真説・恋姫演義 北朝伝 第六章・序幕
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 劉協が犯した失敗。

 

 一つは、益州へ向かうための道程を、荊州は江陵から抜けるルートを選んだ、その選択。もう一つは、途中、宿をとろうとして襄陽に寄り道をしたこと。そしてその地において、ある男の手により“保護”されることになってしまったこと。

 

 蔡瑁。字を徳桂。

 

 現在荊州において、病のふちにある劉表にかわって、その実権を握っている男。襄陽の街にて、身分を隠して宿をとろうとしていた劉協と董承に気づき、蔡冒は彼女らを自らの保護下に置いた。中原にて、曹魏が北郷に敗れたことをすでに知っていた蔡瑁は、劉協に対し、自身の姪であり劉表の次女である劉jを、新たな荊州の牧として認めさせた。

 

 民や臣下を見捨てて逃げ出した皇帝には、それ程存在価値は無い。北へと送り返され、自分が見捨てた者たちに殺されたくなければ、ここで自分の指示に従えと。劉協をそう脅し、その劉協の命を盾にして、董承らも従わせた。

 

 

 今まで散々他人を利用してきた劉協が、初めて自分の意思に関係なく、他者に利用されるだけの、本当のお飾りにされたわけである。

 

 しかし、劉協もただでは転ばない。己に追従してきた禁軍の兵の一部を、自身が書いた密勅とともに、三方へと走らせた。一人はもちろん、益州の劉備の下にである。己の現況を知らせ、彼女に自身の“救出”をさせるために。

 

 もう一方で、劉協は呉にも密勅を送った。益州の劉備と協力し、蔡瑁を討伐したのなら、以後荊州を孫呉のモノとして認めると。そう書き記して。

 

 そして残る一人、であるが。こちらが向かったのは長安であった。現在、旧都である長安を支配している、馬騰ら西涼連合に対し、北郷への牽制をさせるために。

 

  

 皇帝の勅。

 

 

 それを受け取った劉備、孫策、そして馬騰のそれぞれの反応を、ここから記していこう。

 

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 「では、皆さんの意見を伺いたいと思います」

 

 益州・成都の玉座の間。ここに、現在蜀に属する将のほとんどがその顔を並べていた。中央にある玉座に座るは、現・益州の牧である劉備。その右少し手前に、筆頭軍師である諸葛亮が、一通の書簡を手に厳しい表情で立つ。

 「意見も何もありはせぬであろう、朱里よ。これは皇帝陛下よりの勅なのだ。従うのは当然の理ではないか」

 「私も愛紗の意見に賛成だな。漢の皇帝が桃香様を頼ってこられている。これこそ好機というものではないか。ですよね、桔梗さま?」

 関羽が発したその言葉に、まず同調の意を示したのは、黒髪にメッシュを入れた一人の少女。魏延、字を文長。益州所属の将にて、若手の中でも将来有望とされる武人である。

 「確かに、焔耶の言うとおり、良い機ではあるとは思うが。……ちと、の」

 「桔梗さんは、何か腑に落ちないものでもあると、言われるのですか?」

 魏延から桔梗と呼ばれた、その妙齢な女性−蜀将の一人である厳顔が、自らの弟子でもある魏延の言葉に、その顔をわずかに曇らせる。それを見た諸葛亮が、厳顔に対しその反応の意味を問いかける。

 「腑に落ちない、というのとは、ちと違うがの。……その皇帝本人についてじゃが、わしはあまり、接近せぬほうが良いかもしれん、と。そう思っておるというところじゃな」

 「……それについては、私も同感ね」

 厳顔と同じようにその顔を曇らせ、その台詞に同調したのは、弓を携えた女性。黄忠、字を漢升という。

 「あわわ。紫苑さんも、ですか?」

 「ええ。……朱里ちゃんが手に入れた、“あの情報”のことを考えると……ね」

 諸葛亮とは反対側の位置に立っていた、蜀におけるもう一人の代表軍師である?統に、劉協への不信を語る黄忠。

 

