鋼の錬金術師×テイルズオブザワールド 第四十四話
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〜ユーリとエステルの部屋〜

 

ユーリが戻ってきた時、ユーリは懐から片目につけるマスクを持ってきた。

 

『………エドからだそうだ。』

 

そのアイマスクは、右目だけに付ける代物だとしても、

 

角が大きく生えて、目の部分は機械のような、派手な模様と所々のキバで、

 

全体的に攻撃的な印象を与えるデザインと成っていた。

 

それを見たエステルは、一瞬驚いた表情をした。

 

リタは、それを見てゲンナリとした顔をしている。

 

『うわぁ……。相変わらず趣味悪いデザインね。チビの作る奴って。』

 

『おっさん、正直これを夜に見たら、小便漏らしちゃうかも』

 

リタとレイヴンが、そのアイマスクについて苦言を漏らしたが、

 

エステルは、このアイマスクを見て嬉しそうに微笑んだ。

 

『……とても師匠らしいアイマスクです。』

 

その言葉に、レイヴンとリタは、心底驚いたような表情をした

 

『ええ!?エステル……あんたそれ着ける気!?』

 

エステルは、返事をする間もなく、アイマスクを失った右目と右耳に取り付けた。

 

そして、この部屋に居る人達全員に笑顔を見せて、アイマスクを見せびらかした。

 

『どうです?似合いますか?』

 

エステルの言葉に、レイヴンが苦しいように唸った。

 

『……正直、すんごくエステルちゃんの印象変わるわよ、それ着けてると。良いの?』

 

その言葉に、エステルは自信満々に答えた。

 

『良いんです。これは…破門された後に、師匠が私の為に作ってくれたマスクなのです。どこにも、拒否する権利なんてありません。』

 

そう言って、エステルはそのアイマスクを気に入った。

 

レイヴンは、それを聞いて、そしてその嬉しそうな表情を見て、笑顔で諦めたような溜息を吐いた。

 

リタが、少し気に入らないような表情をしていた。恐らくエステルがエドの作った仮面を気に入ったからなのだろう。

 

ユーリは

 

『良いんじゃねぇか?多少印象が変わっても……結構似合ってると思うぜ』

 

そう言って、ユーリはそのままベッドまで歩き、そこで座り込んだ。

 

ユーリの言葉に、エステルは少し嬉しそうな顔をしていた。

 

エステルの足元に、子供ミアキスがエステルの元に歩み寄る

 

『ほ〜ら。ニューエステルですよ〜〜。』

 

エステルが、子供をあやすようにミアキスに近づいた。

 

ミアキスは、警戒する事無くエステルに甘えるように近づいてくる。

 

その時のエステルの顔は、完全に癒されながら育てている、親ばかのようだった。

 

『おおそうだ。リタ、お前アンジュに呼ばれてたぞ』

 

『?』

 

ユーリの次の言葉に、リタは疑問に思いながら立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜バンエルティア号〜

 

『………………』

 

リタは、目の前に居たクソ生意気な豆に対して鋭い嫌悪の目でそいつと睨み合っていた。

 

エドも、目の前に居るクソ生意気な小娘に対して嫌悪感極めた目でそいつと睨み合っていた。

 

『ほ……ほらエド、仲良く仲良く』

 

カノンノが宥めるようにそう言うと、エドとリタは怒ったように

 

『『ふん!!!』』

 

とそっぽ向いてしまった。

 

先ほどまで、一緒に普通に話したり、仲良くエステル運んでいたりしていたはずなのに。

 

どうして今になってこんなに仲が悪くなってるんだろう。とイアハートは疑問を感じた。

 

『…ったく。カノンノとイアハートはまだ分かる……けどなんでこの小娘までが一緒なんだ!!!』

 

エドは、思い切りの不満を、アンジュの代理をやっているクレスに向けていた。

 

『リタには、これから光の精霊の居る場所まで行くんだ。そこでラザリスの調査に必要だという事で、リタはその調査をしてもらう。』

 

『だったらウィルかリフィルを連れて来れば良いだろうが!!……あ、やっぱリフィルは止めろ!!!』

 

エドが、クレスに思い切り不満を言っていた。

 

『それじゃぁハロルドさんは?あの人は、エドワード君の依頼なら面白そうだからやるって言ってたけど。』

 

ハロルドという言葉に、エドが大人しくなる。

 

『……やめろ……いえ、止めて下さい……』

 

その時のエドの姿は、まるで他所の家に預けられた猫のようであった。

 

その隣に居たアーチェが、クスクス笑うようにエド達を見つめていた。

 

『おい箒娘!!何をクスクス笑ってやがる!!』

 

エドが、その笑いを不愉快に思ったのか、アーチェに怒鳴り声を上げていた。

 

『いやぁ……端から見れば、アンタ達結構仲が良く見えるからさぁ。』

 

アーチェのその言葉に、不愉快にさせたエドとリタは更に怒鳴り声を上げる。

 

『『ざっけんな!!!!』』

 

『ほら、また声が重なった。』

 

途方も無い怒りに、リタは諦めたが、エドはまだ歯軋りが鳴っていた。

 

余程、不愉快に感じたのだろう。今にも錬金術を使おうとしていた。

 

『それで……光の精霊が居る場所って、どこなんですか?』

 

カノンノが、疑問の思いをクレスに問いかける。

 

『そうだね……。一度、ヴェラトローパに調査した時、その一部をリフィルさんが持ち帰った時のドクメント、その中に、精霊特有のドクメントが発見された。』

 

精霊特有のドクメント

 

それは、恐らくセルシウスから見つけたものなのだろう。

 

それで、精霊を見分けられるのも凄いと思うが……。

 

エドは、それならば俺は必要ないんじゃないのかと考えた。

 

だが、それを言う暇も無く、クレスは答えた。

 

『恐らく、光の精霊レムは、ヴェラトローパに居る。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ヴェラトローパ〜

 

ジュディスが、また魔物をレンタルさせてくれるという事で、エド達はヴェラトローパに辿りついた。

 

その時に、リタが気持ち悪そうに船の端で深呼吸をしていた。

 

『あら、おかしいわね。前はそんなに船に弱く無かったでしょう?』

 

ジュディスがそう言うと、リタは怒りの表情でジュディスに睨みつけた

 

『……うるさいわね。さっきバンエルティア号で……色々あったの!』

 

強気にそう言った後、そのままリタは崩れるようにその場で気絶した。

 

それを見たジュディスは、助けようともせずにじぃっと傍観していた。

 

エドもジュディスに並ぶように、じぃっと傍観していた

 

『……見ないうちに、本当に弱くなったわねぇ。』

 

『本当、マジで弱くなったですねぇ。』

 

エドが、勝気に誇ったように、嫌らしく言葉に出した。

 

