Loss Of MemoryC |
翌日から俺は彼女と
記憶を取り戻すべく、
毎日毎日色々試した。
が、
取り戻した記憶をほんの少し。
”自分の事”。
誰で何歳でどんな性格で何をやっていて親は友達は。
俺は21歳で調理師免許を持っており、
あの写真に写っていた洋風の店は俺たちが独自で店を開くための
カフェだった。親は離婚。父親のほうは死んでいるらしい。
友達は多く、俺は中心的なムードメーカーなんだとか。
完璧にとはまだいえないが、"自分の事"は思い出せた。
だが、それ以前に俺はまだ一つだけ
聞かなきゃいけない事があった。
それは
”どうして自分はこうなったのか”
ということ。
俺はなにがどうなって記憶を失くすほどの傷を負ったのか。
なぜだか医者にも彼女にも聞くのに躊躇してしまう。
それでも聞かなきゃいけない。そんな気がするんだ
3日後外出許可がでたので
俺と彼女であの写真の場所を探しに行った。
『ほら、あそこだよ』
ほんの少し街の奥にあるなだらかな丘に建つ店。
そのとなりにある1本の木。
写真と見比べる。
(本当だ…ここで間違いない)
俺はゆっくり店の中を見渡す。
中は思ったより広くて。厨房も設備がしっかりしていて、
色んな料理が出せそうだ。
店を出たときにはもう夕方で
赤い景色の中を2人でゆっくり歩く。
『なんか思いだせた?』
「いや、まだだな。まだ自分の事しか…」
彼女の問いにこう答えると彼女は苦笑した。
(今しかない…)
「なあ」
『ん?』
俺は覚悟を決め、彼女のほうを見、
「どうして、
どうして俺は記憶を失くしたんだ??」
彼女は苦しい顔をする。
沈黙が続く。
『・・・・ごめん。
あたしからは、話せない…。
話したくないの…!』
彼女は声を震わせて、うつむきながらそう答える。
「…そっ、か。わかったごめんな」
俺はより一層気になったが、問い詰めるのはやめた。
『どうしても聞きたいなら、先生にきくといいよ』
そう言われ、彼女の顔を見たとき
俺は、胸が熱く苦しくなった。
彼女が、
ナギサが、
涙をこらえ、
苦しそうに、
――笑ったから。
俺は思わずうつむいて。
そこから顔を上げることなんてできず、
病院まで沈黙のまま歩いて行った。
彼女が帰った後
(後で先生に聞こう)
そう決める。
最悪な内容とも知らずに――――。
説明 | ||
記憶喪失の主人公が彼女と一緒に 記憶を取り戻そうとする奮闘物語です!! |
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タグ | ||
記憶喪失 | ||
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