変態司馬懿仲達物語 反董卓連合 3
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連合軍最初の軍議。ようやく檄文を飛ばして呼びかけた諸侯全てが一堂に会した最初の軍議は自己紹介からはじまった。

 

「平原郡からきた劉備です。こちらはわたしの軍師の諸葛亮」

「よろしくおねがいします」

 

劉備と名乗った女の子が一礼して後ろに控える諸葛亮も一礼した。

諸葛亮はチラリと司馬懿たちの方を見て複雑な表情を浮かべている。

それから馬騰の名代としてきた馬超、袁術という順に紹介を終えて司馬懿の番になった。

 

「司馬懿仲達です。こちらは軍師の徐庶と荀ェ。それと……北郷一刀」

 

妙な間の取り方の後に告げられた名前に一同が一刀へ視線を向けた。

流石にその場にいる全員からの視線を一点に受けて一刀は一歩退いてしまう。

 

「あ、あの、勝里さん? もしかしなくても何か噂を広めました?」

 

こそこそと話しかけてくる一刀に司馬懿は皆に聞こえる声で言う。

 

「ええ、一刀くんの武勇伝を広めておきました。なにぶん情報統制というのは難しく、どう広まったかは把握していませんけど」

「武勇伝? 俺、別に戦場に出て凄い事なんてしてませんけど」

 

首をかしげる一刀に司馬懿が死神の鎌を振り下ろす。

 

「したではありませんか。とある女の子を我が軍に引き込む為にあれやこれやと。現場を見ていないのでなんとも言えませんが」

「いや、違うでしょ!? アレは荀ェが自分で残るって決めて俺は何もしてないって……いや、違いますよ皆さん? そんな目で見ないでぇ」

 

ある者は哀れんだような目で。ある者は蔑んだような目で。ある者は呆れたような目で一刀を見つめていた。

 

「次に進んでいいかしら? もう手短に済ませるわね。曹操よ」

 

呆れてものも言えない曹操が自己紹介を済ませ、袁紹が名乗ろうとするが全員が知っているという事で名乗る事はなかった。

軍議は円滑に進んでいく。

何か遠まわしな物言いをする袁紹に喋らせたくない一同はさっさと議題を上げて解決して行った。

水関の調査に公孫?が向かい、行軍はくじでの順番となり、軍議は解散されようとしていた。

 

「まだ大事な事が残っていますわ!」

「大事な事? 何かしら?」

「この連合を誰がまとめるか、ですわ!」

 

心底どうでもいいと袁紹意外の諸侯は気持ちが一つになった瞬間であった。

 

「わたくしはするつもりはないのですけれど……これだけの諸侯を束ねるに相応しい家柄と名声を

考えると自ずと決まってしまうものですわ」

 

自分がやりたい、という気持ちが駄々漏れだが、他者からの推薦が欲しい袁紹は誰かが推薦してくれるのを待っている。

ここでさっさと終わらせたい曹操は袁紹を推薦しようと口を開こうとするが、

 

「ならばわたしがやりましょう。司馬懿仲達、立候補します」

 

司馬懿の一言で場の空気が凍った。

軍議中一言も喋らなかった司馬懿がここで口を出したことに驚く者とやってしまった、という顔で悔しそうにしている者がいる。

この立候補に袁紹は怒りを露わにした。

 

「し、司馬懿さんが総大将を? 認めませんわ! 総大将というのは気高く気品溢れるわたくしのような者がやるべきですわ!」

「お言葉ですが、わたしは気高く気品があると思っていますよ。家柄も名声もおそらく良いでしょうし、申し分ないと思いますが、どうでしょう?」

 

袁紹ではなく他の諸侯に問いかけた。

ここで反対すればそれ相応の正論を述べなければならず、誰も何も言えなかった。

 

「反対は袁紹さんただ一人のようですし、わたしが総大将で構いませんね?」

「ぐっ……いいですわ。そこまで言うなら譲って差し上げますわ」

 