 彼女たちが今話し合っているのは、昨日届けられたばかりの漢帝劉協の密勅に対し、益州の態度をどうするかというものである。その大まかな内容は、

 『荊州にて保護という名の下虜囚とされている自らを、益州の軍勢をもって救出するように。その暁には劉備に漢中王の印綬を贈るものである』

 といった感じのものであった。

 漢の系譜に連なる者(ということに一応はなっている)である劉備にとって、漢の皇帝からの勅は抗いがたいもの。劉備本人の感情としては、その勅に応えたいと思っては居はした。しかしその一方で、理性の方がある警鐘を彼女に鳴らしていた。

 「……朱里ちゃん。皇帝陛下に関するあの噂…ううん、情報は確かなものなのかな?」

 それまで無言で玉座に座っていた劉備が、諸葛亮にそのことを問いかける。今までのような、ただの噂話ではなく、諸葛亮直属の草組が集めた漢帝劉協に関する、とある情報の信用性を。

 「……十中の八九は」

 「……そっか」

 「私はまだ信じられません。帝ともあろうお方が、自身の母や兄である先の小帝陛下を暗殺した、これまでの様々な乱れの黒幕だったなど」

 その件に関し、顔をしかめてそう語る関羽。

 「愛紗ちゃんの気持ちはわかるし、気持ちだけで言えば私も同じだよ。でも、気持ちで情報を判断しちゃだめ。冷静な頭で、しっかりとした現実を見ないと。……ね?」

 「……桃香様」

 慈母のごときその微笑みを、自身の義姉妹に向けてそう語る劉備。まるで、自身にも言い聞かせているかのように。

 (……ご成長なされたものだ。口惜しいが、やはりあの男との邂逅があったからこそ、か。……北郷一刀、か。……そこに関しては、あやつに感謝せねばならんかもな)

 かつて、ただひたすらに夢だけを見続けていた、夢想家で甘いだけの劉備はもう居なかった。そこに居るのは、理想の前にしっかりとした現実を見ることのできる、真の大徳と呼ぶにふさわしい人物だった。

 「……それで、結局どうするのじゃ?皇帝からの勅に応えるのか、拒否をするのか」

 「桃香さま。御裁断を」

 「うん。……私は」

 

 劉備が選んだのは果たしてどちらか。その答えを記す前に、ここで一旦、場面を揚州へと移させていただく。

 

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 「……気が乗んない」

 手にした書簡を不機嫌に見つめつつ、玉座に座った孫策がつぶやく。

 「気が乗る乗らないの話ではないだろう、雪蓮。曲がりなりにも、皇帝からの勅だ。これに応えない手はないと思うが」

 そんな孫策にそう声をかけるのは、彼女と同じく褐色の肌をした黒髪の女性。眼鏡をかけた理知的なその女性の名は周瑜、字を公瑾という。孫呉の筆頭軍師であり、孫策にとっては義姉妹の契りを交わした大親友である。

