魔動少女ラジカルかがり SHOOTING -第十一話- 【Epilogue】
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 それ故に……悔いの残らぬよう、やり遂げなさい。

 

 我、生きずして死すこと無し。理想の器、満つらざるとも屈せず。

 

 これ、後悔とともに死すこと無し……

 

 わかっていたはずだった……私達は、自由を見られるかしら?

 

 

 

 大丈夫……何時かきっと、分かり合える日が来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 声が、聞こえた……。

 

「カガリ……」

 

 優しい、二人の男女の声が……。

 

「カガリちゃん!」

 

「あ……」

 

 霞んでいた視界が徐々に晴れていく。

 

 眩しい。

 額からバイザーが外れていた。

 

「良かった、気が付いた」

 

 目の前に、ユーノくんがいた。

 服を血で真っ赤に染めている。

 

 誰の血?

 服に破れは見られないから本人のものではない。

 

 これは……私の血か。

 

「今麻酔魔法をかけているから。じきにアースラから転送がかかるからそれまで我慢して」

 

 言いながら、治療魔法をかけ続けてくれる。

 

 麻酔で身体の感覚がなくまともに動くことも出来ない。

 怪我を確かめるために体内スキャンをかける。

 

 肩のコネクタ全壊、背面コネクタ全壊、両腕は裂傷と火傷と骨折。

 シップが自壊した反動で魔力の逆流が起きたのだろう。

 破裂した金属片が突き刺さった様子も見られる。

 全身に至るところに傷があるが、パイロットスーツの強度のおかげで重体だけはまぬがれたということか。

 

 シップは既に身体から離れている。

 封印術式を執行した斑鳩・銀鶏だけではなくブラックハートも一緒に壊れてしまったようだ。

 

 任務続行不可能の有様。だが、確かに石のような物体は封印しきった。

 

「肝心のフェイトさんたちのほうはどうなったんでしょう?」

 

「うん、フェイトちゃんのお母さんは、駆動炉が止まったおかげで捕まえられたって」

 

「ジュエルシードの回収も終わったよ」

 

 任務終了、か。

 

 武装局員役の出る幕はここまでだ。

 後は真相の解明など執務官たちが進めてくれるだろう。

 

 またしばらくは医務室の上か。

 

「……このあと、どうなるんでしょうね、フェイトさん」

 

 それだけが残った懸念だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

テスト投稿二次創作SS 魔動少女ラジカルかがり SHOOTING

テスト内容:完結作の練習

原作:魔法少女リリカルなのはアニメシリーズ

原作設定:日本製シューティングゲーム各種

ジャンル:×STG的バッドエンド ○転生憑依的ご都合主義ハッピーエンド

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、そういうわけで結末だけ最後に持ってきて、地上の人たちには一族の祈願を全うしたと伝えてほしーわけですよ」

 

 満員御礼の医務室から割りと無事ということで個室へと追いやられ、私は一人での療養の日々を過ごすことになった。

 強化人類ということで確かに他の人よりは丈夫で怪我の治りも早いので、この待遇には文句は無い。

 

 今私は、ようやく動くようになった腕を使って地上本部への通信を行っていた。

 

 通信先は地上本部での実質的な一番のお偉いさん、レジアスおじさんだ。階級は少将。

 第二種監視指定共通人類種などという厄介な存在を魔導師として受け入れてくれた。

 的確な魔道師運用で私に相応しい戦場を用意してくれた、恩人だ。

 

 将来のダライアス一族からの戦力補充を見越して、マイナーな世界の魔法兵器の採用などという偏見なしに英断に踏み切る革新派。

 

 見た目は怖いが、話してみると素敵なおじさんだ。心に一本硬い芯が通った強い信念が言葉の端から感じられる。

 何かと意見が辛口なのもちょっとした愛嬌だ。

 

 ラジカルなこの人がいなかったら今頃首都クラナガンの治安はどうなっていただろうか。

 

「そういうことならば問題は無い。別に海の連中の所へ移籍するつもりなどないんだろう」

 

「率先して艦に閉じ込められて辺境に流される趣味なんて、私は持ち合わせていませんから」

 

 アースラの人たちには言えない愚痴や本音をこの人の前なら遠慮無しに言える。

 強面のおじさんだが、娘さんも居り子供の扱いも心得ている人だ。

 

 あ、この通信、艦の人たちに見られていませんよね?

