真・逆行†無双 二章その4 |
どうにもならないことに不満を持つことは悪いことだろうか?
どうにもならないことに希望を持つことは無駄なのだろうか?
過ぎてしまったことを嘆くことは手遅れなのだろうか?
失ってしまったモノをいつまでも惜しむことは諦めが悪いということなのだろうか?
空を見上げる度に思い出すことは、懐かしむことは感傷に浸っているだけなのだろうか?
同じ点を中心に廻り続けることしか出来ない風車のように、
私も先に進むことが出来ずに廻り続けることは情けないことだろうか?
そうだというのなら私はもう何も望まない。
この命が間違いだらけの道を歩いていたとしても、
私はそれで構わない。
「はぁ……どうして一刀さんにあんな態度とっちゃったんだろう」
月が輝く夜。
琥栗は自身が止まっている宿の窓から空を見上げながら呟く。
思い出すのは昨日の出来事、一刀とデートの際とってしまった自分の行動。
あんなことをするつもりは無かったのだ。
「今日は店も開かなかったし……来てくれたのかな、一刀さん」
そう、今日琥栗は店を開かず宿に引きこもっていたのだ。
気まずくて一刀が合いに来るかもと思うと外へ出ることが出来なかった。
「はぁ……こんなんじゃダメだなぁ」
何度目かの溜息をつき、彼女は窓から身を離す。
「ちょっと外でも歩いてこようっと」
そう言って琥栗は宿の外へと出るのであった。
「はぁ……」
「どうしたんだ溜息なんかついて?」
「白蓮……いや、何でもないよ」
「……何でもないって顔してるから声かけたんだが?」
「うっ」
そんなに分かりやすい顔してるかな、俺?
「で、何があったんだ?私でよければ聞くぞ」
「いや……ちょっと知り合いを怒らせちゃったみたいなんだ」
「ん?荀イクならいつも怒らせてるじゃないか」
「桂花のことじゃないって」
思い出すのはこの間の丘での出来事。
急に帰ってしまった琥栗。今日会いに行ってみたけど店を開いてはいなかった。
俺……なんか気に障ること言ったかなぁ?
「俺自身は別に変なこと言ったつもりはないんだけどさ、
怒らせたみたいなんだよね」
「あ〜お前、結構そういうとこ疎いからな。
きっと怒らせるようなこと言っちゃたんじゃないか?」
「ん〜だと思う……。
で、謝ろうと思って会いに行ったんだけど結局会えなかったんだ」
「だったら止めておいた方がいい。
理由も分からないまま謝られてももっと怒らせるだけだと思うぞ」
「そ、それもそうか……」
だったら自分で考えなくちゃな。
何が琥栗を怒らせてしまったのかを。
でもなぁ……何かあったかなぁ?
「それよりもだ北郷、今は何よりも考えないといけないことがあるだろ?」
「うん、そうだよな。白蓮の方はどうなんだ?」
「私の騎馬隊は準備出来てるさ。
私の家族が暮らす此処に賊の一人も入れさせやしないさ」
今夜、賊たちが夜襲を仕掛けてくるという情報を得た俺達は迎え撃つための準備をしていた。
白蓮たちには外からやってくるだろう盗賊たちの相手をしてもらうことになっている。
騎馬は強力なアドバンテージになる。
それも白蓮たちのような乗馬にたけた者なら尚更だ。
「一刀たちのほうも大丈夫なのか?」
「うん、こっちも絶対街の人に被害が及ばないようにするよ」
俺達は街に潜む賊の討伐の任を受けている。
どこに何人いるかは既に桂花が調べてある。
今は気づかれないように賊たちを見張っている状況だ。
星もいるし、星の訓練に耐えて来た仲間がいる。
きっと大丈夫だ。
「大変だったんだぞ?賊に気づかれないように今夜は外に出るなってみんなに伝えるのは……」
「はは、ご苦労さま」
「ま、家族を守るためだしいいんだけどさ」
「……絶対、守ろうな。白蓮」
「ああ!」
お互いの拳を軽く合わせ、俺達はその場を離れた。
桂花が提案したのは来るのが分かっているのだから、その時に賊を一網打尽にしてしまおうというものだ。
街の中にいるものが外に待機しているだろう賊を引き入れ、この街を襲撃する。
その策を逆手にとり、奴らに大打撃を与える。
そして、壊滅させるんだ!
白蓮は兵を率いて外からくる連中を、俺達は星を中心に少人数で街に潜伏する賊を一掃する!
