鶴の恩返し−C
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ガツッ! ぽたっ・・・・

「痛っ・・・・あ、やべ鼻血・・・」

どうやら上条は寝返りを打つ際に珍しく鼻をぶつけたらしい

 

「ティッシュ、ティッシュ・・・」

風呂場にティッシュがあるわけもなく上条はリビング兼ベッドルームへ・・・

 

薄暗闇の中、ティッシュを探す上条はふとベッドの方を見てしまった。

「なんつー無防備な・・・・」

現在共同生活中のベッドにはこの部屋の主である上条ではなく、美琴が寝ている。

その美琴は現在寝ているわけなのだが・・・・・・パジャマのボタンが上二つほど閉められてはおらず、鎖骨が見えたり見えなかったりで少しドキドキするような格好である。

 

鼻血の量が増えた気がする・・・どこだ、ティッシュー!!!と心の中で叫んだ後。

ベゴッ

ティッシュの箱を思いっきり踏み潰し・・・

 

「う・・・ん、当麻?」

「あ、わりぃ・・・起しちまったか?」

と言って気付く・・・あれ? これってどこかで見たような・・・・? デジャヴ?

 

「・・・・・・ねえ当麻・・・・・一応、理由は聞いておいてあげようと思うんだけど・・・・」

美琴の冷たい声

「か、上条さんは鼻血が出たためティッシュを探しに来たわけですが・・・」

「へー、そうなんだ・・・・・で?」

で?・・・・と言われましても・・・他に何か言えばいいんでしょうか・・・・

 

「み、美琴・・・好きだ・・・」

となんとなく、言ってしまった本心

「ふ・・・・ふにゃー」

おめでとう上条当麻、危険は回避された。

好きと言われて気絶するあたりがちょっと納得の行かない上条だったが、危険は回避されたことに安堵の溜息をつくのだった。

 

その後、朝になり目を覚ました美琴はすっかりそのことを忘れていたのは幸か不幸か・・・

ちなみに上条も言ったことをすっかり忘れた。

 

まあ、なんにせよ共同生活の四日目が始まるのだった。

 

いつもの美味い朝食を食べ終わり、カチャカチャと洗物をしている上条は美琴に聞いてみる。

「なあ、今日どうする?」

さすがに、四日目となると今までやってきたことをやるしかないか・・・と思わないでもない。

美琴の姿が見えるのであれば色んな所・・・例えば遊園地やらそこらまで行ってもいいと思うわけで

あるが・・・このままいくと一人浮かれる危ないやつと判断され、上条は最悪通報されかねない。

 

「うーん、私としては散歩でもいいんだけど・・・」

美琴は上条が一緒ならなんだっていいのだ、一緒にいるだけで幸せを感じられるから。

 

「そっか、なら今日は散歩でもするか? 天気もいいし」

そう言い上条は窓の外を見る。

外はポカポカと暖かい春の陽気に包まれているようだ。

 

「なら私はお弁当作るわ、材料まだあったはずだし」

そう言って美琴は皿洗いの終った上条と交代するようにキッチンに入る。

 

美琴はすぐに弁当の中身が決まったのか包丁のトントントン、という軽快な音が聞こえてくる。

上条は何を作っているのか気になりだすが・・・・・・見に行こうとすると

 

「ちょっと、当麻? 今から見たら楽しみが減るじゃない・・・いいからテレビでも見てなさい」

と追い返される。

 

今日は平日、それも午前中となると対して面白そうな番組はない・・・

ん? 平日・・・・今日って何曜日だっけ・・・確か、始業式が月曜だったから・・・

「金曜か・・・なんかあっという間に今週がほぼ幸せで終ろうとしていたことに上条さんは驚いているんですが・・・」

絶対この後なんかあるだろ・・・と不幸体質に慣れた上条はそう思う・・・

 

にしても・・・本来なら週末に美琴と遊ぶ約束をしていたはずだが、もうその次の日から毎日遊んでいる感覚があるのは気のせいではないと思う・・・

「日曜までには解決して遊びに行きたいな・・・美琴が心から楽しめるように・・・」

そう上条は心から思うのであった。

 

それからしばらくして

 

「お弁当出来たわよ?」と言って美琴がキッチンから出てきた。

 

「ああ、昼がすげー楽しみだ」

上条はそう言って笑う。

「そ、そんなたいしたもんじゃないわよ」

と、いつもの様に嬉しさからか頬を染める美琴

 