 

「ロストロギアに洗脳されていた人たちの処遇はまだ解りませんけど、報告書の通り高い魔力資質を持つクローン体が多数保護されました。上手くミッドチルダでの養育に誘導すれば、将来の地上本部の増強に役立つのではないでしょうか」

 

「ふむ、安易に人道に流されずに使い道を考えるか。君達らしい良い意見だ」

 

 プレシア・テスタロッサの捕縛後問題になったのは、石のような物体と言う第一級の危険物の護送手段と、三桁に達するアリシア・テスタロッサの無人格クローンの処遇であった。

 アースラにその全てを収容しきれる余裕もなく、管理外世界に顕現した時の庭園を無視して本局へと舞い戻るわけにも行かない。

 

 結局、アースラと同規模の次元空間航行艦船が追加で二艦やってくる事態となった。いや、そもそも世界丸ごと一つ消し飛ぶようなロストロギアに戦艦一隻だった今までがおかしいのだが。

 

 管理法では、人格が無くても人のクローンは人だ。

 幸い、アリシア・クローンはまだ幼いため、簡易な人格をインストールして人として教育しなおすことが出来る。

 

 だが、クローンであると言う偏見はずっとついてまわるだろう。

 ならば、保護先の管理局で局員として雇い入れるのが自然な流れとなる。

 

 魔導資質を持ちながら世界の常識で放逐された魔導師の卵が、時空管理局に保護されて一流の魔導師局員になると言うのは良く聞くサクセスストーリーだ。

 

 

「プレシア・テスタロッサとフェイトさんに関しては海の人たちの注目が強いですから、司法取引で持っていかれそうな感じです」

 

 

 プレシア・テスタロッサは現在、フェイトさんを捕縛したときと同じ手順での治療中だ。

 彼女を狂わせたのは石のような物体による洗脳でほぼ間違いが無いようだ。

 

 単独暴走したロストロギアの被害者のため、ジュエルシードを狙った罪は軽いか無罪だろう。

 むしろ大量のアリシア・クローンを生み出したことへの追求がいきそうだが、石のような物体の支配がその時期まで及んでいるかは今のところ不明だ。

 

 

 フェイトさんに関しては犯罪行為が幾分か自分の意思によるところがある。

 が、母親に言われてやったことと石のような物体に少なからずとも操られていた事実があるので、こちらも重い罪になることはない。

 ハラオウン提督は裁判に首を突っ込む気が満々であったようだし、彼女達の今後は優秀な魔道師を集める海が保障してくれるだろう。

 

 

 なお、アリシア・テスタロッサの遺体は未だ保管されているが、プレシア・テスタロッサの回復を待って埋葬されることになるとのこと。

 遺体の保管状況から蘇らせでもしたかったのだろうと推測されているが、精神治療の経過で失ったという事実も受け入れてもらうことになる。

 

 彼女の今の娘は、フェイトさんと三桁に及ぶアリシア・クローン達なのだ。

 

 

 人格をはっきりと持っているフェイトさんには保護者が必要となる。

 プレシア・テスタロッサの治療は長期に渡るだろうと診察されているため、ハラオウン提督が保護者として手を上げている。

 

 

 クロノさんは、「妹になる、ってことなのかな」などと気恥ずかしそうに言っていた。

 クロノさんの父親は時空管理局の任務でずいぶんと昔に亡くなっていたらしく、弟や妹というものに憧れていたのかもしれない。

 

 友人になった君達と違って家族になる自分はちょっと荷が重いよ、なんてにやけた顔で言われてもへーそうですかとしか返せない。

 やれやれ、時空管理局は若い魔道師を正しく導いていくものではないんですか、執務官さん。

 

「まあ、まだちょっとそちらへは帰れそうに無いですね。帰っても怪我で戦線には出れないでしょうし」

 

「待っているぞ。こちらではまた中解同が動きを見せている。海の仕事ほど柔じゃないから気を引き締めておけ」

 