納得などしていない顔でドカッと椅子に座る袁紹に苦笑しつつ、司馬懿は徐庶に目配りした。

徐庶は頷き、一歩前に出る。

 

「それでは袁紹殿は各諸侯の兵力と将の名が記されたものを渡していただきます。こちらで管理し、要望があればお見せする形にさせていただきます」

「はい? そのようなものありませんわよ?」

「白を切るつもりですか? それは裏切りにも等しい行為ですよ」

「違うわよ彗里。袁紹は本当に知らないのよ」

 

たじろぐ袁紹に荀ェが救いの手を差し伸べた。

 

「と言うと?」

「大体の予想は付くわ。文官たちの独断。余計なことを喋らないようにしたんでしょうね。総大将だって袁紹がする予定だったみたいだし」

「なるほど。ならば袁紹さんに聞いても無駄だと言う事ですか」

「そういうことよ。あの娼婦と根暗が考えそうな手だわ」

「ちょっと子犬ちゃん。それって酷くない? これでもウチ処女なんだけど」

 

声のした方を向くと太ももと肩を大胆に露出させた衣服を着た郭図と一冊の書簡を抱えたどよ〜ん

と重たい雰囲気を放つ男が立っていた。

 

「これがその書簡。連合に参加した全ての諸侯のが揃ってるはず」

「やっぱりあんただったのね。それじゃ北郷、それ受け取っておいて」

 

一刀は男から書簡を受け取った。

男は重い足取りで天幕を出て行き、郭図もそれに続けて天幕を出ようとする。

 

「お待ちなさい! 郭図さん、どうしてわたくしに知らせなかったのか説明なさい!」

 

ずいぶんとお冠の袁紹が叫んだ。

対する郭図は特に臆した様子も見せず、

 

「お知らせしようとしたら『細かい事はお任せしますわ』と言って聞いてくれなかったじゃないですか。ウチにそんなこと言わないでください」

「あ、あら? そうでしたっけ?」

「そうですよ。それじゃ戻りますから後よろしくお願いします」

 

飄々とした様子で言って去っていく郭図を見送り、徐庶はごほん、と咳払いをした。

 

「気を取り直して。勝里さま、水関攻略は誰に頼みましょう?」

「わたしとしては劉備軍にお願いしたいです。引き受けてくださいますか?」

「えぇ!? それは……」

 

蚊帳の外だった劉備は急な指名に軍師の諸葛亮を見た。

諸葛亮も予想外だったようで「はわ!」と困惑している。

 

「水関攻略の全権を預けようと思います。いかがでしょう?」

「ぜ、全権ですか。しかし、連合軍で一番兵力の少ない我が軍が水関を攻めるのは少々厳しいかと」

「言ったではありませんか。“全権を預ける”と。どの軍をどう使うかは孔明さんの采配次第ですよ」

「朱里ちゃん、どうしよう」

「……お受けしましょう。これは好機です。全権を頂けるのならいくらでも策は考えられます」

「わかったよ。司馬懿さん、水関攻略お受けします」

「ありがとうございます。孔明さん、わたしを遥かに凌駕する才、どれだけの差があるか見せてもらいますよ」

「はわわ!」

 

驚きが広がる天幕で司馬懿ただ一人が表情を崩さず微笑んでいた。

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袁紹軍に常識という言葉はない。

筆頭の袁紹に博打好きで勝負運のない文醜、羞恥心がないとしか思えない大胆すぎる服装の郭図。諸侯たちが知っているだけでこれだけの常識から懸け離れた人たちがいる。

そんな中で常識人として通るのは袁紹と文醜のお目付け役の顔良ともう一人郭図などの残った非常識な人間のお目付け役の数少ない男、張?(ちょうこう)がいる。

その張?は日々頭を抱える問題に直面しているのである。それは今も変わらない。

 

「駄目だった……やっぱり駄目だった……怒られるよコレ、絶対怒られる」

袁紹の非常識ぶりで陣営内に建てられた立派な馬小屋の隅で男が一人鬱になっている。名前は田豊(でんほう)と言い、袁紹軍随一の頭脳を持つにも拘らず自信がなく、悪い方向に考えを持って行ってしまう人物である。