「それじゃ、いつもの公園にでも行きますか」

そう言って上条は美琴をつれて公園に向かうのであった。

ポカポカ陽気の中を歩いて・・・本人達が気付かない、僅かにいつもより近い距離を保ちながら

 

・・・・・・・・・・・・

 

公園をしばらく歩き、いつものベンチに座る。

昨日辺りにでも桜が咲いたのか、公園も所々桜色に染まっている。

「この前と違って桜が少しずつ咲いてきたわね」

美琴は咲いている木々を眺めながら「あ、そうだそうだ」と言い鞄から水筒を出した。

 

キュポッ、トクトクトクッ

 

「はい、当麻、喉渇いたでしょ?」

美琴はお茶を上条に差し出す。

「サンキュー美琴、にしても用意がいいな」

上条は少し美琴を見て、お茶をすする。

「だって、この間は飲み物買っちゃったから今日は、って事で淹れてきたの当麻の財布も心配だし」

と言って美琴は笑った。

 

「上条さんは素直に喜んでいいのかわからんのですが・・・・」

がっくりと肩を落とす上条、飲み物一本で財政が傾くのは否定できませんが・・・と心の中で思う。

 

「まあまあ、そんなことよりも・・・そろそろお昼の時間だし、もう少ししたらお弁当にしましょ?」

そう言い、美琴も自分の分のお茶をすする。

 

「まあ、そうだな・・・満開までまだだけど、花見をしながらの弁当ってのも味なもんだな・・・」

しみじみと風情を感じる上条であった。

 

「なんか、当麻・・・おじいちゃんみたい」

ぷっと噴出し笑いまくる美琴

「んなっ・・・・笑うんじゃねー」

上条は笑いながら怒る・・・そんな二人は周りから見ればただの恋人である。

 

それから、まだまだ話すネタは尽きないのでベンチで雑談していたが

 

ぐぅ・・・

という上条のお腹の音に二人で笑い、美琴特製弁当を食べることにする。

 

「前の弁当よりかなりグレードが上がったな・・・」

と上条は、もはや唖然としている。

「そりゃそうよ、この前は朝の残りをメインに使ったのよ? 今回は一から作った物だし」

・・・・・当麻の為に愛情を込めて、と最後に言うがもちろんそれは上条に聞こえていない

 

「なるほどな・・・ともかく美琴が頑張って作ってくれたものだし、美味しくいただきますか」

そう言って上条は両手を合わせ「いただきます」と食事を開始した。

 

弁当箱の中身はミートボールにサラダ、だし巻き卵とお弁当の定番に加え、名前のわからない海外の料理も入っているという美琴特性弁当・・・食材は上条が使っているものと一緒なのだろうがもはや次元が違う・・・

 

上条は一つ一つを味わうように噛み締めながら食べ、一つ食べては目に涙を浮かべて食べる上条を見て美琴は思う。

大げさなのよ・・・当麻は・・・

と、顔を耳まで真っ赤にする。嬉しさが大きいのだが少し恥ずかしさもある感じだ。

 

「でも、昨日の揺らぎはなんだったのかしら・・・今日はそんな感じ一切しないんだけど」

そう、昨晩美琴は当麻からも見えなくなるような揺らぎを感じ、上条も美琴が見えなくなるような

揺らぎを感じたのだ。

 

縁田は美琴が見えなくなるまでのタイムリミットは今日を含めあと3日。

つまり来週の月曜日が期限である。しかし、なんとなく今日中に片付いてしまうような希望すら上条の隣にいるだけで感じてしまうのは恋の見せる幻想だろうか・・・

 

「そうだったら、この幻想はずっとあり続けて欲しいな・・・」

美琴は強くそう思うのであった。今の自分が上条にどのように映っているのかもわからないが、昨日の上条の発言から悪いようには思われていないはずだ・・・

 

「ん? 美琴どうしたんだ? 深刻な顔して・・・ま、まさか具合でも悪くなったか!? くそっ、今は医者にも見えねえってのに・・・」

と急に焦りだす上条

「って、アンタは慌てすぎなのよ! 私はちょっとだけ考え事をしていただけ」

と言ってスパコンッと上条の頭を叩く。

「痛てっ、つーかアンタにまたクラスダウンしてる・・・」

大げさに頭を擦りながら上条は苦笑いをする、「あーまた先走ったか・・・」などと言っている。

 