リタが、助けを求めるように腕を上へと伸ばした。

 

『チ……チビ……後で殺す………。誰か……誰か助けて………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜バンエルティア号〜

 

『私はここで待ってるわ。』

 

ジュディスはそう言って、船の魔物の近くで立ち止まった。

 

その姿は、まるで憲兵のようだった。

 

『一緒に行かないんですか?』

 

カノンノがそう言うと、ジュディスは微笑みながら答えた。

 

『ええ。ヴェラトローパまでの運賃までのお金しか貰ってないもの。』

 

『うわ……アンタも変わったわね……』

 

リタが、軽蔑するようにジュディスを見ていた。

 

だが、足はガクガク震えていて、顔色は真っ青だった。

 

その様子を見ていたエドは、愉快そうにクスクス笑っていた。

 

同時に、ジュディスも微笑んでいた。

 

『冗談よ。』

 

そう言って、ジュディスはその場に座り込む。

 

『いざとなった時、助けに行った方が貴方達も都合が良いでしょう?だから私はここで待ってる事を頼まれたの。だから、安心して暴れなさい。』

 

ジュディスの言葉に、カノンノとイアハートが苦笑いの表情になった。

 

『いえ……暴れろとかは言われてないのですが……。』

 

カノンノの言葉に、ジュディスは少しだけつまらなそうな顔をしていた。

 

『あら。面白そうな事が起こりそうだと思ったのに。残念ね。』

 

そう言って、船の入り口付近に座りながら、槍を持っていた。

 

『まぁ、それでも良いわ。私は危険が来た時のサポート係。安心して城の中に行きなさい。』

 

ジュディスがそう言うと、リタとカノンノとイアハートが笑顔になった。

 

エドはもう既に城の方へと向かっていた。

 

『おーい!てめぇら早くしろよー!!』

 

エドの方を見て、真っ先に文句を言ったのはリタだった。

 

『ちょっと!!アンタ何勝手に先に行ってるのよ!!』

 

リタが不愉快そうにそう言うと、エドの大声がこちらまで届いた。

 

『うるせーなー!!精霊探すのにも骨が折れるんだから、てめぇがとっとと走って来いよ!!』

 

そう言って、エドはそのまま城の中へと入って行った。

 

それを見たリタは、今にも爆発しそうな怒りが表情に表れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜エリア・イダ〜

 

城の中に初めて入った三人は、驚きと共に、感動の顔になった。

 

所々が美しく、まるで最近立てられたように真新しい建造物に、溜息を吐いてしまいそうな程だった。

 

『す……すごい……。』

 

カノンノが、床を見つめる。

 

床の外側には壁が無く、その向こうには下が見えるガラスがあった。

 

『こんなすごい建造物が……空に浮かんでたなんて……。』

 

三人は、その建造物に圧倒されていたが。

 

来たのが二度目であるエドは、特に何も感じずそのまま神殿の中を散策していた。

 

『おいレムー!!てめぇこの野郎!!どこに居やがんだぁああああああ!!!』

 

そのモラルの無い叫び声に、リタは口元がピクリと動く。

 

『……相変わらず、ロマンが似合わないチビね。』

 

チビという言葉に気づき、エドは後ろに振り返った。

 

『おいコラァ小娘ェ!!てめぇまた今チビっつっただろ!!!!』

 

エドとリタの距離は、約200メートルは離れていた。

 

『……んで、すんごい地獄耳……』

 

さすがにこれには、カノンノとイアハートも少し呆れてしまった。

 

だが、エドは特に気にせず、不機嫌になりながらも光の精霊を探しに走り回っていた。

 

 

 

 

 

その後姿をカノンノが見たとき、少しだけ見つめてしまった。

 

その姿は、リタに対する怒りよりも、どこか別の怒りのように感じていた。

 

多分、その怒りは自分に対しての怒りなのだろうか。

 

弟子であるエステルが、死んだ人間を生き返らせようとした行為。

 

無理にでも止まらせなかった自分への怒りのようにも感じた。

 

また、アスベルが居なくなってからも、どこか後悔したような表情をしていた。

 

……それは少し分からないが、弟のアルフォンスを見つけてくれた人だ。騎士団に戻り、居なくなって寂しいのだろう。

 

そして、ルカの死が一番大きそうに見えた。

 

エドは、ルカと一緒のパーティに居た。

 

だからこそ、その事について一番怒りの矛先を向けているのは、自分なのだろう。

 

その後姿を見て、カノンノは少しだけ寂しくなった。

 

私に、何か出来ることはないだろうか。そんな事を考えていた。

 

『カノンノー?』

 

リタが、ちょっとだけ不機嫌そうにカノンノに声をかけている。

 

『え?……あ。ごめん…。なんだっけ。』

 

リタの不機嫌そうな溜息が、辺りに響いていった。

 

そして、絵の描かれた柱の方に目を向けた。

 

『………?これは…。』

 

カノンノが疑問を感じると、リタは即座に答えた。

 

『リフィルが持って帰って来た、記録書に書かれていた文の元の絵よ。』

 

そう言われ、カノンノは驚きの表情を隠せなかった。

 

『ええ!?………これが?』

 

『”世界樹の始まりは、一つの世界。その世界が分離して、複数の世界が存在した”、”この世界の近くで、世界にまでなる事が出来なかった世界”』

 

その壁画には、真ん中には世界樹、その横には魚と、トカゲ、虫、そしてヒトのような物が描かれていた

 

壁画を見て、カノンノは少しだけ変な気持ちになった。

 

リタは、その壁画に興味津々だったが、

 

カノンノは、その壁画には目を逸らしたくなった。

 

『どうしたの?』

 

リタが疑問に声を出すと、カノンノは首を横に振った。

 

『う……ううん。なんでもない。』

 

リタは、変なのとカノンノの行動に疑問を持ちながらも、興味を失くした。

 

『……ヒトの祖って言うのが、この絵を描いたんだよね…?』

 

イアハートが、疑問そうにその柱の絵を見つめた。

 

『ええ?そうだけど……』

 

『でも……それだと少しだけおかしくない…?』

 

イアハートの言葉に、リタが更に疑問の声を出す

 

『はぁ?どうしてよ』

 

『だって……。私たちにも知らなかった事が、どうしてヒトの祖であるこの人たちは知ったの?この事を。世界の事を。そしてどうして私たちは知らないの?』

 

イアハートの言葉には、少しだけ一理あると感じた。

 

確かに、そうは感じられるが、カノンノはその言葉に返答した

 

『それは……ヒトの祖は”学ぶ事”を選んだからだよ。』

 

カノンノの言葉に、リタとイアハートは振り返る。

 

『ヒトの祖は……”学ぶ事”を選んだことで、楽しさを知った。娯楽を知った。”学ぶ事”によって、沢山の種族と仲良くなれる。だから”学ぶ”為に、ヒトの祖は降りてきて、全ての知識を捨てたの。』

