鋼の錬金術師×テイルズオブザワールド 第三十九話
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〜バンエルティア号〜

 

『………。なぁアンジュ。組合的には悪くないかもな。でもなぁ……』

 

エドは、後ろを振り向きメンバーを見揃った。

 

そして、再び溜息を吐いた

 

『あら?何か不満かしら?』

 

エドの他に、メンバーはアルフォンス、ソフィ、ジーニアス、そしてプレセアだ。

 

平均年齢が著しく低いのだ。その事に関して、エドは溜息を吐いた

 

『いや……もういい』

 

何を言っても無駄だと悟っているエドは、もうこれ以上は何も言わなかった。

 

『ええと……この砂漠の都市のパラサイスって言う場所で悪さしている盗賊団を追い出せば良いんだよね?』

 

『いえ、追い出さなくても良いから…ただ捕まえてくれって言っているわね』

 

アンジュの言葉に、エドが悩みだす

 

『どういう事だ?』

 

『さぁ分からないわ……。更正させたいんじゃないかしら』

 

そう悩んでいる内に、エドは後ろに振り向く

 

無表情にこちらをじぃと見ている少女が二人

 

それがエドにとっては不気味でたまらなかった。

 

再び正面を向いたとき、後ろから声をかけられる

 

『………エドワード』

 

ソフィが、エドの方に声をかける。

 

振り向いたエドの目の前には、少しだけ笑顔になっていたソフィの表情があった。

 

『…………アスベルの為にも、私は……エドを頼りにしようと思う……。』

 

その言葉に、エドは満更でも無かった。

 

少しだけ照れくさかったが、エドはただ笑顔で返した

 

『ああ。……絶対に取り返そうぜ』

 

そう言って、エドは拳をソフィの前にゆっくりと突き出した。

 

それが何なのか分からなかったソフィは、首を傾げた

 

『拳を合わせんだよ』

 

エドがそう説明すると、ソフィはまた首を傾げる。

 

だが、エドの言うとおりに拳を思い切りエドの拳にぶつけた。

 

大きな音がしたと共に、鉄と衝撃がエドを襲う。

 

だが、エドはそれをなんとか耐え、仲間同士の誓いは果たせた

 

『て……てめぇ少しは手加減しろよ!』

 

『………ごめんなさい』

 

そう謝られたエドは、少しだけ罪悪感を感じた。

 

そこで少しだけ笑顔になったエドを見て、ソフィもつられて笑顔になった。

 

それを見ていたプレセアは、欲しがるようにじぃと見ていた。

 

『…………ジーニアス…』

 

声をかけられたジーニアスは、背筋がビクリと伸び、驚きの返事をした。

 

『え……?何?……プレセア……』

 

声をかけられた事で、のぼせる様にジーニアスの顔は赤くなっていた。

 

だが、それとは対照的にプレセアの顔は沈んでいた

 

『……私とソフィさんとの、違う所って……どこなのですかね……。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜カダイフ砂漠〜

 

『あっっっつぅぅぅぅぅううううううううう…………』

 

砂漠に入って一時間後、エドが早速弱音を吐いた

 

『うん……。これは本当にやばいよね……。ちょっと……』

 

ジーニアスも、弱音を吐き始めた。

 

身体から溢れ出る汗がすぐに乾き、風も無いこの場所は、まさに地獄に近い。

 

『そうなんだ……。僕は平気だから、もし倒れたら担いであげるよ。どんな物でも、大抵の物は持てるから、皆を担いでも行けるよ』

 

アルが、励ますように皆にそう言った。その答えに限って、エドは必ずこう答える

 

『いや、兄が弟の手を借りる事なんか、そんな恥は出来ん』

 

『全く、何を張り合ってるんだか……。』

 

アルが呆れてそう物を言うと、エドはさらに後ろの二人に指を差した

 

『だって見ろ!!こいつら二人は汗一つかかないどころか、全然涼しそうな顔してるんだぞ!!』

 

エドの指差した方を見ると、ソフィとプレセアが無表情でひたすら歩き続けていた

 

”暑い”という言葉を言わず、ただ目指す所まで歩くロボットのように、ただひたすら足を動かしていた。

 

その光景は、アルでさえ不気味に思える程だった

 

『うわぁ……大丈夫なの?二人とも』

 

アルがそう声をかけると、ソフィは答える。

 

『……平気。このくらいは、私の想定以下の……気温だから。』

 

ソフィのその言葉に、アルは安心の息を吐く。

 

そしてプレセアの方を見た、どこか様子がおかしい。

 

無表情なのだが、動きがどこかぎこちなかった

 

『………プレセア?』

 

ジーニアスが声をかけると、プレセアの動きが止まった。

 

その瞬間、プレセアは目を閉じてその場で倒れこんだ。

 

体力の限界だったのだろう。だが、それさえも表情に出ないのは、恐ろしい

 

そんな事を考えずに、アルとエド、そしてジーニアスは慌てだした

 

『え――!!プレセアー!?』

 

『アル!避難だ!!鎧の中に入れとけ!!』

 

エドが指示すると、アルは腹を開ける

 

『兄さん!水筒飲ませたほうが良いかな!?』

 

『構わん!どうせ街についたらいくらでも飲めらぁ!』

 

そう言って、アルは瀕死状態のプレセアを自分の身体の中に入れた。

 

そして腹の扉を閉め、その場でアルはプレセアに声を出した

 

『だ……大丈夫?』

 

アルが言葉を出しても、プレセアに言葉は無い。

 

慌てだしたジーニアスとアルは、そのまま声を出した

 

『ど……どうしよう兄さん……』

 

エドは真っ直ぐと前を見た。

 

向こうの方に、緑色の植物が生えているのが見えた。

 

『街までもうすぐだ!早く行くぞ!』

 

エドがそう言うと、アルはすぐに頷き、動き出す

 

『分かったよ兄さん!』

 

すると、アルは全力で慌てて走りだす。

 

その瞬間に、鎧の中でぶつかる音が激しく鳴った。

 

水筒と人間が壁にぶつかる音だった

 

『アルフォンスさぁぁん!!止まってぇぇぇえええええ!!!』

 

ジーニアスがそう叫んでも、アルはすぐには止まらなかった。

 

『えっ!?』

 

ジーニアスの声を聞いて止まった時には、鎧の中で小さなうめき声が聞こえた

 

『あ……………』

 

アルがそうボソリと呟くと、エドはもうすでに街の方へと真っ先に進んでいる

 

『何してんだー!置いてくぞ――!!』

 

そう言いながら、エドはそくささと街の方へと走り出していた。

 

その後、アルとジーニアスは鎧の中を確認しながら、ゆっくりと走り出すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜カダイフ砂漠 パラサイス都市〜

 

