華琳の下に、呉が動いたと伝令が届いた。
長江を船で渡ろうと、その数は実に百万を超えようかという大軍となっていた。
その中には、当然、劉備や関羽といった旗も存在した。
「来たわね」
「敵陣には、荊州の劉備の旗もあるようです。華琳様」
そう告げたのは、華琳の隣で敵陣を伺う桂花だった。
「やはり手を結んでいたのね」
「華琳様〜。船の改造が完了したようです〜」
「ご苦労様、風。真桜に休むように言っておいてちょうだい」
「分かりました〜」
「さて……こちらも動き始めましょうか」
「は」
――赤壁・港
「ふぅ〜……さすがに疲れたわぁ」
「お疲れさん、真桜。ほら」
「お、気ぃきくやん元隊長」
真桜に水を渡してやる。
「はぁ……ま、いいけどさ。さすがに慣れたし」
「?」
「いや、なんでもないよ」
いい加減”元”に突っ込むのも疲れるというものだ。
「しかし、海みたいだよなぁ……」
「まぁな〜。これで国が別れてるんやしな」
長江を前にして、素直な感想。
川を見て向こう岸が見えないなんて初めての体験だった。
「けど、鎖でつなぐんは分かるけど、なんでわざわざこんなんつけるん?」
真桜は船と船の連結部分を指差してたずねる。
「用心、かな」
「ふぅん……」
――給仕用天幕
「はい、どうぞ」
「ん?あぁ、すまないな」
「いえ」
給仕を担当している流琉が黄蓋に渡したのは、その日の昼食だった。
「…………ほぅ、うまいな」
「ありがとうございます!」
「ふふ、ここはよい給仕がいるもんだな」
「む、私、コレでも将軍なんですよ?」
「ん?あははは!そうか!それはすまないな」
「な、笑いすぎです!」
「あはは、いや、あまりに意外だったのでな」
「むぅ」
「……そうか。お主のような者が将を務める時代か……」
「……?」
「いや……そうだな。あ奴らを見れば……驚くことでもないかも知れんな」
――川原
「琥珀」
「?」
「めずらしいな、一人か」
「しゅうらん?……私が一人なのはいつもの事だろ」
「ん……ふむ」
「な……なに」
「いや、お前がいいのなら、私はかまわないさ」
「む……なんだか妙にむかつくぞ」
「ははは。――……それで、戦えるようにはなったのか?」
「左手は完璧」
「私が聞いているのは、関羽に勝てるのかという事だ」
「…………」
「奴は強い。最高潮に達した姉者でも絶対に勝てるとは言い難いだろうな」
「知ってる」
「戦うつもりなのだろう?」
「…………うん」
「……」
「……」
「……まぁ、いい。覚悟を決めたなら、全力でな」
「うん」
――夏口・呉本陣
長江に面した陣地の中、呉の天幕には孫策、周瑜、孫権、陸遜といった呉の主要たる将のほか、劉備、諸葛亮や趙雲と、劉備勢の将の姿もあった。
「さて、到着して早々にすまないが、軍議を始めたいと思う」
卓に広げられた地図を囲い、周瑜が立ち上がる。
あの時、呉に届けられた書状には、曹操を討つべく、一時的にだが同盟を結しようと言う内容が記されていた。
「あちらには既にこちらの黄蓋、それから鳳統が向かっている手筈だ」
「曹操軍と事を構えるに当たって、一番の懸念はその兵力差です。かつて最大勢力だった袁紹さんを下した事もあり、その軍事力は、私達と呉の皆さんを含めても、まだ厳しいものでしょう」
周瑜によって仕切られた軍議で、最初に口を開いたのは諸葛亮だった。
「うむ」
「けど、当然策はあるんでしょう?」
「はい、そのための同盟ですから」
孫策の問いかけにも、諸葛亮は動じずにそう答えた。
未だにお互いに対して、疑念はぬぐいきれたものではないが故のやり取り。
そう思わせる最初の挨拶だった。
「まず、黄蓋さんと、雛里ちゃん……鳳統の仕掛けで、敵の船はすべて鎖によって、連結された状態にあるはずです」
「鎖ですか?」
話し始める諸葛亮に、陸遜が疑問をあげる。
「はい。曹操軍の兵は水上での戦に慣れていないので、どうしてもその対策を立てなければなりません」
「それを逆手に取ると?」
「はい。そこで、私の予測では当日、東南より曹操軍側へ風が吹きます」
「風……?」
と、その言葉に周瑜は眉をひそめた。
「はい」
「な、風って、そんな不確かなっ」
天候という不確定なものを策に組み入れるのは、本来はありえない話だ。
それは声をあげた孫権でなくとも、疑問を抱くというものだった。
「蓮華、おちついて。で、孔明ちゃんは、その風とやらは”絶対に”吹くというの?」
「はい」
「天気なんて、その日になってみなければ分からない。ずっと続く大雨も、ある日突然止んでしまうこともある。そんな物の予測がたつと、あなたはいうのね」
「……はい。この季節、この地方、過去に起きた気象、星の動き、それらが不確定な天候を確定するものだと教えてくれます」
「まるで未来でも読めるような物言いだな」
ほんの少し、毒づいて、周瑜は呟いた。
「未来なんて読めなくても、『もうすぐ風が吹く』くらいはわかります」
「……ふむ。ならば、その風を頼りとして、策を用いるとすれば……やはり火計か」
「私はそう考えていました。たぶん周瑜さんも同じだと思ってましたが」
「ふ……買いかぶりすぎだ。私に天の機嫌など伺えぬよ」
だが、周瑜の表情はどこか満足しているものだった。
風の予測はたたずとも、二人の考えが同じだったのは事実のようだ。
「では、それぞれの配置についてだが――」
――川原
「愛紗〜」
「ん?あぁ……鈴々か」
川原にたたずんでいた関羽に、近くを通りかかった張飛が声をかけた。
「愛紗は軍議にはでないのか?」