これで、長かった賊たちとの戦いも終わる。
命が消えるのが終わる。
だっていうのに、俺の心の中には不安が経ち篭っていた。
「桂花、星!」
「主、今宵はいい月夜ですぞ」
「遅いわよ、変態」
「ごめん、白蓮とちょっと話してた」
街の中にいる賊たちを担当する者たちが集合場所に集まっていた。
人数は二百人少々、調べでは街に入り込んでいる賊は百五十程らしい。
この場所に集まっている者以外にも、街にいる賊を見張っている人たちがいるし、数ではこっちが勝っている。
質のほうも星に今まで鍛えられた兵たちだ、遅れはとらないだろう。
「説明のほうは終わっちゃった?」
「アンタがグズグズしてる間にね」
「準備は万端です。賊共は私が見事打ち払ってみせますよ」
桂花に謝り、星の言葉に頷いてから集まった人たちの前に立つ。
「みんな、これから盗賊たちの襲撃がある。
夜襲なんていう卑劣な行為だ。民をも巻き込もうとするだ許せない行為だ!
でも心配することも恐れることも何もないんだ。
俺達はそのことを知ることが出来た。だから盗賊たちを返り討ちにも出来るし、みんなの家族を守ることも出来る!
俺達の手は何のためにある?大切な人を守るためだろう!?
その手で今日こそ長く続いた賊たちとの戦いに終止符をつけよう!
大切な人たちを守るために一緒に戦おう!!
そして何より……この戦に勝って、大切な人たちと……俺たちとこれからを生きよう!!!」
「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」」」」」」
戦いがもうすぐ始まる……!
「〜〜〜♪〜〜〜♪」
鼻歌を歌いながら夜の街を琥栗が歩く。
なぜ鼻歌かというと、夜の雰囲気の怖さを紛らわすためだったりする。
実をいうと琥栗は夜が苦手であった。
闇に自分という存在が全て飲み込まれてしまいそうで、琥栗はいつも家族に囲まれ眠っていた。
だからこの数日、夜は震えながら過ごしていたりしていた。
「う〜やっぱり結構不気味だよ〜……。
ゆ、幽霊なんて出ないよね?出るわけないもんね!?」
だったら出歩くな、とも思うが出てしまったのは仕方がない。
琥栗は怯えながらトボトボと歩くのであった。
「………綺麗な月」
見上げる夜空。
月だけが夜を照らしている。
琥栗を、街を、大地を、この星を。
「月だけは好きだなぁ……。
だって夜を照らすたった一つの灯り。
小さな灯火。弱弱しい光。
でも、私はそれがいい。
太陽みたいに強い光じゃ私なんかは耐えられないもん。
……風車は太陽の下が似合うけどね」
歩く。歩く。歩く。
一歩一歩、かみ締めるように。
この大地に己を刻むように……。
「一刀さんにも風車が似合うなぁ……フフッ」
だからこそ気づけない。
「…………」
己に近づく、その影に……。
「おい、もうそろそろだぞ」
「分かってるって」
砦付近の薄闇に蠢く影があった。
もちろん忍び込んでいた賊の一味である。
彼等は門番の様子を伺いながら、
門番を襲撃し、砦の門を開ける役割である。
「見てみろよ、門番の奴寝てやがるぜ」
「くく、これから何が起こるとも知らずに呑気な奴だ」
彼等の言う通り、門番は深夜だからかうとうとと眠り、船をこいでいた。
それを見てニヤリと笑い頷き合うと、彼等は門番へと近づく。
殺して、門を開放するために……
「本当に呑気なのは誰であろうな?」
「「!?」」
背後からの声に驚き振り向くが、賊が最後に見たのは自らに迫ってくる、
槍の刃であった。
「フッ、雑兵など相手にもならん」
そう言って槍についた血を掃うと星は門番へと近づく。
門番は星に気づき礼をとる。
そう、門番は寝た振りをしていただけなのだ。
「フフ、中々見事な演技だったぞ」
「きょ、恐縮です」
「では、門を開けるとするか」
星たちの狙いは外にいる盗賊の連中である。
この奇襲のためにすぐそこに敵の軍が来ているのは確認済みだ。
門が開けば敵は策が成功したと喜んでこっちに来るだろう。
そこを星が率いる部隊で叩く!
「さぁ我が主、北郷一刀の名にかけて、
この趙子龍の槍を野蛮な賊にたっぷりと味合わせてやろうぞ!!」
門が開くと同時に、星と兵たちは外にいる賊へと駆け出した!
「おっ、門が開きましたぜアニキ!!」
「ふん、いよいよか!野郎共行く――」
瞬間、時が止まった。
誰しも口をあんぐりと開け、たった今起こった出来事に目を見開いていた。
「あれ?何か頭にささt……」
全てを言い切る前にアニキと呼ばれた賊は地面へと倒れた。
額に矢を生やしながら。
「う、うわあああああああああ!!
アニキがやられたーーーーーーーーーーー!!」
「あ、ありゃあ何だ!?ぐ、軍だ!!
軍が出てきやがったぁぁぁぁ!!!」
「中の奴ら失敗しやがったんだあああああああああああああ!!!」
自らを率いていた将の死亡、それに告ぐ敵の軍がせまってくという現実が
彼等をいちも簡単に混乱へと陥らせた。
陣形も取れぬまま接敵を許し斬り込まれる!