「それで、なに考えてたんだ?」

そう上条が聞いてくる。

美琴は初め、恥ずかしがって答えようとはしなかった。

しかし、弁当が食べ終わると沈黙に耐えられなくなったように

「わ、笑わないって約束できるなら教えてあげないことも・・・・ないわよ」

と、俯いて顔を赤くする。

「ああ、笑わない、上条さんは約束は守る男ですよー」

と言ってドンと自分の胸を叩く、ケホケホと言っている時点で少し頼りない。

 

「わかったわよ、実はね・・・当麻の傍にいることで今日にでも今回のことが解決しちゃうんじゃな

いかって希望がわいてくるの・・・・だから、もしこれが幻想であるなら壊れないで欲しいな・・・って」

赤い顔で上条を見て、美琴は今まで以上の笑顔で微笑みかける。

 

「・・・・・・」

上条は無言、その実は

ヤベえ・・・・美琴可愛い、つかそんなに俺って頼りにされてるって思っていいのか?

そう考えると上条の中で何かがスッと溶けていった気がした。

 

それは、不安・外聞・羞恥など上条が表面に出さないものも含めすべてが今の一瞬だけ消えた。

そして流れるように上条は口に出していた。

 

「なあ、美琴・・・俺、お前のことが・・・御坂美琴のことが好きなんだ・・・」

もちろんとっさに言われた美琴は固まるし、不意に言葉として出てしまった上条は自分でも驚いたが続けて言った。

 

「気付いたのは俺が縁田に会った後、正確には水曜なんだが・・・それまでに何回も可愛いとか気にはなってたんだぜ?」

そう言って上条は一息つき、美琴の前に屈み、目を閉じて

「もう一度、改めて言わせて貰う・・・俺、上条当麻は御坂美琴のことが好きだ、俺は不幸だし、この先美琴を不幸な目に遭わせるかも知れない・・・それでも良いと思ってくれるなら俺と付き合ってくれ」

上条は左手を出した。了承するなら手を取ってくれという意味で・・・

 

今、美琴の顔は見えない・・・それでも上条には手を取ってくれる・・・・・・そんな気がした。

「うん・・・グスッ・・・嬉しい・・・」

美琴からの返事は短いながらも上条にとっては嬉しいものであった。

「あ、でもね・・・左手は嫌・・・これが幻想なら今すぐ覚めて欲しい、だから当麻の右手がいいの・・・」

そう言って美琴は出されている左手ではなく、右手を取る。

 

「よかった、幻想じゃない・・・・」

美琴はそう言うと嬉しさ極まって泣き出す・・・そして言葉に詰まりながらもこう告げた。

「わ、私もね前から当麻のこと好きだった・・・グスッ、いつも自分に素直になれなくて・・・、いつも電撃飛ばしたり、強がったり・・・意地張ってた・・・、多分しばらくは慣れないと思う・・・こんな私でよかったら、不束者ですが宜しくお願いします」

 

美琴が泣き止む頃には二人は笑顔の恋人になるだろう。

 

□ □ □

 

縁田は晴れ空の下桜の木の下に寝ている。

 

今日は昨日から早朝まで追い駆けっこしていた為に疲労感から校門まで行ったが引き返した・・・

件の公園で夕方まで寝よう・・・弁当はミリ様が作ってくれたし、と寝ていたわけだ。

 

そこに例の二人が散歩に来て寝るに寝れず、聞き耳を立てている。

 

「それにしても・・・ずいぶん進んでくれた気がしますね」

と二人を見て安心と感心する縁田

 

気付けばあの二人の話を聞いているうちに昼になったようだ。

縁田は弁当を食べつつ、まるで刑事ドラマのように張り込んで話を聞く。

 

そして・・・・

 

「なあ、美琴・・・俺、お前のことが・・・御坂美琴のことが好きなんだ・・・」

その言葉に縁田は目を伏せた・・・・・

そうじゃない・・・上条さんが思っているのはもっと深い愛でしょう・・・

縁田はそう思った・・・読み取った時はその言葉よりも深い感情を読めた。

 

「もう一度、改めて言わせて貰う・・・俺、上条当麻は御坂美琴のことが好きだ、俺は不幸だし、この先美琴を不幸な目に遭わせるかも知れない・・・それでも良いと思ってくれるなら俺と付き合ってくれ」