 

そして、最後にカノンノは付け足した。

 

『……て、昔読んだ本に書いてあった。』

 

その言葉を聴いて、リタは溜息を吐いた。

 

本ならば、事実の可能性は著しく低い。

 

むしろ、それがフィクションである可能性が高いからなのだろう。

 

リタはもう、その話には興味を失くしていた。

 

『あれ?……でも、それじゃぁ何も納得できないよ。』

 

イアハートが言った。それはそうだ。

 

本から習ったことならば、何の意味も無いし、

 

『それが事実だって事、どうしてその著者は知ったんだろう。』

 

そうだ。その通りだ。

 

カノンノが自覚した通り、その本で知る事は間違っている。

 

それは誰かが作った宗教論に基づく絵本の内容なのだから。

 

呆れてため息を吐いたリタの後に、エドの大声が響いた。

 

『おーい!!てめぇらとっとと来いよ!!置いてくぞー!!』

 

その大声に、リタはまたイラっと来た。

 

『うるさぁぁああい!!私は調査を頼まれてんのよ!!むしろアンタが遅すぎるんじゃないの!!』

 

『てめぇの調査は”光の精霊”だろうがぁ!!!この神殿で油売ってんじゃねぇぞ!!何話してた!!言ってみろ!?おおん!?』

 

その言葉には、さすがに何も言い返せなかった。

 

リタは悔しそうに涙目になりながらも、足取りを強くして、音を立てて怒りを表しながら歩いていった。

 

その様子には、さすがに可愛そうに見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜エリア・イダ 中央部〜

 

螺旋階段が続くこの部屋の上には、

 

薄い雲に包まれた大きな白い太陽の光が輝いていた。

 

その方向に、レムが居るかのようだった。

 

『……で、この上にレムが居る……と?』

 

『ああ。多分な』

 

エドのその自信に、リタは反論を言い渡した。

 

『軽率すぎるわよ!!大体、あれ自体ただの光かもしれないじゃない!!』

 

『んなもん、行ってみねぇと分からねぇだろうが!!』

 

そう言って、エドは螺旋階段を徐々に上がって行った。

 

そこに続くように、カノンノとイアハート、一番後ろにリタが付いた。

 

『大体……こんな長い螺旋階段の上に、精霊が居るわけないじゃないの……』

 

『つべこべ言うと突き落とすぞ』

 

この階段には手すりがない。

 

それに今は、落ちれば確実に死ぬ高さまで居る。

 

その言葉は、今は最早冗談には成らなかった

 

『へぇ、そうですか。つまんない警告ね』

 

その言葉に、エドの顔が引きつる

 

『……マジで錬金術で突き落としても良いんだぞ……コラァ!!』

 

『エド!!落ち着いて!!』

 

カノンノは、リタに向かって走ったエドを押さえつける。

 

その様子を見て、リタは溜息を吐いた。

 

 

 

 

説得して10分、ようやく階段を再び走って登る事になった。

 

一段一段、あるいは間に一段飛んで走っていく。

 

だが、予想以上にこの建物は高い。

 

リタは、その場でバテそうになった。

 

『ちょっと……待ちなさいよ………チビ……!』

 

息切れしてきたリタの言葉に、エドは足を止める。

 

『………今なんつった小娘……』

 

足を止めた理由は、チビ呼ばわりされた事らしい。

 

カノンノは、すぐさまエドを押さえつけて、再び説得に入る。

 

イアハートが、リタの元へと駆け寄って声をかけた

 

『だ……大丈夫ですか?リタさん。』

 

イアハートが声をかけたと共に、リタは呼吸を整えている。

 

もうバテたのか、そう考えていたが、

 

エドは螺旋階段の壁の窓を見て、ある事に気が付いた

 

『…………』

 

ここは高い分、空気が薄いのだ。

 

疲れてくるのも、それは分かるような気がした。

 

だが、リタのバテるスピードが速いのは、やはり体力の問題だろう。

 

『ちゃんと自分で上がって来い』

 

エドはそう言って、また先に進んで行った。

 

体力を温存させる為に、今度は歩いて

 

『エド!』

 

カノンノが、エドに声をかけるが、エドは立ち止まらなかった。

 

だが、この行為が良い効果を表した。

 

『………上等よクソッタレ……!!』

 

リタの顔は、今にも怒りが爆発させそうな顔で、

 

エドに対抗心を燃やしているような顔だった。

 

そして、リタは全速力で階段を登り、一気にエドを追い越した。

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』

 

その勢いに、エドも負けじと勢いを出した。

 

『おらぁあああああ!!負けるかぁぁあああああああああ!!!』

 

その二人を見て、イアハートは少し微笑んだ。

 

二人を見て、嬉しそうに少し呟いた

 

『やっぱり、あの二人は仲が良いんだね。』

 

その言葉は、カノンノに取っても嬉しい事なのだが、

 

『……………そうだね。』

 

どこからか、少しだけ悲しい表情にもなってしまった。

 

エドがギルドの仲間とは仲良くなる事は嬉しいことなのだが、

 

どうにも、エドが異性と仲良くなるのを見ると、どこか切なくなってくる。

 

『……本当に、マルスそっくり』

 

イアハートがそう言った時、カノンノは疑問の顔でイアハートを見た。

 

すると、イアハートは少しだけ顔を赤くさせて、首を横に振った。

 

『あっ…イヤイヤ、今の言葉は忘れて……。』

 

イアハートがそう言っている間に、エドとリタの叫び声が響いた。

 

『おらぁ!!どきやがれ先に着くのは俺だぁ!!!』

 

『うるああ!!ちょっと妨害するんじゃ無いわよ!!突き落とすわよ!!』

 

『やってみやがれ!!返り討ちに合わせてやる!!この下まで真っ逆さまでなぁあああああ!!!』

 

『のぞむ所よ!!突き落とすっ、突き落としてやるわぁあぁああああああ!!!!』

 

その憎悪のある叫び声が、カノンノとイアハート二人を呆然とさせた。

 

そしていつの間にか二人は、もうすぐ頂上へと辿り着こうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜エリア・イダ 精霊の間〜

 

『俺が先だぁああ!!』

 

『私が先!!!』

 

二人が同時に辿りついた瞬間、

 

階段の周りは、ほとんど床だった。

 

近くに壁が無かった為、二人はその場でコケてしまった。

 

『ぶはぁ!!』

 

『ぶへぇ!!』

 

二人とも顔面を思い切り床にぶつけてしまい、その場で悶絶をした。

 

『〜〜〜〜!!』

 

『〜〜〜〜!!』

 

悶絶している合間に、カノンノとイアハートが二人、その場に辿り着いた。

 

『うわぁ……広い……。』

 

