ひたぎフェアリー 1
[全1ページ]

 

  001

  

  

  戦場ヶ原ひたぎと連絡が取れなくなってから2日が経っていた。

 夏休みは終わって、学校で授業が平常どおり行われるようになり、気分も受験シーズン真っ只中といった感じ。

 出来るだけ早くこの苦しみから開放されたいと願う一方で、戦場ヶ原や羽川に勉強を教わっている時間が、ただただ苦痛なのかと問われれば、そうとは言い切れない自分もいる。

 そんな微妙なテンションで迎えた一昨日の日曜。

 僕はいつもどおり戦場ヶ原宅を訪ねたのだが、勉強の用意をして、僕を迎えてくれる筈の戦場ヶ原の姿はそこには無かった。

 特になんて連絡をしなくても、戦場ヶ原には毎週日曜日に勉強を見てもらう事になっているからと、メールの一つも入れなかったのがいけなかったのかも知れない。

 夏休みの終わり頃に合鍵を貰っていたから中に入る事は出来たので、きっと近くに出かけているだけで直ぐに戻ってくるだろうと、そのまま1人で一刻程待っていたのだが、結局戦場ヶ原は戻っては来なかった。

 今思うと毎日の勉強(夏休み以降は日曜日の休みすらも無くなっていた)のせいで疲れていた事もあり、1日休みが出来たと一昨日は特に気にしていなかったと思う。

 そして、翌日月曜日、つまり昨日。戦場ヶ原が学校を欠席した。

 今の彼女は携帯の連絡先のカテゴリが、父親、公共機関、着信拒否の3つしか無かった以前の戦場ヶ原とは違う。

 その筈なのにこちらからの電話にも出ず、メールでの返信すら無いので羽川と二人で心配していた。

 で、そのまた翌日の今日、10月31日。

 僕は登校前に早起きして、再び戦場ヶ原の家に向かっていた。

 一昨日は留守にしていたが、実は家で体調を崩して床に伏しているのかもしれない。

 戦場ヶ原の父親は中々多忙で家に居る事も少ないし、僕は彼に「娘をよろしく頼む」とまで言われているのだ。

 そこまで言われて、何もしない訳には行かない。

 そうでなくても、彼女の看病をするというシチュエーションに、不謹慎ながらも憧れたりしていた。

 こんな風に、受験生としても彼氏としても有るまじき浮かれた心境で戦場ヶ原の家を訪れた僕は、その報いを受ける事になる。

 それも飛びっきりふざけた、冗談交じりの悪戯によって。

 10月31日、ハロウィン。

 日本ではそこまで定着している訳では無いが、欧州等では、吸血鬼等の伝承上の生き物が跋扈する日とされていた。

 最近ではそんな事よりもトリックオアトリート??お菓子をくれなきゃイタズラするぞ、なんていう独特の脅し文句の方が有名だろうか。

 結局のところ今回の事件の顛末は、この悪戯好きとして最もお誂え向けな日に現れた、はた迷惑な怪異の一人勝ち、ただそれだけの全くもって下らないものである。

 

 

説明
 以前自分のHPで公開していたもの。
本格的にこちらにお引っ越しを始めました。

 ひたぎファントムの方を完結させずに別のシリーズを投稿するのもどうかと思ったのですが、あちらはちょっと原作があ予想外の展開を見せた事により生じた、矛盾をつぶす作業に追われています。
 ちなみにこのひたぎフェアリーはもう一年以上前に最後まで書いたため、致命的に直しようの無い設定矛盾を一部孕んでいますが、大目に見てください。

 化物語と偽物語まで読んでおかないと、解らない所があります。


2012/9/7追記 なんか以前投稿していたサイトから二次創作作品がまるっと消去されていたので,こっちの公開レベルを緩和しました。
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
756 718 0
タグ
化物語 戦場ヶ原ひたぎ 

岩乃江片羽さんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com