 「それはそうなんだけどねー。……協力したら荊州を孫呉の物と認める、なんて。どう考えたって空手形もいいところだわ」

 孫策が手にしているその書簡。それは劉協の手により送られてきた、孫呉への荊州攻めを命じる密勅であった。

 「策殿の申されるとおりじゃな。例え事がすべてうまく運んだとしても、南郡の袁術が納得しないじゃろう」

 孫策のその読みに同調をしたのは、孫家に永く仕える宿将で、孫呉随一の弓の使い手。黄蓋、字を公覆である。

 「祭の言うとおりだと、私も思うけど?あのわがままお子ちゃまが、大人しく私たちの傘下に入ると思う?」

 「それについては私も同感だが……なに、きっかけには十分なるさ」

 「きっかけ?」

 「そう。きっかけ、だ。仮にも皇帝が、我らの荊州領有を認めたのだ。……たとえそれが、非公式なものであっても、な」

 フ、と。眼鏡を直しながら、周瑜は孫策と黄蓋に、口の端を上げてそう笑ってみせた。

 「……そういうこと。祭、抹稜のあの子達、すぐにこちらと合流できるかしら?」

 現在、この柴桑の城とは別の場所−抹稜という地にて、とある支度を行っている、一族の者や家臣たちに集合をかけようと思った孫策が、黄蓋に対してそう問いかけをする。

 「ふむ。北への抑えもあるし、全員でというわけにもいかぬじゃろうが……。皎殿と明命であれば、すぐに合流出来るやもしれませんな」

 ちなみに、黄蓋のいう皎殿、というのは孫策の従妹である孫皎、字を叔朗という人物のこと。明命というのは孫呉の臣の一人で、周泰、字を幼平のことである。

 「……蓮華では駄目なの、祭?」

 「駄目ですな。残念ながら、まだまだ前線に出れるほどの物ではありませぬ。せめてもう二月は修練に励んでいただきませんと」

 蓮華こと、自身の妹である孫権は、まだ前線指揮官としては不十分であると、黄蓋の口からはっきりと言われて「……そっか」と、わずかながらに肩を落とす孫策。

 「では祭殿。蕈華(しぇんふぁ)様と明命に、こちらへ合流するよう連絡してください。……いいな、雪蓮」

 「ええ。祭、お願いね」

 「承知」

 頭を下げ、拱手して部屋を退出していく黄蓋の背を見送ったあと、孫策は一つ大きく息を吐いた。

 「はあ〜……やっぱり気が乗らないわね〜」

 「……まだ言っているの?雪蓮、貴女」

 「だあ〜ってえ〜。……なあ〜んか、いやあ〜な予感がして仕方ないのよねえ〜」

 「……嫌な予感、ねえ」

 「そ。嫌な予感」

 

 ふう、と。孫策が再びため息をついたところで、再び場面を転換させていただく。

 

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 蜀と呉。その双方に届けられた劉協の密勅。それらとは少しばかり内容の異なる、もう一つの密勅が届けられた長安では。

 

 「……それで?一体どうすると?」

 「皇帝の勅だ。決まっているだろうが。洛陽を攻め、そのまま落としてくれるて」

 かかか、と。機嫌よく笑うその男の背後で、あくまでも表面上は無表情に、しかしその奥歯を強く噛み締めて、彼はその男をにらみ付ける。

 「?将軍、もちろんおぬしの活躍にも期待しているぞ?……一応言っておくが、くれぐれもおかしな真似はせぬようにな」

 「……わかってる」

 口の端を吊り上げ、にやりと笑いながら自身にそう釘を刺すその男に、彼−?徳は不承不承ながら、ただ目を閉じてそう返した。

 (……人質をとらねば人を従えられないやつに、このまま勢力をまとめ続けることなど出来るものかよ。……とはいえ、椿様の居場所が分からないでは、こっちも動きようがないが……)

 ?徳の返事を聞いた後、上機嫌で笑い続けるその男−韓遂のその背を冷たい視線で見つつ、?徳はそんな思考をしていた。

 (こうなってくると、頼みの綱はお前たちだけだ。……翠、蒲公英、どうか二人とも、無事洛陽に辿り着いていてくれよ。そして、函谷関を……)

 今頃は、ひたすら東を目指して走っているであろう二人の友人に、?徳はその想いをはせる。ちょうどその頃、長安の東にある函谷関を越えた地点では。

 

 「お姉さま!追っ手が!」

 「ちっ!意外に素早いじゃないかよ!韓遂の馬鹿の手下どもにしてはさ!」

 馬岱のその指摘で、彼女らの少し後方にある関の門が開かれつつあるのを視認し、馬上にて馬超はそう吐き捨てた。

 「うわ!結構な数が出てきた!お姉さまどうするの!?」

 「どうもこうもない!やり合ってる時間なんかないんだ!このまま走るぞ蒲公英!」

 「うん!」

 関から出陣しようとしている、かつての仲間で、今は敵となったその一団から逃れるため、二人は必死で馬を走らせる。かつて、一度だけ馬を並べたその相手に、救いの手を求めるために。そして、半刻も馬を走らせた頃、彼女らの視界にある軍勢の姿が飛び込んでくる。