カノンノが、感心するように辺りを見渡した。

 

巨大な柱が部屋を包むように、東に三本、西に三本存在した。

 

その柱は、天井で一つの所にあつまり、そこで一つになる。

 

その交わった部分には、綺麗な球形の巨大な宝石のような物がそんざいしていた。

 

『………なんだ?あれ』

 

エドが、鼻を押さえながら疑問の声で天井に指を指した。

 

天井に存在する球体の宝石には、何か疑問を感じた。

 

『……さぁ。この城に何か関係する事なのかなぁ。』

 

カノンノがそう言うと、エドは再び考える。

 

そして前の方を見ると目の前には巨大な扉が存在していた。

 

おそらくこの壁の向こうはただの空だと思うのだが、そこには確かに扉が存在していた。

 

何の為に存在しているかは分からなかったが、確かに扉があった

 

『あれを開けろというのか?』

 

エドが疑問の声でそう言うと、カノンノは考える仕草をする。

 

『………多分、違う……かなぁ。』

 

そう言って、再び天井の宝石に目を移す。

 

その宝石の中に写っている情景が見えてきた。

 

ただ、その宝石を見つめる自分と、

 

扉を見つめるエドと、

 

同じく宝石を見つめるイアハート

 

この部屋を調べ、歩き回っているリタ。

 

そして、もう一人、カノンノの目の前に立つ多くの翼を持つ者

 

『……!?』

 

前を見てみると、誰も居ない。

 

『どうした?カノンノ』

 

エドの言葉に、カノンノは正気を取り戻す

 

首を横に振り、もう一度宝石を見つめる。今度は誰もいなかった。

 

安心した溜息を吐いた瞬間、その宝石が急に光を発した。

 

『!?』

 

どうやら、雲が晴れてきたようだ。

 

『太陽の光だ』

 

光で目が開けられない中で、誰かの声がした。

 

高貴な女性の様な声が響くように部屋に届く。

 

『………………』

 

目を開けると、そこにいくつも羽を着けた天使のような女性が居た。

 

身体から光を発していて、ただそれだけで普通の人間ではないと感じた。

 

その姿を見たエドは、少しだけ慎重にその女性に質問をした。

 

『………あんたが、光の精霊……ていうレムか?』

 

『レム?』

 

女性は、その名前に疑問を持っていた。

 

そして、思い出したような仕草で頷いた。

 

『ああ。人間は私をその名で呼ぶのだな。』

 

女性は、再びエド達の方に向きなおした。

 

『いかにも、私は光の精霊、レムと申す者だ』

 

その言葉で、カノンノの顔が明るくなる。

 

これで、また真実に近づけられる。

 

ラザリスについて、また何かを知る事が出来るのだ。

 

『これが………光の精霊……』

 

イアハートが、神々しい物を見るような目でレムを見つめる。

 

リタは、珍しい物を見るような目でレムを見ていて。

 

エドは胡散臭そうな目でレムを見ていた。

 

『まさか、ヴェラトローパを実現化させるとはな……。人間はまたここまで進歩したのか。』

 

レムが、感心するようにカノンノ達を見ていた。

 

そこで、エドとリタはある言葉に引っかかる。

 

”また”

 

『前に……ヒトの祖とやらが、ここまでの技術を進化させたのか?』

 

『ヒトの祖…?ああ、まぁそう言うのだろうな。』

 

そこで、カノンノはまた笑顔になった。

 

自分の理論、あの絵本が正しかったのだと、自慢気になっていた。

 

同時に、どこか安心した笑顔になっていた。

 

『本当に、人間とうのは感心させられる……。ここまで来た事には、何か理由があるのだな?』

 

レムの言葉で、リタが思い出したようにハッとした顔になる。

 

そして、レムにある質問をした。

 

『そうだ!あのラザリスの事……。地中から出てきたキバの事とか、それを解消する為のヒントが欲しいんだけど!』

 

『断る』

 

レムは、はっきりと唐突に答えた。

 

その答えに、エドは思い切り不満を言い放った

 

『おい!!唐突すぎんだろ!!』

 

『ヒントをくれてやるまでも無かろう。』

 

そのはっきりとした答えに、エドは更にイライラした。

 

だが、リタはそれ以上に焦りが多かった。

 

カノンノとイアハートも、リタと同じ心情だった。

 

『どうせ、もうすぐそんな問題、掻き消されるのだからな』

 

レムが、その言葉を発した瞬間、全員に困惑が残った。

 

そして、大きな疑問を生んだ。首を傾げた。

 

『それ…どういう事?』

 

リタの質問に、レムはまた答える

 

『貴方達人間には、知らなくても良い事だ』

 

もうじき掻き消される問題

 

それがどうしても頭に引っかかる。

 

『つまり……ラザリスの問題は、私たちは突っ込まなくても良いって事……?』

 

『ああ。どうせやるだけ無駄だろうな』

 

その、全てをひっくり返されたような答えに、エドは怒りを抑えていた。

 

一発ぶん殴ってやりたいと思っていたが、それに勘付いたイアハートが、エドに手の平を向けて押さえつけている。

 

『……それじゃぁ、もう一つ、ラザリスは……もう一つの世界だったんだよね…?生まれるはずの……』

 

カノンノが、口を開いて再び質問をした。

 

『それがどうして、今頃になって私たちの世界に侵食するようになったの?それは……星晶に関係する物なの?』

 

カノンノの質問に、レムは翼を少しだけ動かし、答える。

 

『ああ、関係する。』

 

『それじゃぁ……。星晶が少なくなったから………私たちが使ってしまっていたから……このような結果になってしまったのですね。』

 

カノンノがそう言った時、レムはただ頷いただけだった。

 

それを見たエドは、レムの顔から目を逸らし、向こう側の扉まで歩いていった。

 

『……じゃぁ、次は俺からの質問だ』

 

エドの口が開く。

 

『ちょっとアンタ!一体何の権利があって光の精霊に質問をしようとしてんのよ!!』

 

リタの怒涛が響くが、エドは一切無視した。

 

カノンノは、リタの行動を抑え付け、エドの方を見た。

 

カノンノも、エドの質問には、興味があったのだ。

 

『良いだろう。言ってみろ』

 

レムは、何も感情が無いかのような言葉で、エドに言葉を返した。

 

『………この世界に、かなり強力な星晶が作られていく……そんな気配がしないか?』

 

その質問をした瞬間、レムの表情が少しだけ変わった。

 

その間、少しだけ間が空いたが、同じように常情で答えた。

 

『ああ。最近は星晶の物質に似た高エネルギー体が大きくなりつつあるな。』

 

レムのその言葉で、一番驚いたのはリタだった。

 

『ちょっと!それどういう事!?』

 

だが、エドはリタの質問には一切無視した。

 

『それは……知ってる場所でどこから生まれていった?』

 

『……一番最近は、ウリズン帝国ね。』

 

その言葉で、カノンノとリタが驚いた表情をする

 

『ウリズン帝国…?』

 

カノンノが、エドに言葉を放つ

 

『エド!!もしかして……サレがまた強力な星晶を!』

 

『サレは死んだ』

 

『!!』

 

エドの言葉で、カノンノは一瞬混乱した。

 

リタは、エドの言っている事が分からなかった。

 

何を言っているのか。サレが死んだ?

