鋼の錬金術師×テイルズオブザワールド 第3話〜5話
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〜ダブリス〜

 

『なんだ?こりゃぁ』

 

多くの野次馬が、ある一か所にて集まっている

 

『さぁ?昨日はこんなもの無かったよな?』

 

男が、隣の男と話をしている時、隣の男はその樹木に触れた

 

が、しかし

 

『うわっ!!』

 

触れた瞬間、その男は吹っ飛ばされ、果物店のかごに派手にぶつかった

 

『おっ…おい!大丈夫か!?あんた!』

 

店主が、不安そうな声で男に近づく。

 

『なんだ…?この樹』

 

男達と女達が、その一本の樹木に集まっている時、一つ二つの足音が聞こえた

 

『イズミさん!』

 

男の一人が、頼るようにそう、名前を呼んだ

 

『なんだ?このでっかい樹は』

 

 

 

 

 

 

 

 

〜コンフェイト大森林〜

 

先程の自己紹介で、最悪の印象を植えられた後、

 

パーティを組んでクエストをこなすというのは、難しい事ではないが、

 

苦である事はあるのではないか、とカノンノは感じた

 

お通夜のような、無言の、圧力が強いこの空気に、カノンノは押しつぶされそうだった。

 

パーティを組んで出発してから、もう30分は経つと言うのに、

 

誰一人、何も喋らなかったからだ。

 

『…にしてもさぁ、何か変な生き物が多いよなぁ、この森』

 

最初に言葉を発したのはエドだった、

 

意外だったその事態に、カノンノは少し動揺した

 

『目を合わすなよ、合わしたら襲ってくる』

 

ユーリが、警告を出すと、また沈黙の時間が流れた、

 

カノンノは、新米であるエドが、不安で気になっていたが、

 

エドは、カノンノの方とは別に、エミルの方を気にかけていた

 

いつ魔物が来るかと、ビクビクして前に一緒に、離れない様に極力近づいて行動しているのだ。

 

なんで、アンジュはこいつを調査に入れたのだろうか。エドは疑問に思った

 

『おい、エミル』

 

『えっ!?あっ……はい!』

 

声が少し裏返りながらも、エミルは返事をした。

 

まさか、自分に向けられて言葉が発せられるとは考えもしなかったのだろう。

 

エドは、素直な疑問をエミルにぶつけた

 

『お前、なんでギルドに居るんだ?』

 

あまりにも、腰につけている剣が似合わぬその姿を見たエドは、さっきからその事が、よくわからなかったらしい。

 

頼りなさそうで、こんな森の中の調査に行く事も、少し躊躇していた。

 

だが、エミルは

 

『えっと………僕が住んでいた村が、星晶の影響で穀物が取れなくなって、それでギルドに来て、村に物資を届ける為に、』

 

『ボスチア?』

 

聞いた事の無い単語に、エドは疑問をぶつけた。

 

『え?エドワードさん、星晶を知らないんですか?』

 

『知らねえも、そんなもん聞いた事も無えよ』

 

その言葉を聞き、カノンノも言葉に入ってきた

 

『聞いた事が無い…?』

 

『ああ、俺が居た所には、少なくとも、そんなものは存在もしなかったな。』

 

それを聞いた時、全員が驚いた反応をした

 

『え!?エドワードさんの棲んでいた所には星晶が無かったんですか!?』

 

特殊な錬金術を使っている時に、何かそこらの人達とは違うと感じていたが、

 

まさか住んでいた所に星晶が必要の無い世界だったとは、思いもしなかった。

 

『すごい…そんな世界を詳しく聞いたら……私達の目的もきっと……』

 

カノンノが、ぼそりと小声で言った

 

『ん?どうしたんだカノンノ?』

 

『ううん、何でもないよ。そんな事より、エドが住んでいた所をもっと教えて!』

 

カノンノが、明るそうな声でそう聞いてきた。

 

そこで、後ろに居たユーリが聞こえるように笑った

 

『ははは、さっきまでの葬式のような空気が嘘みてえだ。』

 

そう笑われた時、エドは先程のカノンノの言葉を忘れた

 

『言っておくけどよ、あのおっさんが言った俺の事をチッ……身長の悪口を言った事はな、まだ許して無えんだぞ』

 

『お前まだ気にしてたのか、器の小せえ野郎だな』

 

『小さい言うな!!』

 

ユーリが可笑しそうに笑う

 

だが、瞬間にカノンノが小声で叫んだ

 

『屈んで!』

 

そう言われて、一瞬エドは何の事か分からず、立ちつくしたが、

 

すぐにユーリに頭を掴まされ、かがまされた

 

『うわっ!!』

 

小さな悲鳴を上げた後、多くの足音が聞こえる

 

『なんだ?』

 

『サレと、その部下達だ』

 

まるで、大行進をしているかのような、かなりの人数で森を徘徊していた

 

『なんだぁ?戦争でもすんのか?』

 

『いや、ここ最近で戦争をするなんて聞いてないな。』

 

足音が聞こえなくなると、カノンノは安堵した息を吐いた

 

『なぁ、なんであいつの事とコソコソ隠れてんだ?』

 

エミルは、少し暗い表情になった

 

『面倒事に……いや、最悪な事態を防ぐためだよ』

 

そう言って立ち上がると、前に進んだ

 

『ほら行こう、サレが居るなら、気づかれない内に、早く済ませたいから。』

 

『あっああ、そうだな』

 

エミルの言う事に同意して、パーティは森の奥に進んだ。

 

 

 

 

歩いて15分経った時、

 

『なんか、焦げくさくねえか?』

 

ユーリが、とっさの一言を発した

 

『ん?』

 

エドも、その妙な臭いに感づいた

 

『あっちの方からだな』

 

その焦げ臭い臭いの元へ辿っていくと、

 

草と樹の死角となって見えなかったが、

 

そこには大きな列車が横倒しになっていた

 

『!!』

 

それは、エドが先程乗っていた、あのセントラル行きの列車だった。

 

エンジンから火が出てるのか、一部の部分から煙が出ている

 

『え……?どうしてこんな所に列車が………?』

 

エドは、その列車に2,3歩近づき

 

『俺が乗っていた列車だ』

 

『え?』

 

そう言われた時、全員はエドが何を言っているのか分からなかった。

 

『おい……?どういう事だ?』

 

『俺にも分かんねぇ……。だが、これは間違いなく俺の世界にあった物だ。この世界の物ではない。』

 

『えっと……エドワードさんの世界?』

 

エドは、突拍子に列車に登り、入口から入って行った。

 

『あ!エドワードさん!』

 

他の三人も、付いて来るようにその列車の中に入る

 

『アルー!!居るか!!おーい!』

 

エドは、僅かな可能性だとは分かっているが、弟の名前を呼んだ

 

『アル!居たら返事をしろー!!』

 

だが、そこにはエドの叫びが反響するだけだった。

 

『エドワードさん、一人で行動しないで下さい。魔物が居たらどうするんですか。』

 

エミルが、本気で心配した声でそう忠告した

 

『にしても、こんなでかい列車が森の中にあるとはねえ、大きな音はこれで間違いないよな。なんでこんな所にあるかは分かんねえけど』

 

ユーリが列車の中を徘徊していると、落ちていた本に気が付いた

 

『なんだ?これ』

 

拾ってみると、題名は

 

『錬金術、初級者から上級者まで………?』

 

錬金術は、先程どこかで聞いた事のある単語だった

 

『あっ!それ俺の本だ!』

 

『え!?』

 

カノンノが驚いて、ユーリが持っていた本に近づいた。

 

同じく、エミルも同じような本を拾っていた

 

『こっちの本にも、錬金術って書いてあるけど………』

 

『これは………』

 

どうやら、エドはどこか違う世界に飛ばされた事はこれで確定したようだ。

 

『とりあえず、この本はアドリビドルに持って帰ろう。』

 

『おい、俺の本だぞ』

 

『戻ったら返してやるよ。何か役に立つかもしれねえしな。』

 

エドはそっぽを向き

 

『ムリだろ、理解ができるとは到底思えないね。特に錬金術を魔法とか言っている奴には』

 

ブツブツと、はっきり聞こえるようにそう言った。

 

カノンノは、それを見てただ苦笑いするだけだった。

 

『他には………銃と小刀と青い液体の入ったビン……か』

 

運転席の方も回ったが、

 

死体が二人あったはずなのに、行ったときには、誰も居なく、

 

ただ運転手の帽子が一つだけ転がっているだけだった。

 

カノンノが、錬金術の本を開いて読んでいた

 

そして、エドに質問をした

 

『この本に書かれている事だと、錬金術って化学の力だって言っているけど、そうなの?』

 

エドは、説明するように答えた

 

『まぁな、どなたさんと違い、あんたは物分かりが良いな。俺の世界では、電気とか水とか、そんな自然な存在があるように、錬金術も、ただ当り前な存在なもの。そして規則性があり、基本は特価交換、元になる物質さえあれば、その物質を理解したうえで分解し、そして再構築して、物質を新しくしたり、治したりする事が可能なんだ』

 

カノンノは、相槌をうったが、理解をしているかどうかは、半分しか理解ができていない

 