「この混乱……どうやら当たりを射抜いたようだな。
少々興ざめだが、覚悟を決めてもらおうか!!」
そこに真っ先にたどり着いた星がすぐさま現状を把握し、敵へと襲い掛かる。
月夜が照らす闇の中、それは綺麗な蝶のように戦場を血で染めた。
そしてもちろん街の中でも……
「うわぁああああ!?」
「な、何でばれたグギャ!!」
次々に隠れていた賊を見つけ出し、連中を駆除していた。
まさかばれているなんて考えもしなかった賊たちは外と同じく混乱し、
抵抗も殆ど出来ないまま命を散らせていった。
「二番隊はそこの通りへ向かって!
三番隊は俺と一緒にこっちに!!」
そんな中、一刀も兵への指示をしながら街の中を走り回っていた。
もちろん桂花には反対されたが、ここは一刀が押し切った。
今回、上手く行き過ぎているが、
もしかしたら民にまで被害が及びかねない策なのだ。
それなのにジッと後ろでいることなんて一刀にはどうしても我慢できなかった。
だから二人は出会ってしまったのだ。
「ぐあっ!」
「!」
その声に反応し一刀は声の方向へと視線を移す。
そこには背中から刃を生やした自軍の兵の姿があった。
敵の姿は兵と重なっていてよく見えない。
「くそっ!!」
すぐさま一天を構え走る!
その間に一刀に気づいたのか敵は兵から刃を抜く、
すると当然ながら息絶えた兵は地面へと倒れ兵を殺した敵の姿を一刀の前へとさらすことになる。
そう、槍を構えた琥栗の姿を。
「え?」
自然、一刀は足を止めていた。
目の前の光景が信じられないでいるのだ。
「あ〜あ、見つかっちゃったか」
明るい声。
それは一刀の記憶にある琥栗の声と変わらない。
だけど底冷えするような冷たい目をする琥栗を、一刀は見たことが無かった。
「それにしても一刀さんはやっぱり凄いですね。
まさか見破られているなんて思いませんでしたよ。
もしかして私、見張られてました?」
クスクスと楽しそうに笑う。嘲笑う。
「無粋な質問ですね、だって宿を出てもずっと付けられてましたから」
「え?」
琥栗は確かに警戒されていた。
一刀の知らないところで、桂花に。
自分の主である一刀が最近会っている人物、しかも女性、桂花が気にならないわけが無い。
しかもその人物が賊の可能性がある、黄色い風車をつけていたのだから。
「ああほんとイラつくなぁ。
自分の価値をわかっていない人間は」
顔を伏せ、イラつく声で呟く。
それから顔を上げるが、その顔には張りぼての笑顔が浮かべられていた。
「近いうちにまたきます。
ウチも余裕はないんで次が最後、全力で一刀さんに挑みます。
だから……」
「待ってくれ、くぐ――」
「その首、洗って待っていろ!北郷一刀!!」
そういい残し、琥栗は闇へと消えた。
呆然と立ちすくむ、一刀を残して……。
あとがき。
いや本当に遅くなってすいません。
突然スランプというかこのSSこれでいいのか?とか色々思い直していたりで
こんな時期まで更新止まってしまいました。
これからは不定期になりますが、ちゃんと更新していきます!
では本当に遅れましたがコメント返していきます。
PETIT さん>予想通りの展開になりましたw
ZERO さん>そのフラグは……。
抹茶さん>え?マジですか?気をつけます。教えてくれてありがとうっす。
シオンさん>その幻想をry
村主さん>フラグを折るかは一刀くん次第ですね。ぶっちゃけどっちにしようか迷って…ゲフンゲフン。
よーぜふさん>今回ちょっとだけ琥栗の素が出ました。本当は敬語なんて苦手な子なんですw
PONさん>今の一刀くんはドラゴンボールでいう子供悟飯てきな感じです。いつか覚醒…するのか?
だめぱんだ♪さん>こうなっちゃいましたw
ふじさん>六花は犠牲になったのだ作者のめんどくさがりによって……嘘です近いうちに出しますw
SempeR さん>こんなんなりましたw
nameneko さん>くぐりぃいいいいいいいいいいいい!!
たくさんのコメントいつもありがとうございます。
ではまた次回に。
たくさんの開覧と支持、さらにはコメントをもらえてとても嬉しく力になってます。
また次も見てもらえると嬉しいです。
説明 | ||
随分と長い間お待たせしました。 待っててくれた人がいたならすいません。 やっとこさ更新です。 楽しんでくれたなら嬉です。 |
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コメント | ||
ずっと待ってましたとも!おかえりなさいです!いや〜この展開は予想してなかったなぁ…。琥栗が悲しい結末にならなければいいなぁ…。(SempeR) ・・・おうふ、なんという展開・・・続き楽しみにしてますぞ?(よーぜふ) おかえりなさいませ!一筋縄じゃ行かないような相手にどう立ち向かうか楽しみです。読み直してきますw(kashin) お久しぶりの更新待ってました いやはや嫌なフラグ立っちゃいましたか・・・本人の台詞から次回(?)で決着をつけるつもりなのでしょうが、果たしてどうなるやらw(村主7) |
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