真・恋姫†無双 ~君思うとき、春の温もりの如し~ 合間8
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最近の私はおかしい。

何故か一刀様を見ると胸がチクチクして痛い。

だからなるべく顔を合わさないように最近、一刀様を避けている。

 

なぜこうなったか理由は分かっている。

あれは数日前の事だ。

警邏の為、街を見回りしていたら見てしまったのだ。

市で楽しそうにしている一刀様と穏を。

2人は仲が良さそうに腕を組み、店をまわっていた。

その時からだ、私の胸が痛み出したのは。

楽しそうに笑い合っている2人を見ると、何故か胸が締め付けられる。

2人は装飾品を売っている店に入ると相談しながら何かを買っていた。

きっと一刀様から穏への贈り物を選んでいたんだろう。

そんな2人を私はただ見ていることしか出来なかった。

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この城には一刀様を慕っている者は多い。

そのなかで一刀様は穏を選んだということだ。

穏はとても女らしい。

私のように武骨者で筋肉の付いた硬い体ではなく、たおやかで柔らかな体つきだ。

…胸も大きいしな。

そんな穏を一刀様が選ぶのは当然といえば当然である。

正直なところ一刀様はあれでなかなか助兵衛である。

普段は冷静な様子を出しているが、女の事になるとかなり興味を示す。

たまに気を抜くと穏のあの胸を凝視しているし、私が使えて間もないころは、

私の太もものあたりをチラチラと見ていた。

まあ、あの年頃の男がそういう事に興味があるのは当然ではあるが……

だから一刀様は女らしい穏を選んだのだ。

 

どちらから先に思いを伝えたのだろうか。

私は自室の寝台に寝転がり、顔を腕で覆って思った。

もし私が穏よりも先に一刀様に思いを伝えていたら、

「どうなると言うのだ……」

有りもしない事を思った私は、否定の言葉をつぶやいた。

私と一刀様は主と家臣の関係である。

それに一刀様は呉の王族だ。

その隣に江賊の出である私が立てるはずがない。

……それに私の気持ちは、家臣が主を敬う気持ちから来るものだ。

決して惚れた腫れたと言うものでは無い。

「そうでは無い……」

私の漏らした言葉に誰も答えない。

まだ寝るには少し早いがこのまま寝ようかと考えた。

しかし、まだ寝間着に着替えていなかったことに気が付き、

着替えるためダルい体を起こした時だった。

扉を叩く音が聞こえたのは。

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「思春、俺だけど、起きてる?」

その声は一刀様のものであった。

今一番会いたくない人の声であった。

確か一刀様は亞莎達と賊の討伐に出てたはず。

もう帰ってきてたのか……

「思春?いるんだろ?」

返事が返ってこないので一刀様は先程より少し語気を強めて言った。

「……はい、何の御用でしょうか」

私はいつもと違い、か細い声でようやく答えた。

「思春…話があるんだ。ちょっといいかな?」

一刀様の問いかけの私は扉を開けて答えた。

久しぶりに一刀様と向かい合った。

一刀様は私の顔を見ると少し安堵した様子を見せた。

「話とは、なんでしょうか?」

「思春。なんで最近俺を避けているんだ?」

一刀様は私の腕をつかみ、真正面から目を見て聞いた。

「避けてなどおりません……」

私はその目を見ることが出来ず、視線を逸らした。

「言いにくいことなのか?」

「……私の問題です。

 他に御用が無いのならこれで失礼します」

そう言い、扉を閉めようとすると、

「ちょっと待った!本題はこっちなんだ!」

一刀様はそう言うと小さな木箱を取り出した。

「……何ですか?」

「誕生日おめでとう、思春」

突然のことでキョトンとしていた私に一刀様は笑顔で答えた。

「誕生日……私の…?」

「そうだよ。そしてこれはその祝の贈り物」

そう言って木箱の蓋を開けるとそこにはきれいなかんざしが入っていた。

「これは?」

「思春に似合うと思ってね。

 この前、穏と一緒に贈り物を探しに行った時に見つけたんだよ」

この前…?穏と…?

「あの、それって…」

私はあの日見た事を一刀様に話した。

「ああ、丁度その日だよ。

 思春に見られてたのか、バレバレだったね」

そう言い一刀様はバツが悪そうに苦笑いしながら頬を掻いた。

あの日穏といたのはこのため…?

「あの時穏と腕を組んでいた一刀様の鼻の下が伸びいましたが」

私が目を半眼にして一刀様の顔を見ると、

「え?い、いや、そんなことはないぞ!」

「どうでしょう。あれは穏との逢い引きだったのでは無いのですか?」

私は核心をつく質問を聞いた。

これでああと答えたら私はどうするというのだ……

「穏とはそんなんじゃないって。確かに穏は魅力的だけどね」

そうではないと答えた。

つまり一刀様と穏は恋仲ではないと言うことか。

「…ま、まあその言葉、信じましょう」

そう思うと急に嬉しくなり、今までの悩みがすべて吹っ飛んだような気がした。

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「受け取ってくれる?」

「はい……」

一刀様が差し出した木箱を受けてり、贈り物のかんざしを眺めた。

足は一歩で、飾りのところには鈴蘭があしらっている。

「どれ、付けてあげるよ」

一刀様は木箱からかんざしを取り出し、私の真正面から普段髪をまとめて団子にしているところに差し込んだ。

その時私の目の前は一刀様の胸でいっぱいになった。

先程まで戦場にいたせいか汗の匂いと少し鉄の、血の匂いがする。

しかし血の匂いは一刀様の匂いによって気にならない。

心が休まる香り……

するといつの間にか私は一刀様の胸に顔を埋めていた。

「し、思春?」

「少しの間、こうさせてください」

一刀様は少し戸惑いながらも、優しく受け入れてくれた。

 

かんざしを挿し終え、一刀様は鏡の前まで私の手を引いて促した。

「とてもよく似合っているよ」

私の肩口から鏡を覗き込み一刀様は微笑んでいた。

そっとかんざしに手を触れて具合を見てみた。

「ありがとうございます。とても嬉しいです」

「気に入ってくれて良かった」

少し涙ぐみながら礼を述べると私の頭に手を置き優しく撫でてくれた。

 

次の朝、穏は私がかんざしを挿している姿を見ると笑って、

「よかったですね、思春ちゃん」

と言った。

私は「ああ」と短く答え、仕事に向かうことにした。

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今回は思春視点でお送りした拠点でした。

思春のヤキモチいいですね〜。

 

前回も書きました通り、合間5から今回の合間8の拠点は総じて思春の拠点となっております。

これで少し一刀君と思春の距離も縮まったかも?

 

次回からは少し華琳と桃香の話になります。

なので呉の人たちは出てきません。

主人公なのに一刀君も……

それでは次回もお願いします!ノシ

説明
思春拠点です。
今回も例のごとく思春視点。
なぜ思春が一刀を避けていたのかがわかります。
では、どうぞ。
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コメント
ここの恋姫大好きです いろいろ言う方もいらっしゃいますが、自分的にはそれぞれがそれぞれらしさを持ったままですし、一刀も良い感じです。いつも楽しみにしています。(mun)
お持ち帰りがまた増えたww(乾坤一擲)
>cuphole様 は〜い、トントンしましょうね〜(lovegtr)
執筆お疲れ様です。思春萌え(クォーツ)
・・・ぶはっ!(cuphole)
・・・かわいっw(よーぜふ)
思春が可愛すぎる///(poyy)
タグ
真・恋姫†無双 孫権 一刀 甘寧 思春 

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