真剣で私たちに恋しなさい! EP.2 正義感
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 直江大和は一人、多馬川の土手を歩いていた。放課後になってすぐ、色々な誘いを断ってやって来たのだ。今はあまり、知り合いと一緒には過ごしたくない気分だった。

 

「何だろうなあ……」

 

 自分の中に起きた変化に、大和は戸惑う。何かしらきっかけや前触れがあったわけではなく、本当に突然だったのだ。

 

「いや、そういえば……」

 

 大和は、奇妙な夢を見た事を思い出す。抑えきれないほどの衝動が溢れる、胸焼けのするような夢だった。結局あれは、何だったのか。

 

「夢鑑定とか見てみるかなあ……」

 

 数多くいる知り合いの中に、そういうのが好きな人物がいる。だが、あくまでも表面的な付き合いなので、あまり自分の事を晒すようなまねはしたくはなかった。

 

「本でも買って、自分で調べるか? ははは、それも馬鹿らしいか」

 

 自嘲するように笑い、大和は足を止めて川面を眺める。日の光が反射して、キラキラと輝く様子は不思議と心が安らぐようだった。

 

「ん?」

 

 ふと大和は、川辺の草むらに誰かが倒れているのを見つける。

 

「大変だ!」

 

 慌てて土手を駆け下り、倒れている女性に声を掛けた。

 

「大丈夫ですか!?」

「んん……?」

 

 眠そうに目をこすり起き上がった女性は、細く開いた目でジーッと大和を見た。そして突然、にへ〜と笑みを浮かべて両腕を大和の首に回して来たのだ。

 

「なっ! ちょ、ちょっと!」

「へへへ、君、タイプかも……」

「えっ?」

 

 呆然とする大和を、その女性はぎゅっと抱きしめる。あまりの出来事に、さすがの大和も頭を働かせるのが少し遅れた。

 

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 顔に当たる柔らかな感触に、大和は慌てて女性を引き離した。

 

「あの、困ります」

「ん〜」

 

 女性はすねるように唇を尖らせて、しぶしぶと大和から手を離した。

 

「君から誘って来たのに……」

「誘ってません。具合でも悪いのかなって思っただけで」

「ん? 別に平気だよ。寝てただけだから」

「こんな所で寝ていると、風邪ひきますよ? 虫も多いし」

「へへへ……優しいね。えっと、名前教えてよ。私は辰子」

「俺は直江大和。川神学園の2年です」

「へ〜。それじゃ、私と同い年だね」

 

 二人はそんな話をしながら、草むらに立ち上がって並んだ。

 

「ねえ、暇なら一緒にお昼寝しようよ」

「えっ?」

 

 そう言うと辰子は、大和の手を取った。そしてぐいっと引っ張ると、豊満な胸でパフッと大和を受け止める。慌てて大和が何か言おうと口を開き掛けた時、不意に別の声が飛び込んで来た。

 

「見せつけてくれるじゃんかよ、兄ちゃんたち」

 

 ガラの悪そうな声の方を見ると、明らかに喧嘩大好きな風貌の三人組がニタニタ笑いながら近寄って来た。大和は恥ずかしさを忘れ、冷静さを取り戻した頭で考える。

 

(面倒そうな奴らだなあ)

 

 彼らのような連中とは、川神百代のおかげで何度も関わったことがあった。単純に強い相手を求める者ならば、こちらが弱いとわかれば去っていく。だが弱い者をいたぶるのが好きな連中は、相手の弱みを見つけてしつこく攻めて来るのだ。おそらく彼らは後者で、相手は誰でもいいのだろう。

 

(一人なら自分の身ぐらいは守れるけど……)

 

 大和も護身術ぐらいは使えた。というよりも、いつも百代にいじられるため、自然と身についたと言ってもいい。だが今は、辰子が居る。

 大和自身、仲間のためならばいくらでも体を張れるが、それ以外の相手にそこまでする気にはなれない。かといって、間もないとはいえ知り合いの女性が目の前で、ガラの悪い男たちに色々されるのを傍観するのも気分が悪い。何より、数や力で威嚇して弱者をいたぶるような連中は嫌いだった。