『つまりは、魔力とか、体力とかは使わなくても大丈夫って事だよね?』

 

『まぁ、必要なのは知力だからな、体力も要らねえし、魔力なんてもんは、俺の世界には存在しない。』

 

難しい話で、ユーリは面倒が臭くなったのか

 

『おら、もう出ようぜ』

 

と、さっさと話を切り替えた。

 

 

 

 

『しょっと』

 

飛び上がるように列車の天窓から飛び出し、列車の外に出た。

 

だが、外に出た時には

 

『お疲れ様、アドリビドルの諸君、ごくろうさまだったねぇ』

 

そこには、先程いたサレと軍隊に囲まれていた

 

『サレ………!』

 

エミルが、敵意をむき出しにした表情になる

 

『俺達が調査し終わるのを待ってたってわけか。良い御身分だな』

 

サレは、不気味に笑い手を広げた

 

『ああ、僕は本当に良い御身分さ。だから、その中に入っていた物を渡して貰おう』

 

エドは、馬鹿にするかのように答える

 

『別に、何にもマシなもんは入って無かったよ。』

 

『ほぉ?』

 

サレは、エドの持っている本や、青いビンなどを見渡す。

 

『ふん。確かにマシなもんは入ってないみたいだな。』

 

サレは、観終わった後に右腕を上げた。

 

瞬間、軍隊は剣を抜いた

 

『!! どういうつもり!?』

 

『悪いけど、そんな大した事ない物でも押収しなきゃ気が済まないんでね、貰うよ、その手に持ってる物全部。ね』

 

一方的な要求に、パーティの全員は不愉快に感じた。

 

特に不愉快に思ったのは、エドだった

 

『ほぉう、じゃぁこっちも全力で抵抗させてもらおうかね』

 

両手を重ねるようにパンと叩き、、右腕に刃を錬成させ、武器を作った

 

『ほう、隠し武器を持っているとは、じゃぁ僕に刃向かうんだね。』

 

『エド、いつのまにそんな武器を……?』

 

エドは、呆れるように言った

 

『別に隠してなんかいなかったよ』

 

『だが刃向かっているには変わりない。行け!!兵士よ!!!!』

 

サレ軍が全員、エド達に剣を持ち向かってくる。

 

『来るぞ!』

 

ユーリは剣を右手に握り、

 

エミルも、ついに鞘から剣を抜いた。

 

瞬間、エミルの目が変わった

 

『オラァ!!!』

 

エミルは、まるで使いこなせているかのように、大剣を振りまわし、サレ軍の複数を吹っ飛ばした。

 

その際に出した掛け声は、まるで今までの雰囲気と違っていて、エドは誰の声か認識できないほどだった。

 

『かかってきやがれ!!ゴミブタ共がぁ!!!』

 

それがエミルの声と分かったのは、闘いが始まった後だった。

 

『えっ!?あれ、エミル……!?』

 

エドは、あまりのエミルの変わりように混乱した

 

『うん……彼、闘いになると、ちょっと性格が変わっちゃうの。』

 

エミルの戦闘風景は、

 

ゴミ、ブタ、カス、ザコ、言いたい放題を言いまくって、どんどん兵士を戦闘不能にするまで痛めつけていた。

 

それは、さっきまでオドオドしていた奴とは、正反対だ

 

『どう見ても別人だろ!!さっきまでの臆病者はどうした!!』

 

臆病者という言葉で、エミルは振り向いた

 

『ぼさっとしてると斬りつけるぞ!!チビ!!』

 

荒々しく、はっきりと言ったその『チビ』発言に、一瞬エドの顔に血管が浮き上がった

 

『だぁぁぁれがチビじゃコラぁああああああああ!!!』

 

唐突に起き上がろうとした瞬間、エミルがエドの方に駆け寄り、

 

 

剣を振り下ろした

 

『うぉおおおおお!!』

 

あまりに唐突な事で、エドはまた再び屈んでしまった

 

『なっ…何すんだこのやろう!!』

 

だが、エミルはエドの方を見ておらず、まっすぐ前を見ていた。

 

見ていた先には、兵士が三人、倒れていた

 

『あっ…』

 

それで、エドは自分が襲われたのではなかったと理解したが、

 

『おい、チビ助がまた一段と小さくなったな』

 

と言ってしまっていたので、さらにエドは頭に血が上り

 

『だぁあああああ!!チビ言うな!!』

 

思いっきり起き上がり、近くの兵士を2,3人素手で吹っ飛ばした

 

『おお、結構堅い拳してんのな』

 

ユーリが、エドの攻撃を見て、納得をした

 

だが、その瞬間に

 

『スキだらけだなぁ!!』

 

『!!』

 

サレが、エドに向かって剣を向けて襲いかかって来る

 

カノンノとユーリが、エドを守ろうと駆け寄るが、間にあわない。

 

『エドワード!』

 

カノンノは叫ぶが、避ける間もなく、それは右腕に剣が当たった。

 

『なっ……!?』

 

だが、その剣が右腕に当たったにも関わらず、右腕は貫通どころか、刺さりもしない

 

それに、当たった時にカァンという音がした

 

『隠し武器が役に立ったか………なら』

 

サレは一旦退いて、今度は剣を振って

 

『これならどうだぁ!』

 

と、左脚に向かって斬りつけた。

 

だが、また

 

カァァァン!!

 

という音がして、さらに剣が根元からポッキリ折れた

 

『なっ………何ぃ!?』

 

見事に武器を失ったサレは、ポッキリ折れた剣を見て、愕然とした

 

『ばっ…馬鹿な!!特注の剣だぞ!!石も、いとも簡単に斬れる代物だぞ!!』

 

『じゃぁ、安もんの剣使ってんのな』

 

ユーリとカノンノも、それを見て何も分からないような顔をしていた

 

『エドワード……どういう事だ?』

 

エドは、溜息をついた

 

『あーあ、てめぇらが来なければ面倒事は無くなると思ってたんだけどなぁ。』

 

そう言って、エドは来ていた赤いコートを勢いよく脱いだ

 

『!!』

 

その場に居た全員が、その光景に愕然とした

 

エミルも、闘いを止めてその光景を見ていた程だった。

 

『なっ……』

 

理不尽だ!!と叫びたかっただろうサレは、一番の疑問をまず第一声に使った

 

『なんだあ!!その腕と脚は!!!』

 

それは、まるで機械のような腕と足、

 

エドが装着していた機械鎧が、全員の目を引きつけた。

 

だが、エドはこの腕と足の事は、あまり重大に言わなかった。

 

『おら、種明かしをしてやったぜ。後は俺に勝てるように、かかってきな』

 

ものすごい挑発をしたエドの発言に、サレはプライドを傷つけられた。

 

『なめるな!俺は剣の腕は一流だ!』

 

そう言った後、腰につけていたもう一つ予備の剣を引き抜き、エドに向けた。

 

だが、エドは瞬時に手をパンと叩き、

 

機械鎧じゃない方の手で剣を握った瞬間、剣が発光して、

 

『まっ……!』

 

今度は剣の刃全体が、砂となって下に落ちていった。

 

『剣の腕が良くても、これじゃぁなぁ……。』

 

サレは、本当に悔しそうにエドを見つめ、

 

『おい!!まずはこのチビから殺ってしまえ!!』

 

と言った。

 

当然、エドはそのチビという言葉に反応した。

 

『だぁぁあかぁぁぁぁあらぁ………ああああああああ!!!』

 

エドのその叫びに、兵士たちは反応して、サレを守るように、サレの周りに集まる、だが、

 

『チビチビチビチビ言うんじゃねぇ!!このボケ野郎共がぁああああああああああ!!!!』

 

エドは地中の砂を錬成させ、巨大な大砲を作った。

 

『うをおおおおお!!!』

 

兵士がその大砲を見て、驚き、その驚きのあまり、腰を抜かした者も居た

 

『エドワード!!』

 

『いいぞチビ!!やっちまえ!!』

 

カノンノはその行動を止めさせようとしたが、

 

エミルはその行動を賛美するかのように、サレの軍隊の方に指を指した

 

『おいエド!!もういい加減に』

 

ドガァン!!