 帰ったら挨拶回りもしないといけないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自室治療を続けていたある日、ハラオウン提督からお茶に誘われた。

 

 捜査で忙しいであろうこの状況下での誘い、本気での休憩なのか何か意図があってのことかは解らない。

 まあ石のような物体の進展については聞いておきたいところだ。

 

 食堂へと案内される。幾人か非番の局員さんが食事を取っているが、それらとは離れた席へと連れられる。

 そこには、なのはさんとユーノくん、エイミィ執務官補佐がいた。

 

 派遣組とお偉方組の組み合わせ。クロノさんとヤマトさんが居ないが、そうお偉いさんが何人も同時に抜けられるほどの状況ではない。

 戻ったらお茶を飲もうと言ったクロノさんともまだ二回しか会っていない。

 

 アルフさんと治療の終わったフェイトさんは、本局へと送られるまでの間は護送室から出られないので、当然この場にはいない。

 

 いや、というかなのはさんとユーノくんは海鳴の高町家へと帰っていったはずじゃなかったのか。

 お茶だからといってわざわざ呼んだのか。

 

 

 椅子を引いてユーノくんの隣へと座る。

 テーブルの上には焼きたての美味しそうなパイが乗っている。

 

 ハラオウン提督の持ってきてくれたお茶をすすってパイを一切れいただく。

 むちむちポークのジューシーなミートパイだった。

 

 甘い果実のパイが好きなのだが、まあ横のクッキーで我慢しよう。

 腕をまともに動かせるようになるまでは栄養剤以外ほとんど食事を取っていなかったので、甘いお菓子に飢えている。

 

「駆動炉のロストロギア、石のような物体だったかしら」

 

 茶飲みの話題として今回の事件を振り返っていたときに、ふとハラオウン提督が話を切り出してきてくれた。

 

 このような場所での話と言うことと、なのはさんやユーノくんも同席していることからして、さほど機密に関わるような話では無いだろうが。

 

「あれの出所が解ったの」

 

 ダライアス本星と時空管理局の厳重保管場所にしか存在しないはずのロストロギア。

 何故あのような場所にあったのかはずっと疑問であった。

 

「出所は、半年前に検挙されたロストロギアの密漁団。そこの偽装企業との取引の記録が時の庭園に残っていたわ」

 

 スクライア一族が石のような物体を発掘し重要監視世界として扱われる以前のダライアス。滅びた世界のロストロギアを探しに訪れた密漁団は、魔法文明出身の組織であるがゆえに高度な機械には目もくれず、強大な魔力を放つ石のような物体を拾った

 

 その後、正式な発掘により時空管理局により第一級指定を受けて自分達で扱い切れない危険な代物と解り、プレシア・テスタロッサへと売り払ったということだ。

 今回の事件は、あの日ヤマトさんが石のような物体を見つけたことの延長線上にあったということか。

 

 私とユーノくん、そしてヤマトさんの三人がこの事件に関わったのも、必然であったように感じてしまう。

 

 

「人造魔導師計画になんて関わるほど子供に拘り続けていた心の隙間を、あのロストロギアに狙われたのね……」

 

 

 石のような物体が自らの意思を持つ厄介な代物だということは、ハラオウン提督も知っているのだろう。

 凶悪犯について話すかのように苦々しい声で言っている。

 

 

「そうそう、人造魔導師計画なんだけどさ」

 

 

 一人でミートパイをハイペースで消費していたエイミィ執務官補佐が、お腹をさすりながら話題を変えてきた。

 

 

「カガリちゃんは知っているかな? どうもジェイル・スカリエッティが関わっていたみたいなんだよね。ほら、あの去年話題になった戦闘機人の」

 

「知ってますよ。違法戦闘機人事件は地上本部の苦い思い出ですからね」

 

 

 一年前のことだ。

 

 戦闘機人、要するに機械と人体を融合させて作り出した強化人間を隠れて作成していた犯罪者組織に、時空管理局の捜査の手が入った。

 ミッドチルダで大規模な戦闘が起き、私も駆り出されたのだが、結局首謀者を取り逃し、作り出されたであろう戦闘機人は一人も捕らえることができなかった。

 

