境界のIS〜第六話 サタディ・アフタヌーン2〜
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 「ねぇ、ちょっとアレ……」

 

 「ウソっ、ドイツの第三世代型だ」

 

 「まだ本国でのトライアル段階だって聞いてたけど……」

 

 アリーナ全体がざわざわしてる。

 

 「聞いていなかったのか?織斑一夏。貴様だ」

 

 漆黒のISに身を包んだ、銀髪眼帯のドイツ代表候補生。ラウラ・ボーデヴィッヒだ。

 なんでも転校初日、出会った瞬間一夏にビンタを喰らわせたらしい。僕は運悪く熟睡していたときだったので、その瞬間とやらを見ることは叶わなかった。この鈍感男が女にぶっ叩かれる場面を見たかったのに、残念だ。

 

「貴様も専用機持ちだそうだな。ならば話が早い。私と戦え」

 

 「イヤだ。理由がねえよ」

 

 「貴様にはなくても私にはある。第二回『モンド・グロッソ』。忘れたとは言うまい」

 

 「!テメェ……」

 

 「貴様が誘拐されるなどという失態を侵さなければ、織斑教官が泥を被ることはなかったのだ」

 

 IS世界大会『モンド・グロッソ』。その第二回の決勝戦の最中に一夏のやつが誘拐されたらしい。攫われた一夏を救うために、当時世界チャンピオンだった千冬先生が試合を途中放棄。誘拐の情報を『たまたま』得ていたドイツ軍の協力もあり、一夏の救出は無事成功した。

 しかし千冬先生は決勝戦棄権という形で大会二連覇はできなかった。加えて誘拐騒動の際に作った『借り』のためにドイツ軍で一年間ISの技術教官をすることになる、というのが事のあらましらしい。

 ちなみに決勝戦は海上ステージで行われたのだが、そこで事件発生時に千冬先生が対戦相手を瞬殺、『水没』させて飛び出していった事は今も伝説として語り継がれている。

 

 「貴様がいなければ教官が大会二連覇の偉業をなしえただろうことは容易に想像できる。だから、私は貴様を――貴様の存在を認めない」

 

 怖い怖い。

 

 『家族を犠牲にした名誉など、何の価値もない』

 

 千冬先生が語った言葉だ。これが彼女なりの、あの事件へのケジメだろう。

 

 「それはそれ、これはこれだろ。俺はやらねぇよ。また今度な」

 

 「ふん。ならば――戦わざるを得ないようにしてやる!」

 

 ――『白式』、ロックオンされています。初弾装填を確認

 

 ボルトが弾け飛び、レールカノンの砲身が展開される。あの女、まさかアリーナ(ココ)で戦う気かよ。

 

 「ちょっと待て」

 

 僕はとっさに、ボーデヴィッヒの射線上に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

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 「何だ貴様は」

 

 「少し頭を冷やそうか。オレは別に、一夏(コイツ)と白黒つけるのを止める訳じゃない」

 

 「なら、早くそこを退け!」

 

 「退かないよ。オレが言いたいのは、場所を考えろ、関係ない人間を巻き込むなということだ」

 

 この密集空間で戦闘を行えば、確実に周りの生徒に被害が及ぶ。それが考えられない頭じゃあないだろ。

 ボーデヴィッヒと一夏。千冬先生を巡る二人の因縁がどうだろうと、そこにどんな感情があろうと、僕には全く関係ないハナシだ。だからそんな『二人だけの』勝手な理由で、ここにいる世界やシャルル、そして僕自身を巻き込もうとする行為は余計に我慢できない。

 

  「イチャつきたいなら、二人だけでヤリな」

 

 「言わせておけば――いいだろう。退かぬと言うのなら、貴様も私の敵だ!」

 

 ――警告。ロックオンされています

 

 やれやれ。言葉は不要、そういうことか。

 いっそのこと当たってやるか?止めよう。無駄な損害は出したくない。ISの修理だって無料(タダ)じゃないんだ。

 では、どうするか。

 先に仕掛けてきたのは向こう。僕はただ、降りかかる火の粉を払おうとしただけ――ああ、なんだ。それなら簡単じゃないか。

 

 「消えろ!」

 

 一瞬で、叩き潰してしまえばいい。

 蒼雷のスラスターが煌めく。ブーストアップ。風を切り裂き、僕はボーデヴィッヒの真横を駆け抜けた。ロックオンが外れる。

 

 「何!?」

 

 逆噴射をかけながら身体を軽く右に捻り、左肩スラスターを短噴射(クイック・ブースト)。

 機体は木の葉のようにひらりと舞い、黒いISの背後を正面に捉えた。

 

 「貴様、いつの間に……」

 

 遅いよ。今のだけで一回は殺せた。

 

 ISに乗るといつもこうだ。思考が怖いくらいに明確になる。心は熱く。頭は冷たく。

 ゼロか一か。やるかやられるか。

 二者択一が奏でるメロディー。これがたまらなく心地いい。

 

 「くっ――!」

 

 ボーデヴィッヒが再び、狙いをつけようと照準を向ける。僕は左右の肩スラスターを小刻みに短噴射。射線から逃れる。今の彼女には僕が瞬間移動でもしてるように見えてるんじゃないか?

 

 「ソードバレル、光剣投影(ブレード・オン)」

 

 背後のソードバレルから左右にそれぞれ二本ずつ、計四本のエネルギー剣が生み出される。右手に二本。左手に二本。指の間で柄を挟み、僕は全ての光剣を引き抜いた。

 ボーデヴィッヒが慌ててレールカノンの砲身を折りたたみ、格闘戦の構えをとった。だから、遅いって。

 僕は両腕を振り被り、一気に光剣を投擲する――

 

 『そこの生徒!何をやっている!学年とクラス、出席番号を言え!』

 

 時間切れか。

 

 両の光剣を解除。僕はゆるやかに機体を動かすと、シャルルの隣に並んだ。

 

 「……ふん。今日は引こう」

 

 戦闘態勢を解除し、アリーナゲートへと去っていくボーデヴィッヒ。

 なにが「今日は引こう」だ。あのまま続けていたら、勝っていたのは間違いなく僕だ。

 

 「カナタ、大丈夫だった」

 

 「うん?大丈夫だよ」

 

 僕は嗤った。

 

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 〜元ネタ的なナニカ〜

カナタのIS『蒼雷』。モチーフは『鉄のラインバレル』より、みんな大好き『ヴァーダント』。ヴァリアブル・バインダーをそのまま使うのはつまらないので。

 

短噴射。元ネタは、これまたみんな大好き『AC4』、『ACfA』よりQB(クイック・ブースト)。自分も大好きです。ステイシスは俺の嫁。

 

ようやく、ようやく原作ブレイクの兆しが見え始めてきました。アニメも終了した今、二次創作作家としてはここからが正念場だ!

 

説明
〜前回のあらすじ〜
・彼方、シャルルと同棲開始。
・一夏魔改造計画にシャルル参加。未だ進化の兆しなし。
・彼方、世界とポカポカする。
・ラウラ、襲来
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コメント
彼方つよっ!?(つくよみ)
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IS インフィニット・ストラトス 境界のIS 向井彼方 古京世界 シャルロット・デュノア 戦闘初体験 

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