 

ユーリが止めようと声をかけている最中に、エドは大砲を発泡させた

 

『ひぃぃぃ!!!』

 

軍隊は、情けない声で悲鳴をあげ、サレから離れていった。

 

『あっ!!おい待て!!どこに行く!!コラァ!!』

 

その間にも、砲丸はサレの方に向かって行く

 

『うわああああああああああああああああ!!』

 

サレも、情けない声で悲鳴をあげた。

 

砲丸は、サレの方に向かったにしても、

 

上に通り過ぎ、サレのすぐ後ろの樹をへし折り、また後ろの樹に辺り、そこで失速し、地に落ちた

 

『あ……ああ………』

 

サレは腰を抜かし、その場で地に手を乗せていた

 

『勝負あったな』

 

エミルは、持っていた剣を鞘に戻し、サレの元へ歩み寄っていく

 

『エドワード……お前、本当すげえ技持ってんのな………』

 

ユーリが、呆れと驚きと両方の感情を持ち、エドの方に歩み寄った

 

『さて、どうすっかな。俺の事チビっつった報復はまだ済んでねぇしなぁ。』

 

エドが、怒りの混じった微笑みを浮かべ、サレの方に歩み寄る

 

サレは、見苦しいように話をつけてきた

 

『まっ待て!!エドワード君……だったかな!?』

 

『あ?なんだよ』

 

サレは、取引を用意してきた

 

『君のその能力……鋼の右腕と左脚……それに瞬時にあんな大砲を作れるもんと来た。これは、僕の軍事行動にとても役に立つ物だ。確かに僕に刃向かい、攻撃してきた事、それは全部目をつむってやろう。だから、僕の所で働かないか?』

 

それは、軍に入らないかと言う勧誘だった

 

『はぁ?何言ってんだお前?』

 

ユーリは、呆れの声を出した

 

『大体、それだけの能力を持っていてそんな小さなギルドに居る事が、僕は不思議でたまらないよ。どうしてももったいなく見える。僕の所で働けば、手厚い奉仕は用意しよう。給料も他の兵とは比べ物にならないくらいやろう。それほど、僕には君が必要だ。だから頼む、僕の部下になってくれないか?』

 

その図々しさに、最初に声を出したのはカノンノだった

 

『何を言ってるのよ!エドワードさんは私達アドリビドルの人間よ!抜けて貴方の所に行こうだなんて思っているわけないじゃない!』

 

感情を込めて、怒りを露わにした反論だった。

 

だが、エドはそのカノンノの言葉を欺くかのように、あごに手を置き、考える仕草をした。

 

『そうだなぁ、正直、ギルドもほとんど仕方なく入ったって事だし、それにアルが見つかるまでの短期契約だし、それに、俺がギルドってのも格好つかないようだし、ギルドん中には、気に食わねえ奴も居るしなぁ。んー』

 

その行動に、カノンノは少し焦っていた。

 

『エドワードさん!』

 

ユーリは、短い期間で思い入れが無いのか、

 

『じゃぁ、サレん所行くのか?』

 

と、当り前のように言った。

 

『そうだなー。正直、あっちに行った方がアルが簡単に見つかるだろうし』

 

その言葉を聞いて、カノンノはショックを受けた。

 

そして、寂しい感情が、表に出た。だが、

 

『でも、さあすがに俺もこんな腑抜け野郎の下には働きたく無えな。』

 

そう言って、床に落ちている赤いコートを再びはおり

 

『消え失せな。お前んとこのような不安定な職場はお断りだ。』

 

そう断言した。

 

それを聞いたカノンノは、再びエドを信頼し、安心しきった顔をした。

 

『そうか……残念だよ。』

 

そう言った瞬間、サレは懐から拳銃を抜き出し、エドに向けた

 

『君を敵にしたくないんでね!!撃たれたく無かったら大人しくこっちに来な!!』

 

『あっそ』

 

サレが刃向かってきた為、エドはまだ錬成したままの姿の機械鎧の刃で、

 

すぐに拳銃を真っ二つに斬り落とした

 

『なっ!?』

 

さすがの早さに、サレはすぐに拳銃に手を放し、真っ二つの拳銃を音を立てながら地に落ちた

 

『で、次はどんな武器を隠し持ってるわけ?』

 

エドがそう言うと、サレは歯をギシギシ言わせ、エドに背を向け

 

『覚えてろ、これで終わると思うな。必ず僕の物にして見せる』

 

と言って、森の奥へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

『すっげえな。あんなに居た兵隊をたった4人で片づけちまったんだぜ。』

 

ユーリが、剣をジャグリングしながらそう言っていた。

 

危ないから、誰もユーリに近づいていないが

 

『あんな雑魚兵団、ちょっと脅せばすぐに逃げていっただろ。』

 

『でも……エドワードさんは本当にすごいと思いますよ……うん。』

 

エミルが、戦闘終了してからまた元に戻った。

 

こっちの姿の方が、少し面倒くさいが、さっきの荒い性格の奴よりはマシだ。

 

こっちは身長の事は言わないだろうしな。

 

『やっぱ錬金術ってのは、俺達の知っている奴とは結構違うな。』

 

『そっちの錬金術は違うのか?』

 

『ああ、俺達のはエドワードの知っている奴よりかなり面倒くさいものらしい。それに、機能性もエドワードの方が遥かに上だろうな。』

 

ユーリが、ジャグリングしていた剣を再び握りなおし、鞘に戻した。

 

『こっちは、そんなでかい大砲も一瞬で作れねえし、物体を変形とかしたりするのは、俺達の中にも居ないだろうし、便利な能力だな』

 

『そうだね、剣とか折れた時、修理してもらおうかな……。勿論お金は払うからさ。』

 

『そんな遠慮とかすんなって、仲間なんだから修理くらい、ぱぱっと2秒で完了しちまうからよ。』

 

先程から褒められすぎて、エドの鼻が高くなったのか、エドの機嫌が良くなっていた。

 

この調子なら、また皆と仲良くできるかな、とカノンノは思った。

 

『でもエドワードさん。』

 

『エドで良いよ、さっきからエドワードって、なんか息苦しいから止めてくれねえ?』

 

その時、急に親近感を覚えるあだ名を要求した為、唐突でカノンノは少し焦ってしまった。

 

『あ……じゃぁエド。』

 

少しだけ、頬を染めながらも、声ははっきりするように心がけていた。

 

『サレに仲間になれって言われた時、少し遠回りな言い方で動揺したけど、結局は私達の方を選んでくれたよね。』

 

少し照れくさい感じだったが、エドは首をかしげた

 

『は?遠まわし?』

 

『え?』

 

カノンノは、エドの顔を見た

 

その顔は、無表情で、疑問の顔だった

 

『遠まわしじゃねえよ、あれはお前らに向けて言ったんだぜ?』

 

私達に向けて言った。

 

つまり、それはサレの方に有利な事を言っていたふりをして、本当は………

 

『もう少し、待遇を良くしてほしいって事か?』

 

『まぁそれもあるかな。拠点に嫌な奴いるし』

 

『つまり…サレがあんな性格とかじゃ無かったら、エドもサレの方に言ってたって事……?』

 

『まぁ、そうなるわな。』

 

カノンノと、エミルとユーリは、この男はサレよりも性質が悪いのではないのだろうか?

 

と、そう思って疑った。

 

とりあえず、この話はもう聞きたくないとして、

 

ユーリは別の質問を用意した。

 

『なぁ、さっき列車の中とかでもサレとの話し合いとかでも出てきたけど、”アル”って誰だ?』

 

『ああ、俺の弟だ。ちょっと離れ離れになっちまって、探してんだ』

 

エミルは、弟との離れ離れというエドワードに、少し情が移ったように思えた。

 

『そう…なんだ。』

 

ユーリも少し考え、

 

『よし、俺もエドの弟探すのを手伝ってやるよ。』

 

そう言った。

 

『おお、そうか。なら頼むな。』

 

エドは、少し笑顔になりながら。ユーリとエミルと拳同士をぶつけあった。

 

エミルは、少し弱々しく、頼りない感じだったが、

 

カノンノは、少し躊躇した後、拳同士をぶつけあった。

 

『よし、じゃぁ弟の特徴を教えてくれ。』

 

『ああ、まずでかい鎧を着ている』

 

唐突のありえない返事に、エミルはむせてしまった。

 

思いっきり機関に何か入ったみたいで、かなりの咳をしていた。

 

『ああ……でかいってどれくらいだ?』

 

『んーと……2メートルくらいだったかな?』

 

エミルはさらにむせてしまって、膝が地についてしまった。

 

くっ…苦し…と咳をしながら精いっぱいの声を出した。

 

あまりの驚きに、ユーリもしばらく動けずに居た。

 

『おい……お前の弟、どこの化物だよ……』

 

むせるのがようやくおさまった時、エミルも発言をした

 

『えっと……念の為に聞くけど…エドワードさんの弟って……人間?』

 

エドは、不穏な顔でエミルを睨みつけた。

 

また、お通夜のような空気が流れた。ままアドリビドルへ帰宅した

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森の中であった戦闘は、

 

全員無傷のまま、アドリビドムに帰還したが、

 

また再び葬式の空気になった時に、また全員に不安が覆いかぶさった

 

『おかえりなさい。』

 

アンジュは、笑顔でエド達の帰りを迎えた。

 

『何か、情報は見つかった?』

 

『簡潔に言うと、混乱するかも知れんが、どうやら、エドの乗っていた列車が森に激突した事らしい。』

 

その答えを聞いて、アンジュはまだ理解は出来ていなかった。

 

『えっと……?それって一体どういう事かしら?』

 

アンジュはエドの方をちらりと見たが、どこにも傷が無い事に気付き、

 

『エドワード君は、どこかの脱線事故に巻き込まれたって事で、その大きな音が、その事故の音?でも、じゃぁどうしてエドワード君はパプール峠に落ちたのかしら?』

 

『あー。まぁあながち間違っては無いんだけどさ。』

 

エドは、持ってきた証拠品を一緒に説明し、自分に会った身の事を話した。

 

