杏子とゆまとマミのはなし |
ゆまのやつがたこあげがしたいたこあげがしたいというので、あたしは朝から山にいかなきゃいけなかった。竹をけずって竹ひごをつくる。古紙回収の日だったから新聞紙はかんたんに手にはいった。セロテープはスーパーにいけばいくらでもつかえる。……できた。午後からはどこにいこう。
* *
マミのやつは煮たり焼いたり炒めたりはじょうずなのに、切るのだけはどうしてもにがてだから、いやでもあたしがてつだうことになる。「すごい、うすい」ゆまがほへーとしたかおであたしをみあげてる。てのなかのざるに、桂むきのだいこんがひょろひょろと折りかさなっておちていく。「まほうみたいだね」
山のなかにひみつのばしょがある。「わ、たくさんはえてる」「ほんとね」ゆまとマミはおおはしゃぎでたけのこをとりまくった。とってすぐなら刺身でくえる。生姜もはえていたから、すりつぶしてしょうゆとまぜた。「ゆま、おなかいっぱい」「たけのこ、まだいっぱいあるわね」「キョーコ、とりすぎだよ」
「キョーコ、はさみあるかな」ゆまがもっているのは学習雑誌。マミがかってきたもの。「ふくろとじ、あけたいの」「ゆま、ちょっとかしてみろ」あたしは槍をうみだす。サッ。「すごい、きようだね」マミのやつがはさみをちゃんとしまわないから、あたしはこんな面倒なことをしなきゃいけない。
ゆまが階段をおりるたびにゴロゴロとおとがする。「ふくろ、地面についてるぞ」「きをつけるね」あしたは金属ごみの日。古紙回収とかさなっていた。あたしがもっているのは1ヶ月ぶんのしんぶんし。マミがしばっただけあって、がっちりまとまってる。マンションの収集所においたら、そのままコンビニにいった。
「きょうのお吸い物、いつもとあじがちがうね」さいしょにきづいたのはゆまだった。「あら、ほんと」マミがつづく。「このまえのタケノコさ」あたしのことばにマミは首をかしげた。「このまえ?」「日曜日のだね」あたしはゆまにうなずく。「そうだったわね」マミは紅茶をのむ。カップは魔法でつくったつかいすて。
「ふくろ、2枚もらえるかしら」レジでマミはそういった。エコバックならもってきてるんだけどな。「レジぶくろなら、そのままごみぶくろにできるじゃない」マミはふくろに、紙コップや紙さらをつめていく。さいごに、ふくろのくちをセロテープでふさいだ。なんまいもなんまいもテープをつかって、きつく、きつく。
「さいきん、とりさん、あんまりみないね」ゆまのいうとおりだった。3年前、この公園は鳩という鳩でうめつくされていたきがする。「おそらがせますぎるのかな」ゆまがみあげるさきは超高層ビル。ひとつだけじゃない、たくさん、たくさん。数年で見滝原はかわってしまった。あの教会も、もう、のこってない。
* *
新聞紙のたこがずたずたになったとき、あたしはこういった。「いっしょにしゅうりして、またとばそうな」 マミはこういった。「いっしょにあたらしいのをつくって、またとばしましょ」
たたかうとき、マミはいろとりどりのマスケット銃をつかう。ピンク、むらさき、あか、あお、みどり。いっかいうったらそれっきり。
いちばんたよりにしてるのは、いつもみにつけてるきいろいリボン。くるくるまわって、そのなかからおおきな銃がうまれてくる。なんはつでも、うてる。
けしてなげすてたり、しない。
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さんにんはなかよくくらしています。きっとすえながく、えいえんに。そんなひびのひとこまを、ここのつ。そして、もうひとつ。 | ||
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