 

一体、ウリズン帝国で何が起こっている

 

『ありがとよ。これではっきりしたぜ』

 

エドが、スッキリしたような表情に戻ると同時に、

 

金色の瞳の奥に、敵意のような感情が現れていた。

 

『そうか、ならばもう良いのか?』

 

『いや、後一つの問題が解決されてねえ。』

 

そしてエドは振り返り、レムを睨みつけた。

 

真実を突きつけるような声で、エドはレムに訴えた。

 

ウリズン帝国に存在した星晶

 

その実物は、力は比べると小さい物の、等価交換の原則にある程度は縛られず

 

少ない力だが、一から百を作ることも出来る代物だった

 

『星晶の材料……これは人間の魂を使ってるな』

 

エドの言葉で、カノンノの目が見開いた。

 

リタも、エドの言っている事が信じられなかった。

 

イアハートは、そのおぞましい答えに、身体を震わしていた

 

今まで信じてきた物、それらが全て打ち砕かれるような感覚

 

全員は、それに襲われていった。

 

『………エドワードと言ったか?私はお前のような勘が鋭い人間が嫌いだ。扱い辛い上に、世界の秩序を崩しかねないからな。』

 

レムが言葉を言い終えた瞬間、エドは錬金術を使い、レムに向けて突起物を発射した。

 

余りの突然の攻撃で、読んでは居たものの、レムはその攻撃をまともの受けてしまった。

 

だが、身体のどこの崩れておらず、そんなにはダメージを負っていなかった。

 

さらにエドは戦闘体制に入り、機械鎧の甲を刃に変え、レムを睨みつけた

 

エドは許せなかった。星晶が人間の魂と知った以上、

 

ルカの命は、どこへと消えたのか。どこに向かったのか

 

嫌な方向にしか行かなくなるからだ

 

『教えやがれ!!もうじきに起こる掻き消される事ってのは何だ!!』

 

『それを教えると思うか』

 

レムはそう言って、腕を大きく振り下ろした。

 

その瞬間、上の宝石が発光した。

 

『!!』

 

その宝石は、天井から外れてレムの元へと向かってゆっくりと降りてくる。

 

発光している球体は、エドの方に向かって攻撃しようとしている

 

『そこまで知ってしまったのなら……むしろ都合が良い。』

 

そう言って、レムはエドに向かって宝石を発射した。

 

宙に浮きながら移動する球体は、エドに向かって発射された後、エドにぶつかった

 

『ぐはぁ!!』

 

普通の重力攻撃の5倍は受けるであろうその衝撃波は、エドの身体の体力を奪って行った。

 

『エド!!』

 

『こんの……野郎!!』

 

リタは巻物を取り出し、そこに描かれている術式を唱え始めた。

 

だが、後ろに目がついているかのように宝石はリタの方に向かった。

 

『ファイヤーボール!!』

 

リタがそう叫んだ瞬間、魔術陣の中から数体の炎の球体が現れた。

 

だが、その球体が宝石にぶつかった瞬間、炎の球体は流れを変えるようにリタの方に返ってきた

 

『嘘っ!!』

 

一瞬驚きながらも、リタはその球体を避けた。

 

だが、避けた先には先ほどの球体が襲ってきた。

 

まだ足が宙に浮いているとき、その球体はリタの身体に接触した

 

『ぎゃぁ!!』

 

まるで、予想以上の倍の衝撃波が襲ったかのように、

 

リタは吹っ飛ばされ、壁に強打した。

 

『リタ!!』

 

カノンノが叫んでいる時、レムの表情は少しだけ微笑んだ。

 

『……ここで星晶になってくれた方が、世界にとっては吉の方に傾くだろう。』

 

レムの言葉に、カノンノは目を覚まし、剣を引き抜いた。

 

剣をレムに向けた瞬間、レムはまた無表情に戻った。

 

『間違ってる……こんなの間違ってるよ!!』

 

カノンノの言葉に、レムは失望したような声で呟いた

 

『……本当に人間は変わらないな。いつまでも自分達が作った規則が正しいと思っている。』

 

レムの言葉に、イアハートが反論するように答えた。

 

『だからって!!例え精霊だとしても、殺しなんて絶対におかしいよ!!こんなの……こんなの絶対に……!!』

 

『それは人間による人間の為の規則だ。私の…いや世界の規則は違う。虫、動物、そして人間が死に、それをマナとして蓄えるのが私たちの普通だ。』

 

その言葉に、カノンノは涙が流れてきた。

 

世界が、人間が、一緒に共有している物だと思われていた。

 

今考えれば、それが正しくないと考えるようになった。

 

そうだ。思えばこの世界は皆の生物の物だ。

 

これが現実だ。でも、どうしてもこの現実が受け止められない。

 

そんな自分が、多数だった

 

そう思った瞬間、レムの地が急に崩れだした。

 

『!!』

 

地から急に、巨大な突起物が現れ、それがレムを包んだ。

 

レムを包んだ瞬間、今度は地から大きく突起物が現れ、

 

真上で伸びるのを止め、今度は下へと落ちていく。

 

そして大きく、カナヅチを振り下ろすようにそれはレムを踏み潰した。

 

その突起物の向こうには、エドが口から一滴の血を流しながら手を地に付けている姿があった。

 

『そうだ!!人を殺さず、死ぬ事を許さず、守り通すのが人間の為の規則だ!!』

 

エドがそう叫んだ瞬間、宝石がレムの方に近づき、その突起物を破壊して言った。

 

レムの顔が見えたとき、再びエドは叫ぶように言葉を発した。

 

『俺たちは人間だ!!人間が人間の為の規則を守って何が悪い!!!』

 

エドがそう叫んだとき、レムは睨みつけるようにエドを見つめた。

 

『………ならば、私は私なりの規則を守れば良いのだな。』

 

そう言った瞬間、後ろから大きな炎がレムを包んだ。

 

『!』

 

リタもどうやら立ち上がれたようで、レムに向かって炎の術を唱えていた。

 

『どうやら……ラザリスよりも解決する必要のある物が出来ちゃったみたいね』

 

リタが包んだ炎を受けたレムは、平然とした表情をしていた。

 

どうやら、術が余り効いていないようだ。

 

『教えて!!もうじき起こる掻き消される問題!』

 