その言葉よりも深いことは言えないのですか・・・上条さん、と苛立ちでさえ覚えた。

 

しかし

 

「うん・・・グスッ・・・嬉しい・・・」

と、美琴のその言葉を聴くまでは・・・とても短い言葉であったが美琴のその言葉には縁田が今まで上条や美琴にしてきたことなど、全ての事をかき消すほどの想いが込められていた・・・・・

 

縁田は気付いた、いや気付かされた。

「上条さんの感情は言葉では表現できるものじゃない、これから二人が感じて行くこと・・・か」

そう言う事だ、自分は人の深層心理が読めるだけに大事なことを忘れていた。

 

心は聞かされるところではなく・・・読むところでもなく・・・・感じるところだという事を

 

「上条さんはともかく、御坂さんには驚かされてばかりです・・・」

苦笑いをする少年の向こう側に、泣きながら喜ぶ少女とそれを落ち着かせようと焦る少年がいた。

 

・・・・・・・・・・・・

 

縁田は今、商店街を歩いている。あの二人の時間をこれ以上聞くのも無粋と思い公園を出たのだ。

 

〜〜♪〜〜〜〜♪カチャ

「ミリ様、御坂さんの周囲の『認識の拒絶』は解除してしまっていいです」

と彼女に告げる。

『ん?わかったよ鶴、あー、でもでも第一段階クリアしたならご褒美に名前で呼んで欲しいかも』

そう言って甘えた声を出す少女

「しょうがないですね・・・クロウ『そっちはだめ! 苗字じゃない! 距離感感じるんだけどっ!』・・・」

途中でキレ出され、少し縁田は考える。

 

「そうですね・・・ミリアーチェ、・・・・やっぱり長いんでミリでいいですか?」

そう言ったら電話の向こうでは大はしゃぎのようだ・・・後半のは聞こえてないだろう。

「ミリ、聞こえてますか? 戻しますよ、呼び方」

『あわわわ、ドテッ、バタバタバタ・・・』

 

こけたな・・・縁田はいつもの彼女を思い出す。

『解除ならしたけどね、鶴はなんで2つに分けて解除する計画にしたの?』

めんどくさいじゃん・・・と言われてしまい縁田はハァ・・・と溜息をつく

 

「あの二人はなかなか難しいんですよ・・・」

そう縁田は言ったが、予想よりはるかに早く結果が出てしまった為に計画を若干変更したのだ。

 

『でもさ、二人が一緒にいるのが見えるようになれば妨害する人も出てくるんじゃないの?』

と言う少女には確信めいたものがある、上条の情報を見ればそれは明確だからだ・・・

不幸体質・フラグ男・人助けに命をかけるような奴・・・・と記されていれば誰しもそう思うだろう。

 

「ま、そこはあの二人に賭けますよ、例のプレゼントも贈りますし」

と言い、ミリも今度一緒に行きます?と聞いた。

『行くよ、その時はちゃんと彼女としてね』

その答えに縁田も喜びと共に助かったと安堵した・・・

 

『まあ、女装はしてもらうけどね・・・って、鶴? 聞いてる? 聞いてるよね? おーい』

プチッ

 

ツーツーツー

 

「なんか・・・今更ですがミリを信じてここまで着ましたが、初めて後悔した気がします・・・」

そう言って縁田は携帯をしまい、宅配物を送る準備をし始める。

 

「喜んでいただけると嬉しいですけどね・・・」

そう言って、公園で見たあの幸せそうな二人を思い出すのであった。

 

□ □ □

 

時間は戻り例の公園

 

二人はベンチに並んで座っている。距離は服が触れ合う近さだ。

「なあ美琴、ホントに俺なんかでいいのか? 今回みたいにまたお前を泣かせちまうかもしれないんだぞ?」

泣き止んだ美琴に再度確認を取る上条

 

「いい? 当麻を選んだのは私なんだよ、後悔はしない・・・だって、泣いたとしても隣に当麻がいてくれて、支えてくれると思うから・・・」

そう言って笑う美琴は今まで以上に可愛くて、綺麗だと思えた。

 

その後、少々気恥ずかしくなった二人は話題を変える。

 

「それじゃ、今日はお祝いしないとね? なに食べたい?」

そういう美琴は? と上条は逆に聞いてしまい

美琴の次の第一声で、質問に質問で返すなバカと言われてしまった。

 

