とある科学の人形闘戯?プリキュライド?3 |
『おーっと、ここで強烈な一撃がきまったぁぁ』
会場に勝敗を決定付ける実況が響き渡った。
会場中央、周りの観客席の視線がすべて集まるフィールド上に、プリキュアタイプのドールが熱きバトルを繰り広げた。1体はその場に力強く立ち、もう1体はうつ伏せに倒れていた。倒れているのは、アナザーカラーのライトインディゴの服《クロス》パーツを装備したキュアベリー仕様のドール。
勝利したプレイヤーは客席に両手を振って声援に応えていた。敗北したプレイヤーはがっくりと肩を落とし、表情は見えないが俯いていた。
『学園都市代表、嵐野能《あらしのの》高校3年の杉崎《すぎさき》 緋絽《ひろ》は、2回戦敗退となりました』
勝利したプレイヤーより先にポッドから出た杉崎は、自分のドールを回収すると選手入場用の出入り口から控え室へと戻っていった。
『この熱戦を制したのは、長野県代表、風越《かぜこし》女子高校3年!福路《ふくじ》 美穂子《みほこ》ぉぉ!!』
アナウンサーの勝ち名乗りに、さらに興奮気味の観客が一層の盛り上がりを見せた。
『まだ記憶に新しい去年のインターハイでは8位の実力の持ち主。この春季大会では、どこまで駆け上がるのか注目したい選手です』
右目を閉じた少女は、決して右目を開く事無くフィールドを後にした。
「はい、それじゃあ今日はここまで。春季大会も終わったからみんなもわかっているだろうけど、明日から校内トーナメントが開催されます。参加する人は各自ドールを忘れないこと!参加しない人は観戦するか、自習に当ててください。以上」
それを告げたこのクラスの担任、生田静那は教室を後にした。春季大会も終わり、新入生も少しはクラスや学校の雰囲気に慣れ始めてきた5月初旬。夏のインターハイへ向けて、プリキュライドの校内トーナメントが開催される。
春季大会には、颯達の通う嵐野能高校からは唯一3年の杉崎緋絽が出場していた。しかし運悪くシードの福路とあたり完敗していた。今度のインターハイは3年最後の高校生大会となる。
がやがやと始めての校内戦に興奮気味なのか、その話題やこの間の春季大会の事でクラスメイト達が話しだす。いつもはさっさと帰ってしまう子も、明日の興奮からなのか残っているこの方が多い。
「矢轟さん」
隣の席のクラスメイト、初春飾利がひょいっと椅子を颯の机に寄せた。いつものように、颯は初春の方へ体の向きを傾けた。
「いよいよ明日ですね」
軽く興奮と緊張が混ざったような表情の初春は、中学生大会で全国3位の実力者である。
「少し緊張してる?」
「はい……久々のトーナメント戦ですから。中学の最初の時もこんな感じでした」
「大丈夫だよ。いつも佐天さんとゲーセンで練習している時同じようにやれば」
「そうですね。矢轟さんにもいろいろ協力してもらいましたし」
この学園都市に来てから、颯はゲームセンターのプリキュライド初心者指導者としてアルバイトしている。バイトしているゲームセンターはチェーン店なため、中学の時に手伝いをしていた店と同じ系列の為、その店の店長推薦を受け、おなじ系列の学園都市支店で働いている。
その為練習熱心な初春達に、すぐに見つかってしまった。颯は子供達や初心者を指導の合間、初春達の練習相手をしていた。
「あの練習どおりにやればきっと大丈夫ですよ」
「はい。まずは学校代表ですね」
「だなぁ。やっぱり…うお」
「やっほぉ」
急な背後からの衝撃に、颯は体を硬直させると同時に少し大きく叫んでしまった。大概こうしてくるのは一人しか居ないため、あえて振り向くことはしない。
「さ、佐天さん」
同じように驚いたのか、少し顔を赤くした初春も驚いた表情で顔が固まっていた。その首謀者であり確信犯な少女、佐天だけは相変わらず表情豊かに笑っている。
「さ…初春ぅ、明日の為に今日も練習に行くよ」
「あ、はい。ちょ…待ってください」
「ほらほらぁ行くよぉ。御坂さん達も待ってるんだし」
「わかってますってぐぇ……。襟元は引っ張らないでくだひゃぁ」
「それじゃあ矢轟、また明日ね」
「おう。いってらっしゃい」
佐天は颯に軽く手を振ると、苦しんでいる初春を引っ張って教室から飛び出していった。
「さて、今日は帰るか」
特にすることもない颯は、初春の椅子を元に戻し窓の外へ視線を向けた。
颯の視線の先には体育館とも校舎とも違う建物が見える。学園都市内でも屈指のプリキュライドの設備のあるプレイングルームである。校内トーナメント戦や学校代表のプレイヤーに利用されている。学校代表以外はあまり使われない場所であるが、代表プレイヤーが練習時の見学は許可されているため、中に入る事は可能である。