そこは、都市というにはどのようなものか。

 

少しだけ物足りない気もするが、紛れも無く人は住んでいる。

 

その村の中で、所々に噴水も存在する。

 

それ程の水資源の豊富さならば、金もある程度手に入れる事も出来るだろうに、

 

また、盗賊団が居る都市としては、皆はほとんど不自由なく暮らしていた

 

『………なんだか平和な村だね。兄さん』

 

その小規模な都市では、村と呼ばれてもおかしくないのだろう。

 

エドは、アルの言った言葉を訂正しなかった

 

『とても盗賊団が居る村とは思わねぇなぁ。』

 

エドが言った盗賊団の言葉に、村人の人たちは固まった。

 

そして、急に怯えるように震えだし、神に祈るポーズをする。

 

それは一人ではない。その場に居るほとんどの者が、そのポーズを行った。

 

『えっ!?ちょっと……えっ!?』

 

その唐突さに、ジーニアスとエドは恐怖感を覚えた。

 

アルも驚いた表情はしたものの、ソフィと同じく無表情だった。

 

そして、一人の男性がエド達に恐る恐る近づいてくる。

 

そして、震えた声で言った

 

『あ………貴方達はアドリビドムの人たちですかね……?』

 

男性がそう言うと、エドは少しだけ距離を置きながら、答えた

 

『あ………ああ、まぁな』

 

エドがそう言うと、祈るポーズをしていた者全てが立ち上がり、エド達に歓喜の声をあげた

 

『やった!!助けだ……助けが来たぞぉ―――!!』

 

『これで悪魔の監視の目から離れられる……うぉおおおおお!!!』

 

全員が、狂ったように声を発し

 

その声は、逆に恐ろしさまでも感じた

 

『お……おいおい、これは何なんだよ……。やりすぎじゃねぇのか?』

 

『いやいや、あの悪魔共を捕まえてくれる事である事が、どれだけ私たちに待ちわびた事か……!!』

 

『どうか……!どうかあの悪魔共を……捕らえてここへ連れて来てください!救世主さま!』

 

村人のその反応に、ジーニアスは少しだけ笑顔になった。

 

少しだけ調子に乗ってしまい、堂々と公言したのだ。

 

『そ……そうなんだ。任せてください!このアドリビドムが、貴方の村を救って差し上げます!』

 

ジーニアスのその言葉に、村人は再び歓喜した

 

『おいジーニアス』

 

エドが、ジーニアスを呼ぶように声をかける

 

『どうしたんだよ、エドワード』

 

『……そんなすんなり承諾しても良いのかよ。何かおかしく無えか?追い出してくれじゃなくて、捕らえてくれ……なんてよ』

 

エドの言葉に、ジーニアスはすぐに返答した

 

『そんなの、下手に追い出してもまた来るからに決まってるからじゃないか。それとも、その盗賊団を投獄して更正させようとか。かもしれないよ。』

 

ジーニアスの言葉に、エドは考える。

 

半分納得したが、まだ半分が疑問を感じたのだ。

 

『ああ、そうだ……』

 

アルが、思い出したように鎧の中から女の子を取り出した。

 

それを見た村人は、その女の子をまじまじと見ていた

 

『あの……この子、途中で熱中症になっちゃって……。どこかで休ませたいんですけど…。どこか病院ってありますか?』

 

アルがそう言うと、後ろに居た人が声をかけた

 

『ああ、医者は私だ。救世主様のご要望には、なんでもお聞きいたしますよ』

 

眼鏡をかけた初老の男性が、アルに手を伸ばす

 

『はい、ありがとうございます。』

 

アルがそう言うと、アルはそのままプレセアを医者に手渡した。

 

手渡した光景を見たとき、少しだけジーニアスは不安になる。

 

多分、一緒に行動できない寂しさなのだろうと、そう考えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜盗賊団拠点〜

 

巨大な建物の入り口に、エド達は集合した。

 

その建物は、大きな宮殿であり、その中に盗賊団が居るという事なのだが、

 

おかしな事に気が付く

 

『見張りが一人も居ねぇな……』

 

入り口付近、どこを見渡しても人一人居ない。

 

これはおかしいと考えたエドは、その建物を散策し、辺りを見渡したが、

 

やはり、見張りとなる人は誰も居なかった

 

『随分、無用心な建物だな。』

 

『でも、どうするの?正面の入り口からは、多分罠が……』

 

ジーニアスの言葉に、エドはにやける

 

『わざわざ正面から入る必要も無えだろ。』

 

そう言って、エドは手を叩き、

 

壁に手を置いた。

 

瞬間、壁が発光し、その場に壁が瞬時に無くなった。

 

それは2秒も無い出来事だった。

 

その方法を見たジーニアスは、改めて感心した

 

『錬金術って、そのような応用もあるんだね……。でも、その技術も多くの流れを読み取る必要があるみたいだ』

 

一瞬でそこまで読み取ったジーニアスに、エドは驚きの顔をした。

 

だが、その後は呆れたように屋敷の中へと入って行った

 

『そこまで分かるのは感心するけどよ、いちいち説明にはしなくても良いんだぜ。』

 

そう言って、エドは宮殿の中へと入っていく

 

『大体、そんな事いちいち気にしてたら、いつかは敵に遅れを取られ……』

 

エドが不意に横を見た瞬間、銃口をこちらに向けていた迷彩服の男が数人居た

 

『うぉああああ!!!』

 

エドが猛スピードで建物から出た瞬間、乾いた音が建物に響き渡った

 

『!! 兄さん大丈夫!?』

 

アルが近づくと、建物の中から多くの迷彩服の男が現れた

 

『お前ら……見ない顔だな。他所者か?』

 

男がそう言うと、アルがすぐに声を出した

 

『あ……あの!この村に住み着く盗賊団の方達ですよね……?すみませんが、大人しくして、村人達に謝ってください!』

 

アルの言葉に、迷彩服の男達は銃口を向けたままだった。

 

『盗賊団……か。まぁあながち間違って無いかもな。だがな……俺たちは間違った事をした覚えは無いぜ!』

 

そう言って、迷彩服の男達は再び銃でエド達に向かって発砲した

 

『よっ……と!』

 

エドは、その動きを見て瞬時に壁を練成し、全ての弾を防いだ

 

『!!』

 

『さらにぃ……』

 

エドがそう言って、振り向くとジーニアスが呪文を唱えていた。

 

『ロックブレイク!』

 

そう叫んだ瞬間、地中から山が現れ、その衝撃で男達は吹っ飛ばされる

 

『ぐぅお!!』

 

吹っ飛ばされて、地に叩きつけられた瞬間

 

男達は気絶した。

 

『まだまだ修行が足りないね。』

 

ジーニアスは自信気にそう言った。

 