「私が食べたいのはデザートだから、当麻にはメインを決めて欲しいかな・・・ダメ?」

と上条を討ち取ったことのある上目遣いで聞いてくる美琴

 

「うーん、お祝いならやっぱり、お肉系・・・か? 俺はローストビーフとかビーフシチューとか食べてみたいな・・・と思うわけです」

後半詰まったのは美琴の「まったく時間のかかるものばかり・・・」の一言からだ。

 

「まあ、何かお肉系を考えておくわよ」

そう言って美琴は微笑む。

 

「ああ、わかった・・・楽しみにしてる」

言葉以上に上条は楽しみに心を躍らせる。

 

「なら、買い物行かねーとな」

そう言って上条はベンチから立ち上がる、そして右手を美琴に差し出す。

 

「そういう、気障な事・・・当麻には似合わないわよ・・・」

と照れながらも上条の手を取り、手を繋ぎながら歩き出す。

 

時刻は3時になった、学生はまだ学校で最後の授業を受けているはずだ。

そんな中、上条はある種の視線を感じた・・・好奇の目とでも言うのか、そんな視線。

 

美琴は今私服、俺も一応私服を着ているため特に目立つこともない

しかも、美琴は見えないから周囲から見えるのは俺一人のはずだ・・・はずなのだが・・・

 

ちらちらと、すれ違う人は俺らのことを見ている。

 

午後4時過ぎ

 

そしてスーパーに着いてからもその様な視線を感じ続ける。

 

「な、なあ・・・美琴、俺ら見られてないか?」

多少の奇異の目を覚悟で隣の美琴に聞いてみる。

「そ、そうね・・・私って見えなくなってるはず・・・よね?」

美琴もそう疑問に思うほど周囲の目が気になる。

 

その時、不意に声をかけられた。

 

「あれ? 御坂さん・・・ですよね、なにをしてるんですか? こんなところで、しかも私服で」

美琴は振り返り、そこにいたのは彼女の友人の佐天涙子だった・・・

そして、ふと言われたことを思い出した『御坂さん・・・ですよね』

 

あれ? 私見えて・・・・る?

そこまで思案して固まった・・・

今まで上条が居てくれたから耐えられていたが、それでもとても辛かった。

よかった、見えてる・・・私、皆に見えてるんだ

その喜びに涙を流し、佐天に抱きついて泣き出す。

 

「わっ、ど、どうしたんですか・・・御坂さん」

急に抱きつかれた事と美琴が泣いている事に驚きながら、佐天は一緒にいた上条を見る。

 

苦笑いをしている上条をよそに佐天に抱きつき泣く美琴、店内で人目が結構あるため

それをどうにか上条がなだめ、佐天という少女と一旦別れた。

『買い物をまず済ませたら、入り口で再度落ち合いましょう』という約束をさせられて

 

「まさか、見えるようになってるとは思わなかったな・・・」

確かにどうして見えるようになったかは縁田しか知らない訳だが上条と美琴は安堵した。

しかし、よくよく思い返してみれば二人で学校がある時間帯に手を繋いで歩いていれば嫌でも目立

つか・・・と思うわけで少し顔を赤くする二人だった。

 

「それにしても、一番見つかりたくない子に見つかっちゃったかも・・・」

そう言う美琴の言葉も気になる上条だが、あえてここでは聞かないことにする。

「ま、それよりさっさと買い物終らせちまおうぜ、友達待たせたらあれだろ?」

そう言って、止まりかけている美琴を促す。

 

10分くらいで買い物を済ませ入り口に行くと佐天が待っていた・・・が、そこには見覚えのある少女がもう一人・・・そう、上条をタッグを組んで捕まえようとしたもう一人の花瓶の様な頭の少女だ。

 

「あれ? 初春さん・・・もしかして、佐天さんに呼ばれてきたの?」

と問いかける美琴に

「もちろんですよ、御坂さん! 男の人と御坂さんのツーショットも珍しいので走ってやってきたんですから」

そう言って拳を握る初春と呼ばれた少女。

 

「あれ? でもそっちの男の人・・・昨日白井さんといた人ですよね?」

と、佐天が言うと初春も「あー、そういえばそうですね」と言ってきた。

 

「あー、それはどこか座れるところでゆっくり説明するから・・・・ねぇ?」

と美琴が上条に問いかけたため

「ああ、そうだな・・・立ち話もなんだしな」と上条は答え、一番近い喫茶店・・・

ではなく、上条の部屋に何故か行くことになった・・・

 