しかし、列車の車両に居たカノンノの事は言わず、ただ別の世界から来た、と言う事だけだが

 

 

 

 

 

 

 

 

説明が終わった後、アンジュは少し唸ったが、

 

『なるほどね、エドワード君はこの世界とは別の世界の人間なのかもしれないって事……ね』

 

『え?信じてくれんの?』

 

『完全には信じられないけど、それじゃぁ貴方に聞きたい事は聞いて行く事になるかもね』

 

そう言われて、エドは少しだけ嫌な顔をした

 

『そんな顔しても駄目よ、私はまだ貴方に配慮して聞かない事にしようとも、貴方の事情を意地でも知りたい人達には、この船には結構居るからね。』

 

『うげぇ、最悪なギルドじゃねぇか』

 

『おい、あまり俺達のギルドの悪口は言うな』

 

だが、ユーリもエドの気持ちは分からなくは無い。

 

さすがに、自分の過去を引っ張り出されるのは不愉快だと言う事を、ユーリは知っているからだ。

 

エミルも、その不愉快さを良く知っている。

 

『そのためにも、私からはエドワード君は別の世界から来た事はできるだけ内諸にしておいてあげるから。』

 

アンジュは、エドに微笑みかけた。

 

だが、エドはまだ面倒臭いという気持ちが大きいのか、溜息をついた

 

そして、さっきまでパーティに居た人達を睨みつけた

 

『あ…大丈夫だよエド……。言わないからさ……その……別の世界から来た事は…マルタにも』

 

アンジュは、再びエドの方に言葉をかけた

 

『さて、エドワード君にはもう一つクエストがあるの』

 

『はぁ?なんでまたそんな』

 

『先程、他のギルドの皆も大体帰ってきたの。まだ帰ってきてない人も居るけど、だからその人達に挨拶してくれる?』

 

カノンノは、またさらに嫌な予感がした。

 

先程も、最悪の自己紹介になったというから、また最悪の自己紹介になりかねないからだ。

 

『エドワード君、またそんな顔しても駄目よ。遅かれ早かれ、いずれ顔を合わせる事になるんだから。』

 

『へいへい』

 

『それに、今すぐにでも自己紹介をしておかないと、遅く出会った時、なぜ自己紹介しなかったと不満を言う人も居るから。このクエストも結構大事なのよ。』

 

『分かった分かった。』

 

エドのその態度に、アンジュは少しばかり不満があるそうだ。

 

だが、同時に機嫌が悪い事が分かった。

 

エドが広場から去っていき、この場にエドが居なくなった時、カノンノに質問をした

 

『…カノンノ。エドワード君、さっきのクエスト中に何かあったの?』

 

 

 

 

 

 

『えーと……この部屋かな?』

 

まだ出会っていない人物の配当部屋は、この船の地図で大体分かるのだが、

 

どんな人物か、そしてどんな性格か、そんな事は何も言われていない為、

 

誰かに出会うのかと、また面倒くさい奴は一人や二人、絶対居る事は確実であり、

 

そいつらだけ無視しようとも、多分そうはいかないだろう。

 

『はぁーあ。』

 

エドはため息を吐いた後、その出会っていない人物の部屋の扉を開けた

 

『うわぁぁ!止めてよイリアぁ、スパーダぁ!』

 

それは、エミルのようなまた頼りの無さそうな銀髪の少年の声がした

 

『ニシシシシ。ルカちゃまのくせに生意気ねぇ!』

 

赤い髪の少女と

 

『ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!イリア抑えつけとけ!今から服の中にこの綺麗な蜘蛛を入れてやるからよオ!』

 

明らかに毒を持ってそうな蜘蛛を持っている帽子をかぶった少年が、銀髪の少年を一方的にいじめていた

 

泣き顔になっている銀髪の少年に、楽しそうな顔をした二人の男女が今まさに蜘蛛を近づけた時

 

『おい、ちょっとこっち注目』

 

エドが割り切って入ってきた、

 

その時、帽子をかぶった少年がエドの方に機嫌悪そうに勢いよく振り向いた

 

『ああ?なんだお前?』

 

あきらかに柄の悪い少年は、エドの方にメンチをきっていた

 

『今、俺たちはお楽しみ中なんだよ、分かったらとっとと失せやがれ』

 

『まっ…待ってよ。もしかしたら新人の僕たちの仲間かもしれないじゃないか。』

 

赤い髪の少女が、銀髪の少年の言葉を聞いて

 

『ふぅん……私達より年下の奴…ねぇ』

 

そう言った後、エドは少しカチンと来た。

 

イリアはそのエドを見て、ニシシと笑った

 

『あんたの名前は?』

 

『………エドワード・エルリック……』

 

機嫌悪そうに、いや実際悪い為、また悪い空気の自己紹介になった

 

『私の名前はイリア、15歳よ。私の方が先輩だから、イリアお姉様と呼びなさい。おチビちゃぁん』

 

その言葉を聞いて、エドはまたキレた

 

『だれがチビじゃコラァアアアアアアア!!!!』

 

イリアにデコピンをしようと近づいた瞬間、

 

『おっと』

 

イリアは、けん銃をエドの前に向けた

 

『ふぅん、やけに血気盛んな少年ねぇ。』

 

『ざけんな!!大体15歳って俺と同じ年じゃねぇかぁぁああ!!』

 

『えっ?』

 

最初に声を出したのは、銀髪の少年だった

 

『ええ―――っ!?ごっ…ごめんなさい!僕も年下の人かと思って……』

 

『それは思っても口に出すなぁ!!!』

 

エドは、銀髪の少年に一瞥した

 

『ひぃい!ごめんなさい!』

 

怯えるように、銀髪の少年は部屋の隅っこに逃げていった

 

『はっはは!!まーたやけに面白い奴が入ってきやがったな。』

 

帽子の少年が、エドの方に肩に手を置いた

 

『あの部屋の隅に居るチキンの名前は、ルカっていうんだ。まぁからかいがいがあるから、暇あればいじってみれば良いぜ。』

 

『そうねぇ、叩けば響くからねぇルカちゃまは。ニシシシ』

 

エドは、例え暇があってもルカをいじりはしないだろう。逆に罪悪感が湧いてしまう。

 

『あっそ。で、てめぇの名前は?』

 

『俺か?俺の名前はスパーダ。スパーダ・ベルフォルマって言うんだ。俺の方が年上だから、俺には敬語を使えよ』

 

『ふん。俺は29歳の奴にため口聞いてっからね。どうするかは知らねえよ。俺が決める』

 

スパーダは、それを聞いて結構楽しくなった

 

『29歳の野郎にか!?お前も結構やる奴なんだなぁ。ヒャヒャヒャ』

 

スパーダはエドの事を結構気に入っていたが、

 

エドはスパーダを馴れ馴れしいと思っていた。

 

『おい、ルカ……だっけか。お前も部屋の隅に居ないでこっちに来たらどうだ?』

 

『あ……はぁ。』

 

ルカが、エド達の方に向かって行くと、

 

二人は静かに笑いながら、ルカを出迎えるように立っていた

 

それを見て、ルカはビクビク震えながら、エドの方に近づいた。

 

『改めて自己紹介をするぞ。俺の名前はエドワード・エルリック。良いか、エ・ド・ワ・ア・ドだぞ。決して俺の事で身長の事は言うなよ!!特にお前!!』

 

エドは、まだイリアのチビ発言を根に持っていた

 

『あー。はいはいはい』

 

イリアは面倒臭そうに払いのけるように返事をした

 

それで、またエドは歯をギシギシ言わせた。

 

『さぁて、ルカさん。分かってるよな?これからまたショーの始まりだってなぁ。』

 

『うっ………』

 

スパーダが、また笑いながら、ルカを脅すようにそう言った。

 

『おい、もうそれくらいにしたらどうだ?』

 

エドはそう言った後、スパーダはエドの方に振り向いて

 

『いいや、止めないね。こいつはな、クエストの最中に俺の愛用の剣を一本折ったんだ』

 

『あ……あれは不可抗力で』

 

『でも、あれはお前の剣が当たったんだから、責任はお前にあ・る・よ・なぁ?』

 

ルカは、もうそれ以上言えないような顔をしていた。

 

『俺が、この蜘蛛を服に入れてやるだけで済ますって言ってるんだぜぇ?これは出血大サービスだと思わねえのか?ん?ルカちゃまよ』

 

その様子を見て、エドは頭を掻いた後、

 

『あー、その折れた剣を直してやっから、もう勘弁してやれよ。』

 

そう言った後、スパーダはまた振り向く

 

『なんだ?お前鍛冶屋の野郎か?』

 

『いや、違うね。』

 

エドは、スパーダの折れた剣と思わしき物に近づく

 

『これを直せば良いんだよな?』

 

『ああ、直せるもんならな、でもなぁ、一日二日かかるんじゃ駄目だぜ。そんなに俺は待てねぇ……』

 

エドは、手を合わせて、剣の方に向けて手をかざした。

 

瞬間、剣の周りが発光し、大きな光が部屋に広がった

 

『!?』

 

光が消えた時には、剣は元通りには

 