袁紹に内緒で進めていた計画が破綻し、それが袁紹にも露見して崖っぷちに立たされている心境で馬小屋に篭ってしまっていた。

 

「オレは頑張った。頑張ったけど駄目だった。やっぱりオレって才能ないのかな? きっとそうだ、そうに違いない。だから失敗ばかりするんだ。はぁ〜」

 

聞いているだけで腹の立ちそうな田豊の発言だが、張?は何も言わずに馬小屋でのんびりしている馬を撫でながら愚痴を聞いてやっていた。

 

「オレなんかが袁紹さまの軍師なんて立場なのがおかしいんだ。オレみたいな平凡な文官風情が出しゃばるからいけなかったんだ。何で政策に口出ししちゃったんだろう? 目立つつもりなんて無かったのに目立っちゃったよ、はあぁぁぁ〜〜」

 

それから同じような内容の愚痴を零して喉が枯れ始めた頃を見計らって張?は飲み水の入った袋を渡した。

 

「落ち着いたか?」

「ああ、ありがとう。すまなかった、愚痴を聞かせてしまって」

「いつもの事だ。気にするな」

 

水を一気に飲み干した田豊はようやく馬小屋を出て大きく伸びをした。

 

「あ……」

 

体を大きく逸らしていた田豊が声を漏らした。目線の先には竹簡片手に兵士に命令をしている少女がいた。

少女は田豊たちに気がついて近づいてきた。

 

「また?」

「……また、篭ってた」

「根暗」

 

少女の鋭すぎる言葉の刃が田豊の胸を貫いた。先ほど落ち込んでいた時よりも黒い何かを纏って膝をついて崩れ落ちている。

傷つくなら前向きに考えれば済む事だろうに、と解決法を考えるが、それが通用する相手ではないことを知っているので何も言わず静観することに徹する。

 

「またやってる。よく飽きないわね」

「あ、才華(さいか)。ちょっと相談」

「なら根暗がいないあっちに行きましょ。ここに居たら気分悪くなりそう」

「わかった」

 

やってきた郭図――才華――と少女、高覧(こうらん)は張?たちから離れていき、がっくりと鬱状態になっている田豊の肩にそっと手を置いた。

 

「諦めるな。一緒に働くんだ。可能性はある」

「あるかもしれない……ないかもしれない。ない……このままなくなる気がする」

 

もはや張?は愚痴を聞いてやることしかできなかった。

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荀ケはため息を漏らして誰も居ない天幕を見渡した。

彼女がまるで捨てられた猫のように寂しそうな視線を送っているのは彼女の主、曹孟徳が先ほどまで座っていた椅子だった。荀ケは留守番を頼まれたのだ。

総大将が決まった事で急激に慌しくなった連合軍に曹操は今を逃せば機会がなくなる、と兼ねてより考えていた関羽の勧誘を行う為に劉備の陣営に向かった。

護衛には夏侯惇と夏侯淵を連れて行き、本陣で指示をする為(話をややこしくしない為)に留守番を頼まれ、天幕でジッと愛しの曹操を待っているのだが、

 

「やっぱり行けばよかったわ。秋蘭はともかく春蘭が付いて行ったのは納得いかない」

 

春蘭――夏侯惇は荀ケと同じくらい曹操のことを溺愛しており、それは秋蘭――夏侯淵も変わらないのだが、荀ケは夏侯惇を目の敵にしていた。

何かと言って曹操の為に、と張り合ってご褒美を横取りしようとする夏侯惇は荀ケの天敵であり、倒すべき敵(胸的な意味も込めて)であり、負けられない宿敵でもあるのだ。

その夏侯惇が付いて行き、自分が付いて行けなかった事は差を広げられると荀ケは焦りを見せるが、どうすることも出来ない。

帰ってきたときに自分がどれだけ曹操さまの為になる留守番をしていたか、を脳内で再生していく。

悔しがる夏侯惇の顔が脳裏に浮かび、荀ケはニヤリと不気味に微笑んだ。

すると、横から顔がにょっと割り込んできた。

 