・・・・・・・・・・・・・

 

移動中は佐天と初春が常に喋り続け、買い物袋(佐天の物も)を上条が運ぶ事になった・・・

部屋を提供するのに何故・・・と不平不満は山々だが、嬉しそうに話を聞く美琴を見てそんなものは吹き飛んだ・・・やっぱ、幸せになると少し心が広くなるんだろうか・・・とも考えないこともない。

 

「さ、ここが今、私がお世話になってる部屋だよ」

そう言って上条の部屋に少女が三人入って行く・・・

上条はなんか・・・異常な光景だな・・・と思った。

 

「それじゃ、俺はこれの整理しとくからちょっと話しててくれ」

そう言って上条は買い物袋を持ってキッチンに入って行く。

 

美琴たちはテーブルを挟むように座って談笑する。

ベッドを背もたれにするように初春と佐天が座り、テレビ側のほうに美琴が座る

 

上条がいないうちに説明するのもなんなので上条との出会いなどを強要され、当たり障りのない程度に話をすることになった。

 

話し終わる頃になってやっと上条がやってきた。

少し遅くなったのは、4人分のココアを片付けが終わった後に作っていたかららしい。

 

そして、上条はココアを配り終えると美琴の隣に腰を下ろした。

それから当たり障りのない程の説明を上条がすることになり

「実は美琴が火曜の夕方に・・・・で、周囲から・・・ということです」と説明した。

それを聞き終わった後に佐天が一言

 

「それで、上条さんと御坂さんは恋人になったんですね?」

どうやら、この佐天という少女は途中の過程の事は、今はどうでもいいらしい・・・

 

「まあ・・・今日からそういう事になるな・・・なあ、美琴?」

恥ずかしそうに顔を真っ赤にして話す上条

「え、ああ・・・う、うん、そうね・・・今日から私が彼女・・・になるのね・・・・」

そう言って美琴も顔を真っ赤にして俯きながら答える。

 

{ねえ、初春? この二人似たもの同士っぽくて、すごくお似合いじゃない?}

こそっと隣の初春にそう言った。

{そうですね佐天さん、今も二人ともすごく幸せそうです}

二人を暖かく見守ろうと考えた二人だが・・・一つ思ったことがあるので聞いてみる。

 

「御坂さん、上条さん・・・お二人に聞いておきたいことがあるんですけど・・・」

と、佐天から切り出した・・・上条と美琴は「ん、なんだ?」「なに?」と反応を返し

 

「白井さんには伝えました?」

とこの二人の最大の難関を指摘された・・・・

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

二人は沈黙し互いに見つめ合い・・・・ハァァ、と大きい溜息をついた。

 

「あー、御坂さん白井さんにはまだ黙っておくんで心配しないで下さい」

そう初春が告げた瞬間・・・

 

〜♪〜〜♪〜〜〜〜♪

ツインテールの悪魔・・・白井黒子からの着信音が美琴の携帯から流れてきた・・・

四人ともビクッと身が跳ねたがここは上条が出たほうがよいという事になり

上条が生贄に差し出されることになった・・・

 

ピッ

「もしもし、上条ですが・・・」

『これはお姉様の携帯ですわよね?それともお二人はそういう仲におなりになったので?』

と、いきなり確信を突いた様な事を言われ上条は身体全体から嫌な汗が吹き出るのであった。

 

「い、いや、そんなことはないぞ、白井・・・で、どうしたんだ?」

話題をそらせようと必死に上条は電話をしてきた理由を聞くことにする。

『お姉様に能力をかけた人物は書庫には登録されてない様ですの、それを伝えようかと思っただけでして・・・』

そう言って、次の言葉を告げた。

『実はこちらで調べられることは調べてしまったので後は、もうお役に立てそうにないですの・・・』

と本当に悔しそうに白井は告げてきた・・・

 

それを聞いて上条は

そうだ・・・白井も美琴のことを本当に心配してくれているんだ、それなのに・・・俺は・・・

そう思った時には上条は既に告げていた。

 

「白井、今は言えねえが今回の厄介事が終ったらお前に絶対話さなきゃいけないことがある、だから今回の件が終るまではどんな事を聞いても美琴と俺には深く言及しないでくれ・・・頼む」