『ほら、直してやったぜ。さらに俺のデザインバージョンで』

 

ならなかったが、剣としては一応使えるようになっているものだった。

 

そのデザインは、剣の持ち手に牙が多く付いており、

 

柄の先に角の生えた骸骨が口を開き、その口から刃が伸びていて

 

刃の方にも、牙や角らきしとがった象徴がある。

 

分かりやすく言えば、センスが悪かった

 

『…………………』

 

先程の技もすごかったが、剣がほとんど別物になり、それがセンスの悪い物に変わったのを見たイリアは、

 

そのセンスの悪さに、顔を苦くさせた

 

ルカは、ただ苦笑いすると同時に、この後にまた酷く苛められるという不安があった。

 

が、スパーダの反応は

 

『うぉお!格好良いじゃねえか!!』

 

『え?』

 

『だろう?俺の自信作だぜ。』

 

エドは、褒められた事に対して鼻を高くした。

 

『良いなぁ、これ。この剣を振ってる俺って……すげぇ格好良いだろうなぁ……!!』

 

スパーダの眼が、キラキラと輝いている

 

『ねぇ…スパーダちょっと……マジ?』

 

『ありがとな!!エド!!クエストとの時に俺が必要になったら是非呼んでくれよ!』

 

『ああ!これからもよろしく!!』

 

すっかり仲良くなった二人は、その場で盛りあがった後、

 

エドは上機嫌で部屋から出た。

 

スパーダは、エドが作ってくれた剣をマジマジと見つめている

 

『えっと……良かったね。スパーダ』

 

ルカがスパーダにそう言った後、

 

『そうだなぁ。本当に格好良い剣だから…』

 

ぐるりと、不気味な笑顔で振り向いた

 

『試し切りしてみてえなぁ。』

 

『えっ?』

 

ルカは、後ろからイリアに掴まれた

 

『ええ!?えぇっ!?』

 

『さぁて、どんだけ斬れるかなぁ?ヒャヒャヒャ……これほどの剣なら、スパッとグサっといけるだろうなぁ……』

 

不気味な笑いをしながらスパーダは剣を持ってこちらに近づいて来てる。

 

まだスパーダは、ルカの事を許していなかった。

 

『すっスパーダ……!?ねぇ、もう直ったんだよ!?ねぇ!?』

 

後ろで、イリアが笑った

 

『やぁねぇ、今は苛めてるんじゃないわよ。ただ、試し切りをするだけじゃない♪』

 

『いっいやぁあああああああああああああああ!!』

 

ルカの叫び声が、船全体に響いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜アドリビドム研究室〜

 

扉から見ると、他の部屋とは変わらないが、

 

中に入ると、さまざまな実験施設がそろっていた。

 

『はじめまして、君が新しく入ったエドワード君だね。』

 

そこには、肌は少々黒い青年が立っていた

 

『ん?ああ、そうだけど。あんたは誰?』

 

『ふむ……』

 

初対面に対する態度では無い事で、少し戸惑ったが、

 

青年は自己紹介をした

 

『私の名前はウィルと言う。覚えといてくれ。』

 

青年はそう言った後、エドは研究物の方を見ていた。

 

『なぁ、これ全部研究に使ってんのか?』

 

それは、薬品や妙な生物が液体の中に漬かされていた

 

『ああ、それらは全て私が見つけた未確認の生物だ』

 

『へぇー。こんな生物が居るのか。こいつはすげえや』

 

エドがそう言うと、ウィルは目を光らせ、自信気に語りだした。

 

『ああ。君もその生物の素晴らしさ、美しさが分かるのか。そうだ。未知なる生物は人間の好奇心を大きくくすぐられる。私もその中の一人でね、まだ見た事の無い生物と言うのは、おそらくまだ人間が見つけている生物の倍は居るのではないかと私は思っていて、それらの全てを捕獲し、研究する事が目的で、私はこの研究室を利用している事が』

 

『うわーすごーい。この生き物へーん。はっはっはー。』

 

エドは、ウィルの話を全く聞いていなかった。

 

『貴方が、新人のエドワードさんでしょう?』

 

振り向くと、髪型から一瞬、先程のイリアを重ねたが、顔が全然違う為、すぐに別人と理解した

 

『ん?まぁ。新人ね。』

 

エドは、そう言えば俺は新人だと言う事を自覚をしていなかった。

 

だが、それはあまり気にしないでいた。

 

『私の名前はアニー・バースと言います。これからもよろしくお願いいたしますね。エドワードさん。』

 

アニーは、エドに微笑みをかけ、挨拶をした

 

『ん?ああ。よろしく』

 

『そして、あそこに居るのが、』

 

アニーが指差した方向には、変な薬品に青い鉄のような物体を入れて反応を観察している女が居た

 

『ん?…あら、貴方が新しく入ったエドワードちゃんって言う子?』

 

ちゃん付けされた事に、エドワードは不快感を覚えた

 

『…………』

 

『あの………ハロルドさん。一応、男の人なのですから、ちゃん付けはちょっと……』

 

ハロルドが、エドの頭をポンポンした

 

『良いじゃないのよぉ。こんな小さく愛らしいんだから、ちょっと目つき悪いけど、エドワードちゃん、略してエドちゃんで良いじゃないの』

 

小さいと言われ、エドの身体は怒りでガタガタ震えた

 

『あら?』

 

ハロルドは、その異変に気付いたのか、少し離れてエドを観察している

 

『てめぇ……ババア今なんつった……!?』

 

『あら?随分生意気な口を聞くのねえ。小さいくせに?』

 

エドはさらに顔に血管を浮き上がらせ

 

『だぁああ――――!!ちゃん付けするな!!チビ言うな!!小さい言うなぁぁあああああ!!!』

 

あまりの大きな声で、アニーは驚き、ウィルもその場で固まってしまった。

 

『あら?小さいとかで反応しちゃうの?じゃぁ、チビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビ』

 

パン!という手を合わせる音と光が、部屋を包んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、リタとエステルが二人並んで歩いて話していた。

 

それは、新入りの仲間の話だった。

 

『全く、本当になんであんな礼儀知らずの奴がこのギルドに入ったのかしら。』

 

リタは、まだ不快感が拭いとれないのか、エドの悪口を言っていた。

 

だが、エステルは、

 

『えっと……。確かにちょっと荒い感じはしますけど。』

 

エステルは、笑顔になって、ちょっと自信あり気に答えた

 

『きっと、リタが思っているよりも反対に、とても優しい人だと思いますよ。』

 

『そうかしらねぇ?』

 

リタが、疑問の声をエステルにぶつけた後、話題を少しずらした。

 

『それに、リタも先程のエドワード君の錬金術って言うの、ちょっと気になるんじゃないですか?』

 

リタは、少しだけ頭を悩ませ

 

『まぁちょっとはね、ただ呪文を唱えずに手を合わせただけで、あんな技を出すし』

 

『やっぱり、魔法とは少し違う物だと思いますよ。エドワード君が言う、別の錬金術という名前の何かかもしれませんよ』

 

エステルの言葉に、リタは少し迷ったが、

 

『冗談じゃない。ここであいつの能力を魔法じゃ無いと認めるのは、私のプライドが傷付くわ!』

 

その言葉には、さすがにエステルも苦笑いをするしかなかった。

 

『それに、私なんかあいつの事、気に入らないのよね。生意気だし、錬金術を取り違えているようにしか見えないわ』

 

エステルは、なんだかリタがエドと重なって見えたような気がした。

 

『とにかく、気に入らないったら気に入らないの。』

 

そう言って、リタは背伸びをしてあくびをした

 

『さぁて、そろそろ休憩も飽きたし、研究室で実験の続きでもしようかしらね。』

 

そう言って、研究室の扉の前に立ち、ドアノブに手を賭けた瞬間、

 

扉が、爆発した

 

『キャァアアアアア!!!』

 

リタは、いきなりの出来ごとに驚いて、尻もちをついてしまった

 

『なっなっなっ!何が起こったの?!』

 

瞬間、リタの横でハロルドが走り過ぎた。

 

ハロルドは、笑顔だった

 

『ハロルド!?ちょっとあんた一体何をしたの』

 

全部の言葉を言い終える前に、目の前に地面が発光し、床からトゲがいきなり突起したのが見えた。

 

『んっ!?』

 

『おらぁぁぁあああああ!!待てやクソ女ぁああああ!!絶対ぇ許さねえぞぉぉぉおおおおお!!!』

 

エドはそう言って、また手を合わせて壁に手を付け、壁から突起を出したが、

 

ハロルドは、それもあざ笑うかのようにヒュルリと避けた

 

『なっ……あいつ……!!』

 

一瞬、連続で簡単にこんな大きな突起物を出すエドに、驚きを隠せなかったが、

 

すぐに研究室を爆破した怒りに変わった

 

『待ちなさいよ!!コラァアアア!!!』

 

これで、3人の追いかけっこが始まった。

 

 

爆発の煙が引いた頃、

 

そこにはアニーとウィルが真っ白に立ちつくしていた

 

『あの…………』

 

エステルは、二人にかける言葉が見つからなかったが、とにかく、一つだけ言葉を出した

 

