真・恋姫†無双 董卓軍√ 第六話
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涼州から帰ってしばらくたった頃から大陸各地に黄色い布を身につけた賊が続出するという報告が頻繁に届くようになった

黄巾の乱…大規模な民の反乱の始まりである

月の治める河東も例に漏れず黄巾の兵が暴れ周り、華雄を筆頭に俺たちもその対処に負われる事となった

そんな時俺たちの許に驚きの知らせが入ることになる

皇帝である霊帝の崩御である

俺の知っている三国志では霊帝の死は黄巾の乱が収まった後のはずであり、それを考えると早過ぎる死である

黄巾党の出没などから見てやはり俺の知っている歴史をなぞっている反面、死の時期など細かいところではずれが生じていることが分かったのだった

ただ、どんな状況だろうと権力争いはやはり避けられないのか、俺たちの許に朝廷からの使者が訪れていた

 

 

 

「…というように霊帝様の死後、横専を極める何進大将軍でしたがその可進様が宮中で謎の変死を遂げられました。よってこのたび黄巾の賊どもに対抗するため董卓殿に将軍地位を与えるゆえ、都の守護のため兵を率いて出仕せよというのがわれら宦官の長、張譲様のお考えであり…」

 

長々と回りくどくしゃべる使者

その言葉を聞き流しながら俺は、小声で詠と今後の対策を練っていた

 

(とうとう来ちまったな。どうする詠?)

(本当のところを言えばこんな話断りたいところだけど新帝になった少帝つきの大宦官である張譲の命令だから断るわけにもいかないし、それに…)

(それに?)

(洛陽の民が苦しんでいるって聞いたら月は断れないと思うわ。まあそんな優しいところが月のいいところなんだけど)

 

いってふぅっとため息をつく詠

まあ俺も多分月は断らないと思った

いくら自分が危険な目に遭おうと賊からの脅威と権力争いに苦しむ民を放っておくことなんかできない子だからなあ…と思っているとやっと使者の長い話が終わったところだった

 

「それで董卓殿、お返事をお聞かせ願えるか?」

 

言外に断れないプレッシャーがかけられた言葉に少し不安そうにこちらを見る月

だが俺たちが頷くと、キッと威厳を込めて使者を見据え

 

「解りました。この董仲頴、そのお話お受けいたします。ただ勘違いしないでください。私たちは洛陽の民を守るために行くのであり宦官殿たちの手助けに行くわけではないですから」

 

逆に使者の方が気圧されるぐらいの力を込めた言葉で返した

 

「…あ、そ、そうでございますか。いや、張譲様もお喜びになるかと…ではここには代わりの太守が都より送られますので引き継ぎ次第都に御向かい下さい」

 

月に気圧された使者は、言うだけ言って使者は帰ってしまったのだった

 

「月、かっこよかったぞ」

 

と我らが主の方を見ると

 

「へぅぅ、怖かったよぅ」

 

詠に抱きついて慰められていた…まあ頑張ったし見なかったことにしよう

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しばらくそうされているとやっと落ち着いたのかおずおずと切り出す月

 

「すいません、勝手に決めてしまって」

 

月が申し訳なさそうに言う

 

「いいのよ月、月が苦しんでいる人たちを見過ごせないのはわかってるわよ」

 

「そうですぞ董卓様。もし何かあっても私がこの武に賭けてお守りいたします」

 

詠と華雄が口々に月をフォローする

やっぱりこの子は皆に愛されているな、と思う俺

 

「そうだぞ月。もっと自分に自信を持っていいと思うよ。皆そんな君の事が好きでここにいるんだから、もちろん俺もね」

 

そういって頭を撫でる…なんか月が爆発しそうなくらい真っ赤なんだがどうしたんだ?

 

「こ、このち○こ男!なに月の事くどいてんのよ!!」

 

「はぁ!?なんだその斬新過ぎるあだ名!?てか頭を撫でただけだろ?」

 

「いいから月から離れろー!!」

 

「へぅぅ、きゅう」

 

「ああ!董卓様が倒れられた!!衛生兵!衛生へーい!!」

 

そのまま大騒ぎとなり収拾が付かなくなってしまったがとにかく俺たちは洛陽にむかうことを決めたのだった…

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月の代わりに河東太守に就いたのは近くの河内群の太守でもある王匡という人だった

王匡さんは気のいい人で詠や月の民のことを第一に考えた政策を大いにきにいってくれ、この政策を引き継ぐことを快諾してくれた

この時代、統治者が変われば政策もガラッっと変わってしまうのが普通なため懸念の一つだった残していく民の今後は何とかなりそうで一安心だった

そうして引継ぎも済み、町民達に見送られながら三万の兵を率いて俺たちは洛陽へと向かった

 