そしてエドは練成した壁の前を見に行くと、壁には麻酔銃の弾が刺さっていた。

 

それを見たエドは、呆れの声を出した。

 

『………本当に舐められてるな。』

 

エドはそう言って、建物の中へと進んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

中は、その昔に王が住んでいたかのような物だった。

 

壁に飾られた絵には、一人の異形の人間に、人間達が崇拝しているような絵だった。

 

絶対王政を象徴するような絵、もしくはヴェラトローパで見た、ディセンダーの絵のような絵が並んでいた

 

『………随分、イカれた頭の主君が居たようだな。この城は』

 

エドがそう言うと、ジーニアスも同意するように、出来るだけ絵を見ないように歩いていた。

 

『………うん。これは……ちょっと……』

 

ジーニアスが次の言葉を出そうと口を動かした瞬間、足元に弾が撃たれた

 

『うぉお!!』

 

間一髪の所で、なんとか外れたが、

 

目の前の迷彩服の男は、銃を構えてこちらを見ていた

 

『今度は本物かよ……。やる気だなおい!!』

 

エドはそう言いつつ、階段を練成して突起物を作りだす。

 

その突起物は一人の男を攻撃し、その衝撃で壁に叩きつける

 

『ぐっ!』

 

隣に居たもう一人の女が、銃を構えた瞬間、

 

ソフィがその突起物の上に乗り、もう一人の方の男へと駆け近づく

 

男が発砲した瞬間、ソフィは飛び上がり、そのまま踵落としをした

 

『ぐはぁっ!!』

 

男が叫んだ瞬間、大きな音を立てて倒れた。

 

それを見たエドとジーニアスは、感心の声を出した

 

『………すげぇ…』

 

呟いた瞬間、後ろからさらに三人の男女が入ってくる。

 

『!!』

 

そこから、また発砲準備に入った男達と同時に、エドは壁を作り出した。

 

その壁のおかげで、全ての弾は防ぎきれた。

 

『ちっ!』

 

男が舌打ちを打つと、壁からアルフォンスが飛び出し、

 

盗賊団の下へと走り出した

 

『この野郎!!』

 

男たちが叫んでアルに向かって撃ち続けた。

 

だが、アルは何も効いていないかのように、弾を受けながら走り近づいた

 

さらに頭部を撃つと、その鎧の頭が吹き飛んだ。

 

『!?』

 

中身が無い。空っぽなのだ。

 

その光景を見た男達は、驚きに手を止めてしまう。

 

その瞬間をアルは見逃さなかった。

 

手を叩き、男達の足元を練成し、突起物を作り出した

 

『うわぁああ!!!』

 

滑り台のように大きな斜面で、摩擦が効かない床はそのままアルの元へと滑り落ちてくる

 

『さてと……いらっしゃぁい。』

 

アルは、下で盗賊団を殴るポーズをしていた。

 

男達はアルに向かって銃を乱射するが、当然何も効かない。

 

そしてアルの腕の射程範囲に入ると、アルは腕を思い切り前へ突きだした。

 

男達全員、衝撃によって吹き飛んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

気絶した男達を練成で作り出したロープで縛り付ける。

 

これでしばらくは動かないだろう。

 

気絶している為、何の心配は無い。

 

『それにしても……僕達4人集まったらもしかしてこれ、無敵じゃない?』

 

ジーニアスが、嬉しそうにそう答える。

 

その言葉に、エドは満更じゃなさそうだった。

 

『ああ、まぁその通りかもしれねえな。』

 

少しだけかっこつけてエドは答えた。

 

『なんだか簡単に終わりそうな依頼だよね。これ』

 

『ああ。簡単すぎて溜息が出ちまうなぁ。』

 

完全に二人は調子に乗っていると感じたアルは、その場で溜息を吐いた

 

ソフィは、ただジーニアスとエドのやり取りをじっと見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに上へと上る。

 

だが、今度は所々も敵が少なく。

 

ほとんど無人状態のそこは、不安を掻き立たせる程だった

 

『………なんだ?』

 

エドが不審に思うと、後ろを振り向いた。

 

だが、誰も追いかけてくる気配は無かった

 

『…………』

 

少しだけ後ろめたく思いながらも、エド達はそのまま前へ進んだ。

 

走り続けると、ある一つの扉に目がついた

 

多くの人の気配から、この場に首謀者が居るのだろう

 

『ここか』

 

そう言って、エドは扉の前で手を叩く。

 

いきなりドアノブに手を触れて開けるのは危険なので、錬金術でこの扉を通過するしかない。

 

ドアに錬金術を発動させると、扉が発光し、別の形へと変えた

 

形を変えたドアは、タイヤの付いたトゲ付きの壁となった

 

『ふん!!』

 

エドはそれを思い切り蹴っ飛ばし、そのまま壁は敵の方へと走った。

 

だが、

 

『…。』

 

敵は、その壁を剣で弾き飛ばし、

 

自分の目の前から消した。しかしその瞬間

 

『!』

 

目の前には、その壁と共に走ってきたソフィが立っていた

 

『油断は大敵です』

 

ソフィは、そのまま拳を目の前の男に向けて放ったが、

 

それを男はすぐに避け、ソフィから離れる。

 

男の表情は、やけに冷静だった

 

『………』

 

その冷静さが、さらに不気味さを感じさせた

 

『へぇ……。さすがこう組織のボスってのは、そう簡単にはいかねぇよな』

 

エドは、少しだけ面白そうな顔をしている。

 

男は、そのエドの表情を見て、言葉を発する

 

『………お前らは、どうしてこの建物に居る』

 

その言葉に、アルが答えた

 

『僕達はギルドの人間で、この村の人たちが貴方達盗賊団が悪さをしていると聞いているんです。追い出さず、生きたまま捕らえる事も義務ずけられています。ですからお願いします…。大人しく捕まってください。』

 

アルの言葉に、男は沈黙する。

 

そして、しばらくして静かに微笑んだ

 

『ほう……。成る程な。ギルドという者は、金さえ払えばどのような依頼でもこなすような奴らなのか』

 

『なんだとぉ!!』

 

男の言葉に、エドとジーニアス、さらにソフィが戦闘体制に入る

 

『つまりだ。私たちを捕まえて村に差し出そうと考えているのだろう?ふん、残酷な奴らだ』

 

男の言葉は、まるで何も反省しているような様子ではなかった。

 

その言葉に、アルは俯きながら答える

 

『…………大人しく捕まるつもりは無いんですね………』

 

アルがそう言うと、男は黙りだす。

 

そして、男も戦闘体制に入り、さらに声を出した

 

『ああ』

 

その言葉で、アルは理解した。

 

そしてアルは再び戦闘体性に入った。

 

『………分かりました。』

 

