こねこのはなし
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「ねえ、知っている?森の奥で眠っている奴のこと。」

「喰っちまうってヤツのコトだろ?」

「なにを?」

「大切なものだって、聞いたよ。」

 

夕暮れの道、3つの少年影。

それぞれ、くろ、ちゃとら、さばとら。

ゆれるしっぽが道に影をつくってるけど、気にしない。いつものことだから。

さばとらがくろとちゃとらのしっぽの影を交互に踏みながら首をかしげた。

 

「大切なって、なんだろね?」

「何だろね。宝物かな。」

「こないだ2股の木の根元に埋めたヤツとか。」

「それとも、3またの木の根もとにうめたやつかな。」

「買って貰ったばっかりの飛行機かもしれないね。」

「どれにしたって、喰われちゃったらすっごくいやだね。」

「うん、嫌だね。」

「イヤだ。」

 

ふらりふらふらゆれるしっぽの道に写った影。

さばとらの足がくろのしっぽの影にぽんと乗った。

その時。

 

―――――――・・・!!

 

とっても大きな声が聞こえた。

 

「ごめんね、ごめんね、いたかった?」

 

さばとらの足が、くろのしっぽの影から退いた。

くろのしっぽはふりふりふらりとゆれて、くるぅりと振り向いた。

 

「どうかしたの?今、僕は何にも言っていない。」

「おおきな声だから。しっぽのかげをふんだから、いたかったと思ったの。」

「いつも踏んでるクセに。今更今更、イタくなんてあるものか。」

 

笑ったちゃとらの牙が、夕陽に光った。

さばとらの耳がぴくりとふるえて、声の元をさがすように、きょろきょろした。

 

「それじゃあ、だれの声だろ?」

「だいぶ、大っきかったな。」

「うん、大分大きい声だったね。」

「森の方から聞こえなかったか?」

「ぼくも、森のほうからきこえた気がしたよ。」

「それなら、森の奥の奴の声だったかもしれない。」

 

くろの耳が、ぴんと立って。

ちゃとらのヒゲがぴんと立って。

さばとらのしっぽがぴんと立った。

 

「どうしようね、ぼくがしっぽをふんだから、森のおくのが起きちゃった?」

「でも、踏まれたのは僕のしっぽの影だよ。」

「なら、お前のしっぽの影は、ヤツのしっぽてコトか?」

「それならぼくは、森のおくののしっぽをふんだの?」

「でも、僕がしっぽを振るっても、奴のしっぽは振るわないよ。」

 

道の影の、くろのしっぽがふりふりふらぁりゆれた。

 

「ほらね。振るっても、振るわないよ。」

「なら、オレのしっぽがヤツのしっぽか?」

 

道の影の、ちゃとらのしっぽがふりふぅらりゆれた。

 

「森ののしっぽはゆれないね。」

「とゆか、ヤツのしっぽはドコにあるンだ?」

「森の奥の奴だから、森の中にあるんじゃないかな。」

「だったら、明日。森の奥のヤツに会いに行こう。」

「こわいよこわい、大切なのを喰われちゃうよ。」

「大丈夫。2股の木の根元も、3股の木の根元も森から遠いし、飛行機もおもちゃ箱の中。」

「なら、だいじょうぶだね。なら、いこう。」

「よーし、決まり。明日の朝のゴハンの後に、1本木の根元に集合な。」

 

夕暮れの道、4つの少年影。

よっつのゆれるしっぽと6つのうごく耳。

 

「寝坊は駄目だよ。」

「きょうははやくに寝るからだいじょうぶ。」

「明日は早くに起きるンだから大丈夫。」

 

こくん。だれかが、ひとり頷いた。

 

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いただきますとごちそうさまを初めに一緒に言っちゃって。

それから、ご飯を食べ終わってから手を合わせながら扉を開けた。

 

かけっこ1番。1番乗りはだぁれだ。

 

「僕が1番。」

「オレが1番。」

「ぼくが1番。」

 

くろのしっぽがぴんと立って、指でぴっと空を指した。

ちゃとらのしっぽがぴんと立って、指でぴっと空を指した。

さばとらのしっぽがぴんと立って、指でぴっと空を指した。

きらきらお日様が1本木の葉っぱを揺らした。

それから、だれかのしっぽもぴんとたって空を指差した。

 

「皆1番。それじゃあ、お昼を拾ってから森の奥に行こう。」

「ぼくは、おかあさんのサンドイッチを拾いたいな。」

「僕は、大父さんの所のミルクが欲しい。」

「ならオレは、乾いたカンヅメの中身でも拾おう。」

 

さばとらのしっぽが揺れて、足がたんたん地面を打った。

だれかのしっぽが揺れて、足がたたんと地面を打った。

 

「決まった決まった。お昼を拾ったら、またこの1本木に集合だね。」

「よし、急ごう。」

「うん、いそごう。」

 

いそごいそご。

だれかがのしっぽがぴんと空を指して、だれかがこっくり頷いた。

 

まずは、かあさんからサンドイッチをもらって。

それから、大父さんのキッチンからお昼の分だけミルクを貰って。

箱の中から、乾いた缶詰めの中身を爪でガリガリ取ってった。

 

「僕が1番。」

「オレが1番。」

「ぼくが1番。」

 

1本木の下、トンとタッチは3人が同時。

くろの耳ががぴんと立って、指でぴっと空を指した。

ちゃとらの耳がぴんと立って、指でぴっと空を指した。

さばとらの耳がぴんと立って、指でぴっと空を指した。

それから、だれかも一緒に指でぴっと空を指した。

 

「お昼も拾ったね。それじゃあ、行こうか。」

「森の奥のヤツに会いに行こう。」

「うん、いこう。みんなで行こう、4にんで行こう。」

 

