華ノ守人第捌話《影》 |
《第捌話 影 》
「あれは・・・・・。」
眼前に展開するは、正体不明の集団と覇王率いる魏軍。
白装束をに身を包んだ敵の軍勢は、この時代の物ではない異質な雰囲気を纏っている。
その雰囲気をさらに際立たせるものが、軍勢から少し突出した黒い円筒のような物だ。
「優理、あれ、見えるか?」
一刀たちからの距離としては、おおよそ八キロあるかどうかといった所だろう。
それでも一刀ならば、”ある方法”を使えば、数秒で着く距離だ。
その反面、これだけの距離を移動するためには”充電”しなければならないが。
一刀の言葉に、優理は右目に気を集中させる。瞳は銀に、瞳孔は細く伸びる。
「兄さん、あれ大砲だ・・・。」
「なっ!・・・馬鹿な、この時代にそんなものあるはずが無い!」
優理の言葉に、驚愕する雰囲気が仮面越し伝わってくる。
「まさか、あれって・・・・・っつ!?」
「今度はなんだ!?」
「シュナイダーM1913 105mカノン砲!?「なんだそれ?」何でこんな物がこの時代にって、しかもあれフランス製だし!!」
「はぁ!?フランス!?」
「しかも、あれが使われてたのって第一次世界大戦頃なんだよ!おかしいって!!」
・・・いや、俺的にはお前のその知識の方がおかしいがするよ・・・。
冷や汗が、優理の頬を伝う。
「とにかくまずいよ・・・。兄さん、あれの射程距離どれくらいだと思う?」
優理の問いに、しばらく考える。
「・・・・・見たところ砲身は2、3mだろ・・・、せいぜい三キロくらいじゃないのか?」
まぁ、俺の勘だけど。
「残念ハズレ。」
その解答に頭を振って、最悪な答えを優理は言ってのけた。
「シュナイダーM1913 105mカノン砲、その射程距離は・・・」
ゴクリと一刀の喉が音を立てる。
「およそ19.500mだよ。」
「・・・・・は?」
「だから19.500m!20kmくらい射程があるの!!」
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「兄さんってば、大砲なめすぎ・・・。」
「い、いや待て!落ち着け優理!!」
「うん、兄さんがね。」
20km!?やばいだろソレは!
今すぐ攻撃可能じゃないか・・・。
華琳は気づくか?
いや気づわけないって!
「おーい、にーさん!」
優理の呼びかけにも反応出来ないほど一刀が取り乱しているその時。
ズドォォォン!!
「始まった!!」
白装束の軍勢から魏軍に向けて砲撃が始まった。
「・・・優理、ここから砲弾の迎撃は可能か?」
「もちろん。砲身をぶち抜くことも全然余裕だね。」
何を今更。
そういって優理は笑う。
「OK。インターバルを狙ってぶっ放せ!」
「了解、兄さん!」
拳と拳を突き合わせ、二人して笑いあう。
そして、優理が瞬きをした瞬間、電気が奔るような音を立てて一刀の姿は消えていた。
「さてと・・・。」
背中のケースから、自分の愛銃の中でもっとも大きな銃を取り出す。
”ウィンチェスターM70 30-60スプリングフィールド”
アメリカ製のライフルであり、長距離射撃の精度に優れた逸品で、
カルロス・ハスコックというアメリカ軍のスナイパーが使用したものと、同じモデルだ。
それを気弾を放てるように改造した物が、優理の持つM70だ。
ちなみに、レミントンM700を使わないのは優理のこだわりであり、優理曰く
『M700はM70のパクリだ!』
だそうです。
加えて、自分の気を凝縮させた気弾を弾丸にすること、さらに、気を流した眼が超長距離の狙撃を可能にした。
「いっちょやりますか!」
優理のライフルが、淡い燐光を放ち始める。
「システム・ロングスナイプ。フルチャージ・・・・・ファイア!」
放たれた光の弾丸が、敵陣営へと奔っていった。
バチチッ!
「ふうっ!」
戦場に降り立った一刀の目に映った物。
華琳に迫る高速の砲弾。
「まったく、周りへの注意が散漫だぞ華琳!」
華琳は桂花の声でようやく砲弾に気づくが、間に合わない。
が、桂花の声が一刀の耳に届く前に、そこから彼の姿が消える。
ギャキン!!
くぅっ・・・、腕が痺れる!
華琳は・・・
「怪我はないかね?」
「貴方・・・・・。」
驚いてるなぁ。
まあ、突然目の前に現れたらそりゃあ驚くだろけど。
「一刀、礼を言うわ。」
むぅ・・・、会って早々それか。
「はぁ・・・。曹操殿?」
「何かしら?」
「だからだね、私は一刀などでは無いと・・・」
「一刀、その声似合わないわよ?あとその仮面もね。」
まるで聞いてないし。
「でも、その目は綺麗ね・・・。何をしたの?」
「曹操殿ォ・・・。」
なあ、俺どうしたらいい?
「そ、そうだ曹操殿!今は戦に集中したほうが良いのでは?」
「・・・・・・・・。」
「先ほどの様な事になる可能性も・・・・・」
ドゴォォォォォン!
音のした方向に二人が目を向けると、カノン砲が一門、木っ端微塵になっていた。
出番短かったなあれ・・・。ていうか優理、タイミング悪いよ(泣)
「その可能性も無さそうね。」
「しかし曹操殿!」
ツーン。
おいおい、ツーンて・・・・・・。
はぁ、しょうがないか。
ため息とともに少し仮面をずらす。
「なぁ・・・、華琳・・・。」
「・・・その声、やっぱり一刀だったのね。」
・・・は?今、なんと?
ドゴォォォォォン!
ああもう!ドコンドコンうっせえな!!