そう言って、アルはエドの方を見る

 

すると、エドもアルの方を見て、強く頷いた

 

『やるぞ!!アル!!』

 

そう言って、エドはそこから駆け出した。

 

それと共に、アルも走り出し、男の元へと走り出す

 

『おらぁぁあああああああああああああああ!!!』

 

エドとアルは男にタックルを仕掛ける

 

『ふん』

 

男は避けると共に、エルリック兄弟は手を叩く

 

その行動を、男は疑問に感じたが、その時はもう遅かった

 

『大人しくしやがれぇえええ!!』

 

エドが地に手を着けた瞬間、男の下から巨大な管が練成される。

 

そこで男の身動きは拘束され、さらにアルが地から男の周りに円筒板を練成し、男を包み込む

 

『終わりっ!!』

 

そう言ってエドが男に近づいた瞬間、その板は急激に発光した

 

『!?』

 

瞬間、男を包んでいた板は爆発し、巨大な煙が発生された

 

その煙の中から、男が歩いてエドの元へと歩き出す。

 

それを見たエドは、小さく舌打ちをしながらまた戦闘体性に入る

 

『やっぱり……簡単には行かねぇな……。』

 

『エドワード!どいて!!』

 

部屋の入り口から、ジーニアスの声がした。

 

ジーニアスを見ると、けん玉を右手に持った状態で術を唱えていた。

 

『ネガティブ・ゲイト!!』

 

ジーニアスが叫んだ瞬間、男の周りに黒い球体が纏まりついた。

 

その球体に身体が入っていた部分に、男は謎の攻撃を受けている

 

だが、それでも男はまだ動けるようで、その球体から脱出しようと、歩き始めていた

 

『逃がすかよ!!』

 

その球体の中から逃がさぬように、エドは再び手を叩き、錬金術を発動させた。

 

次に、男の足に厚い管を巻きつけた。いずれは崩されるだろうが、動きを止めるには十分だ

 

球体の攻撃は、まだ男に襲い掛かっていた。

 

そして、攻撃が終了したとき、男はまだ冷静の顔をしていたものの、確実にダメージは受けている

 

『お次は……これだ!!』

 

エドは、また錬金術を使い、男の腹に突起物が直撃した。

 

吹っ飛ばされた男は、そのまま地に着地して、

 

口の中に溜まっていた血を吐き出した。

 

『…………』

 

男は、何も言わずにただエドの方を見ている

 

そして、哀れむようにエド達を見ていた

 

『…そんな目してもな、依頼はきちんとこなす主義なんだ。手加減はしねぇぞ!!』

 

そう言って、エドは再び練成を行い、男に突起物を発射した。

 

だが、男が手を突起物にかざした瞬間、

 

その練成された突起物は男の手の周りにだけ破壊され、男には傷一つ付かない結果となった

 

『!?』

 

その光景に、エド達は驚いた表情をしたが

 

また再び、エドは練成ポーズを取った

 

『なんなら!!これはどうだ!!』

 

男の両端の床から、円柱のオブジェが万力のように男を押しつぶそうと動く。

 

そして、男を押しつぶそうと挟んだ瞬間、万力の狭間から、一つの光が発光された

 

『!!』

 

そして、その万力が内部から壊れるように破壊され、そのオブジェは瓦礫のように崩れ落ちた

 

その力を見て、エド達は理解した。

 

先ほどの道で、人がほとんど居なかったのは、必要が無かったのだ。

 

こいつは、何かは分からないが、とんでもない物を持っている

 

その力で、ほとんどの者を恐怖に陥れ、思うが侭に自分は自由に動いたのだろう。

 

それを確信したエドは、今度は本気になり、機械鎧の甲を刃に変えた

 

『へぇ……。じゃぁ、真剣勝負で良さそうだ』

 

そう言って、エドは腕を男に見せるように動かし、

 

ソフィとアルも、三人で動こうと動きだす。

 

ジーニアスも目を瞑り、術を唱えだした。

 

『行くぜぇ!!今度こそな!!』

 

エドは大声を出して、その男の元へと走り出した

 

『待て』

 

男はそう言って、エド達に向かって手の平を向ける。

 

そして、男は両腕を上へと突き上げ、言葉を発した

 

『私の負けだ。どこにでも突き出すが良い』

 

『はぁ!?何言ってるんだお前!』

 

その唐突の降参に、エドは驚きと怒りを感じた。

 

だが、男は真剣な顔で手を上げていた。

 

『あの……。さっきまでは大人しく捕まるつもりは無かったんじゃ……無いんですか?』

 

アルがそう言うと、男は微笑みながら答えた

 

『さぁな。君達のギルドというのを見くびっていたからだろう。』

 

そう言いながら、男は手を下ろさない。

 

その光景を見て、エドは首をかしげながらも

 

床から縄を練成し、男に巻きつけた。

 

腕を下ろし、上半身はこれで自由を失う。

 

そして縄を持ちながら、男を誘導させた

 

『けっ。ようやく本気になったっつぅのに、つまんねぇ野郎だなぁあ。』

 

エドが、ブツブツと文句を言っている。

 

その文句を、アルと男は聞いていた。

 

アルは、とりあえず最後は平和に終わって良かったと安堵の様子だった。

 

ジーニアスも、つまんなくなったのか、ため息を吐いた

 

ソフィは、ただ無表情で前を向いていた。

 

だが、男の顔は真剣だ。

 

何か、捕まったのは訳があるのではないかと、エドは考えるようにもなった。

 

そして、男は呟くように声を出した

 

『…………お前らなら、この世界を変えられるかもな』

 

『ん?何か言ったか?』

 

エドが疑問の言葉をぶつけると、男は微笑んで返した

 

『……いや、独り言だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜カダイフ砂漠 パラサイス都市〜

 

盗賊団を縛り上げ、エド達は村の全員に盗賊団を差し出した。

 

その光景を見て、村人は目を丸くして盗賊団を見ていた

 

村の人たちは、歓喜の声を上げていた。

 

『うっぉおおおおおお!!!やった!!ついにやったんだぁああああ!!!』

 

『悪魔を!!あの悪魔共をやっつけたんだぁぁああああああ!!!』

 

『あはははははははああああああああああああああ!!!!』

 

それは、かなりの歓喜で、暴れているようにも見えた。

 

その光景に、エドとアルとジーニアスは苦笑いで反応した。

 

村長は、エド達の所まで歩き出し、頭を下げた

 

『ありがとうございます……。これで、これで村も平和が戻りますゆえ。』

 

『いいえ、特にそこまでの事はしていないですよ。』

 

アルが、遠慮するようにそう答えた。

 

『いやいや、この悪魔共をこのまま本当に生け捕りして来てくれただけで、本当に素晴らしいことですよ。これは相当の感謝が必要ですね。』

 

