真・恋姫無双〜反逆の北郷〜 |
女性に好意を持たれる
ハーレムは願望
しかし、それは決して現実にしてはいけない
絶望、野心、復讐、欲、劣等感など
相手もまた、男と同じ人間
だから――――――こその
『死』
死神が常にそばにいる
果たして、人はそれを認めるかのか? 否か?
「なんですって!」
孫権の細い眉が、キッと吊り上り、目じりが怒りで赤く染まった。
「帝が……曹操の息子、曹否に帝職を明け渡したの言うの!?」
「はい。その後、曹否は自らを『魏』という国の皇帝だと宣言しました」
それは、後漢王朝が滅びたことを意味をすること。もはやあの国は完全な独立した国『魏』となった。
「曹操……。赤壁の戦いで重い病気にかかって幾ばくの余命もないと知ったらこんな行動に出るとは……っ!」
北郷の前に立つ孫権の肩が怒りに震えている。それを北郷はまじまじと観察した後に、ある提案を持ち出した。
「蓮華様。我々も魏と対抗するために江東を中心とした『呉』を建国することを申し上げます」
孫権は、キッと眉間にしわを寄せる。
「呉だと? 北郷は私も魏と同じように皇帝になれというの?」
「御意。もはやこの大陸に我々が崇拝する帝はいなくなってしまいした。……でしたら、作ればいいだけのことです」
「皇帝など……私には…」
孫権が眉をひそめる。
「ならば、すぐに曹否に降伏してください。もはや時代は魏の時代なのですから」
「なっ!?」
孫権の細い眉が、キッと吊り上り、再び目じりが怒りで赤く染まった。
「これは亞莎と相談した上での提案です。もしも、蓮華様が民や曹否のことを思うのならぜひ皇帝の座についてください! 少なくとも魏の曹否とは違って、蓮華様は民にも従者達にも認められています。貴方が皇帝の座に座ったとしても誰も咎めません」
「………」
沈黙する孫権。
だが、次の瞬間、玉座から立ち上がり宣言した。
「これより、この江東を中心都市として『呉』と命名する。……だが、国に名がついたところでそれだけのことだ。この江東を守り、いつか必ず魏の曹否を打ち倒さすことも忘れるなっ!」
「ははっ!」
北郷や傍にいた従者達は頭を下げ、孫権の皇帝宣言と『呉』の誕生を敬った。
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「嫌っ! シャオは劉備の所になんか行きたくない!」
呂蒙は思わず、びくっと首をすくめる。そして、片方の眉を上げて、こっそり、孫尚香の顔を見た。
孫尚香の碧い瞳が、きゅっと吊り上っている。
「劉備って確かすごく腹黒くて、偽善ぶってる女でしょ? しかも今は、同盟しているけどいつかは敵になる相手。それなのにどうしてシャオが劉備の義娘として行かなければいけないのよ!」
「……そ、それは……今後の…」
緊張しているのか、それとも圧倒されているのか。呂蒙はふるふると震えている。
「だいたい、なんで亞莎が冥琳の後釜なの? 悪いけど亞莎なんかより……」
「それ以上、亞莎を馬鹿にすると貴方でも許しませんよ孫尚香様」
振り返ると、白い服を着た北郷が厳しい顔で孫尚香を見下した。
「北郷……そうよ、貴方が来てからこの国はおかしくなったよ! だいたい私は貴方を認めていない。雪蓮お姉ちゃんを殺したお前なんか!」
孫尚香の眉が、キッと吊り上り、目じりが怒りで赤く染まる。それどころか彼女の武器である「月下美人(げっかびじん)」 を構えている。
「孫尚香様っ!?」
あまりの事態に呂蒙はオドオドする始末だが、北郷自身は微笑んだ。
「どうして俺が殺したと?」
「私はあの日、見たわ。貴方が雪蓮お姉ちゃんを虐殺的な行為して首を刎ねたことを」
「……ふーん、で?」
「それでみんなに話したもん。だけど誰も信じなかった。……それどころか、みんな貴方を味方なんて認識しているなんておかしいわ」
その時、北郷の傍にいたはずの呂蒙が消えた。
「おかしくないですよ。誰も貴方の言葉など信じていないし、貴方もその記憶はすぐに消えます」
「な、なに――――よっ!?」
グサリと孫尚香の腹部に刃が突き刺さる。
「あ……亞莎……?」
「……北郷様の悪口を言う奴は死ぬがいい」
「え……あ……」
刃はすぐに抜かれ、孫尚香はそのまま倒れた。
もはや動けないことを確認した北郷は、近くにあった石の上に腰をかけ、そこで微笑んだ。
「残念だけど、小蓮の真実は少し違うよ。雪蓮を殺したのは『俺』であって『俺』じゃない俺だ」
ピクピクと辛うじて息をしている孫尚香に、友人に話しかけるように言葉で投げかける。
「それに信じなかったのは、『北郷は絶対的な仲間』と認識させているからだよ。それが誘惑の力を持つ俺の能力。狙われた者は絶対に逆らえない」
「………」
孫尚香を刺した呂蒙は動かない。まるで人形のようにただ立っているだけだ。
「そして……君もね」
北郷は動けぬ孫尚香の服を破る。
「これから君も俺の人形となってもらうよ。……ああ、傷は終われば消えるから安心してね」
そして、北郷は孫尚香を誘惑して劉備の義娘として送り出すのだった。
第三話へ続く……
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第二話 『誘惑の北郷』 |
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