 「お姉さま!あれ!」

 「ああ!あたしにも見えた!あれは……!!」

 その軍勢の中央に、風を受けてはためく二本の旗が立っていた。そこに描かれたその字は『華』と『張』。周辺地域の見回りのため、洛陽を出立して間もない、華雄と張遼の部隊だった。

 「待っててくれよ、母上。裏切り者の韓遂をぶっ飛ばして、必ず、必ず助け出すから……!!」

 「兄の立てた策、必ず成功させなきゃだね、お姉さま」

 「……ああ!」

 

 過日。突如として反乱を起こし、西涼連合を乗っ取った韓遂によって、馬超の母である馬騰は囚われの身となった。そして、馬超と馬岱の二人を逃がし、東へと援軍を求めに行かせるため、彼女らの友であり、武の師ともいえる?徳は、あえてかの地に残った。馬騰救出のための、そのきっかけを掴む、策を成功させるために。

 

 

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 各勢力がそうして動き始める中、許昌に本拠を置く一刀たちは、ある重要な事案を話し合っていた。それは−。

 

 「……『晋』、『周』、『趙』、『魯』。土地の縁から決めるのであれば、このあたりになるでしょう」

 「後は、これまでどおり一刀の姓を、『北郷』をそのまま使う……というのも手ではあるの」

 「……なあ、みんな。どうしても名乗らないと駄目かな?」

 許昌の城に新たに作られた円卓の間にて、何枚かの紙を卓上に並べて、あーでもないこーでもない、と。意見を交し合っている一同に、それまでずっと黙り込んでいた一刀が、おもむろに声をかけた。

 「……まだ言うておるのか?いい加減諦めが悪いのう。……駄目に決まっておるじゃろうが」

 「そうです。対等な立場の同盟者である華琳さんが、これまで通り魏王を名乗り続けることになった以上、その同盟者である方も同じ立場でなければ、釣り合いが悪いですから」

 「……正直、柄じゃあないんだけどなあ……」

 

 官渡での決戦後。魏王の位を捨てようとした曹操だったが、一刀からその必要はないと言われて、これ以降も魏王を名乗り続けることになった。一刀曰く、

 「魏の将兵や民たちにとっては、貴女が王であることに違いは無いんですから」

 とのことである。

 であるならば、対等な立場での同盟者である一刀や公孫賛も、曹操と同じく王を名乗ったほうが、より対等な立場であることを示しやすいだろう、という話になった。しかし、一刀はあまり乗り気ではなかった。公孫賛が王を名乗るのには大賛成であったが、自分が、となるとどうにもしっくり来なかったのである。

 「もともとそんな大層な立場とは無縁の、ただの学生だったからなあ。みんなの言うことも理解は出来てるし、必要なことだって言うのもわかるけど」

 「……それこそ今更だと思いますけど。過去はどうあれ、現在は私たちのご主君なんですから」

 「るりるりの言うとおりやで、カズ。それに、や」

 「それに?」

 一刀のぼやきに突っ込みを入れた司馬懿に、姜維が同調の言葉を発したあと、いまだに覚悟を決めずにいる一刀に、こんなことを言った。

 

 「……我が君の王位即位。それを望むは臣らのみではありません。多くの兵や民もまた、それを望んでおります。我らが王の誕生を」

 

 「……」

 久しぶりに、その場にいた全員が、姜維が本来の話し方をしたのを聞いた。いつもの少々ふざけ気味の雰囲気は姿を消し、ただまっすぐに己の主を見据える、北郷一刀の臣下である、姜伯約がそこにいた。