村人のその言葉に、盗賊団の人たちは怒涛の声を上げた

 

『ふざけるなっ!!俺たちは悪魔だと!?よくそんな事が言えたもんだ!!お前ら……』

 

『黙れ!!この盗賊団共!!お前らのせいで、この村……いや世界がどれ程の被害を受けていると思われる!!』

 

村人達も、反論するように答える。

 

盗賊団という言葉に、さらに盗賊団の人たちは怒りの目をしていた。

 

その目は、どこか真剣さがあった。

 

『本当に、どのような感謝をすれば良いか……』

 

『いえいえ、それよりも……この人たちの更正、頑張ってくださいね。』

 

アルが村長に、盗賊団の人達にも平和になって欲しい思いの言葉をささげた。

 

生け捕りにすると言う事は、きっとまだ仲間思いがあった。という事だと思っていたのだ。

 

だが、村長と村人は、不穏な顔でアルの顔を見ていた

 

『……何?更正?』

 

まるで、初めて聴く言葉のようだった。

 

その反応にアルは疑問を感じ、少しだけ慌てだす。

 

『いえ……。ですから、その盗賊団の人たちも、ちゃんとした更正をして……』

 

アルの言葉を聴いた村長は、急におかしく笑い出す。

 

『はぁーはっはっは!何を言ってるんですかギルドの皆さん!!』

 

その言葉が、一瞬理解が出来なかった。

 

そして、急に村長は笑いを止め、拳銃を取り出した。

 

『!!』

 

そして、村長は一人の盗賊団の頭に拳銃を突きつける

 

『村長さん!!』

 

ジーニアスが言葉を出したときには、もう遅かった。

 

乾いた音と共に、拳銃の弾と共に発生した衝撃波が、盗賊団の頭を爆発させた。

 

辺りに肉片が散らばり、撃たれた盗賊団は、そのまま地に落ちた。

 

その光景を見たエド達は、目を見開かせて、見た光景を疑った。

 

そして、村長は答えた

 

『私たちの世界では、更正というのは存在しない!!殺すしかないのです!!そうでないと、私たちは報われません!!』

 

その言葉に、エドは怒りの言葉をぶつける

 

『ざっっけんな!!生け捕りにするってのも……こうする為だったのかよ!!殺すぅ!?何を考えてやがる!!!』

 

『この者達は、私たちの命よりも重い、ディセンダー様の言葉の書を盗んだのです!その罪は、死罪よりも重い物でなければならないのですよ!?』

 

そして、また一人の盗賊団の一人が叫ぶように答えた

 

『ふざけんな!!!何がディセンダーの書だ!!あんなの……あんなのただの殺戮の書じゃねえかよ!!俺の姉貴を返せ!!絶対許さねぇぞ!!』

 

その盗賊団の言葉で、また再び村長がそいつに拳銃を向ける

 

その銃口を、アルが掴んで防いだ

 

『止めてください!!それに……これはどういう事ですか……。』

 

アルの言葉に、村長は言葉を出す

 

『悪魔の言葉に耳を貸さないでください。それに、お姉さんも泣いていますよ。お姉さんがディセンダー様の為に生命を捧げたというのに、弟の貴方がそんな事でどうするんですか。ですから、今すぐ謝ってもらう必要があるんじゃないですか?』

 

その言葉に、ソフィが目を見開かせた。

 

まるで、怒りを表すように、歯を強く噛みながら村長を睨みつけている。

 

そして、村長は引き金を引いた。アルの手を気にもせず。

 

だが、弾丸はアルの鎧に当たり、盗賊団には当たらなかった。

 

『そこをどいてください!!そいつが殺せないじゃないですか!!』

 

その言葉に、アルは必死に訴えた

 

『こんな事止めてください!!殺して……殺して何になると言うんですか!!いい加減にしてください!!』

 

アルの言葉に村人は怒り、怒涛の声の嵐が起こった。

 

『なんだとぉ!!そいつは死んで当然だろうが!!ディセンダー様に たてついたんだぞ!!』

 

『そうよ!!早く殺して頂戴!!この……忌まわしき悪魔共を!!』

 

『そうだぁ!!殺せ!!殺せ!!今すぐこの悪魔共を殺せぇ!!』

 

村人の声は、最早”殺せ”という声しか聞こえないようだった。

 

その狂っている村人に、エドは引きつった顔をした

 

『………こいつら……おかしい…』

 

ジーニアスも、これには怒りさえも、恐怖さえも感じた。

 

その中で一人、男だけが冷静な声をしていた

 

『……やはり、何かにすがみつく人間ほど醜い者は居ないな。』

 

その言葉に、村長は次に男の方に銃を向けた

 

『止めてください!!』

 

『この鎧を私から離せ!!』

 

村長の言葉で、アルは複数の村人に掴まれ村長から引き離された

 

『アル!!』

 

『止めろぉ!!離せぇ!!』

 

アルが暴れても、さらに捕まる人が増えていくばかりで、ほとんど身動きが取れなかった。

 

『すがみつく……だと!?ふざけるな!!かの昔、ディセンダー様は人間を素晴らしい生物だと言った!!その者が醜いだとぉ!!』

 

村長の顔が、さらに怒りに震えている

 

『お前は……私たち暁の従者の民の為……そしてディセンダー様の為に、生きていてはならない!!』

 

そして再び村長は引き金を引こうとした。

 

しかし、その瞬間に別の乾いた音が鳴った。

 

その瞬間、村長の目の前に壁が練成された

 

『!?』

 

引き金を引いた瞬間、乾いた音がした。

 

だが、弾は兆弾して跳ね返り、村長の右肩を貫通させた

 

『ぐぅああああああああ!!』

 

『村長様!!』

 

『村長様!!』

 

村人の全員が、村長に群がる、

 

その間に、アルは村人を押しのけて、盗賊団の元へと向かった

 

エドとジーニアス、ソフィも盗賊団の元へと走り出す

 

『兄さん!!』

 

アルが叫ぶと、再びエドは練成して縛りつけていた縄を分解して消失させた

 

自由になった盗賊団は、エド達の目を見た

 

『……すまなかったな。お前らを悪者扱いしたりしてよ。』

 

エドが素直に謝罪すると、盗賊団の者達は笑顔で許した

 

『いや、大丈夫だ。最後には信じてくれただけでな。』

 

『まぁ、謝罪って言うなら……。あいつらに報いを入れてやれ』

 

そう言って、盗賊団の人たちも戦闘体性に入った。

 

その様子を見た村人と村長は、怒りと失望の目をしていた

 

『お前らも……お前らも悪魔の仲間だったのか!!』

 

『騙したな!!お前らも全員この場で殺してやる!!』

 

