真・恋姫無双 花天に響く想奏譚 5話
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 第5話 <I Want To Believe>

 

 ・準備完了

 

 「お湯沸いたよ!」「では冷ます水と、桶に移せるようにしておいて下さい。」「っ、苦しいんですか えぇと あ そっか汗拭かないと」「りゅ、劉備さんそれ大っきいのですぅっ!」「こ、これっ…」

 事件は現場でてんやわんや、だった。 そもそもの状況が状況なところに、精神的ストレスで産気づくのが早まって、しかたないからその中で出産することになったわけだが。産まれる前から困った子である。 いやしかたないことだし、第一胎児自身が一番の被害者だけどね?

 桃香が女性の額の汗を拭いていると、

 「幕を張るの終わったぞ。」

 複数名と天幕の布を、寝台横側の空間に張り終えた華陀が慈霊に近付いてそう言った。

 「容態は」「今は小康状態です。 次が勝負ですわ。」

 

 「では皆さんは外に出ていてください。 ご主人は手伝っていただくことがありますので居てください。」

 「う、うちのは本当に」「大丈夫だ。慈霊を信じろ。」

 慈霊の指示に、村の人達は一様に愁眉ではあるが従って出て行く。その際に出来るだけ、今は分娩台の役を与えられた寝台から重傷者を離していく数名が居る中、

 「じゃあ慈霊、頼んだぞ。」「心配ですか?」「まさか。」

 短く言葉を交し合ったその時の二人の間には、本当に信頼しあった空気が流れた。

 

 ・

 

 ゥォ ー …  ォォー …

 

「ん、 …遠吠えか。 久しぶりに聞くな…」

 民家から退却した後。大丈夫かな と心配していた一刀の耳に、遠くから響く、狼のものと思われる遠吠えが届いた。 因みに狼の遠吠えを二種類に大別すると、友好的な高い音と、威嚇的な低い音、なんだとか。

 縄張り争いでもしてるのか と、低く聞こえた音の方角を見て一刀がそう思っていると、

 

「星、ですか?」

 後ろから声を掛けられた。 愛紗だった。 視界の端で、長いサイドテールがさらりとなびく。

 

「愛紗。 いやそうじゃないけど。 …確かに、綺麗だな。 ぅわぁ…」

 見上げると、現代の街中では見られないような満天の星々がそこにはあった。触れそうな錯覚に陥りそうになるが、残念 そうはいかないのが光年単位ですよ。

 

「…っ」

 今までのどこか気が張ったような雰囲気から一転、子供のように星を見上げる一刀。 その様子のギャップの せいか、なにやら愛紗の中に一拍大きな鼓動が。 ドキッ と。

 

「、…しかし、大丈夫かな。」

 星に気を取られて一瞬忘れていたが、愛紗の視線ではたと我に戻った。 呆れられてたのか と、勘違いの結果 だったが。

 

「は、い… 慈霊殿の手腕に疑いはありませんが、やはり一抹の不安はあります。 ん そういえば、御主人様は医術の心得がおありなのですか?」

 「どうして?」

 「先程の、女性の様子の変化の理由が分かっていらしたようでしたので。」

 

 愛紗が問うと、そこに別の声が加わった。

 

「それはおれも気になるところだな。」

 村人への説明で足止めをくらっていた華陀だった。

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 ・技術的オーパーツ

 

 幕で遮られた寝台に早足で近付く影が二人分。 心の準備はともかく、物資的な準備は整った桃香が、不安と緊張で若干青くなった顔を足音のほうに向ける。

 

「わ、私たちもなにか、お手伝わせてくだしゃいっ!」「で でしゅっ」

 朱里と雛里だった。

 

「孔明さん 鳳統さん…」

 

「あ、あのっ こういうのってあんまり見たらだめって分かってます、でもっ、なんだかここで見ておかないといけない気がしてっ でしゅからっ!」

 噛みまくりではわあわしているが、二人の目に、興味本位でない真剣な色を見た慈霊は、

 