 

 

 

「あぁ、やっぱり馬はなれないなあ」

 

洛陽への道のりの途中、俺は馬の上でぐったりとしていた

馬超さんたちの所に行った時も長距離だったけど洛陽は更に遠いからなぁ…

 

「大丈夫ですか?一刀さん」

 

「なによ、このぐらいでへばって。男の癖にだらしないわねぇ」

 

月からは気遣いを、詠からはきついお言葉を貰ってしまった

 

「慣れないんだからしかたないだろ」

 

ちなみに彼女たちは平然と馬に乗っている

もともと涼州は異民族との交流も盛んで小さな子供でも馬に軽々と乗るらしい…なんだ仕方ないとはいえこの敗北感は……

そんな話をしていると前の方から砂塵を上げ斥候をしていた徐栄たちが走ってきた

 

「なにかあったのかしら」

 

詠が顔をしかめる

徐栄たちは俺たちの前に着くと馬を下りて言った

 

「申し上げます!ここより前方十里ほどいった所に兵団を発見!旗印から見るに都の官軍と思われます!」

 

「その様相をみるにどうやら敗残兵のようです。接触を試みようとしたところどうやら内輪で揉めていた様なので本隊への連絡を優先いたしました。どういたしましょう」

 

徐栄に続く張済…敗残兵?しかも内輪もめだって?

 

「いったいなにかしら?…まあ官軍だって言うなら危険もないでしょうし接触してみようか?月」

 

「そうだね、なにかあって敵から逃げてるなら助けてあげなくちゃ」

 

「じゃあ僕と月と…華雄と一刀は自分の隊の一部をつれて先行して。残りの隊は張繍、貴方が率いて後から追いつきなさい」

 

「「「応」」」

 

そうして俺と華雄の部隊から騎馬隊一万を率いて正規兵たちのもとへ向かった

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「せやからウチの隊だけでもええから救援に向かわせろ言うとるやろ!!」

 

「そうです!!でないと恋殿が!!」

 

ウチとねねは目の前に居る分からず屋のジジイ指揮官にくってかかっていた

 

「ええい!!うるさい!!この軍の責任者はわしだ!!行くなら一人で行け。そうでないなら黙ってわしを守っておればいいんだ!!」

 

そういって開き直るジジイ…これやから偏屈な爺は困る、とウチ等は嘆息した

 

「ええ度胸やないかクソじじい!!せやったら一人で…ん?何やあれ」

 

何処かから馬の蹄の音がしてきて、そちらを見ると遠方から五千騎ほどの騎馬隊がこちらに向かってきていた

 

「ひぃ!まさか奴らか!…いやあの旗は奴等のものではない。…そうか!今度来ることになった田舎ものの旗か!」

 

ジジイが言ううちに騎馬隊は直ぐ近くまできて停止、その中から小さな女の子たちが前に出てきた

 

 

 

 

目的の官軍の部隊を見つけると指揮官らしき老人と紫髪の女性、小さな女の子が言い合いをしているのが見えた

 

「あれみたいだな…」

 

近くまでよると大将同士で話したほうがいいだろう、ということで月たちと一緒に前に出て話しかけた

 

「はじめまして、河東郡太守をやっていました、董仲頴と申します。今は洛陽に出仕するため兵を率いて行軍中なのですが、官軍の方々がこのようなところでどうしたんですか?」

 

「わしは洛陽で執金吾をやっている丁原…「ちょいアンタ!!」ええい!だまれ張遼!!」

 

「うっさい!アンタこそ黙っとき!!」

 

さっきまでこのおっさんと喧嘩をしていた女性…張遼さんが割り込んできた

 

「アンタ董卓やったか?頼みがある。敵ん中に取り残されとる仲間救うのに兵を貸してほしいんや!」

 

「…どういうことですか?」

 

そう月に聞かれた張遼さんは事の経緯を話し始めた…

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張遼さんが言うにはここからしばらく行ったところで黄巾賊と官軍の戦いがあったのだが六万ほどの黄巾兵に官軍は敗北

早々に撤退を始めた丁原は張遼を自分の護衛としてここまで退いてきたのだが、なんと丁原は撤退の際子飼いの将をたった一人で殿として置いてきたという

それに気づいた張遼がその将の救援に向かおうとしたところ、丁原は自分の護衛が居なくなるのを恐れて兵を貸さないと言い合いになりそこに俺たちが通りがかったということらしい