さばとらの耳がぴくりとゆれて、足がたたたんと地面を打って。

だれかのしっぽがふわりとゆれて、足がたんたん地面を打った。

くろのしっぽがふわりとゆれて、手がととんと木の表を打って。

だれかのしっぽがふわりとゆれて、手がとんとん木の表を打った。

だれかを真似て、ちゃとらの足がたんたん地面を打って、手がとんとん木の表を打った。

だれかを真似たちゃとらを真似て、だれかの足がたたたんと地面を打って、手がととんと木の表を打った。

 

「もしもし、だれかさんはだれだろね。」

「シッポはあるけど、耳がない。」

「もしもし、誰かさんは誰だろうね。」

「あしはあるけど、耳がない。」

「もしもし、ダレかさんはダレだろな。」

「手はあるけれど、耳がない。」

「もしもし、だれかさんは影よ、影。」

 

3つの影の後ろで、誰かがこそっと呟いた。

 

「かげ?かげふみのかげ?」

「そう、その影なの。」

 

道の上で、4つめのしっぽの影がふわりとゆれて、こくりと頷いた。

 

「昨日の森の奥の木の色のひとが起きたから、私も一緒に起きたのよ。」

「森の奥のヤツが起きたのか?」

「ええ、そうよ。起きたの。」

「僕のしっぽの影が踏まれたから?」

「ぼくが、しっぽのかげをふんだから?」

「いいえいいえ、お天道さまが森の奥の木の色のひとのしっぽの影を踏んだからよ。」

 

道の上の3つの影が、一番後ろに影の方にくるりくるりと振り向いた。

 

「おてんとさまが、しっぽをふむの?」

「お空の道と、つっと辿ってね。」

「踏まれたしっぽは痛かったのかい?」

「起きてしまうくらいだもの、きっとね。」

「だったらお見舞いに行った方がイイだろな?」

「それならわたしも一緒に行くわ。」

 

耳のない影を見上げていくと。

さばとらの足と同じ色。

 

「ぼくのあしとおなじ色。ぼくはブリンドルド。」

 

くろのしっぽと同じ色。

 

「僕のしっぽと同じ色だね。僕はブラキシュ。」

 

ちゃとらの髪と同じ色。

 

「オレの髪と同じ色だな。オレはストラペド。」

 

耳のない、女の子。

 

「わたしは影よ。みんなの影の中のひとつ。」

 

影がひとつ、にこっと笑った。

道の上で、4つのしっぽがふわりとゆれた。

 

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お天道様は真上に来たよ。道の上の4つの影は、しっぽだけがぴーんと出てる。

さばとらの足が2組、ちゃとらとくろのしっぽを踏みながら森へ向かって道上。

 

「ねえねえ、かげさん。森のは大切なを喰うってきいたよ。」

「そうそう、影さん。森の奥の奴は僕たちの何か大切なものを喰うって聞いたよ。」

「お見舞いに行っても森の奥のヤツに喰われたりはしないのか?」

 

さばとらが、おとなりに聞いて。

くろとちゃとらがくるりと振り返って、さばとらと同じ色の足に聞いた。

くろとおなじしっぽのがにこっと笑ってこう言った。

 

「森の奥の木の色のひとは、大丈夫。いらないものしか喰わないわ。」

 

さばとらの右足がたたんと地面を打って、たたたんと左足が地面を打った。

 

「いらないものしか喰わないのなら大丈夫だな。それなら皆でお見舞いに行く。」

「森のとちゅうでお花をつんでおみまいにしよう」

「大父さんのミルクをお昼に舐めるのを止めて、お見舞いにしようか。」

 

耳のない影が、こっくりうなずいて、しっぽがふわりとゆれた。

 

「でもでもでもね、ブリンドルド、ブラキシュ、ストラペド。気をつけて。」

 

呼ばれた順に、首をかしげて。

しっぽをふわっとゆらして。

耳をぴくっとうごかして。

みんなで一緒に口を開いて。

 

「何を?」

「なにに?」

「気をつける?」

 

もいちど、さばとらと一緒の髪が、こくっと頷いて。

 

「森にある。たくさんのに気をつけて。私が起きたから、きっとみんなも起きたのよ。」

 

地面をたんと打ったのはさばとらの足。

 

「森にはたくさん影がいるの?」

「みんなみみのないかげがたくさんいるの?」

「しっぽがくろくて髪がちゃとらで足がさばとらの影がたくさんいるのか?」

 

ふるり首を3回振った。

 

「影は私、たったひとり。森にいるのはたくさんの。」

「森にたくさんなにがいるの?」

「呼ぶとか、声とか、音とか。」

「他にはたくさん何がいるの?」

「森とか、花とか、木とか。」

「他にもマダマダたくさんいるのか?」

「言うとか、思うとか、大切な。」

 

こくりと頷いて、さばとらの足でくるりと廻って見せて。

くろいしっぽとちゃとらの髪がふわっとゆれ。

森への小道にたたたっと足音立てて。

 

「もっともっとたくさんいるのよ。森の奥の木の色のひととか。」

 

にっこり笑った目は、夕陽とおんなじ色。

 

「じゃぁ、たくさんのに気を付けて、お見舞いに行こう。」

「マズは、花の小道に行くんだろ?」

「たくさんお花をつんで、それでおみまいにしよう。」

「それならあっち。あっちにお花の小道があるわ。」

 

たたたんと、さばとらの足が地面を打って。

さあ出発。

森に向かって、4つの少年の影が道の上。

 

説明
こねこたちのほのぼのなおはなし。
文章も投稿できるようになった!とのことなので、
早速…

まだまだ、途中ですけど。

***
インスパイ元、に、人物紹介をば。
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