「…では劉備さん、孔明さん、鳳統さん。 見届けてくださいね。」

 朱里と雛里にも、許可を出した。

 

 ・

「成程な、天の国では民間にも医術が渡っているのか。いいことだ。」

「流石に大きな怪我や病気は相応に勉強した医者じゃないとどうにもならないけどね。知識だけならわりと広く知られてるよ。 っと、そういえば寧は二人と一緒に行かなくてよかったのか?」 

「あの女性も見られる目は少ないほうがいいと思いまして、 いえ 朱里ちゃんと雛里ちゃんを揶揄してるのではないですよ?」

 

 落ち着かない周囲の村人のなか、自然と残りのメンバーはまた集まっていた。

 

「ところで華陀殿、 先程のあれは…あれでいいのか?」

 愛紗の言っている「あれ」とは、華陀の施した深い切り傷への処置だった。 「お お医者さん、これでいいんですかぃ?」と言ってきた男性の腕には、

 

「…大丈夫だよ愛紗、あれは俺が居たところでも使われてる方法だから。 …でも、」

 

 手術の要である縫合がなされていた。しかも現代で使われている、傷が目立たなくなるやりかただった。

 

「今の時代にあのやり方があるってのはまだ信じられない気分だな。そもそも、…今は傷の処置ってどうやるのが普通なんだ?」

「傷口に当て布をして縛る、といったことしか思いつきませんが、 肉を縫う、というのは…」

「縫う、のだ…?」「ん、怖いか?」「べ、別に怖くなんかないのだっ!」

 明らかにわたわたしている鈴々は置いといて。

 

「そんな中で縫合を思いついて、その上傷が目立たない縫い方も考えつくなんてのは… 確かあれってかなり新しいやり方のはずだ。 …いつにも天才っていう人はいるもんだな。」

「むぅ、おれはそんな意識は無いのだが。 昔から医術で人を助ける というのを念頭においていると、色々とそれまで無かったやり方を思いついてきていてな。傷を縫うのもあの縫い方もぽんぽん出てきたぞ。 ただ確信はあったのだがなかなか周りからは理解されなかったな。 しかし北郷殿の話でより確信が持てた。礼を言うぞっ!」

 嬉しそうに一刀の手を取ってぶんぶん振る華陀はそう重要なことと思っていないようだが、一個人が縫合、およびその縫い方を考え出すというのはとんでもないことである。 第一縫合技術が発達していったのは近世に入ってからなのだが。 まさしく技術的オーパーツ、だった。

 因みに、相応に説明はしているのだがやはり体を縫われるというのは不安なものらしく、今までも何人かが聞いてきている。先進的過ぎる事象は、いつの世も理解されにくいものということである。

 

 しかし華陀はそんなすごいこととは本当に思っていないらしく。

 

「ではやはり天の国で療術も発達しているのか?」

「いや、そもそも氣だとかはおとぎ話でしか出てこないよ。 ただ医療技術は発達してて、それだけ助かる人も増えたし、寿命も延びてる。」

「ほう、まさに天の国に相応しいな。」

 

 話が天の国のことに及んだので、一同興味深げに一刀に集中。 しかし、

 

「…でも、 そんないいことばかりじゃないんだよ。」

 

 そう、いいことばかりではないのも、いつの世も同じことだった。

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・人、そのある一面

 

「息はちゃんとしなよっ じゃないとむしろ苦しくなるからねっ」

「は、はいっ…」

 妊娠時の経験をもとに中年女性がアドバイスする中、

 

「、劉備さん、大丈夫ですか?」

「ぅ、うん、 ちょっと、緊張してるだけ だから…」

 苦しそうな様子を見守り続けている桃香は血の気の引いた顔をしていた。声を掛けた朱里と雛里も同様のいっぱいいっぱいな様相ではあったが。

 そこへ、

 

「っ! ぁ、 はぁっ ぅうっ!」

 

 来た。

 