「そんな怖い顔したらアカンよ。ほら、ボクみたいに笑って笑って」

「うひぃや! きゅ、急に顔を目の前に出すんじゃないわよ! ビックリするじゃない!」

「すんませんってここは謝るべき? それとも桂花的にはもっと顔を近づけて欲しい?」

「言いながら近づくんじゃないわよ! ちょっと本当に近い! 何する気!?」

「接吻♪」

 

むぅ〜と唇を尖らせて顔を近づける男から逃げ出し、荀ケは肩で息をしながら椅子を盾にして徹底抗戦の構えを取った。

男はそれ以上何かするわけでもなく、近くの椅子に座った。

 

「お留守番大変やねぇ。あ、別に嫌味違うよ。ホンマにそう思うとる」

「……あんたの場合そうなんでしょうね。で? 何か用? 華琳さまなら留守よ」

「知っとるよ。ボクは桂花に会いに来ただけや。お話しましょ?」

「嫌よ。必要最低限でしか男とは話さない様にしてるの。お生憎様」

「それって酷ない? ボクらの軍って他と比べると男居るやん。少しくらい歩み寄ってくれてもいいんと違う?」

「ええそうね。そう思うわ。だけど、あんたとだけは絶対に嫌。たとえ華琳さまの命令でも絶対に嫌」

「そんな拒否されたら余計に迫りたくなるやん。また、初めて奪ってあげよか?」

 

かぁ、と真っ赤になる顔は羞恥ではなく怒りのものだ。椅子を持ち上げて投げようとするが、それを男の手が妨げて持ち上げる事ができない。

 

「近づくな! 変態! 外道!」

「酷いなぁ。ボクにはちゃんと司馬朗(しばろう)って名前があるんやけど。あ、真名の隔里(かくり)で呼んでくれても構わへんよ」

 

男、司馬朗は荀ケが盾にしていた椅子に座って次の盾を構えている荀ケに言った。

一体何がしたいのか全く理解できない得体の知れない変態に荀ケは逃げ出す算段を頭に叩き込んでいた。

 

「そない怯えんといてぇな。ほら、離れててもいいからお話しよ?」

 

そんな戯言など無視で出口の位置を確認する。荀ケの位置から十歩ほど先のところに出口があり、その間には何もなく、走れば逃げ出せるかもしれなかった。

荀ケは意を決し、司馬朗がスッと余所見をした瞬間に走り出した。が、

 

「はい、残念でした」

 

出口の手前で後ろから延びてきた手に抱き付かれるような形で捕まった。

声が耳元からする事に荀ケは嫌な予感しかしなかった。

 

「それじゃ、捕まったから……ちゅ」

 

頬に伝わる生暖かくて柔らかい感触に何が起こったのか理解できていない様子の荀ケを置き去りにして司馬朗は天幕を後にした。

それからちょっとした後に荀ケの悲鳴が曹操陣営に響き割ったのは言うまでも無い。

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一刀は劉備陣営を訪れていた。

劉備軍からの要請で各諸侯の戦力が記された書簡を届けるためである。それを伝えに来た使者が持って帰ると申し出たのだが、それを丁重に断って一刀にその役目が回ってきたのだ。

これは合法的に劉備軍の今の実力を見る好機だからだ。それを証明するように一刀の護衛にはケ艾と姜維が付き添い、補佐に荀ェが付いて、更には親友たちに挨拶に行くという徐庶も一刀たちに同行していた。

司馬懿も最初はついて行こうとしたが、徐庶にそれだけは止めてほしいと頭を下げられたから本陣で待機してもらっている。

 

「なんか注目浴びちゃってる気がする。俺の気のせいだったりする?」

「これだけ視線を集めてるのに気のせいなんてあるわけないでしょ?」

「だよねぇ〜」

 

司馬懿軍の重役全てが揃って陣営に来たのだから注目を浴びるのは当然だった。

総大将が司馬懿に決まった事は既に兵士たちにも伝わっているので注目を浴びているのだ。

 