 その首謀者の一人が、生体科学者であり幾多のバイオハザードテロを繰り広げてきた指名手配犯、ジェイル・スカリエッティだ。

 

 

「フェイトちゃんの誕生にも、スカリエッティが関わっていたみたいなの。もしかすると、あのたくさんの女の子たちもそうかもしれない」

 

 かのマッドサイエンティストならば、確かに同じ素材のクローンを百体超作り出すなんて狂った行為、軽々とやってのけそうだ。

 

 

「フェイトちゃんが生まれる前に、クロノスっていうすっごい人造魔道師を作って、それでスカリエッティが本気で関わるようになったってさ」

 

 <ruby><rb>運命</rb><rp>《</rp><rt>フェイト</rt><rp>》</rp></ruby>に<ruby><rb>時間</rb><rp>《</rp><rt>クロノス</rt><rp>》</rp></ruby>か。

 詩的な命名センスだ。

 この名前だと、本当に死者蘇生のための計画だったのかもしれない。

 

「以前と比べてずいぶん詳細な情報が出てますね。時の庭園からの情報ですか?」

 

「え、うーん、一部はそうなんだけどねー」

 

 何かを言いよどむように、私から目をそらすエイミィ執務官補佐。

 

「ま、いつかカガリちゃんも教えてもらえるよ。頑張って」

 

 何が頑張ってなのか。それを追求する前に話が変わり、なのはさんとユーノくんの今後についてなどの話題へ移っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なのはさんとの別れのときが来た。

 

 

 アースラは時の庭園の移動と捜査を後任の部隊へと任せ、石のような物体とテスタロッサ一家を連れて本局へと帰艦することとなった。

 私はアースラに乗って本局まで行き、石のような物体の封印を見届けてからダライアスの自治区へと報告に戻る予定だ。

 

 なのはさんがこの世界に留まる限り、監視指定生命体の私はこれが一生の別れとなるだろう。

 

 

 最後、ということでハラオウン提督の便宜でフェイトさんと一緒になのはさんとの別れの場を用意してもらえることになった。

 

 

 いつだったかフェイトさんがなのはさんと戦った臨海公園へと降り立つ。

 そこには、なのはさん、そしてすずかさんとアリサさんの姿があった。

 

 ああ、そうか。もう会えなくなるのはなのはさんだけではないんだ。

 すずかさんとも、アリサさんとも会えなくなる。

 ファリンさんとも、ノエルさんとも、忍さんとも、恭也さんとも、美由希さんとも、士郎さんとも、桃子さんとも。

 

 この世界に住む皆にもう会えなくなってしまうのか。

 

 

「……何よ、もう会えないって! 電話も繋がらないって、もう、何なのよ!」

 

 何を間違ってしまったのか、アリサさんを怒らせてしまった。

 もう日本へと来ることは無いと言ったのが悪かったのか、それとも連絡すら取れなくなると言ったのが悪かったのか、それとも私のことは忘れてもかまわないと言ったのが悪かったのか、それとも……。

 

「ごめんなさい……」

 

 解らないままにうな垂れてしまった。

 ああ、最後だと言うのに何故私は謝ってなどいるんだろう。

 

 情けなさに拳を強く握ってしまう。

 そこに、すずかさんが手に触れ優しく握ってきた。

 

「忘れて、なんてもう言わないでね。忘れるためにここに来たんじゃないんだから」

 

 私は、馬鹿だ。

 

 本当に忘れて欲しかったのなら、こんなとこに来ないで言葉も残さず消えていただろう。

 私は結局皆が好きで、忘れない思い出を残そうと別れの挨拶に来たんだ。

 

 人との距離の取り方をまだ全然理解し切れていない子供なんだ、私は。

 

「ん」

 

 涙目で怒りを振りまいていたアリサさんが、眉を寄せたまま手のひらほどの大きさの包みを突き出してきた。

 

「ん!」

 

 受け取れ、ということなのだろうか。

 すずかさんの手を退けて、両手でそれを受け取った。

 

「なのはちゃんと一緒に、三人で選んだの。この国の曲のオルゴール」

 

「……ありがとうございます」

 