カノンノが叫んだ瞬間、レムは再び宝石をリタとカノンノの方向へと向けた。

 

『駆けて!!』

 

リタがそう叫ぶと、カノンノとイアハートは逃げるように駆けて行く。

 

だが、宝石は三人に向けて突進していく。

 

『こっちにも気をつけた方が良いぜ!!大精霊さんよぉおお!!』

 

エドが、機械鎧の刃を向けてレムに駆け寄ったとき、

 

レムは顔だけをエドの方に向けて、空いていた左手をエドに向けた。

 

その瞬間、左手が発光して、衝撃波がエドを襲った。

 

『エド!!』

 

カノンノが叫んだ瞬間、返事が無い。

 

光が薄まり始めたとき、レムの表情が変わった。

 

エドは、血を流しながらもレムの左手を握っていたのだ。

 

『捕まえたぞ……!!』

 

どうやら、機械鎧が衝撃波を通したようで、

 

その右手以外は所々にダメージを負っているようだった

 

『今だ!!来い!!』

 

エドが叫んだ瞬間、カノンノとイアハートが駆け寄り、刃をレムに向けた。

 

『うらぁああああああああ!!!』

 

剣を振り下ろした瞬間、再び衝撃波が発動し、カノンノとイアハートを襲った

 

『わぁあ!!』

 

『くっそ!反則臭え!!』

 

同時に、エドがレムから突き放され、レムは再び自由の身となった。

 

『……エドワード。という者の術は少々厄介だな』

 

レムはそう言って、エドの方に目を向ける。

 

そして宝石を自身の近くに浮遊させ、見下すようにエドを見つめた

 

『その術、研究する必要があるようだ』

 

レムがそう言うと、エドは少しだけ微笑んで手を合わせた。

 

『そんなに見たけりゃ……見せてやるよ!!』

 

エドはそう言って、合わせた手を地に置き、錬金術を発動させた。

 

その瞬間、地がだんだんと変形をし、巨大な人間の形のした物へと変形した

 

『……………』

 

レムは眉間にしわを寄せ、エドの術を見つめていた。

 

瞬間、練成した人間の形をした物は、レムに向かって拳を振り下ろした。

 

その拳を、レムは宝石に向けた。その瞬間、拳はバラバラに砕け散った

 

『!』

 

その隙を襲って、レムの背にエドのもう一つ練成した突起物が成長するように伸び、レムに当たった。

 

『隙ありぃ!!』

 

エドはそう言って機械鎧の腕をレムの顔へと向かって振り下ろした。

 

その瞬間、衝撃波が起こらずにレムはそのまま吹っ飛ばされた。

 

『…………!?』

 

レムは、所々混乱して歯を食いしばる。

 

『……どういう事だ。どうしてお前は……それが出来る…。』

 

レムは、目を凝らしてエドを見た。

 

化物を見る目で、エドを見つめていた。

 

『最初見たときから感じていたが……お前は、私の理解しえる者では無いな………。』

 

レムはそう言って、宝石を再びエドに向けた。

 

エドは、向かって来る宝石を錬金術で作り上げた壁で防いだ。

 

宝石は、その練成途中の壁に当たった瞬間、少しだけ失速したものの、粉々に破壊された。

 

その失速を利用して、エドは宝石から避けた

 

『当たり前だ。この世界の事のほとんどを知っているアンタが、俺の使っている術を簡単に理解出来る訳が無え!』

 

エドは壁を利用して、錬金術で階段を作った。

 

その階段はまるで、このフロアの下に存在した螺旋階段のように

 

『何をする気?』

 

リタがそう呟くと、エドが上へ上へと向かって走り続ける。

 

それを見つめたレムは、宝石をエドの方へと向けて発射する。

 

『うるおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

 

宝石はエドの後ろに存在し、エドの作り出した階段を壊しながら移動して行った

 

宝石が近くにない隙に、カノンノとイアハートは再びレムに刃を向け、駆け抜ける

 

『らぁあああああああああ!!!』

 

だが、レムがカノンノの方を見つめた瞬間、また衝撃波が起こり、二人は飛ばされる

 

『ぐあぅ!!』

 

壁に強打した二人を見つめた後、上からエドの声が聞こえた。

 

この二人に相手したのが間違いだったか、もうすでに時は遅かったようだ

 

『精霊!!てめぇはイフリートとセルシウス、そしてノームと変わらねぇ精霊だ!』

 

そう言って、エドは手を叩いた。

 

その瞬間を見逃さず、レムは宝石をエドの方へと向けて発射するように移動させた。

 

エドは振り返り、宝石の方へと目を向けた

 

『そして俺は、精霊とは何度も闘って来てんだよぉぉぉおおおおおおお!!!』

 

合わせた手を宝石に向け、宝石に錬金術を行った。

 

瞬間、宝石が発光した

 

『!!』

 

レムの表情が、大きく変わる

 

『馬鹿な…!!その宝石を……魔宝晶を!!』

 

瞬間、大きな光がエド達を襲う。

 

その光は大きな衝撃波を産み、エドの足場はすぐに崩れてしまう。

 

『……!!!』

 

そして、エドの傍の壁は剥がれ、徐々に崩れていく。

 

その瓦礫が下に落ちて、リタとカノンノとイアハートはそれらを避けていた

 

光でほとんど見えなかったが、全員はなんとか無事に済んだそうだ。

 

一人、腕を落ちてきた瓦礫で擦り剥いた者が居たが、何も悲鳴も口にしなかった。

 

『ルおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!』

 

光の中で、エドの悲鳴が聞こえる。

 

足場が崩れて、地に落ちようとしているのだろう。

 

『!!』

 

その声に反応したカノンノが、顔を上げた瞬間、

 

光が弱まり、元に戻ろうとした。

 

上に、光を徐々に失った宝石があった。

 

その宝石は、見れば力を失っているかのようだった。

 

『エドッ!………ゴフ!』

 

カノンノが助けに行こうと駆け寄った瞬間、カノンノはエドの下敷きになった。

 

その際に、カノンノは巨大なダメージを負ったが、エドはなんとか少しのダメージで済んだ。

 

『痛ぇ……。……大丈夫か?カノンノ』

 

エドがカノンノを心配すると、ピクピク痙攣しながら答えた

 

『だ……大丈夫……です……』

 

『寝てろ』

 

エドはそう言って、レムの方を見た。

 

レムの顔は、どこか感心するような、同時に諦めがあるような顔だった。

 

『さぁ、教えてもらおうか。もうじき起こる問題が掻き消される事……ってのをよ』

 

エドがそう言うと、レムはエドの方を見た。

 

すると、ただ呆れるようにエドを見つめ、溜息を吐いた

 

『……それは駄目だ。規則だからな』

 

『規則だと?』

 

規則という言葉を聴いた瞬間、エドの眉がつり上がる

 