『そしてディセンダー達の報いを受けろ!!この悪魔共がぁああああ!!』

 

その村人を見て、エドとジーニアスは完全に村人に敵意を見せていた。

 

ソフィは、完全に怒りの表情になっている。

 

人の死という者を、こんな簡単に行ったこいつらが許せないのだろう。

 

拳は、強く握られていた

 

『行くぞ!!我々であやつらに報いを入れてやるのだ!!』

 

そして、村人の歓声が響き渡る。

 

瞬間、村人達は武器を持ってエド達に向かって突進をした。

 

『報いを受けるのは……お前らの方だよ!!』

 

そう言って、エドとアルは二人で練成し、

 

巨大な壁を作り、エド達と村人との境界線のように作り出した。

 

『!!』

 

その光景を見た村人達は、その大きさに圧倒されるが

 

『怯むな!!登り詰めろ!!』

 

村長がそう言うと、また村人の歓声が響き、その壁を一つ一つ登り始める。

 

だが、さすがにこれ程の壁を登るとなると、かなり骨が折れる。

 

『このような壁を作っても無駄だ!!我々の神は、お前らに天罰を下す!!逃げても絶対に捕まえる!!お前らは世界を敵に回したのだ!!』

 

そう言って、村人の一人ひとりは登っていく

 

もうすぐで頂上にたどり着く瞬間、エドの口元が笑う

 

『神が天罰を下すのは、お前らの方だよ!!』

 

エドの言葉が、壁を伝って答えられる。

 

その言葉に、全く間違った事だと感じていた村人達は、さらに怒りと殺意に満ちていた。

 

だが、その瞬間にジーニアスの声が響く

 

『受けよ!!神の雷!!インディグネイション!!!!!』

 

その瞬間、エドの壁の向こうで巨大な雷が落ちた。

 

あまりに巨大なその雷に、村人の全員が受けてしまった。

 

『がぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!』

 

村人の悲鳴が、村に響き渡るように大きな悲鳴となって響く。

 

その悲鳴を聞いたジーニアスは、笑顔のままで言葉を出した

 

『安心しても良いよ。僕はお前らじゃないから、殺しはしないからさ。』

 

そう言った瞬間、壁の向こうが静かになった。

 

それを確認すると、ジーニアスは走り出した。

 

『おい、どこに行くんだ?』

 

盗賊団の人が声を出すと、ジーニアスは答えた。

 

『プレセアが!プレセアが病院に連れて行かれたままだ!!』

 

その言葉に、盗賊団の人たちは焦った顔になった

 

『なんだと!』

 

『病院は……心の治療もすると言っているんだぞ!!』

 

その言葉に、エドは理解したが、

 

アルは理解が足りなかった

 

『え……?どういう事ですか?』

 

アルの質問に、男は答えた

 

『洗脳されるって事さ。そのプレセアって子がね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜病院〜

 

『おらぁ!!とっととどきやがれ!!』

 

エドが、練成を行いながら、武器を持っている看護師や医師を蹴散らしていた。

 

メスを投げてくる者が居れば、魔法術を使う奴も居る。

 

その者は、ほとんどを錬金術で吹っ飛ばし、ソフィは蹴りでほとんどの者を蹴散らしている。

 

盗賊団の者達も意外に力が強く、三人の人が束になっても、2,3回の攻撃で倒せる程だった。

 

『なかなかやる蹴りだな……』

 

エドが関心しながら言うと、盗賊団の一人は笑顔になって答えた

 

『ああ、俺は妹を生贄にされそうになって。逃がしたところ、悪魔扱いされてな。抵抗する為に力をつけて行っている。』

 

『なんで俺たちの時は銃を使ったんだよ』

 

エドの言葉に、盗賊団の人はまた笑顔で答えた

 

『お前らは、化け物だって言われたからよ』

 

『誰が化け物だ!ったく!』

 

エドはそう言って、さらに奥へと進んでいく

 

耳鼻科

 

外科

 

肛門科

 

内科

 

どれも、プレセアが居る場所は無さそうだ。

 

心の治療

 

もしやすると……と、エドは不安に思う

 

エドは、手を壁につけながら走り出す。

 

一瞬、何をしているのか分からないが、アルとジーニアスは理解した。

 

そして、ある場所にたどり着いたとき、エドは足を止めた

 

『おい、精神科ってどこにあるか分かるか?』

 

エドが盗賊団にそう言うと、盗賊団は頭を抱える

 

『いや、……治療はするとは聞いているが、どこにあるかは聞かれていない。』

 

『そうか。ありがとよ!!』

 

そう言って、エドはその壁を拳で叩く。

 

その瞬間、壁にヒビが入った。

 

『ちょっと兄さん!こんな時に何してるのさ!』

 

『見ろ、たったこれだけの力で壁にヒビが入りやがった』

 

そう言って、エドは壁を錬金術で分解し、大きな穴を開けた。

 

その中には、一つの廊下が存在した

 

『……!!』

 

廊下が通じていたのは、一番近いところで第二倉庫という部屋に繋がっていた

 

『こりゃぁ……いかにもって感じだな』

 

そう言って、エドはその廊下の中に入った。

 

おそらく、この中にプレセアが居る。そう思ったジーニアスは迷わず入った。

 

他の者も、探検するように廊下に入り、歩き出した

 

 

 

 

 

 

 

 

〜病院 地下〜

 

階段を降りていくと、そこはカビ臭い空間が広がった。

 

それはまるで、病院では無く監獄のように。

 

『……こんな所に、プレセアが閉じ込められているの……?』

 

ジーニアスがそう呟いているとき、足元でポキリという音がした

 

『ん?』

 

下を見ると、脆くなった骸骨を踏んでいた。

 

その光景を見たエドは、驚きの声を上げた

 

『ぎゃぁぁあああああああああああ!!!』

 

その大声は、辺りに響こうとする前に、アルが口元を塞いだ。

 

ジーニアスは声を殺して手で口を押さえつけていた。

 

盗賊団の人たちは、もう慣れているかのように足元を注意して歩いていた。

 

ソフィは、特に気にせず骸骨を踏みながら歩いていた

 

『………』

 

その光景を見たエドとアルは、ソフィの神経を疑った。

 

だが、そうしている間に、足音が近づいてきた。

 

その足音のする方向、本来なら隠れるところだが、

 

エドは、逆に好機と考える。

 

『あっ兄さん!』

 

アルが呼び止めようとも、エドは走り続けた

 

『なっなんだおま……ぐふぅ!!』

 

エドは、喋る間も与えず歩いてきた者達を攻撃する。

 

殴る音と悲鳴の声は、3回鳴った。

 

『おい!もう大丈夫だぞ!』

 

エドがそう叫ぶと、アルとジーニアスが溜息を吐きながら歩いていった。

 