 「……いい加減、腹をくくるのですな、我が君?」

 「蒔さんまで」

 「煮え切らない男は嫌われますよ?あ、でもその方が、輝里がご主君に愛想を尽かして、かえっていいかも♪」

 「……さ・く・や?(ぎぬろ)」

 「あん。冗談だってばあ、輝里い〜(つい〜)」

 「うひゃい!だから背中はやめなさいっての!(ごちぃっ!)」

 「うきゅっ!?(ばた)」

 『あ〜あ……』

 といった感じの、徐庶と伊籍のいつもの漫才はさておいて。

 

 それから数日後の、吉日。

 

 

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 「北郷一刀。公孫伯珪。両者とも、祭司たる我が前へ」

 『は』

 厳かな雰囲気の中、一刀と公孫賛の二人が、この儀式のために急遽設営された祭壇を、一歩一歩ゆっくりと上がっていく。その二人の姿を見つめるのは、二人の家臣一同と、曹操、劉豹、丘力居という、二人の同盟者たち。そして、地を覆いつくさんばかりの、多くの兵と民。

 その多くの視線を背に受けつつ、一刀と公孫賛は、壇の頂上に立つ、この儀式の祭司役を勤める李儒の下へと歩を進める。この式のためにあつらえられた儀式用の蒼いマントを、一刀はいつもの制服の上に羽織って、朱雀と玄武を腰に佩(は)いている。一方の公孫賛は、いつもの地味な鎧ではなく、紅白に金をあしらった儀式用の鎧をその身にまとい、白いマントを羽織っていた。

 「……どうした、美音?泣いてるのか?」

 「……だって、嬉しゅうおますもの。白蓮はんが王になる。うちのその夢がついに叶ったんやさかい……ぐしっ」

 よほど感激しているのか、周囲の目を一切気にすることなく、単径はその目から大量の涙を流していた。敬愛する主である、公孫賛の晴れ姿を見て。

 「……気持ちは分かるよ。あたしだって、まさかあの姉貴が、こうして王位に就く日が来るなんて、夢にも思ってなかったからな」

 涙こそさすがに流しては居ないものの、公孫越も今日という姉の晴れ舞台の日を迎えて、胸が熱くなる思いで居た。そして、二人がそんな会話を交わしている間に、一刀と公孫賛は祭壇の頂上へと到達し、李儒のその前に膝をついていた。なお、李儒の今の服装であるが、さすがにこの時ばかりは、いつものメイド服というわけにもいかないので、皇帝時代に着ていた衣装を模した祭礼服を、現在彼女はその身にまとっていた。……いつもの仮面をつけたままで。

 「北郷一刀。公孫伯珪。両名とも、これよりは王の位にある者として、これまで以上に民を愛し、その力を数多の民のため振るうべし」

 『は』

 「公孫伯珪には、“燕王”の印綬を、ここに授くものである」

 「はっ!燕王として、この命の続く限り、身命賭して働いて見せましょう!」

 

 おおおっっっっっ!!

 

 公孫賛の手にその印綬が渡された瞬間、人々から盛大な喝采と拍手が巻き起こる。そして、

 「……北郷一刀」

 「は」

 「そなたには、“晋王”の印綬を、ここに授けるものである(……これからも期待しておるからの、一刀)」

 こそ、と。王の印綬を一刀に手渡しつつ、李儒は小声でそう耳打ちをした。

 「……はっ。王の印綬、謹んでお受けいたします。いまだ若輩なれど、この命を賭けて、世の平穏のために働いてまいります」

 

 わあああああっっっっっっ!!

 

 それは、先ほどの公孫賛の時の倍以上の歓声だった。

 

 この時、その場の誰もが、これまでに経験したことが無いくらいの、熱狂の渦に包まれていた。

 

 “晋王”北郷一刀。

 

 “燕王”公孫賛伯珪。

 

 二人の新たな王の誕生に、誰もが興奮の坩堝の中に居た。

 

 

 

 

 

 しかし、それはほんのわずかの間のことだった。

 

 その日の夕刻。

 

 一刀と公孫賛、二人の王の即位を祝う宴が、国中をあげて執り行われようとした矢先、その報せはもたらされた。

 