「北郷さん、背筋を伸ばして堂々としてください。使者として、弱腰では足元をすくわれますよ」

「あ、はい。すみません」

 

一番後ろを歩いている徐庶の注意に丁寧に一刀は謝った。

一刀は未だに徐庶を真名で呼べずにおり、それをずっと気にしていた。

別に呼ばせないのならそれでいい、と真名に関しての知識が勝手に呼んだら殺される、と恐怖の意味が大きいので無理に呼ばせて欲しいとは思わない。

荀ェにだって真名を呼ばせてもらえずにいるし、同僚だからといって必ずしも真名を交し合う必要はないと思っているので特に何も言わなかった。

 

「彗里、今の内に真名教えておきなさいよ。妙な勘ぐりされるわよ」

「そうですね。北郷さん、わたしの真名は彗里です。よろしくお願いします」

「…………はい?」

 

あまりに突然の事に一刀の思考は停止した。

真名ってそんなに軽いものだっけ? と殺されかけたことがある一刀からすれば信じられない行動である。

 

「あの、そんなに簡単に真名を教えていいの? 俺、殺されかけたんだけど」

「同じ主を支える者に真名を教えるのは当然だと思いますが……ちょっと時間がなくて出来ませんでしたが、ようやく教えることができました」

「俺を嫌っているとかそういう理由で教えないんじゃなかったの?」

「男嫌いという訳ではないので。藍花さんもこの際真名を教えたらどうですか?」

「はあ!? 嫌よ寒気がするわ。わたしはこいつが嫌いだから教えないの」

 

相変わらずの毒舌だなぁ、と慣れてしまった自分に驚く一刀だった。

 

「愚弄するのも大概にしろ!」

 

聞こえてきた怒鳴り声に一刀と徐庶、荀ェはビクッと体を震わせた。

ケ艾と姜維はすぐに戦闘態勢を整えて一刀たちを護るように前に出る。

声のした方向を見ると黒髪の綺麗な少女が獲物を手にしてくるくる髪の少女に刃を向けていた。

誰だろうと一刀は思っていると荀ェの説明が横から入ってきた。

 

「刃を向けているのが関羽。向けられているのが曹操で庇っているのが夏侯惇。静かに見えるけど弓に矢を添えているのが夏侯淵よ」

 

なるほどあれが曹操か、と少女である事にもう驚かなくなっている事に気づいて改めて慣れって怖いなと実感する一刀だった。

 

「春蘭、落ち着きなさい」

「愛紗ちゃん、落ち着いて!」

「しかし華琳さま!」

「しかし桃香さま!」

 

ほぼ同時に主に抗議しようとする二人。あはは、と笑っている関羽の主、劉備玄徳が曹操たちの後ろで成り行きを見守っていた一刀たちに気がついた。

 

「司馬懿さんからの使者の方ですよね? 書簡、届けにきてくれたんですか?」

「あ、はい。お待たせしました。こちらになります」

 

トットッ、と駆け寄ってきた劉備の勢いに押されて丁寧語になってしまった一刀。

走ると揺れる大きな胸にどうしても視線を行ってしまっていた。

 

「下手になるな! なめられるわよ!」

「痛っ! ちょっ、荀ェ蹴らないで! 足の関節はヤバイ!」

 

不意打ちを足の関節に喰らって態勢を崩した一刀はそのまま前に倒れた。

一刀の前には劉備がいて、不意な事に動けなかった劉備の胸に一刀は顔を埋めてしまった。

 

「きゃあああぁぁぁ〜〜〜〜!!!」

「貴様―――――――ッッッ!!!」

「これは事故! ちょっと聞い、ぎゃああぁぁぁ!!!」

 

劉備の胸から顔を離し一刀の鼻先を鋭い一閃が通り抜けた。

ひらひら舞う前髪を目で追い、ゆっくりと下を見ると関羽の武器、青龍偃月刀が地面に大きな溝を作っていた。

 