『お前達、人間には絶対に教えてはならない事になっている』

 

『その状態で、本当にそんな事言っても良いのかしらね。そこのチビが居る限り、アンタの攻撃はほとんど効かないと考えても良い位だし』

 

リタの言葉で、レムの目は鋭くなった。

 

そして、冷たい表情のような声で、言葉を発した。

 

『………人間のような小さな人間が、世界の流れに逆らうのは関心しない』

 

小さいという言葉で、エドの眉間がピクリと反応する

 

『人間のような、無知なる存在が全てを知ることは不可能だ。いや、全てを知れば焼かれるだろう』

 

無知という言葉に、リタの眉間がピクリと反応する

 

『分かるか。小さな無知なる人間は、ここまで世界に逆らうことは罪となるのだ。分かれば早く立ち去るが良い!』

 

そういい終えた瞬間、レムは腕を大きく振った。

 

さらにその瞬間、エドとリタが鬼の表情へと変わり、二人の周りには凄まじい量のオーラが漂った

 

その表情は、カノンノとイアハートを小さな悲鳴を出すほど恐ろしい顔で

 

レムも、その表情には少しだけ驚いた。

 

エドは、凄まじい早さで手を叩き、地に手を置いた。

 

瞬間、猛スピードでレムは練成物の突起物に巻きつかれ、行動を制限された。

 

そして、凄まじいオーラを纏ったリタの言葉が、全てレムへと向かって攻撃した。

 

『ファイアホール!!

 バーンストライク!!

 イラプション!!

 エクスプロード!!

 サイクロン!!!

 グレイブ!!!

 ロックブレイク!!

 グランドラッシャァァァァァアアアアア!!!!』

 

大きな炎がレムを包み、さらに巨大な風がレムを切り刻み、地から巨大な建造物が嵐のように現れ、レムに巨大な攻撃が襲った

 

『グハアアアアアァ!!!』

 

そこで初めてレムの叫びが響いた。

 

と同時に、レムはその場でガクリと首を垂れた

 

何かおかしい。いつもなら衝撃波で術など飛ばせるはずだ。

 

なのに、何故か使えなくなっているのだ。

 

『ぬ………!貴様等…………!!!』

 

レムが顔を上げた瞬間、

 

リタは大きく息継ぎをし、エドは再び手を合わせ、呪文のような物をブツブツと言っている。

 

レムは、そこで”本当に殺される”と感じ始めた。

 

『……!!!』

 

レムは、攻撃手段に入るために、首を動かして魔宝晶を探した。

 

それが視界に入ったとき、魔宝晶はヒビが入っていた。割れていた

 

『ウインドカッター!!!

 サンダーブレード!!!

 フリーズランサー!!!

 サイクロン!!!

 インブレイスエンド!!!

 テンペスト!!!

 エクスプロード!!!!

 アクアレイザー!!!!

 メイルストローム!!!!

 インディグネイショォォォオオオオオン!!!!!!!!』

 

『グバァ!!グア!!アアアアアアアアアアアア!!!』

 

風が切り刻み、背には練成物の突起物が思い切りと攻撃をし、雷の剣が身体を貫き、練成物の槍が身体を突き刺し、氷の嵐が身体を突き刺し、地からは巨大な突起物が身体を強打させ、竜巻と風、炎が包み、最後には巨大な雷がレムを襲った。

 

これはさすがにヤバイ。命がヤバイと感じ始め。

 

脱出方法を考え始めた。

 

さすがに、もう魔力が戻っていないはずだ……。

 

そう考えてエド達を見つめた瞬間、

 

リタは大量のオレンジグミを口に含んで水で流しており

 

エドは手を合わせながら気を溜めていた。

 

どうやら、リタの魔力は完全に回復されたようだ。

 

さらに、もう一つ分かった事があった。

 

エドワードの使う術には、限りという物が無い。という事を

 

『インブレイスエンド!!!!

 ディバインセイバー!!!!

 ゴッドプレス!!!!

 ブラッディハウリング!!!!

 ネガティブゲイト!!!!

 メイルシュトローム!!!!

 テンペスト!!!!

 グランドダッシャー!!!!

 インディグネイション!!!!!!

 メテオスウォォォォオオオオオオオオム!!!!!!!!』

 

『グハァアアア!!ギャァアアアアア!!!ヌゥワァアアアアアアアアアアア!!!!!』

 

レムが叫び終えた瞬間、レムは完全に動けなくなった。

 

破壊された練成物に開放されたと共に、レムはその場で倒れこんだ。

 

『さーて、ここまで痛めつければ良いでしょ。』

 

リタがそう言うと、次にエドがレムの場へと近づいた。

 

そして屈みこんで、レムを見下すように質問をした。

 

『いい加減に教えろ。もうじき起こる問題が掻き消される事ってのは何だ』

 

エドがそう言うと、今にも折れそうな声で返事が帰って来た。

 

『………言ったはず……。それは……言えない………』

 

レムがそう言うと、エドは舌打ちをした。

 

『ちっ。まだ足りねえみてぇだなぁ…』

 

エドがそう言うと。即座に返答が帰って来た。

 

『ヒントだ。ヒントをやる。それ以上は……本当に言えぬ』

 

レムがそう言うと、エドはそこで黙り込んだ。

 

何も返事をせずに、レムを睨みつけていた。

 

黙り込んだ上に、エドはその場で動かなかった。

 

その間に、レムは返事をエドに返した。

 

『………ディセンダー』

 

レムの言葉に、エドは首を傾げる

 

ディセンダーという者……。あの白いカノンノの事だろうか。

 

そしてレムは、更に言葉を付け加えた。

 

その答えは、大きな答えが分かるように隠されているのが分かった。

 

『…星晶の材料と、ディセンダーの存在とは、大いに関係がある……』

 

『………!!!』

 

レムがそう言い残した瞬間、イアハートの表情が少しだけ曇った。

 

だが、誰もそれを気づく者は居なかった。

 

そしてレムはゆっくりと浮き上がり、立ち上がった。

 

血まみれのその格好は、余り大精霊とは言い難いが、光は失っていなかった。

 

『待て、どこに行くつもりだ!』

 

エドがそう言うと、レムは微笑みながら答えた。

 

『……これ以上の真実は、今は知る必要は無い』

 

そう言って、レムの身体がだんだんと消えて行った。

 

消える真近に、レムは言葉を残した。

 

『だが、その日が来た時、その時人間は打つ手は無いだろう。』

 

『それは、なってみねぇと分かんねぇだろうが!』

 

エドがそう叫ぶと、レムはまた無表情に戻り、最後の言葉を発した

 

『繰り返される』

 

そう言って、レムは完全に消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レムが消えた後、4人はそこで取り残されるようにそこで突っ立っていた。

 

