「絶望、希望、私、貴女」プロローグ
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いつ死んでもおかしくなかった。

この世に未練なんて無かった…

でも私は死ななかった。

死ぬのが怖かったのか、あなたに会う為だったのか。

私は後者だと思います。

あなたに出会ったおかげで、生きようと思う事が出来たから…

 

 

『絶望、希望、私、貴女』

 

「なんでこんな事になったんでしょう…」

望は職員室で少し涙目になりながらうなだれる。

「そもそも全部あの子のせいです」

望の頭にクロスのヘアピンを付けた少女が浮かび上がる…

そう…あれは今から数時間前…

 

 

春、卯月。

桜が舞い散る美しい季節。

それは望にとっていつも通りの朝だった。

桜の木の枝に綱を巻きつけていく。

望にとって、いつも通りの行動。

手慣れたものですぐに出来上がる。

望は別に死んでも構わなかった。

未練なんて物はなかった。

首を綱に引っかける。

(さようなら…来世ではいい事がありますように…)

来世に微かな希望を抱き乗っていた足場から降りる。

「いけません!」

何かが聞こえた気がした、しかしもう望には関係のないことだ…

足に自分以外の重みが掛った。

(えっ!?)

今までに無い苦しみが襲う。

「がっ!ちょっと!苦し…」

体重を支えきれずに綱が切れる。

「ケホッケホッ」

「死んだらどうする!」

望は無意識に言ってしまった。

「えっ?」

少女がその言葉に首をかしげる。

「あっ!」

望にも何故そう言ったかは全く分からない、死んでも良かったはずなのに…

(えっと、何か誤魔化さなきゃ)

「はぁ…また死ねなかった…」

「死ぬ気、無かったんですよね?」

さっき自分が言ってしまった言葉を思い出して返答が遅れる。

「死ぬ気満々でし…」

「ですよね!」

(えっ?)

大きな声に望の声はかき消される。

「こんな日に自分から死のうとする人なんているわけありません」

(なんですかこの子は…)

その言葉を引き金にして次々と前向きな発言ばかりが出てくる。

(一体なんなんですか、桜の木を桃色ガブリエルと名づけ、挙句の果てに五十円渡され桃色係長と呼ばれる

始末…)

(この子とは何故か関わってはいけない気がします!)

その妙な気迫に居た堪れなくなり走って逃げだす望。

 

 

しかし望の思いとは正反対に彼女のクラスの担任になってしまった。

そして彼女に自分の名前を横に書いたら絶望になってしまう事を暴きだされてしまい…

今に至るわけである。

「あの子は何なんでしょう…」

「一体どういう育ち方したらあんな風になるんですか」

紅茶色の目をした不思議な少女…

『身長を伸ばしていたんですね!』

彼女の言葉を思い出す。

現実逃避にも近い圧倒的なポジティブ思考…

「まるで私と正反対ですね…」

望は少女の身上調査書を見つめる。

「風浦 可符香…?」

(変わった名前ですね…)

ふと名前の横を見るとP.N(ペンネーム)と書かれている。

(身上調査書にペンネームでいいんですかね)

軽いツッコミをして別の欄を見る。

(保護者無し…?)

普通誰でもいるはずの保護者の欄が空白になっている。

(名前のペンネームなど謎が多いですね)

望は今まで他人に興味を持った事などなかった。

それが今日出会ったばかりの少女に初めて興味を抱いた。

 

それが望を大きく変える事になるとは本人は思いもしなかった…

 

説明
さよなら絶望先生の長編小説です。
多少のオリジナル設定がありますので注意してください。
可符香の昔住んでいた場所など…
今回はプロローグです。
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さよなら絶望先生 糸色望 風浦可符香 望カフ 

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