「ついにきましたね。 劉備さん、布の準備を!」「っ、はいっ!」

 指示しつつ、慈霊は熱い湯に糸をつける。 へその緒を切る場合、胎盤側と胎児側の二箇所を結紮(けっさつ:管状の部分を縛って流れを遮断すること)してその間を切り離すのだが、そのための糸を消毒する作業である。

 

「ご主人、この棒を。 奥さんがいきむ時の持ち手ですわ。 しっかり持っていて下さい!」

 夫である男性が寝台の頭側の後ろに空いたスペースに立ち、奥さんは仰向けで両手を挙げた体制になって、夫が水平に支える棒を掴む。 いきむ際のグリップの代わりだった。

 

 ラストスパート、である。

 

 ・

 

 「例えばこれとかね。 なにで出来てると思う?」

 

 ベルトの脇、腰の左右に挟んで引っ掛けてあった手甲を手にとって愛紗と華陀に渡す。愛紗のほうには鈴々と寧が寄って、各々触ったり爪でこんこん叩いたり。

 

「徹、じゃ無いのだ?」「地もただの布じゃないですね?」「いやに軽いですが… そもそもこれは防具として機能するのですか?」「不思議なものだな…」

 一様に、最先端科学の産物である「CNT」を用いた手甲を眺める。

 

「それは、 …皆の言う天の国の技術で作られた素材で出来ててね。 結論から言うと、それの固い部分は今の世界に存在するどんな金属よりも固いものだよ。 少なくとも人間の手じゃ壊せない。なにか道具を使わない限りはね。」

「…この、軽くて薄いものが、ですか…?」

 信じられない、といった表情の愛紗と鈴々に、論より証拠と一刀は指示。

 

「じゃあそれ、試しに曲げてみて。」

 言われて鈴々、地の部分ごとタイル部分を掴んで曲げようとする。が、 

「ふんっ …んにゃ? ふんにっ にいぃぃいっ 〜〜っ!  んにゃぁ、ダメ、なのだ…」

 続いて愛紗もやってみるが、

「っ、これは… 曲がるどころかたわみすらしないとは…」

 更に寧、

「では失礼して。」

 白い羽織の内側、太腿の外側に差してある片側三本 計六本の短刀「六葉」の内一本を逆手で抜いて、地面に置いた手甲に切っ先を「ガギィッッ!」と突きたてた。

「むぅ、むしろこっちが少し欠けましたか。 …しかしまともに傷がつかないというのは驚きですね?」

「いや少しもためらわない寧に驚きなんだけどっ!」

 

 若干引いた面々だが、当の寧は変わらず平坦な様子。 なかなかにやはり肝が据わっている。

 

「ただの素材だけでこれ ということは、天の国には他にも多くの技術が存在するということだな。」

 華陀は華陀で、全く空気を気にしない。

 

「まぁ、そうだよ。 …でも、たくさんの技術があるってことは、それだけ良くない使い方もできるんだよ。」

 一拍間を開けて、思いついた兵器を分かるように説明。

 

「強い衝撃で人を何人も吹き飛ばす武器とか、弓矢と同じ飛び道具でも土壁程度なら一発で大穴開けられるようなのとか、キロ…じゃなくて里単位で狙い撃ちできて家一軒丸ごと壊せるやつとか、 …それ一発で国一つ滅ぼせるようなのとか、ね。 それが天の国の戦争の武器の水準だと思ってくれていい。」

 順番は 手榴弾、対物ライフル、弾道ミサイル、原爆といったところだろうか。この世界だと創造どころか想像すらできないものだろう。 事実、一刀以外は そんな威力は俄かに信じ難い、そんな表情だった。

 

「天の国にも、戦はあるのだ?」

 タイル部分を曲げられなかったことが悔しかったのか、未だに手甲を睨んでいた鈴々がふと顔を上げて一刀に訊く。

 