「フフフ、勘で言ったら当たるものね。」
「ぐむぅ・・・。」
やっぱり、この子には勝てないな・・・・・(ToT)
「この戦いが終わったら、じっくり話しを聞かせてもらいます。いいわね?」
「いや、遠慮しておk「いいわね?」・・・はい。」
「華琳様!」
「どうしたの、桂花。」
「先陣の夏候惇隊が敵の第一陣と戦闘を開始!」
「いつの間に・・・。」
「まったく、あの子は・・・。」
ため息一つ、華琳がこちらを見上げてきた。
「・・・刃、悪いのだけれど。」
彼女の言葉に、仮面を元に戻す。
「彼女の援護にむかえば良いのかね?」
「ええ、頼めるかしら?」
「承知した。」
言葉とともに一刀の姿が消える。
「華琳様、アイツは本当に・・・」
「その件は、今は考えない事ね。」
「・・・・・は。」
先ほどまでとはうって変わり、口元に笑みを湛えた魏の覇王の背中には、溢れ出る自信と威厳が戻ってきていた。
フフフ♪戻ってきたらおしおきね!
「でやぁぁぁぁぁぁぁっ!」
春蘭はある違和感を拭えずにいた。
「なんなのだ、こいつらは?」
敵が突っ込んでくる。
人数は3人。
「遅いっ!」
剣を横に薙ぎ払う。
「くっ!こいつ等もか・・・。」
もう何人斬っただろうか?
すでに二十は過ぎているだろう。
・・・だが
斬っている感覚が無い。
何人斬ろうとも、剣に掛かる重みも、肉を切る感触も、まったく感じないのだ。
斬れども斬れども、手に残るのは布を切る感触のみ。
ふと、自らの剣に目をやる。
「血が・・・、付いていない?」
・・・まさか!
振り返った先には、ゆらりと”白装束”が浮き上がっている。
そして、装束の中に一瞬にして肉体がそこに現れた。
「なっ!?」
一度に十数の敵が春蘭に襲いかかる。
「その程度でこの私をっ・・・っつ!」
迫り来る集団を迎え撃とうとした時、
足元に違和感を感じ、視線を落とす。
先ほど斬った者の手が、春蘭の足首を掴んでいた。
「しまったっ!」
くっ・・・、間に合わんか・・・。
「まったく・・・。油断は禁物だぞ?夏候惇殿。」
------北郷流・壱式 紫電
それは光の壁。
面で迫る光速の連突き。
電撃を纏った刺突の一閃一閃が連なり、空間ごと穿つ、削り取る死の壁。
「何者だ、貴様は・・・。」
「む?以前名乗ったと思ったが・・・。」
いや、春蘭にははっきり言っていなかったかな?
「ともかく、今そんなことを言っている場合ではないのではないかね?」
「あ、ああ、そうだな。・・・・・貴様は、味方だと考えて良いのか?」
「うむ、構わない。」
パキンッ
「「ん?」」
あ、折れた・・・。
優理から貰ったナイフが折れた。
「むむ、紫電の負荷に耐えられんかったか。」
「それほど強力なのか?その、北郷流とやらは。」
好奇心で聞いているのだろう、春蘭目が心なしかキラキラしている。
「そうだな・・・、気に流れが強すぎたのだろう。普段使用している得物は特別製だったからな。」
「それは、あれのことか?」
春蘭の指し示す先には・・・
「千鳥!?いや・・・そうだが・・・。」
拠点にしている小屋に置いてきたはずの刀がそこにあった。
「なあ!使って見せてくれ!!」
「し、しかし・・・。」
「使ってくれ!」
「むぅ・・・。」
また、アレが始まる可能性も・・・。
「なあっ!」
・・・・・いつまでも放置していても、問題を先送りにするだけか。
「おい!」
「・・・わかった。」
その手に、千鳥を握る。
ヨオ、カズト!キョウハドレダケコロスンダ?
「っつ!!」
声が響く。
手に握った千鳥から、そして自らの内から・・・。
サア!タノシイサツリクノハジマリダ!!
--------さて、北郷一刀君。面白いものを見せてもらいましょうか。
--------・・・・・チッ。趣味の悪い奴め・・・・・。
--------フフフ。さあ、楽しいショーの始まりです!!
To be continue...
あとがき?
久しぶりにあとがきなるものを書いてみました。
今回は、本編の説明的な感じでいきます。
えー、まず武器についてなんですが、優理ははっきり言って武器(おもに銃器系)マニアです!
ちょこちょこ無駄知識を出そうと思います(笑)
次に”気”について。
まあ、一刀は気に雷の性質が付加されてます。
これは物語の序盤で書いたかと思います。はい。
そして優理なんですが、彼の気には特に性質があるというわけではありません。
ただ、一刀よりも気の細かいコントロールに優れています。
そして二人の目がです、目を強化するために気を流すわけですが、
一刀は金目になり、動体視力や瞬間視力が強化されます。自分が異常に速く動き回るので。
優理は右目だけ銀目になります。ビジュアルのイメージとしては、猛禽類のような目になると思ってください。
強化されるのは視力などです。スナイパーですから。
まあ、こんな感じですかね。
そうそう、十章を書き終えたら、外伝、一刀の修行時代を書きます。
なぜか無駄に人気の高かったじいちゃん出ます!
が、名前が決まってません!
そこで、じいちゃんの名前を募集しようと思ってます!
どうぞ、ご協力お願いします。
では、またお会いしましょう。
説明 | ||
さて、今回は若干くどいです(汗) それでも良ければお読みください。 では、どうぞ。 |
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コメント | ||
更新乙です 優理君とは旨い酒が飲めそうだ自分も武器オタなんでwww 次回の一刀が気になりますね(機構の拳を突き上げる) | ||
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