「あぁ、元々私は、あまり軍議とかは得意ではないんだ」
「そうなのか?愛紗、何かいつも考え込んでるのに」
「なっ、それはお前達がしっかりしてないからだろうが!」
「あだっ」
「まったく……」
周囲には軍神と騒がれてはみても、本人ともなれば、それは重圧に他ならない。
「むぅ……で、愛紗はこんなところで何やってたのだ?」
「少し、考え事をな」
「ふぅん」
「…………(やはり、出てくるのか、琥珀)」
「あーいしゃ」
「なんだ?」
「何悩んでいるかはしらないけど、鈴々にまかせるのだ」
「え?」
「愛紗が不安になるようなものは全部鈴々がぶっとばしてやるのだ」
「…………」
「だから、元気だすのだ」
「……ふふ」
「にゃ?」
「いや。そうだな、鈴々に言われているようではな」
「そうなのだ!」
「いや、そこは否定して欲しいところなんだが……。まぁ、なるようになる…か」
川の向こうを眺めながら、関羽は呟いた。
遠くて見えない、何かを見つめながら。
――天幕
「では、今日の軍議はここまでとする」
「解散してくださーい」
周瑜と陸遜の言葉で軍議はお開きとなり、一同は解散した。
だが、皆が次々と天幕を出て行く中で、諸葛亮と周瑜だけが、その場に残った。
「孔明」
「はい?」
「行かないのか?」
「周瑜さんこそ、おやすみにならないんですか?」
互いに問いかけあうが、どちらとも答えを出すことは無かった。
「ふふ。探りあいはやめないか」
「はわわっ。す、すみません」
「いや、こちらこそだ。……ところで」
「はい」
「お前は此度の戦、勝てると思うか?」
突然の周瑜の問いかけに、辺りが一瞬冷えたように思えた。
が、すぐに錯覚だと、諸葛亮は自覚する。
「現状では、勝つ見込みはほぼ無いかと思います」
「ほう……何故だ?軍議で披露した策に穴は無いと思うが」
試すように、周瑜は諸葛亮を見据えた。
「策に穴は無くとも、その策そのものが読まれていては、勝てませんから」
「この同盟、黄蓋殿の投降、すべて読まれていると?」
「私はそう思います」
「理由は?」
「あちらには天の御遣いさんがいらっしゃいますし、それに……」
「ふふ……やはり、そう思うか」
「周瑜さんも、そうお考えですか?」
「十中八九介入してくるだろう。いや、下手をすればこの同盟すら」
「手の内……と?」
「何しろあの曹操を裏切って旗揚げしたような奴だ。どこまで奴の手中なのか、まるで掴めん」
「では……もう一枚、切り札を用意しておいたほうがいいですね」
「お互いに、な」
「…………はい」
二人はその言葉以降、話すことなく天幕を出た。
――西涼
「………………」
玉座の前で、薫は目を閉じながら立っていた。
その体から、非日常を現す霧を出しながら、部屋全体を異様な空気で満たしていた。
「……未来を読めなくても、か」
無意識に、口に出した言葉は、自分の行動を否定されたように感じるものだった。
――ドクン
「…………あと二つか」
力の発動のたびに、心臓が跳ね上がる。
だが、もうそんなものに痛みすら感じない。
それはそれで、少しありがたいなどと考える薫だが、やはり残された回数にも限度がある。
「さて……と、そろそろあんたを使いたいんだけど、覚悟できてる?」
「――――……よかろう」
聞こえた声は後ろから響いてきた。
「分かってると思うけど、裏切らないでね」
「ふははは!!傑作だな。貴様がそれをいうのか」
「やっぱり死んでる?」
「…………。いいだろう、何をする。分かっているな。貴様が天を治めるのなら、そのときは――」
「わかってるよ。……あんたには、赤壁へ行ってもらう」
「赤壁だと」
「そう。感謝してほしいくらいだよ。歴史から死んだあんたを、表へ出してあげるんだから」
「…………なるほど。それが貴様の描いた地獄絵図なわけだ」
「…………」
「よかろう……。劉備、孫策、曹操、それらすべて、我が堕としてやろう。――この李儒がな」
「期待してる」
声はそう告げて、その気配を絶った。
直後、扉の開く音に、薫の視線は入り口へと注がれた。
「…………だいじょうぶ?」
「恋……。だいじょうぶって何が?」
「顔色、わるい」
「……そう?あんまり自覚無いけどなぁ……。あぁ、じゃあ、一応休んでおくよ。ここお願いしていい?」
「うん」
「ありがと」
薫が、部屋を出た。
「…………」
説明 | ||
お久しぶりです。 さすがに官渡はしょったのは急展開すぎたかな(’’; そんな心配しつつ、曹仁√で官渡やるからいいかーと、投降。 しかし……主人公が空気になりかけてる(← |
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コメント | ||
ヤッパリ拒絶が始まってるんですね(VVV計画の被験者) ふむ、祭さんの偽りの投降〜魏ルートの赤壁の戦いをなぞっているようで、まだ油断できない様子。李儒に薫さん…恋さんの遊撃隊といい謎がさらに謎を呼ぶ…全てが明かされるようになるまで、この『外史』からは目が離せませんね。まぁ、読者共通の願いだと思いたいですが、薫さんが『救われてほしい』なぁと思いつつ、次回更新を楽しみにお待ちしております。(レイン) 薫・・・もう・・・手遅れなのか?・・・・後は一刀だけが頼りだ(スターダスト) ふ〜む、色々と絡み合ってきましたね・・・・どうなる事やら。(峠崎丈二) |
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