「天の国、か。 聞こえだけなら楽園みたいに聞こえるな。 確かに俺が生まれて育った国は、…まぁ平和ボケとか言われるぐらいで、暮らしてる人達は戦争や殺し殺されなんてのは無縁で、俺自身もそんな経験は無いよ。 …でもね、遠く離れたところだといろんな理由で戦争が起こってる。 俺の暮らしてたところは技術の発達の恩恵を受けてて、…一部の人達を除けば特に不自由無しに暮らしてる。 けどこの村と同じ水準の暮らしの国もあったし、戦争の被害を受けた場所はここよりもっと酷かった。 …暮らしの水準の格差が大きいんだよ。」

 

「ん、 その口ぶりだと戦を見てきたように思えますが、なら一刀さんはなぜわざわざ戦に?」

 言葉の端に気付いた寧の質問に一瞬口ごもるが、ここだと隠すことも無いな と思い至って離すことにした。 それに会って数時間ではあるが、なかなかに密度の濃い時間を過ごした仲であるし。

 

「ここだと隠すことも無いから言うけど。 俺の師匠でもあるじいちゃんは実働的な武力が必要な場合にいろんなところで協力していてね、俺も小さい頃から修行って事でついていってたんだよ。」

 

 ここで一旦言葉を切る。 いざ話すとなると、色々思い返すことがあるからだ。

 

「…色々見てきたよ。 死にそうな傷…足が根元から吹き飛んでたり、冗談みたいな量の血が腹から出てたり、骨が肉を突き破ってる腕、 …それと死んだ人もね。 首から下、逆に首から上が無かったり、腕や足が残骸になってたり、血溜まりのなかに倒れてたり、処理できなくて「もの」みたいに積まれた人の死体とか、ね…」

 淡々、な印象の語り口ではあったが、一刀がどうとも思っていない訳ではない というのは一同感じ取っていた。 どうとも思っていない人間は、今のような苦しそうな表情はしない。 

 

「俺が住んでた国も暗いところは暗くてね。 学校…私塾の大きなやつ、かな。生徒の一団が一人をいじめていびって、それを苦にして自殺なんてのはざらにあった …俺も自殺した友達を一人知ってる。 民間でもそれだから社会はもっとあったよ。 狂信的な宗教信奉の村で、年に一人生贄を、とか、利権のために何人も騙して殺してを繰り返す一族とか、ね。」

 

 

「そんなのを聞いたり、実際に見てきて今でも思ってるよ。 …人は怖い生き物だ、ってね。」

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 ・清濁併せ呑むその心

 

「いきんでっ!」「っ、ぅうっ、ぅんんっ」

 心身ともに母体の疲労が多く、難産だった。 この彼女、優しいのはいいのだがそれ故に身重でありながら今回の一件でも自重せずに皆のためと動き回って、その弊害がここに出てしまった。因果応報という言葉もあるが、この場合は言っていいものか微妙なラインである。 しかし世の妊婦さんがた、どのみち妊娠中は決して無理をしてはいけないぞ。

 いきむ際のグリップとして妻が、そのカウンターウエイトとして夫が握る一本の棒。その棒を介して、夫婦は重圧を共有する。夫はこういうときには何も出来ないが、妻からすれば夫が近くに居るというのは大なり小なり安心できるものである。

 そんな中、桃香、朱里、雛里は自然と手を握り合っていた。 苦しい表情に感化されたような愁眉で、しかし三人とも目の前の光景を見据えていて、目を逸らそうとはしていない。

 

「頼む、耐えてくれっ!」「はっ、はっ、 っ、はいっ…!」

「あともう少しだよっ、せんちゃんあんた母親になるんだろっ、頑張りなっ!」

 中年女性の激励に、せんちゃんと呼ばれた女性は今一度奮起して力を入れる。いわゆる「ひっひっふー」の呼吸で、残った体力を気力で水増ししてそれこそ必死の思いで続けた結果、

 

「っ、やっと頭が出てきましたね…! 劉備さんっ、産湯の布を絞る準備を!」

 