 

「辰子さん!」

「あっ……」

 

 大和は辰子の手を取り、走り出す。ともかく、どこかに逃げるしかない。

 

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 クリスとマルギッテ、そして板垣亜巳と天使の四人は、睨み合ったまま動かなかった。それぞれが、目の前の相手がただ者ではないことを察している。

 

「金髪の子、いたぶったらいい声で鳴きそうね」

 

 亜巳がどこか楽しげに言いながら、薄く笑う。

 

「お嬢様に触れれば、命はないと思いなさい」

「あら、怖いわ」

 

 両者から殺気が溢れ、一触即発の状態だった。そんな中、遠くから騒がしい声が近づいてくる。

 

「待てよ、コラァ!」

「逃げんじゃねえ!」

 

 下品な怒声に、全員が眉をひそめてそちらに視線を向けた。すると、見知った顔がこちらに走ってくる。

 

「あれは大和じゃないか」

「あれ? タツ姉じゃん」

 

 クリスと天使が同時に声を上げた。三人の男たちに追いかけられながら、大和と辰子が仲良く手を握ってこちらにやって来るのだ。どうやら大和と辰子も、クリスたちに気付いたようだった。対峙する四人の間を抜けるように走り、すれ違いざま――。

 

「後は任せた!」

「やっほ〜」

 

 そんな声が、耳に飛び込んで来る。最初のは大和で、後のは辰子の声だ。

 

「任せたと言われても……」

 

 困惑しつつ、クリスはやって来る男たちを見る。

 

「うおっ! タツ姉が男連れだよ!」

「辰もやるじゃないか」

「むっ……あれは大和の彼女なのか?」

「おそらく……」

 

 変な誤解をする四人の中に、無謀にも男たちは突入して行った。邪魔な通行人を押し退ける感じだったのだろうが、それが命取りだった事に気付くのは、病院のベッドの上だった。

 

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 クリスが足止めしてくれているようだったが、念のために身を隠そうと人目を避けるように走り続けた。ようやく息が上がって大和が足を止めたのは、ホテル街の裏路地である。

 

「ハァハァ……ここまで来れば……」

「アハハハ、楽しかったね〜」

 

 ヘトヘトの大和に比べ、なぜか辰子はまだまだ元気そうだ。

 

「大和君に強引に引っ張られて、ちょっとドキドキしちゃったよ」

 

 そう言うと辰子は、大和に身を寄せる。

 

「いや、辰子さん……」

「心臓の音、聞こえる?」

 

 辰子はぎゅっと胸を押しつけ、大和の首に腕を回した。顔が間近に迫り、熱っぽい吐息が唇に触れる。早鐘を打つ辰子の鼓動が、移ったように大和の心を騒がせた。少し上から自分を見る辰子の視線に、大和は湧き上がる衝動を抑えきれなかった。

 

「あれ?」

「あっ……」

 

 大和の異変に気付き、辰子はニッと笑う。そしてゆっくりと、彼のズボンに触れた。チャックの金具をつまみ、大和の顔を見ながら下ろしてゆく。

 

「こんなになってるよ?」

 

 誘うような眼差しが、大和を射貫く。そして辰子は、ゆっくりとその場にしゃがみ込んだのだ。

 

「だ、ダメだよ辰子さん……」

 

 力なくそう言いながらも、大和は辰子の行為を止めることが出来ない。抗うのは簡単なのに、望んでいる自分がいるのだ。

 

「すっごい熱くなってる……。待ってて、初めてだから上手に出来るかわからないけどさ」

 

 辰子に包まれるのを感じながら、大和は迫り上がる快楽に身をゆだねた。

説明
真剣で私に恋しなさい!を伝奇小説風にしつつ、ハーレムを目指します。
まじこいで好きなキャラは板垣三姉妹です。
楽しんでもらえれば、幸いです。
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コメント
辰姉ぇサイコー!!(~yamato~ )
クリスは可愛良いなあ。(readman )
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真剣で私に恋しなさい! 直江大和 クリス マルギッテ 板垣亜巳 板垣辰子 板垣天使 

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