そう告げた上条の声に迷いや言い訳は感じられなかった。

 

美琴と初春、佐天はそれを目を閉じて聞いていた。

 

しばらくの無言の後

『わかりました、上条さんとお姉様がお話してくれるまで深く言及しないことをここに誓いますの』

それじゃ、上条さん・・・お姉様を頼みますのと言って白井は電話を切った。

 

「わりぃな美琴、勝手に話しつけちまって・・・」

そう言って上条は美琴に携帯を返す。

「いいのよ、どうせいつかは言わないといけないもの・・・・それに少しかっこよかったかな」

そう言って照れる美琴

 

「ヒューヒューお熱いですねーお二人さん」

と茶化す佐天に

「確かにかっこよかったですよ上条さん」

などと美琴にフォローを入れる初春

 

それからしばらく、どこに惚れたんですか?や上条さんって能力はなんですか? という

恋話や雑談で盛り上がるのだった・・・

 

夕方6時頃

佐天と初春は「そろそろ、お邪魔虫は撤退するんで仲良くやってくださーい」と帰って行った。

 

あの二人が去った後はかなり静かになるのであった。

 

「やっぱり、ステーキ買っといてよかったわ・・・」

と今の時間帯を見て美琴が言う、結局何にするか決まらずスタンダードにステーキになったのだ。

 

その結果、ビーフシチューやローストビーフなど時間のかかるものは今から作っていたのでは夕食ではなく夜食になってしまう・・・という最悪のパターンは回避されたのだ。

 

「そうだな、でもいい友達だと思うぞ、美琴」

そう言って笑いかける上条がさらに一言

「俺の友達なら多分、俺をボコボコに集団でリンチするだろう・・・」

と言い切った。

 

「なんか、私・・・当麻のこれからの日常がすごく心配だわ・・・」

美琴は心からそう思うのであった・・・・

 

そうこうしている内にステーキは焼きあがり、部屋にとても美味しそうな匂いが充満した。

上条は皿を配置し、飲み物も炭酸飲料のヤシの実サイダーを氷で冷やしておいたのだ。

 

準備も万端といったところで

コンコンッ 上条さーん、宅配便でーす

と声が聞こえたので上条は印鑑を持って玄関に行きドアを開けるのであった。

宅配人から普通サイズの茶封筒を渡され、用紙に印鑑を押して受け取るのだった。

 

「ん?なんだ・・・これ」

と差出人を見ると縁田汰鶴と書かれていた・・・・

その名前を見ると共に上条は封を破り中身を確認する・・・

 

中には一通の手紙ともう一つ封筒が入っていた、手紙は・・・

 

上条さん・御坂さんへ

 

今回の件は本当にご迷惑をおかけしました。

本日昼頃の出来事を拝見し、あなた方の愛に私の心の内面の汚れを落とすくらい心打たれました。

なので、リミットを消し去ることにしました。

しかし、まだもう一つの能力の『発現の拒絶』は解除できません、これの理由は明日以降お伝えするつもりです。

そこで、今までの非礼のお詫びに少しばかりですがプレゼントを同封させていただきました。

それでは、よい週末を・・・

 

縁田汰鶴

 

「なんだよ・・・見てやがったのかあの野郎・・・」

と、憤慨する上条だったが封筒の方が気になりそちらも開けてみる。

 

そこには新しく第六学区にオープンしたアミューズメントスポットの入園、宿泊のペアチケットが入っていた・・・・

期限が明日朝〜月曜の朝までだった為、週末の約束をしていた上条達にはうってつけのアイテムであった。

 

それを元々入っていた封筒に戻し、食卓へ向かう。

 

「で、配達ってなんだったの?」

戻ったところで美琴にそう聞かれたので

「飯を食いながら話すよ、それじゃいただきまーす」

と言うと上条はステーキにむしゃぶりついたところ、落ち着いて食べなさいと美琴に怒られた。

 

上条が食べ始めた為、美琴もまず食べることにする。

「で、それでどこの誰からでなんだったの?」

ある程度食べ進めたところで美琴は聞いてみる。

 

ごっくんと、口に入っていたステーキを飲み下し

「あー、縁田からの俺らにプレゼントだってよ」

そう言って上条は美琴に届けられた封筒を渡す。

 