 ・

「でも一刀さんは、人を嫌いにはならなかった、ですね?」

 

 重くなった空気を無視して平坦な声が。寧だった。

 

「ん、…どうして嫌いじゃないって思うんだ?」

「会って数刻ですが。 アナタは傷ついて、亡くなっていった人達を見て本当に悲しそうな顔をしていました。賊の人の矢でおばさんが倒れたときも本気で怒っていて、劉備さんが泣いていた時も涙こそありませんでしたが泣きそうな顔してました。 人を嫌いな人が、あんな表情するとは思いませんよ。 ワタシ、人を見る目はあるつもりですよ?」

 平坦な印象の寧ではあるが。実は常に人を観察していて、その人を見る目は直感として自覚して確立するほど。 しかもその正確さはかなりのものだった。

 

 事実、

「…そうだよ。 俺はむしろ人を信じてる、かな。」

 こうして一刀が肯定したのが証拠といえる。

 

「しかし、…それならどうしてそこまでの事を見てきて、なぜ人を嫌いにならなかったのですか?」

 あまりに真っ直ぐな一刀の言葉に対して、しかしそれ故に生まれた疑問を愛紗は問う。

 

 この質問は、一刀の信条の核心を見せることとなった。

 

「…人の汚いところ、醜いところ、絶対に肯定したらいけない部分、それのせいで出る結果 俺はそういうのを昔から見てきた。 いじめで自殺した友達の葬式に参列したこともあったし、同じくらいの歳の子の死体が転がってるのも見た。 人って存在を全肯定できないってことは充分分かってる。」

 

 でも、と 一刀は、自分の中での一つの結論を口にする。

 

「それでも、それが人間の全部じゃないってことも俺は見てきた。人は他人のために泣いたり何かをすることが出来るし、いいことがあったら喜び合えるし、優しく笑うことも出来る。 悪い人は存在する。でもいい人も確かに居るのも事実だ。 俺はその「人間のいい部分」を信じてるんだよ。」

 

 正論や一般論を鵜呑みにして性善説を振りかざすことは簡単。教典や先人の言葉を得意げに読み上げていい気になるのも容易い。

 

 しかし、一刀は違う。 自分の目や耳で見聞きして、実際に死を目の当たりにして悲しんで苦しんで、一時 本当に人を嫌いになりかけたこともあった。 因みに、奇しくもそのとき一刀は中学二年生。「人間は嫌い」なんて言うと中二病の典型症例みたいなもんだが、中を見れば一刀の場合は重さが違うのでそこんとこよろしく。

 

 だが、一刀は乗り越えた。 血の通った生の経験を経て、それでも人を信じたいという結論に到ったのは、ひとえに一刀に性格による。

 優しい、時には甘いとも言われる生来の性格だが。体験を経て本当の優しさを得た今、

 

 それはもう「強さ」になっていた。

 

「…俺は否定する部分を認めるなら肯定できる部分も認めるべきだって考えててね。その二つを並べられたら、やっぱり人の肯定できる、いいところを取る。 だから俺は人を信じる。

 …信じたいんだよ。」

 

 一刀のなかの一つの結論、安い希望的観測ではない自分の結論。 強い、本当に強い意志を一同が理解した  そんなとき、

 

 民家の中から、産声が上がった。

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 ・Newbirth

 

 「みんな、通してくれっ!」「痛い。 だれですかワタシの足踏んづけたの。」「ま、待ってなのだぁ〜」

 歓声を掻き分けて、一刀達は民家の中に入った。

 

 中では安静にしてなければいけない怪我人も上体を上げて幕で遮られたほうに目をやっていて、

 

 「やった、やったよかったぁっ!」

 「はいっ、ほんとによかったですぅっ!」「うん、うんっ!」

 桃香は朱里と雛里を抱きしめてぴょんぴょん跳ねていた。 朱里と雛里の二人は、桃香の胸に押し付けられる形になっていて若干苦しそうになっているが。

 

 かと思えば、

 