 

「せやから頼む!!ウチに兵を貸してくれ!!」

 

必死に頼む張遼さんを丁原は鼻で笑っていう

 

「ふん、六万が相手だぞ。もう生きているはずがあるまい。それにあれはこんな時のためにわしが拾ってやったんだ、わしのために死ぬのが道理だろう…それより董卓殿、これよりわしらを護衛して洛陽に…ぐふぅ!!」

 

――考えるより先に手が出ていた

 

「月!詠!俺は華雄と先に向かっているから後発部隊が追いついたら追って来てくれ!行くぞ華雄!!」

 

「ちょっとまちなさい一刀!華雄も!」

 

「悪いが待てん!六万もの敵に立ち向かう勇者を見捨てたとあっては武人の恥!!お前もくるならついてこい張遼!!」

 

「…すまん!恩に着るわ!!ねね!!」

 

「ええ、恋殿を救いに行きますぞ霞!!」

 

そうして月たちとその護衛だけを残し俺たちは黄巾賊との戦場へ向かった…

 

 

 

 

「…行っちゃったね詠ちゃん」

 

私は一刀さんたちの向かった方をみて友人に呟く

 

「ああもう!!華雄の猪はいつもだとしても一刀まで…!月!急いで本隊と合流するわよ!」

 

詠ちゃんもやっぱり一刀さんが心配なのかいつもより焦っているみたいだった

 

「いつつ…くそ、あの餓鬼!!董卓殿!部下にどんな…ひゃあ!!」

 

後ろで騒がしく喚いている人が居るが今はそれどころじゃないので護衛の人に黙らせてもらう

 

「私たちはこれから一刀さんたちと合流して黄巾賊に当たらないといけないので失礼します。お帰りになるのならお一人でどうぞ…いこ、詠ちゃん」

 

なにがあったのかとてもびっくりした顔をして頷く詠ちゃんといっしょに護衛の人たちを連れて本隊に戻る

 

 

その場に残されたのは丁原とその兵達だけだった…

説明
真恋姫董卓IF√本編第六話です
誤字脱字、おかしな表現等ありましたら教えてもらえると有難いです
後、コメントしていただいている方にはそのコメントをしていただいたコメント欄で返信していますがほかの方法でコメント返しをした方がいいという方がいらっしゃいましたらその旨を伝えていただけるとうれしいです
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コメント
ジョージ様 そういっていただけると有難いです(アボリア)
ここの月は非常にアグレッシブでいいですね〜♪ 新しい一面が見れた気がして面白いです。(峠崎丈二)
サイト様 原作からかけ離れていないか心配ですがそういっていただけると嬉しいです(アボリア)
ここの月は行動的で格好いいですね、とても新鮮で面白いです。(サイト)
うたまる様 そうですね、月は優しいだけでなく芯の強い子ですので(アボリア)
JIN様 奴ならばもう好きにヤッてもらって構いませんよw(アボリア)
月 可憐で加護欲が沸こうとも、武将で太守である事を実感させられる一幕でしたね(うたまる)
こんなヤツが恋の養父とは……いっそ殺してしまえ! あ、作者サマ、自分にこの外史に降り立つ許可を#(JIN)
SempeR 様 いざというときは考えるより感じろ、という華雄さんの教えを忠実に守った結果ですw(嘘)(アボリア)
手が先に出るとは…さすが華雄の稽古を受けた一刀ですねw(SempeR)
toki様 普段温厚な人ほど怒らせてはいけないですねw(アボリア)
最後の月様がステキすぎwww(tokitoki)
hokuhin様 報告どうもありがとうございます 史実では丁原はもともと呂布の君主で都に上った董卓に軍閥すべて奪われたというかわいそうな人なのでこんな役回りでの登場となりました 後、月様もお怒りだったということですw(アボリア)
Tilia様 月様を怒らせたらいけませんねw ここまできてようやく董卓軍フルメンバーを登場させられそうです 次回にご期待ください(アボリア)
kyowa様 ありがとうございます 一刀は恋さんのピンチに間に合うのか?ということで次回にご期待ください(アボリア)
最後の月が少し怖いwやっと霞と陳宮の登場かー 恋の登場が楽しみですw(Tilia)
追伸 1P目 可進→何進 になってますよ。(hokuhin)
ここで丁原が出でくるとは思いませんでした。そして月がすこし過激になってる・・・(hokuhin)
さて、流石の恋もお腹が空いているころかな?今回の一刀はかっこよかったです!(kyowa)
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