そして盗賊団の奴らは、エドに感心しながら歩いていった。

 

『……どうしてやっつける必要があったのさ』

 

『え?だって歩いてきた方向なら、その方向に患者が居る可能性が高いって事だ。こいつらをしばいた理由は、敵だから』

 

そう答えたエドに、アルはまた再び溜息を吐く。

 

だが、こうしている間にも、兄のエドは走り続けた。

 

『おら、早くしないと置いてくぞー!!』

 

そう言って走りだすエドに、盗賊団は言葉を発した

 

『……随分勇ましい兄だねぇ。羨ましいわ』

 

そう言って盗賊団の皆は、信頼した目でエドの後を付いていった。

 

 

 

 

 

ある鉄の重い扉を見つけた。

 

その扉の向こうには、おそらく大事な者が居るのだろう。厳重に10を超える鍵が設置されていた

 

それを見て、エドの目は再び光る

 

『こんなもん……無意味、無意味なんだよぉぉおお!!』

 

そう言って、エドは錬金術で扉を一つの長い棒に変形させた。

 

それを見た扉の中の奴らは、その棒を見て怯みだす

 

『何だ!!お前ら……ここで何をしている!!』

 

その奴らのガラスの向こうには、椅子に縛られ、頭に何か装着されているプレセアが居た。

 

その光景を見たジーニアスは、目を見開かして、奴らの方を見た

 

『プレセアに……プレセアに何をしてるんだ!!』

 

『治療をしてるんだ!こいつは……ディセンダーの書に関する言葉を否定した!!この者の心は汚れているのだからな!!』

 

その言葉に、エドは練成をし

 

奴らを吹っ飛ばす。

 

身体は余り強くないらしく、吹っ飛ばされればそのまま気絶した。

 

『……全ての生物は汚れている。ただ人間はそれを認めないだけでな。』

 

男は、また呟くように答えた。

 

その言葉は、全員に聞こえたようで、誰一人その言葉について追言しなかった。

 

『プレセア!』

 

エドが、鍵が掛かっているであろう扉を錬金術で開けさせ、すぐに扉を開けた。

 

ガラス越しの向こうのプレセアは、椅子に縛られたまま動いていなかった

 

『エドワード!!』

 

『分かってるっての!』

 

そう言って、エドはプレセアを縛っている紐を解き、

 

プレセアを自由にした

 

『大丈夫か!?おい!』

 

エドがプレセアを揺らすと、プレセアはしばらく動かなかった

 

その様子から、死んでいるように思われた

 

『………嘘だろ?』

 

エドがそう言った瞬間、ピクリと動いた。

 

プレセアの身体が、ピクリと動き出したのだ、

 

『………良かった……。』

 

その様子に、エドは安堵の息を吐いた。

 

だが、その瞬間

 

エドは吹っ飛ばされた。

 

『っ!?』

 

エドは、プレセアの右の拳にぶつかり、右の壁へと向かって飛ばされたのだ

 

『………!!!』

 

その光景を見たアルとジーニアスは、不穏な顔でプレセアを見た。

 

そのプレセアの顔は、もう本来の物ではなかった。

 

『そんな………』

 

ジーニアスの顔が、絶望に近い感情になっていた。

 

プレセアは、そのジーニアスは冷たい顔で見つめていた

 

そして、部屋の端に置かれていた斧を取り出し。エドを睨みつけた

 

『………んの野郎!!』

 

エドは、錬金術で地から管を練成してプレセアを縛りつけようとした。

 

だが、全て振り回した斧で破壊された。

 

プレセアの目が、さらに冷たい視線となっていた

 

『………ディセンダーの者の為、世界の為、……亡くなってください』

 

その声は、いつも通りの機械のような喋り方だった。

 

だが、今度は完全に人間味を失っていた。

 

『………遅かったか』

 

男は、失望するようにプレセアを睨みつけながらそう言った。

 

だが、エドは諦めない目で壁を練成し、ハンマーを作り出す

 

『……遅くなんかねぇ。』

 

『いや、もう彼女は……洗脳されている』

 

エドは、男の声を聞かずにハンマーをプレセアの元へと振り下ろした。

 

だが、プレセアはそれをいとも簡単に避けた。

 

『だったら、これで叩き起こせば良いだけの話だろうが!!』

 

エドがそう言うと、ジーニアスの顔は少しだけ引きつった。

 

殴る

 

そんな事、出来るはずがなかった。

 

エドは、ジーニアスの方に顔を向けた

 

『おいお前ら!!』

 

その言葉に、ジーニアスは顔を上げる

 

『てめぇは下がってろ!!こいつは……俺がやる!!』

 

『兄さん!?』

 

アルが疑問の声を上げる

 

その様子に、エドは真剣な目でプレセアを見つめた

 

『勝手に……洗脳されてんじゃねぇぞボケカボチャァァァアア!!』

 

そう言って、またハンマーを振り下ろす。

 

だが、またそれは交わされる。

 

しかし、エドはハンマーをとっさに離し、壁に手をつけた

 

『!!』

 

壁から生えた突起物が、プレセアの横腹を殴った。

 

だが、それも無意味かのように、プレセアは斧の棒の部分で、エドを吹き飛ばす

 

『…!!!』

 

『エドワード!!』

 

ジーニアスが叫んだ瞬間、プレセアはさらにエドに斧を振り下ろした

 

『止めろ……プレセア!!!』

 

ジーニアスの目が見開くと、すぐさまに魔術を唱えた

 

その魔術の光を見たプレセアは、ジーニアスの方を見た

 

『ファイヤーボール!!』

 

ジーニアスの唱えた呪文と共に、けん玉から巨大な火の玉がプレセアに向かって飛んだ。

 

プレセアは、その火の玉を何の躊躇いもなく切り落とし、二つに分けた。

 

分かれた火の玉は、そのままプレセアを無視して壁の方へと向かってぶつかった。

 

『…ジーニアス。失望しました。』

 

『………!!』

 

プレセアの言葉に、ジーニアスの手が止まった。

 

それを見たエドは、大声でジーニアスの耳に届く声で叫んだ

 

『耳を貸すな!こいつは…元の野郎じゃねぇ!!』

 

そう言って、エドは練成を行い、プレセアの近くに突起物を練成した。

 

プレセアは横に飛び避けた。と同時にソフィはプレセアに近づく

 

『…!』

 

ソフィはプレセアに向かって拳を振り、プレセアに一撃を喰らわせたが、

 

プレセアは、かろうじて腕で攻撃を防いだ

 

『隙ありだ』

 

男は、身動きが取れないプレセアに向かって手から黒い波動を出した。

 

その波動は、プレセアを一瞬だけ覆ったが、

 