「まあまあ、それくらいにしてくれよ。事故だって言ってるんだし、怒るなら一刀じゃないだろ? お門違いもいいところだぜ」

「その通りだ。それに不用意に近付いたそちらの主も悪い。警戒心がないのか?」

 

偃月刀をケ艾が踏みつけるように足を置き、姜維が一刀と関羽の間に入っていた。

 

「誰だ貴様! 我が武を足蹴にするとはどういうつもりだ!」

「ケ艾だ。お門違いな相手を斬るって言うなら相手になるぜ。俺と姜維の攻撃、同時に捌けるか?」

「桃香さまに最初に危害を加えたのはそちらではないか! 聞けば、その男は女と見るや否や襲い掛かるそうではないか。何人もの女を泣かせたとも聞いているぞ」

「あぁ〜なるほど。そういう風に広まってるのか。旦那が喜びそうだ」

「いや喜ぶとかそういう問題じゃなくて訂正してくださいよ! 俺、誰にも手なんて出してませんから! 証人もいるし!」

 

一刀は無罪を主張する為に荀ェを見た。ほぼ一刀を監視しているという荀ェならば一刀が女の子に手を出していないという事実を知っているはずだ。

一筋の望みを手繰り寄せてみるが、

 

「わたしが知ってるわけないでしょ。この馬鹿」

 

どこか不機嫌そうな荀ェはフンッとそっぽを向いてしまった。

 

「覚悟はできているか?」

「ひぃ!」

 

振り返れば鬼神(一刀にはそう見えている)が偃月刀を構えて立っていた。

ケ艾は知らん振りを決め込んでいるのか近くにいた夏侯惇に戦いを挑もうと挑発しており、姜維は静かに見守る夏侯淵の隣で静かに成り行きを見守っていた。

 

「ちょっと辰さん、助けてくれるんじゃなかったの!?」

「悪い一刀。よくよく考えれば関羽が一刀を殺せるはずがねぇから放っとくわ。頑張って逃げろ」

「なら天さんヘルプミー!!」

「……助けて、と言いたいのは分かるが安心しろ。殺傷沙汰になれば困るのは劉備だ。それほど馬鹿ではあるまい」

 

もはや頼りにならない二人から視線を外し残りの二人に目を向けた。

徐庶はいつの間にか一刀が持っていた筈の書簡と一緒に消え、荀ェはチラッと一刀の方を見るが目が合うと不機嫌な顔でぷいっと他所を向いてしまった。

 

「ここは……逃げるが勝ち!」

「待てぇい! 絶対に逃がさん!」

 

脱兎の如く一刀は逃げ出した。それを追う鬼神が陣営から飛び出していく。

呆然とする劉備と曹操は乾いた笑みを浮かべるしかなかった。

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どうも傀儡人形です。

春休みと油断していたら更新遅くなりました。

さて今回は水関攻略前の総大将を決めるお話でしたが、

思い切って司馬懿を総大将にしてみました。

どうなるのかは後々に語るとして、司馬懿の兄、司馬朗を出したのですが、

何か司馬懿より凄いキャラになったなぁ〜、と思います。

桂花ファンの方々申し訳ありませんでした。ここで謝罪しておきます。

では、これにて。

 

 

説明
どうも傀儡人形です。

かなりの駄文。キャラ崩壊などありますのでご注意ください
オリキャラが多数出る予定なので苦手な方はお戻りください

書き方を試行錯誤しているのでおかしな箇所あります。
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コメント
関羽・・・ナイスウザす♪(キリッ(よーぜふ)
相変わらずの忠誠心とすら呼びたくない桃香至上主義だな…気持ち悪い。(PON)
あと藍花、お前の蹴りでこうなったんだから庇うくらいしろ。(龍々)
荀ケが夏侯「惇」じゃなく夏侯「淵」を目の敵にしてるんですが。(龍々)
関羽・・・いくらなんでも、そんなことしたら斬首だぞ・・・(運営の犬)
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真・恋姫†無双 司馬懿 ケ艾 姜維 徐庶 荀ェ 一刀 

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