 「桃香っ、やったのかってうぉぁっ!?」

 一刀を視認した途端。桃香は二人から離れて一刀にダッシュ、それからタックルの如くに直進型ダイブ。 

 しかしそこは壱身流、見切ってちゃんと桃香の突進を右から左へ受け流す、…じゃなくて受け止めた。

 

 そして一刀に抱きついた桃香は、

 

 「産まれたよご主人様っ、赤ちゃん産まれたのっ!」

 

 目に潤みを加味した、満面の笑顔でそう言った。

 

 

 

 慈霊の手には 産湯で洗われて白い布に巻かれた

 

 新しい命があった。

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 <あとがき>

 

 早く本編を進めたいのに。なかなか全く進まない進んでくれない。これはあれか、超存在の不可避な力が働いてたりするんでしょうかちくしょう。

 

 さて、今回でようやく今の村での大きなイベントは全部出し切った、の、ですが…

 

 なにこの出産ドキュメント? 

 

 という突っ込みは全面的に受理します。なにせ作者自身が思ってますので。

 

 ですが実際に起こってそうですよね。例の東北の被災地とかでも。 ただ私はそんな現場に居合わせたことは無いのですよね… なのになんで大まかではあれど知ってるのか、ですか?それは私が一番知りたいです。

 

 いやしかし私もこんな風な進みになるなんて全く思ってませんでしたよまったく。もっと こう、軽く楽しくちゃっちゃと、ぱっぱと軽快に、快刀乱麻に進めていくつもりだったのになんでこんなに牛歩戦術なことにあぁもう。どうするよ、どうするよ私ぃっ!ってなことで何枚かのカードを出してみましたが。

 1、このままのペースで。

 2、もうはっちゃけてワープで行きましょう。

 3、思考放棄 

 となりました。まぁどうしようとか言ってもなるようにしかならないのですが。

 

 あと一刀の背景はあんなかんじです。世界の暗いところ、酷いところを見て、それでも人を信じたいと思う 一刀。 甘さも極めれば悟りに行く、というところです。

 しかし一刀、殺したことはありません。それが問題になる、はず。多分。

 それと私自身、紛争地域や死体なんてのは見たことありません。 そのくせこんな設定背負わせて書いて、ってのをしていいのか。少し罪悪感、ですね。のうのうと生きてる人間なのに。

 

 っておぉいかんいかんせめてあとがきだけでも明るく楽しくやろうって決めてるのに。

 

 暗く固くなりそうなのでこの辺で。

 

 では。また次回で。

 

 

 PS、少し投稿が遅れると忘れ去られる恐怖がふつふつと。なんだか無限の地獄に足を踏み入れたと今更ながらに思いはじめましたよ。

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

説明
5話です。なかなか話が進みませんが。
今回は少し一刀の背景が出ます。
世界は意外と広くて、案外深いものです。 
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コメント
シリウスさん これが桃香たちの信念になるわけです。 しかしまさかの3ですか…本当にネタとして書いたのですが。(華狼)
人の死と誕生とその重さを感じさせてくれてよかったと思いますよ。アンケートは3で 意識しないで書いてもらえたらと思います(シリウス)
jonman(以下略)さん 味、と思ってくれるならなにより。…いい味かどうかは分かりませんが。あと略してすいません。 しかしアンケートのつもりは無く、単にネタとして書いてたのですが…でも反応してくれる方が居るのは嬉しいです。(華狼)
cupholeさん どうして私は大事なとこ間違えるかな全く… 誤字指摘感謝。(華狼)
berth?birth?(cuphole)
胡蝶さん 誤字でしたね。 どのみちマイペースで行きます。色々考えてますのでお付き合いください。(華狼)
3pの冗談みたいな量の地→冗談みたいな量の血、だと思いますけど…違っていたらすいません。(胡蝶)
今回はいい話だと思います。生命の誕生ほど感動できるものはないですし…アンケートは1でお願いします!次の話を楽しみに待っています。(胡蝶)
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