 ああ、忘れてなんて言われても絶対に忘れなくなった。

 

 私からも、大切なものを送ろう。

 ポケットに忍ばせていたものを手に取る。

 

 私の、戦友の一部。

 白と黒の輝石。斑鳩と銀鶏の砕けた中枢の欠片。

 その中から、綺麗な形に砕けた石を選ぶ。

 

「私の一族みんなの意志のこもった、その、大切な石です。あの……」

 

 二人に石を渡し、言葉を伝える。

 

「私のこと、忘れないで、ください」

 

「忘れないわ」

 

「勿論よ」

 

 返事を聞いてから少し気恥ずかしくなる。

 二人の顔を見ていられずに、目を逸らした。

 

 海が見える。

 海と公園を隔てる柵の前には、なのはさんとフェイトさんが見詰め合っていた。

 

「……あの子、ずっとなのはが気にしていた子ね」

 

「なのはちゃん、紹介してくれるって言ったのにいきなりお別れだなんて……」

 

 アリサさんとすずかさんの二人も、その様子を見つめる。

 

 すずかさんたちへ目配せしてから、私は四角い包みを胸に抱いてフェイトさんたちの元へ向かう。

 後ろから二人もついてきた。

 

 なのはさんとフェイトさんの会話が聞こえてくる。

 

「だから教えて欲しいんだ、どうしたら友達になれるのか……」

 

 フェイトさんの小さなつぶやきだ。

 

 なんだ、私たちは友達との別れを言いに来たのに、友達になる方法が解らない、だなんて。

 

 なのはさんは言葉をつむぐ前にこちらの存在に気付き振り向いた。

 代わりに、その答えを言おうか。

 

「それなら、私たちはずっと前から友達ですよ。ね、なのはさん?」

 

「うん。友達になるには、お互いを名前で呼べば良いんだよ」

 

 にっこりと、日の光のような笑顔でなのはさんが言った。

 

「だから、私たちは友達だよ。これからも、ね?」

 

 これからも、か。

 

 

 同い年の女の子たち。私の友達。

 アリサさん、すずかさん、なのはさん、フェイトさん。

 

 別れてからもずっと、友達でいられる。

 忘れないようにと、皆の顔を改めて見つめ直した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三人との別れを終え、アースラの転送室で私は一人ぼんやりとしていた。

 

「なんだ、カガリちゃん、泣いているのか」

 

 様子を見に来てたヤマトさんが、心配そうに見てくる。

 いや、彼のことだから本当に心配してくれているのだろう。

 

「私だって、泣き、ますよ。おかしい、ですか?」

 

「卒業のときも一人平然としてたしね」

 

「だって、もう、二度と会えないんですよ。せっかくできた、友達なのに」

 

「はは、大丈夫だよ。うん、きっと会えるよ」

 

 笑いながら私の頭を撫でてくる。

 不快だが、何となく手を振り払わないでおく。

 

 胸に抱えた包みから、中の箱を取り出す。

 透明なガラスに包まれた、小さなオルゴール。

 

 ぜんまい式の原始的な機械楽器だ。

 木で出来た台座の小さなつまみを回す。

 中でドラムが回りだし、金属板が弾かれて高く澄んだ音を響かせる。

 

 短い音楽が繰り返し繰り返し流れていく。

 優しくて、そして少し悲しいメロディ。

 

 オルゴールの音に混じって、優しい二人の男女の声を聞いた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、遠い未来へ……命は受け継がれたから。

 

 

 

――――――

あとがき:EDテーマとして未来完了from7あたりを聞くと作品の雰囲気が一気に変わるかもしれません。

 

 

 

 

幼児時代及びアニメ一期再構成の『遺失技術編』はこれで完結となります。

 

あ、人造魔導師クロノスさんは要するにアレな過去をちょっと書いてみただけで、後々へのバレバレな伏線というわけではありません。

バッドエンドを期待していた方には悪いですが、全ては憑依転生者のご都合主義の名の元に残念がってください。

STG好きの読者の皆さん、こんな実験作に最後までお付き合いいただきありがとうございました。

STGを知らない読者の皆さん、わけのわからないSSで本当にごめんなさい。

 

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