『研究の方は、上手く行ってますでしょうか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おらぁ!!待てぇ!!俺はてめぇを一発殴らねえと気が済まねぇんだぁぁああ!!』

 

『あぁら、女の子に暴力振るうなんて、出来てない男ねえ』

 

エドは、手をパンと叩いたと同時に、大声を上げた

 

『男女平等!!!』

 

そう言った後、ハロルドの前に壁を作り、行き手を妨げた

 

『おっと』

 

ハロルドは、何も慌てずに、しょうがないようにその場で立ち止まった

 

『やっと捕まえたぜケバ女ぁああああ!!!』

 

ゲヘヘヘヘ!!と不気味に怒り狂った鬼のような笑顔をしているエドワードは、機械鎧の方の腕をワシワシとしていた

 

その後、機械鎧でない方の腕をポキポキ鳴らしてハロルドの方に近づいた。

 

だが、

 

『ぐおお!!』

 

エドの後頭部に、分厚い辞書がヒットし、辞書が地に落ちた時、エドは後ろ頭を押さえた

 

『痛ってぇ〜〜!!』

 

エドは、その辞書を投げてきた奴に振り向いた

 

『てめぇかぁ……!!』

 

エドまた、鬼のような顔になった

 

リタもまた、鬼のような顔になっている

 

『あんたねぇ……一体どれくらい痛い目合ったら船をこんな滅茶苦茶にするのを止めるのよ!!ちょっとしたくらいで船を改造して貰っちゃこっちが困るのよ!!』

 

『ふざけんな!!こいつはなぁ!!俺の事をチビ82回!!小さいを3回!!合計85回言ったんだぞ!!』

 

『え?数えてたの?すさまじい聴力ねぇ』

 

リタは呆れの顔になり、ため息をついた

 

『はぁ、本当にこの先が思いやられるわ。これから先、こんな奴と一緒に仕事をする時も出てくるわけ?』

 

『俺も嫌だぞ!!特にお前と後ろに居るこのケバ女とはなぁ!!』

 

『あらぁ?ちょっとそれは酷いんじゃないかしら?』

 

ハロルドは、エドが自分に敵意を持っているとも知らない様にエドに近づいた

 

『私は、エドちゃんと仕事ができないなんて嫌よぉ?』

 

『なっ……なんだ?気持ち悪い』

 

その時、エドは怒りというより気味の悪さを感じていた

 

『だって、あんた錬金術っていうのを使うんでしょ?それも私達が知っている物とは全く違う錬金術。今、間近で見たけど本当に面白い能力だったわよ。ふふふ………』

 

この女、俺に追いかけられる事を楽しんでいたのか。

 

エドは、さらに不愉快な気持ちでいっぱいになった。

 

『そんなもん、魔法で片づければいいもんじゃない。』

 

『そんなわけに行くと思う?さっきの大きな技を大量に使っているにも関わらず、この子には魔法を使う魔力と言う物が全く感じられないのよ。それに、この錬金術という興味深い能力を何度も溜めも躊躇もなく使えていたわ。』

 

ハロルドは、まるで欲しい玩具を見るような目でエドを見ていた

 

エドは、その目が気持ち悪くてたまらなかった

 

『だから……何が言いてえんだよ』

 

『唐突に言うとねぇ、私に錬金術教えて♪』

 

『やなこった!!!』

 

返答するこの間0.1秒で、エドは言葉を出した

 

『なによぉ。そんな冷たく言わなくて良いじゃない』

 

『ふざけんな!!なんで俺が俺に向かって身長の事散々馬鹿にした奴に錬金術を教える義理があるんだ!!』

 

エドは、ハロルドに対する噴怒と気味の悪さに、かなりの嫌悪感を覚えていた

 

『分かったわよぉ。チビって言わないで良いんでしょう。言い方も変えるわよ。じゃぁお豆先生、錬金術を習わせて下さい♪』

 

エドの背後に、どす黒いオーラが漂った

 

『豆ぇ……言うなぁあああ!!!』

 

手をパンと叩いた瞬間、上からピコピコハンマーが落ちてきた。

 

そのピコピコハンマーがエドの頭を直撃した

 

『うおっ!なんだ!?』

 

振り向くと、リタの後ろで、さらに鬼の顔をした大きな帽子をかぶった子供が立っていた

 

『貴方ですか…!さっきから僕の船を滅茶苦茶にしている奴は!!』

 

『あぁ…!?僕の船ぇ?』

 

船長はアンジュかと思っていたが、

 

本当は、こいつが船長なのだろうか。だが、そのようには見えないような気がする

 

『良いですか!!この船は第代昔から言い伝えられていたアイフリードの残した世界で一つの船なんですよ!!』

 

『アイフリード?』

 

カノンノから聞いた事のあるその人物の名前に、

 

少しだけ、エドは引っ掛かった。

 

『早く元に戻してください!!』

 

少年がそう言うと、エドはハロルドから離れるように歩いて、分解し、元通りに再構築した。

 

『あら?ちょっとぉエドちゃん?』

 

だが、その際にまた少年から怒られた

 

『勝手に変な風に改造しないで頂きたい!!』

 

エドは、突起だらけの床や壁を、元通りにした後、さらに牙と角とサメでリメイクさせていた

 

『はぁ!?こっちの方が格好良いだろうが!』

 

『格好良い格好悪いの問題じゃありません!元に戻すか元通りにするかの問題です!!!!』

 

その光景を見たリタは

 

『錬金術……ねえ。』

 

それは、エドを馬鹿にするように言ったが、

 

簡単にあんな大きい物を作ってしまう技術と言うのは、やはりリタも驚く事があるのは事実であり、

 

その事に、リタは少し悔しさを覚えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あーあ。行っちゃった。でも、まぁ良いわ』

 

ハロルドは、見えない所で不気味に笑い、呟いた

 

『絶対にあきらめないから♪』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あー。酷い目にあった』

 

さっきまで、修理を行っていたエドは、

 

錬成するに至っては、普通にすれば2分もかからないが、

 

どうしても俺流にしたかった為、それでまた喧嘩をしてしまい、その疲労が響いた

 

『普通に直せるのなら、最初からやってください。』

 

偉そうな態度で、かなり気にくわなかったが、

 

どう考えても悪いのはエドであり、エド本人も自覚している為、やはり反論するのは難しい為、素直に従った。

 

『自己紹介は終わったかしら?』

 

アンジュが、疲れきっているエドにジュースを差しだした

 

『ああ、あんがとございます』

 

そう言って、不格好にジュースを飲むエドにアンジュは話をした

 

『さて、次のクエストなんだけど……』

 

その言葉を聞いたエドは、ブバッとジュースを一気に噴き出した

 

そして、むせてしまった

 

『ゲホォ!!ゲホォ!!あっ……あんたいきなりなんだ!!またクエストか!?』

 

『ええ。これくらいで根を上げては駄目よ。大体皆、一日に3回は依頼をこなすから。』

 

それを聞いたエドは、またうげぇという顔になった。

 

『まぁ、今回の依頼はすぐに終わると思うけど』

 

アンジュは、エドにクエストの内容を告げた

 

『次の依頼は、予定の時間が過ぎているのだけど、まだギルドに来ていない人が居るの。』

 

エドは、その言葉を聞いて、最初は理解ができなかった。

 

『…は?』

 

『だから、ちょっとその人をこのアドリビドムまで連れてきてほしいの。たったそれだけの依頼よ。』

 

エドはため息を吐いた後、しばらく経って

 

よし!!と立ち上がった

 

『分かった。で、どこに行けば良いんだ?』

 

行こうと思ったのは、その場所にアルが居る可能性があるからだ。

 

いくら、アルも鎧の姿とは言え、万が一の時がある。手遅れという最悪の事態が無いように、いろんな場所に回る必要があるからだ。

 

『ブラウニー坑道って言う所に居るんだけど…』

 

『坑道?』

 

予想外な場所に指定され、少し驚いていた。

 

『今回は、その人に結構詳しい人に連れ添いとして行ってきてもらうから。見つけやすいとは思うわ。』

 

『そいつの名前は?』

 

『リカルドって言う人よ。』

 

エドは、名前を聞いてもピンとは来なかったが、

 

『どんな野郎なんだ?』

 

『野郎はちょっと……彼はちょっと初対面の人に厳しい所があるから、その…発砲には気を付けてね』

 

その説明を聞いて。エドは少し血の気が引いた

 

『おい!!発砲するってどういう事だ!!』

 

『だっ大丈夫よ大丈夫!ルカ君も一緒に付いて来てくれるから!!大丈夫!!』

 

エドは、一気に心配になりつつあったが、クエストを取りやめるにも何かプライドが許さず、止められなかった。

 

『分かったよ。行けば良いんだろ』

 

そう返事をしたら、アンジュは嬉しそうな笑顔をした

 

『そう。ありがとうエドワード君。それじゃぁ、ルカ君を呼ぶから、待っててね。』

 

アンジュが、ルカを呼びだしてから

 

 

 

1分後

 

 

ルカは服が鋭利な物で裂かれてズタズタになっていて、泣きながらアンジュの方に来た

 