いくつかの人影がその建物内に入っていくのが見える。ぼーっと見ていた颯は、明日の会場となるその建物を目の端に流し、再び視線を向ける事無く教室のドアを開けた。
下駄箱で靴に履き変えて校舎の玄関を出た辺りで、制服のズボンに入れていた携帯が振動を始めた。携帯を取り出した颯は、携帯のサブディスプレイに映っている名前を確認すると、通話ボタンを押し形態を耳に当てた。
「すっごい久しぶりですね。電話してくるなんて珍しい」
「ん〜ちょっとね。それにしても田吾じいに聞いたよ」
「ええっと、聞いちゃったんですねってかじいちゃん口が軽い…」
電話の相手には見えない子とはわかっていても、少しだけ不機嫌な表情を浮かべた。電話の相手はそれをわかったのか、電話越しに笑っていた。
「あたしも今年、インターハイ目指そうと思うの」
「はいぃ!?」
「別にそんなに驚くことないじゃない。颯だって似たようなものでしょ」
「まあ確かに」
「でしょ」
その電話越しの声は、少しだけ勝ち誇ったかのようだった。
「ブランクとかは大丈夫なん?」
「それは大丈夫よ。あんたみたいに指導したりしてたから」
「あははは」
「あんた、インターハイに絶対でてきなさいよ」
「うわ!!すごい自信」
「当然でしょ。あたしを誰だと思ってんの?」
電話の向こうで勝ち気な声の主は、その後2、3言交わし電話を切った。
「おんやぁ?誰と電話を?」
「誰だっていいでしょ?」
メガネを開かせた癖のあるショートヘアの緑髪の女子が、赤茶系の毛先に少しパーマがかかった女子の後ろから覗き込むように密着している。同じセーラー服の制服を着ているが、胸元のリボンの色と結び方等が微妙に異なっていた。
「ま、私は今年が最後だから……願掛けみたいなもんよ」
「そういう事にしといちゃる」
「それよりこれ」
そういって強化合宿と書かれたプリントの束を、メガネの少女へ手渡した。パラパラと目を通していると、悪そうなにやりといった擬音が聞こえそうな笑みを浮かべていた。
「いいでしょ?田吾じいと知り合いをゲストに呼んだの」
「これはこれは」
含み笑いを浮かべた二人は、木製の扉を開いた。
学園都市に来て初めての一人暮らしのため、家事等雑な颯は流しにためた食器を洗い終わってベッドの上に寝そべっている。もうすぐ日付が変わる時間、すでに寝る準備もできていた颯は部屋の電気を消し、外から差し込む淡い夜の光が部屋を照らす。電気を消した後はいつも決まって、カーテンを開けていた。
机の上にはドール専用端末と円形の専用ツールがおかれ、円形の専用ツール淵から真上に伸びる光のヴェールに包まれて、颯のライダータイプのドールがゆっくり上下に浮いている。
「げ……、ほんとにじいちゃんを合宿に連れてくんだ」
ベットに寝そべりながら携帯のメールを見ていた颯は、思わず声を漏らした。そのメールに添付されていた写真には、先ほどの電話と今のメールの送り主と一緒に、複数の同じ制服を着た少女らが映っていた。
『このメンバーで全国目指すよ。だから全国で会いましょう』
『もちろんそのつもりだ』と簡単な文面を入力し、送信のボタンを押した。
(それにしても、まさか全国中学生大会の優勝者、原村《はらむら》 和《のどか》が入学していたとは……。ほんと下手すると、学園都市《ここ》よりレベル高い県予選かもな)
そんな事を思いつつ携帯を閉じた颯は、少しだけ落ちかけていたまぶたに逆らわず、携帯と同じように両目を閉じた。
あとがき
こんばんは、ゆーたんです。
第3話は校内トーナメント戦前日の話です。
原村和ことのどっちの名前がでた時点で、元ネタと颯の電話の相手もなんとなく御分かりになったでしょうか?
学校生活書くのって難しいと感じる今日この頃。
なんかテニプリっていう庭球格闘漫画みたいな展開ですね(笑)
説明 | ||
学園都市―― 総人口230万人を誇る最先端科学技術が終結した実験都市。そんな学園都市から発信され、いまや日本全土が熱中し一大ブームとなっているゲームがある。 購入した素体となるドールを、自分好みにカスタマイズして他のプレイヤーのドールと対戦させる、新感覚の格闘体感ゲーム……それが『人形闘技《バトルプリキュライド》』である。 インターハイへ向け学校代表を決める校内トーナメント。 その前日の颯達の1日をお届けする第3話♪ |
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