 「洛陽近郊にて、董卓将軍率いる部隊が交戦状態に突入!敵は西涼連合軍二十万!至急援軍を請う!」

 

 

 新たな戦いが始まろうとしていた……。

 

 〜続く〜

説明
はいはい。
北朝伝、新章突入です〜。

で、ここでひとつお知らせを。

前回投稿した美羽ルートの零話なんですが、
少し追加改定して、再投稿し直す気でおります。
というわけで、公開を停止しますので、支援とコメを下さった方々、
本当にごめんなさい。
再うpの日まで少々お待ちくださいね〜。

では、北朝伝の本編をどうぞw
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コメント
ヒトヤ犬どの。実際に一刀が何かを言ったわけではありません。その辺り、桃香の成長理由については、この章中にお伝えする予定なので、あせらずお待ちくださいw(狭乃 狼)
hokuhinさま、それは次回で明らかとなりますw(狭乃 狼)
一刀が桃香に成長させるきっかけを作った話は何話でしたっけ?(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ)
桃香の判断が気になるなあ・・・ (hokuhin)
Glanceさま、これからも楽しみにしてくださいw(狭乃 狼)
首を長くして待ってました!これからも楽しみにしてます。(Glance)
タケルさま、視野狭窄関係ないですか?そーですか、どーもすいませんorz(狭乃 狼)
村主7さま、世の中そう簡単に思い通りにはいかないということを、協ちゃんに思い知ってもらいたかったのでw蕈華さんについては、ここに出さないとは一言も言ってませんw(狭乃 狼)
紫電さま、桃香の成長に関する話はこの章でお話をしますね。洛陽方面の戦ははたして?(狭乃 狼)
mokiti1976−2010さま、さ〜て何のことやら?w 王になった一刀がこれからどういう国を作るのか、ゆっくりお待ちくださいw(狭乃 狼)
ブンロクさま、ちと少ないですが、恋は一応この章で出ます。堅お母さんは・・・秘密w(狭乃 狼)
poyyさま、何が彼女を成長させたのか。それは今後の本編をお楽しみにw(狭乃 狼)
根黒宅さま、情報の出所・・・ね。・・・くすw(狭乃 狼)
ロンロンさま、さて、一体どのような形で乱世は収束するのか?w(狭乃 狼)
しばらく見ない間に劉備が少しはまともになったな。関羽と魏延は相変わらずみたいだが。でも一途なことと視野狭窄は全く関係ないような気がする。(タケル)
まさかのダークホース(蔡瑁)による拉致・・・これは全く予想外でした そして勅命に対する反応も呉はともかくももかおりさんが真っ当に考えてるのが 成長の証なのですかねw そりゃそうと蕈華さん登場ですって・・・? カミカミされた一件についてじっくりと(漢女同伴の元)OHANASIしないといけませんな・・・w(村主7)
蕈華さん登場してる・・・噛まれ損じゃなイカ!そして遂に「王」となりました一刀の活躍に大いに期待して続きを楽しみにしております。(mokiti1976-2010)
桃香の成長にちょっとびっくりです。(poyy)
あ、そうそう、桃香たちの情報の出所も明らかになるのか?桃香のあまりの変貌っぷりに目が行ってスルーしかけたが、本来その事実を知ってる人は多くないはず。(根黒宅)
二人の王が誕生し、新たな戦端が開かれる。この戦乱を治めるのは果たして・・・。(龍々)
jonmanjirouhyouryuki さま、愛紗と焔耶はいろんな意味で一途ですからw(狭乃 狼)
はりまえさま、それは作者にも分からない(オイw(狭乃 狼)
なかなかな絡まり方さて先に抜け出すのはどの勢力やら(黄昏☆ハリマエ)
根黒宅さま、それについてはこの章の中でお伝えしますので、その時までお待ちくださいw(狭乃 狼)
お?何か見ない間桃香がずいぶんとマシになったんじゃないか!いったいなにがあったんだ?(根黒宅)
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