「ふーん、どれどれ・・・」

そう言って美琴は手紙を読み、もう一方の封筒を開けた。

するとチケットが目に入るわけで・・・

「週末の二日間、せっかくだし二人で遊ぼうぜ? そこで」

と上条が言うと「うん、気が利くことするじゃない縁田さん」と言って笑う。

 

縁田に笑いかけたのは少し気に入らない上条だが、美琴が喜ぶならそれでいいかと思うのである。

 

二人共に夕飯を食べ終えると時刻は8時になりそうなところで

上条は皿洗い、美琴はお風呂に入る。

もはや、この流れに慣れてしまったのか上条は仕事があるなら雑念振り払えるんで大丈夫ですよ、と強気であった。

 

が・・・・しかし、途中で美琴が上条を呼んだ・・・

「ねぇ、当麻ー、下着・・・持ってくるの忘れちゃった・・・出れないから持ってきて・・・」

と・・・・上条は嬉しいのだが泣きたくなった・・・

美琴さん、そんなに上条さんの精神を削り取りたいんですか・・・と

 

「・・・・・・・わかった、ちなみに先に言っておくぞ・・・・殴るなよ?」

そう言って上条はまだ使われていないであろう、先日の紙袋から取り出そうとするのだが・・・

 

今ここを土御門にでも見られたら・・・・・と思い一応玄関の鍵を閉めに行き、カーテンも閉まっているか確認してしまう上条なのであった・・・

 

「なんつーか・・・わりぃことしてねーけど・・・・南無散っ!」

と言って紙袋に手を突っ込み女性用の二つの下着を取り出し、見ないように風呂場のカゴに入れる。

「言っとくがほとんど見てねーからな、もし違ったら俺が入ってる間にでも着替えなおしてくれ」

そう扉越しに美琴に言って上条は足早に立ち去る・・・

 

顔合わせづらい・・・もう風呂の準備して、美琴があがったら速攻で入ろう・・・・

そう上条は天に誓うのであった・・・その結果として、残り湯ネタでの葛藤を忘れていたため風呂に入りながら気絶する羽目になる。その後も色々あったのだがそれはまた別の機会に・・・

 

夕食やお風呂などが終わると明日の準備に取り掛かる二人

 

「着替えは二日分で、あとは・・・財布でしょ、ハンカチに・・・・」

と呟きながら美琴は紙袋を漁り、鞄に詰めていく。

ちなみに、この美琴が詰めている鞄には先に詰めた上条の着替えなどが入っているわけだが・・・

 

「それにしても、初デートが宿泊付って・・・ぶっとんでねえか?」

上条が言う事は間違いではないが・・・

「ねえ、当麻・・・当麻はさ、今日の散歩はデートに含まれてなかったの? って私は疑問に思ってみるんだけど・・・どうなの?」

そう美琴が言うが上条は・・・・

 

「ん? だって今日のは散歩って言って向かったんだから散歩だろ?」

と返しこう続けた。

「明日のはデートって言って行くからデートなんですよ、記憶のない上条さんにしては初デートな

のかわかりませんが「絶対当麻は初デートだわ・・・・」ねえ・・・」

途中で割り込んだ美琴はこれは間違いないでしょ、と言わんばかりに頷く。

 

「まあ、そうだとは思いますけどね・・・・」

拗ねて上条は美琴に言う。

 

「あははは、ごめん、ごめん・・・私も人生初のデートなんだから二人でいい思い出でも作りましょ?」

そして、美琴は上条に微笑む。

 

上条も照れながら美琴に微笑み返す。

 

そうして夜は更けていった・・・・・

 

午後10時ちょっと前

 

明日は楽しむぞーと意気込む二人は多少早いかな、と思ったがいつもより早めに寝ることにした。

 

ここ数日でお馴染みになった「おやすみ、当麻」「ああ、おやすみ・・・美琴」を言って上条が電気を消す。

 

そして上条は風呂場に行き浴槽ベッドに入るのであった。

 

寝る前に上条は思った。

いつもは不幸を自分に与える神様(バカ)に悪態をついているのだが・・・

今日は最近幸福を運んできてくれている神様(かみさま)に感謝するのであった。

 

こうして、共同生活4日目が終了するのであった。

 

説明
禁書の二次創作。上琴メインのダラダラ長く書いた話のそのC。原作20巻より分岐した感じです。【追記】一回目投稿した時2P目分が抜けてました。すみません(´ω`;)
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禁書 上条 美琴 上琴 

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