その一瞬の後、プレセアはその波動から脱出した。

 

だが、結構なダメージを与えた

 

その脱出した瞬間を、エルリック兄弟は見逃さなかった

 

『逃がさねぇ!!』

 

そう言って、エドとアルは練成を行ってプレセアの足を管で縛った。

 

縛った瞬間、盗賊団の人たちは紐を使ってプレセアを縛り付ける

 

『………』

 

そして、プレセアの目の前にはジーニアスが一人、魔術を使っていた

 

『何のつもりですか。ジーニアス』

 

『君は…今はプレセアじゃ……ない』

 

ジーニアスの顔は、真剣だった。

 

『私は、本来の人である姿になっただけです。ディセンダーの望むまま、私は目覚めただけです』

 

『違う!!君は……プレセアは…それが本来の姿なもんか!』

 

ジーニアスの魔術が、次第に終わりに近づいてく

 

『……プレセア、僕は……君を叩き起こしてあげるよ』

 

そう言って、ジーニアスは腕を上げ、魔術を叫んだ

 

『ゴッドプレス!!』

 

その瞬間、プレセアの頭上には巨大な光が落ちてきた。

 

その光が、プレセアに直撃し、そこに巨大な衝撃波が生まれた。

 

衝撃がプレセアを襲い、彼女は結構なダメージを負っていた。

 

『………!』

 

ジーニアスの重い思いが、さらに魔力を強くした。

 

思ったよりも威力が強い。プレセアの身体どころか、ジーニアスの身体が持つのか分からなかった。

 

魔術が終わったとき、ジーニアスは首をだらりと垂らし、

 

そして気絶した

 

『!!』

 

だが、プレセアはその衝撃を耐え、そのままずっと立っていた。

 

ダメージはあったものの、倒れもしない

 

そのまま、プレセアは入り口方面に設置されていたガラスを叩き割り、そこから入り口へと向かった

 

『待ちやがれ!!』

 

エドが言葉を出すと、プレセアは立ち止まる

 

そして、数秒経つと共にプレセアは振り返り、エド達の方を見た。

 

『………さよなら』

 

プレセアが扉を開くと、彼女はそのまま駆けてどこか去ってしまった。

 

足音が聞こえなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜パラサイス都市〜

 

その村には、もう誰一人と人が居なかった。

 

ほとんどの人は、もうこの村から出て行ったのだろう。

 

プレセアを連れて

 

『…………』

 

エドが、その場で黙り込んでしまった。

 

その状態の兄を、ただアルは見つめるしかなかった

 

『…………』

 

その場に、重い空気が残った。

 

ジーニアスは、まだアルの中で眠っている。

 

起きたとき、この状態を見たとき、どうなるだろう。

 

自分の無力さを、後悔するのだろうか。

 

エドは実際、今の自分がそうであった。

 

『………彼女は、きっと元に戻る』

 

盗賊団の人が、微笑みながらエド達に元気付けた。

 

その様子の盗賊団の人たちに、エドは言葉を返した

 

『……あんがとな』

 

『いや、まだ足りないくらいだ。これくらい』

 

盗賊団の人たちは、誰も居なくなった村の家の壁等に手を置いて、

 

感傷に浸るように、遠い目をしていた

 

『………いえ、本当に貴方達は私達を助けてくれました。それに……一人は…』

 

アルは、村の真ん中に取り残された一人の死んだ盗賊団の一人を見た。

 

だが、すぐに目を逸らし、盗賊団の一人に目を向けた

 

『……僕達の方が、何も出来なかったのかもしれません。』

 

『いや、君たちが居なかったら、ここまで進展する事は出来なかっただろう。』

 

盗賊団の一人は、男に目を向けて提案を出した

 

『そうだ!俺達とこのギルドの人たちと連携するのはどうだ?』

 

『連携?』

 

エドが顔を上げると、盗賊団の一人が再び声を出す

 

『そうさ。どこかでまた奴らを見つけたら……報告しあうんだ。そして、僕達でまた暁の従者をやっつけよう』

 

盗賊団の一人が、強い目でエド達を見ていた

 

その盗賊団を見て、エドはまた微笑みをかける。

 

アルも、その人達の事を信頼しているようだった。

 

『そうだ、まだお互い自己紹介をしてなかったな』

 

エドがそう言うと、まずはエドから自己紹介を始めた

 

『俺の名前は、エドワード・エルリック。アドリビドムってギルドで働いてんだ』

 

『僕の名前は、アルフォンス・エルリック。このエドワードって言う人の弟です。』

 

弟という言葉を聞いて、盗賊団の人達は疑問の顔をした。

 

その顔は、エドに取っては何度も経験しているが、不愉快さは昔より変わらなかった。

 

『私は…ソフィ。アスベルが付けた…名前』

 

『そして、アルの中に居るのが、ジーニアスってんだ』

 

そこまで自己紹介をした時、今度は盗賊団の人たちも笑顔になって答えた。

 

『俺の名前は、カリバス・マリアって言うんだ。弟の仇を取る為に、あいつらをぶっ潰す為に生きてきている。』

 

『私の名前は、ルーティ・カトレット。この団体は裏の姿で、表はライマ国の軍やってるわ。ここに居る理由は、暁の従者に縁があるからね。』

 

『俺はベリアルって呼んでくれ。まぁ友達を生贄にされてから、あいつらには反抗している。』

 

『俺の名前は、セネル・クーリッジ。妹を守った挙句、悪魔扱いをされている。だが、後悔はしていない。これからも抵抗を続けるつもりだ。潰すまで』

 

『俺は………カイウス・クオールズって言うんだ。俺は、地元の村が暁の従者に燃やされたから……。復讐の為だ。』

 

全員の自己紹介が終わると、エドは次に男の方を見た。

 

男は、そのエドの目を見て少しだけ考える仕草をした。

 

『私は……そうだな。”ダオス”と呼んでもらおうか。』

 

『ダオス?』

 

その名前に、エドとアルは考える仕草をする

 

『……世界の残酷を知る者、と考えてもらおうかな』

 

『ん?何か言ったか?』

 

その呟くような声に、エドはあまり耳に入らなかった

 

『いや、なんでも無いんだ。気にしないでくれ』

 

そう言って、ダオスはそのまま去ろうと歩き出した

 

『それじゃぁ、また彼らの動きが分かったら、報告しよう。君達のギルドに』

 

そう言って、盗賊団の人たちは去って行った。

 

見えなくなると、エドは後ろに振り向く

 

『帰ろう』

 

そう言って、エドが先陣を取って歩き出した。

 

その後に、アルとソフィが付いていく

 

この時、エドはポケットに手を突っ込みながら、拳を握っていた。

 

『走ろう』

 

エドに続くように、アルとソフィは船まで走って帰って行った。

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