エド以外の三人、得にカノンノとイアハートは、今でも先ほど聞いた真実は信じられなかった。

 

星晶が人間の魂だと、帰ってからどう伝えれば良い。

 

ルカの死んだ報いは……どう伝えれば良い。

 

人間の役に立つために、スパーダを生き返らせた。

 

その上、人間を快適な世界にする為に尽くした。とでも言うのだろうか。

 

ラザリス等という問題をしている所では無かったのだ。

 

もうじきに起こる、”どのような問題も掻き消される事”

 

それが、どうしても分からない。

 

『………所で、この馬鹿でかい扉は一体なんなの?』

 

リタが、目の前にあった、全くの無傷の綺麗な扉を目にして、疑問を感じた。

 

先ほどの衝撃にも耐えられて、先ほど暴れたにも関わらず、そこだけは全く埃さえも付いていない。

 

『何か……大事な物が入ってるのかな……。』

 

イアハートがそう言うと、エドが扉に近づいた

 

『待ってエド……。そんな扉があっても、鍵が無いし、そんな大きな扉、開くかどうか………』

 

『そんなもん要らねぇよ』

 

そう言って、エドは手を合わせ、扉の前に手をかざした。

 

瞬間、扉の中に、もう一つ小さな扉が作られた。

 

『あ…………。』

 

カノンノは、その便利な技にまた感心した。

 

だがエドは、特に何も反応もせずに扉の取っ手に手をつけた

 

『じゃ、開けるぞー。』

 

そう言って、エドが取ってを持って扉を開けた。

 

その瞬間、薄暗い光がエド達を襲った。

 

『…どこ?ここ………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜パスカ〜

 

そこには、見渡す限り、墓、墓、墓、墓………

 

どこからかしこも、墓だらけだった。

 

扉の向こうに、世界が繋がっていた。

 

それだけなら良いのだが、ここはどこに繋がっていたのだろうか。

 

既に終わった世界を、レムは見ていたというのだろうか。

 

『………薄気味悪い世界だな……』

 

エドがそう呟いた時、カノンノは墓の方を見ていた。

 

この墓、どこかかしこ、沢山の文字が切り刻まれている。

 

それは、どこか悲哀な感情が込められていた。

 

再び歩いていくと、向こうに墓と一緒に、奇妙な物が置かれているのが見えた

 

『おい、何だあれ?』

 

エドが指差せた先には、誰かが一人、倒れていた。

 

それに気づいたカノンノは、声を出してエドとイアハートとリタを呼んだ

 

『人が倒れてるよ!!』

 

『!!』

 

そう言って、カノンノが先頭を切って走り出した。

 

三人がカノンノの後を付いて行くと、その倒れている物が次第にはっきりしていった。

 

『おーい!大丈夫かー!!』

 

エドがそう叫んで、叫び終わってから、イアハートは気づいた。

 

倒れている人物が、誰かが分かってしまったのだ。

 

『大丈夫!この人生きてるよ!』

 

カノンノが、嬉しそうな声で生存確認をしている。

 

身体を揺さぶると、少しだけ呻き声が響いた。

 

『ちょっと起きて!ここはどこ?アンタは誰?』

 

リタが質問をしているとき、倒れていた女の子は、薄目を開けた。

 

『………………?』

 

女の子は、不思議そうな顔でカノンノを見ていた。

 

そして、カノンノは女の子に質問をした。

 

『大丈夫?生きてる……よね?ここはどこ……?この墓は?』

 

その質問をされた女の子は、一粒の涙を流し、今にも無くなりそうな声で呟くように答えた

 

『……皆、死んでいった……。後は……この世界が滅ぶ……だけ…。』

 

その言葉で、エドは先ほどのレムの言葉を思い出す

 

”もうすぐそんな問題、掻き消されるのだからな”

 

『おい!何があった!この世界で何があったんだ!』

 

『…………寿命よ』

 

その女の子に質問をしたはずなのに、イアハートが答えた。

 

『この世界は……もうすぐ滅ぼうとしているの……。その前に……人間が死んでいった……でしょう?』

 

イアハートの言葉に、女の子は疑問の声を出した。

 

『…………分からない』

 

そう答えた後、イアハートは下唇を噛んだ。

 

その行為が、エド達には良く分からなかった。

 

『何か知ってるんだな』

 

エドがそう答えると、イアハートは下に俯いた。

 

『……ううん。私の世界で……滅んだ世界を見た事があるだけ……。』

 

イアハートがそう答えたとき、カノンノとリタはイアハートの方を見つめた。

 

どういう事か、あまり良く分からなかったのだ。

 

エドは、理解したようにもうその質問には興味を失くし、倒れていた女の子の方に目を向けた。

 

『……とりあえず、多分こいつ……衰弱してるだろうから船まで保護するぞ。』

 

エドがそう言うと、倒れていた女の子に手を差し伸べた。

 

女の子が手を少しずつ上げていくと、エドはその手を掴み、立ち上がらせた。

 

だが、すぐにバランスを崩しその場でまた倒れてしまった。

 

『ああ!』

 

カノンノが叫んだ瞬間、エドは屈みこんだ。

 

幸い、まだ女の子の手を握ったままなので、完全には倒れていない。

 

『………………』

 

エドは、その女の子に背を向け、もう一つの手で女の子のもう一つの手を握り、

 

おんぶをする形で、その女の子を担いだ。

 

『へぇ、アンタも極めて珍しく紳士らしい所があるのね』

 

リタが皮肉るようにそう言うと、エドはリタを鋭い目で睨みつけた。

 

『……………』

 

女の子は、少しだけ照れくさそうにしていて、エドの肩を少しだけ強く掴んだ。

 

それを見て、カノンノはエドの優しさに、少しだけ嬉しくも、どこか複雑な気持ちになっていた。

 

多分、妬いてるんだろうと思ったが、

 

いや、目の前には弱っている人が居るんだ。助けるのが当然だろうと思っていたが、

 

どうにも、エドに背負わされている女の子が羨ましく感じた。

 

『ん?どうしたカノンノ』

 

エドがそう言うと、カノンノは顔を少し赤くして首を横に振った

 

『う……ううん!なんでもない……』

 

『カノンノ……?』

 

女の子が、カノンノという言葉を聴いて反応を見せた。

 

そして、女の子は微笑み、クスリと笑った。

 

『私と……同じ名前だね』

 

女の子がそう言うと、カノンノは顔を上げた。

 

そして、少しだけ嬉しそうに、話題を変えるように驚くように質問した。

 

『え……?貴方の名前………私と同じなの?』

 

カノンノがそう言うと、女の子は嬉しそうに優しく微笑みながら答えた。

 

『うん……。私の名前は……パスカ・カノンノって言うの。よろしく………ね。』

説明
イキグサレ。結構好きです。あの歌
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