その光景を見たアンジュは、目を見開いたまま固まった

 

『どっ…どうしたのルカ君!?』

 

エドは、先程あったルカに何があったのか、全く分からなかったが、

 

『ううん……大丈夫……大丈夫だから……着替えてきて良い…?』

 

そう言って、アンジュはルカの手を握って更衣室まで案内していった。

 

『おい…ルカ?お前一体何があったんだ?』

 

エドが質問をして、しばらく間が空いた後、ルカは答えた

 

『えっと……いや、なんでもないよ。だから心配しなくて良いよ。…うん』

 

それは、気遣っているようにも見えたが。

 

何に気遣っているのか、エドは分からなかった。

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〜???〜

 

ロイが、エルリック兄弟が乗っていたと思われる列車が消えた場所に生えていた大きな樹に触れた瞬間、

 

大きな光が包まれ、目を開けたら、そこには異空間が広がっているのが分かった

 

『なんだ………?乾燥しているな』

 

視界がまともになり、だんだん色が判別できるようになった所、

 

その場所は、砂漠である事に気が付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ブラウニー坑道〜

 

エドとルカがその場所に辿り着いた時、

 

苔の臭いがするその場所と、石畳とその壁は、

 

『ここは…何かの遺跡か?』

 

『うん……そうだった形跡はあるよ。』

 

二人には遺跡だと思われ、少し緊張感が湧きあがった。

 

『で、この遺跡のどこかに帰って来ねぇ奴が居るって言ってたが、』

 

エドは、ルカの方に振り向く

 

『え…?何?』

 

『どんな野郎だそいつ?ちゃんとした大人だとは聞いたが』

 

『うん……ちゃんとした人だよ。ちょっと怖いけど……』

 

『ふぅん。まぁ誰であっても連れてくれば良いんだよな。結構探す事になりそうだな』

 

だが、結構探す事になれば、アルがこの遺跡に居る可能性だって大いにある上に、この遺跡というのは、エドも結構好奇心をくすぐった

 

『なんでそんなに楽しそうなの?』

 

『いや、まぁ遺跡っていうのは滅多に見た事無えしな。』

 

そう誤魔化した

 

『それにしてもリカルドさん。なんでまたそんな狩りに急ぐかなあ。探すこっちの身にもなってほしいな…。』

 

少し暗く小さい声で、ルカはそう言った

 

『で、案外近くに居たりしたりするかもな』

 

エドは元気を少し出してやろうと冗談を言ったが

 

『あ』

 

『お?』

 

目の前に、アンジュが言っていたリカルドらしき人物を発見した

 

『マジで近くに居やがったな……』

 

エドは、あっけなさを感じため息を吐いた

 

『なんだ?お前は』

 

リカルドは、エドに疑問の声を出した

 

『ああ、俺は新しく入った…』

 

『ルカ、年下のガキと遊ぶなら他の安全な場所でしろとアンジュに言われなかったか?』

 

険悪な顔で発したその言葉に、

 

エドは、一瞬口元がピクンと反応したように動いた

 

『あっいえっリカルドさ』

 

『そんな小さい子をこんな危険な場所に連れて来るな。俺の気が散る上に魔物が迫って来るぞ』

 

言いたい放題のリカルドの発言に、

 

エドの顔は、大量の湯気が湧いていた

 

『違うんです。リカルドさん…。』

 

『なんだ?ただのガキじゃなくてお前の子分か弟分なのか?』

 

エドの頭の湯気が消えた。

 

代わりに、何か黒い煙のような物がエドの周りにまとまりついている

 

『とにかく、ガキ同士の遊びなら他でしろ、特にその小っこいのはな。こんな危険な場所に出歩く物じゃ無い。帰れ』

 

リカルドは、そう言い残した後、隣の部屋へ進んで行った。

 

『あの……エドワードさん?』

 

エドは、後ろから見ても分かるようにプルプルと震えて下を向いていた

 

『その…悪気は無いんだよ。説明をすればきっと分かってくれるから。』

 

ルカが、一生懸命フォローに回った

 

だが

 

『……さん』

 

『え?』

 

エドは震えを止めて、下を向いていた顔を正面にあげた。

 

『許さんぞヒゲぇえええええええええ!!!!国家錬金術師の恐ろしさを思い知らせてくれるわぁああああああああああああああああああ!!!』

 

その顔は、極限にまで顔に血管を張り巡らせ、鬼のような怒りで、舌の先は二つに分かれていた。

 

それはもう、化物の顔だった

 

その顔を見たルカは、驚きのあまり尻もちをついてしまった

 

『ジュラララララララララララララララララララララ!!!!!!!!!!』

 

掛け声を叫びながらリカルドの方を追いかけていったエドに気付いたルカは、エドの方へ追いかけた

 

『あっ!!待ってエドワードさん!!』

 

だが、怒り狂ったエドの脚は到底ルカの脚力では追いつけなかった。

 

ポニー系の魔物並に早いその足の音は、リカルドもすぐに察知した

 

『ん?』

 

振り向くと、さっきの少年がこっちにまで追いかけてきていた

 

『おらぁぁああああ!!大人しく御用されろやぁああああああああああ!!!』

 

必死な形相で追いかけてきていたその少年に、

 

一発銃弾を少年の足元に撃とうとしたが、さすがに子供を撃つ訳にもいかず

 

『ちっ』

 

まず少年の方に駆け寄り

 

『観念したかぁ!!ヒゲ男!!!』

 

少年の横の壁にまでジャンプをし、壁を蹴るようにして向こう側に移った

 

『なっ!?』

 

そしてある部屋の中に入り、足元のスイッチを押して扉を閉めた

 

これで、あのガキも入って来れないはずだ。

 

一旦落ち着きを取り戻したリカルドだが、それはすぐに消え去った

 

後ろから、大きな光が急に現れたのである

 

『ん?』

 

振り向くと、扉の隣にもう一つ扉があった

 

前には、あんな扉は無かったはずだが、

 

その扉から、さっきの少年が現れた

 

『どの部屋に逃げても無駄だぜ?』

 

『ほう』

 

どうやら、この少年はなかなか出来るようだ。

 

戦闘意欲満々のその目に、壁からいきなり扉を作りだす技

 

結構楽しめるかもしれない。

 

リカルドも、相手を倒すように戦闘態勢に入った秒後に、ルカが少年の作った扉から現れた

 

『エドワードさん!!』

 

少年の名前を言って、この戦いを止めようとしていた

 

『ガキ、名前はエドワードと言うのか』

 

『ああそうだ。あとガキは止めなオッサン』

 

また戦闘態勢に入ってから、ルカはまた間に入って来た

 

『止めて下さいよ!エドワードさん、僕たちはアンジュさんに頼まれてリカルドさんをギルドまで迎えに来たんでしょ!?闘ってどうするの!?』

 

『黙れぇ!!俺は今日一日だけで”チビ”とか”小さい”を今までにないほど大量に言われてきたんだ!!!ここでストレスを発散させねえと俺の気が済まないわぁ!!』

 

ふっ。とそのガキのような思考にリカルドは笑みを浮かべる

 

『ルカ、アンジュと言ったか?』

 

『え?ああ。アンジュさんに頼まれて、ギルドまで連れてくるように言われたんです』

 

リカルドは、銃の安全装置を外しながら答えた

 

『悪いが、もう少し時間がかかると言っておいてくれ』

 

そう言った後、エドも少し楽しそうな顔になる

 

『あんたもこの状況楽しんでんだろ?』

 

『まぁな、見た所お前も結構やる奴だろう』

 

『じゃぁ……始めるぜ!』

 

さっきまで小さいと言われた憤慨はまだ消えていないのか、ストレスを解消させるために身体を動かしたいのか、エドはいつもより好戦的になっていた

 

パン!と手を合わせた後、床が発光し、床からトゲが突起していった

 

『ぬっ』

 

どうやら結構凄腕の魔法使いのようだとリカルドは察した。

 

そのトゲの突起を、リカルドはヒュルリと余裕にかわした

 

結構やるようだな。と呟いた後、麻酔銃をエドに向けた

 

『今から俺が麻酔銃を使う。それでお前が見事に受けて眠ったら俺の勝ち。一発でも俺に殴りつけたら、お前の勝ちでどうだ?』

 

ガキの遊び程度より少し上、としか思っていなかったのか、そのような遊びで済まそうと考えた

 

『良いのかよおっさん。後悔するぜぇ?』

 

『止めた方が良いよエドワードさん。リカルドさんは射撃の名人だよ?』

 

エドはまた手を合わし、錬成の準備をする

 

『射撃の名人なら、俺の知っている奴にも居るさ。』

 

そう言って、エドは足元に壁を錬成し、上まで上がった

 

『何も考えていないのか?』

 

上に行けば、落ちていった時に身動きが取れなくなる。

 

その時は、狙い撃ちのサービスのようなものだ。

 

だが、エドは

 

『行くぜ射撃のおっさん!!』

 

その壁をさらに錬成をして、その壁からトゲが突起して整列するように徐々にリカルドの所に辿り着いて来る

 

その瞬間、エドは壁の後ろ側に隠れるように飛び降りた

 

『考えたな、ガキ』

 

リカルドは、その場所から避けて横に飛ぶと、

 

隠れていた壁が、さらに広がっていくのが見えた

 

『なに?』

 

どうやら、壁の後ろの行動範囲を広げたようだ。

 

どこの端から出てくるのか、予測不能と言う事か

 

『銃の速さを侮っているな』

 

そう呟いた後、銃を構えて、錬成された壁の端二つに警戒をした

 

『どこからでも出てきやがれ』

 

そう言った瞬間、また奴が錬成する時の音が聞こえた

 

『左か!!』

 

そう言って左に構えた瞬間、リカルドの真正面の床に、ひびが入り、

 

そして、爆発するように大きな音が鳴った

 

『オラァアアアアアアアアア!!!』

 

その爆発と共に、エドがリカルドを殴りにかかってくる。

 

『考えたな、だが』

 

その場所も、俺の管轄内

 

早撃ちにも自信がある。勝負あったな

 

エドの額に向かって発砲した。

 

だが、エドは右腕で防御しようとする。

 

馬鹿が、刺されば終わりだ。とリカルドは考えた

 

キン

 

だが、その思いとは裏腹に麻酔弾はエドの右腕に当たりはしたものの、

 

麻酔弾は鉄の壁に当たるように跳ね返された

 

『!?』

 

『ラァ!』

 

エドの右腕の拳がリカルドの頬に直撃した。

 

その破壊力は、向こうの壁にまで辿り着くまで吹っ飛ぶほどだった。

 

『後悔しただろ おっさん。』

 

『……!!』

 

リカルドは、まだ分からぬようにエドの顔を見る

 

右腕に、何かをしくんでいたのか?

 

少しだけ破けた右腕の所には、破れてはいるが、中までは確認できない

 

瞬間、エドは赤いマントを脱いで、リカルドに見せびらかすように右腕を見せた

 

『えっ?!』

 

最初に叫んだのはルカだった。

 

その腕は、機械で覆われており、でも普通の腕のように細かく動いているのだから

 

『ほう……そうか。お前、右腕を改造しちまっていたのか…』

 

エドは、ふんと鼻を鳴らし

 

『できれば、改造何かしたくなかったけどな』

 

と言った。

 

『さぁて、俺もスッキリした所で、おっさん。ギルドにまで連れていかせてもらうぞ』

 

リカルドは、一瞬悔しそうな顔をするが、すぐにあきらめるようにため息を吐いた

 

『ねぇ…エドワードさん?その腕……一体どうしたの…?』

 

『まぁ、そこらへんは暗黙の了解って事で』

 

ルカが質問をしてきたが、エドは軽くあしらった

 

『立てるか、おっさん』

 

そう言って、機械の方の腕でリカルドに腕を伸ばした

 

『ふん、お前のようなガキに一発、俺の頭に傷を付けられるとわな』

 

そう言って、リカルドは素直にエドの伸ばした腕を掴み、そして立ち上がった

 

『坊主、名前はエドワード、だったか?』

 

『坊主っていうのを止めろ!エドで良い。もしくは名前で呼べ!』

 

身長の事と、子供扱いをされるのが嫌なのだろう。

 

それが子供らしく、少し呆れを生じた。

 

だが、その子供に俺は負けたのだ。文句は言えまい

 

『そうか、分かった。』

 

そう、無愛想にリカルドは答えた。

 

だが、納得してくれた事でエドも少しは満足した。

 

帰ろうと振り向いた時、隣の部屋の向こうに、ピンク色の少女が見えた

 

『ん?』

 

あの少女、どこかで見たような気がする

 

エドは、そう思いながら、向こうに居る少女を見つめた。

 

すると、少女はこちらに向かって歩き出した

 

『エドワードさん、どうしたの?』

 

ルカがエドの方に振り向き、エドの見ている方向を見た

 

『あっ。カノンノさん?』

 

ルカは、この場所にカノンノが居る事に疑問を持ちながらも

 

『何をしているんだろう…』

 

瞬間、リカルドは銃を抜き取った

 

『リカルドさん?どうしたんですか?』

 

『伏せてろ』

 

その豹変振りを見て、ルカは戸惑った

 

『まま…待って!リカルドさん!!あの人はカノンノさんと言って仲間の…』

 

だが、まるでルカの話を聞かないかのように発砲した

 

リカルドさん!と、ルカの叫び声が聞こえたが、

 

カノンノは、その銃撃を消えるように避け、どんどんこちらに近づいて来ている

 

『!!』

 

目の前に来た時、リカルドは芯を捕らえたかのように発砲した。

 

だが、

 

当たらなかった上に、リカルドの肩には深い傷が出来ていた

 

『……!!』

 

その光景をみたルカは、一瞬何かなんだか分からなかった

 

だが、エドはその光景を見て、ようやく思い出した

 

『てめぇ!!』

 

カノンノに似た、真っ白な服を着ていた少女。それは、あの時、エドと共にトレインジャックの列車に乗っていた時に居た少女だった

 

カノンノに似た少女の剣には、リカルドの血が塗られている

 

『カノンノ……いや……違う…?』

 

ルカは、まだ混乱をしていたが、

 

リカルドを斬った事で敵意は少しだけ現れ、剣を引き抜いた。

 

『こいつ……!!』

 

リカルドは、負傷していない方の手で、ハンドガンを手に持ち、カノンノに似た少女に銃を向けた

 

だが、やはり発砲しても当たらない

 

『おっさん!!撃つのを止めろ!!』

 

『!』

 

エドがそう叫んだ後、カノンノの足場を盛りあがらせ、天井近くまで上げた。

 

そして、瞬時に足場を脆くさせて、バランスを崩させて、少女は地に引っ張られる

 

『でかした…!』

 

空中からは身動きができないだろう、その瞬間に、リカルドは銃口を上に向けて、地に落ちてくる前に少女に発砲した。

 

見事にそれは頭に当たった。

 

少女の頭は後ろに反っていった

 

『ふん』

 

だが、瞬時に顔を元の位置に戻し、

 

撃ってきた弾丸を口で銜えたのを見せびらかすように位置に戻った

 

『!!』

 

それを見たルカは、人間じゃないと判断したのか、

 

『うわぁああああ!!』

 

少女に向かって剣を振りまわした。

 

だが、どれもいとも簡単に避けていった。

 

『きゃははははははははは!!』

 

普通じゃないその目を見て、エドは反撃の確信をした

 

床を錬成し、床を砂のように細かい粒だらけにした

 

『?』

 

少女は疑問に思った顔をした。

 

そして、出してたまるかと思わんばかりに、また再び錬成をし、元の床に戻した

 

『あれれ?』

 

足が地に埋まった状態になり、少女は動けなくなっていた

 

『さぁて、それじゃぁ今度はこっちの手って事だ』

 

エドは腕組をしながら、少女に近づいて行った

 

『てめぇ一体何が目的だ?俺達をこの世界に連れて来させた上に、このおっさんを攻撃したりとかよぉ』

 

少女に質問責めをしていったが、少女の口は開かない。

 

いや、ただ笑う為に開いているとしか言えない

 

『ちっ話にならねえ』

 

リカルドは負傷した肩に手をやって、少女に近づいた

 

『なんで俺を襲った?』

 

それは、敵意と一緒に混じった疑問の声を出しながら

 

少女を睨んだ

 

すると、少女の笑いは止んだ

 

そして、ボソリと言うように答えた

 

『楽しかったから』

 

『え?』

 

ルカは、声が小さくて聞こえなくて、良く分からなかったが、

 

その言葉が聞こえた地獄耳のエドは

 

『はぁ?答えになってねえぞ』

 

と言った。

 

そういえば、列車の中でも、ほとんど答えになるような事は言っていなかった。

 

『あ、時間だ』

 

少女がそう言った瞬間、

 

少女の頭から煙のような物があがった

 

『!?』

 

その煙が出ていくたびに、少女の体が透けていっている

 

それは、まるで固体から気体へ昇華するように

 

『逃がすと思っているのか』

 

そう言って、リカルドは少女の腕の方を狙って撃った。

 

だが、弾丸は少女の腕を通った上に、その場所から少女の体が、煙が散るように、無くなった。

 

本当に、彼女は煙そのもののようだった。

 

そして、ついに全ての体が無くなった時、

 

その場所には、足が埋まっていた跡の穴二つだけが残っていた

 

『なんなの……?一体……』

 

ルカが疑問の声を言い終えた瞬間、後ろで倒れる音がした

 

リカルドが、肩を押さえながら蹲っているのだ

 

『! リカルドさん!!』

 

ルカがリカルドをゆさぶったが、

 

痛いから止めろと、リカルドは小声で言った

 

『エドワードさん!!早くリカルドさんをアドリビドムに連れていかなきゃ!!』

 

『ああ!分かってるよ!!』

 

エドは、神殿の床で乳母車(牙と角だらけ)のような車輪付き担架を作り、リカルドを二人掛かりで担架に乗せ、

 

そのままアドリビドムへ向かった

 

アドリビドムへ向かって行く最中、リカルドは少し微笑んだ

 

『本当に便利な能力だな……。』

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