鶴の恩返し−E |
上条当麻は目を覚ました、が・・・
「なんでこんなことに?」
今上条の胸元に顔をうずめて寝ている美琴を見て、上条は呟く。
上条の右腕は、頭が乗っていて動かせず。
身体を動かそうにも、両手を胴に回されていて動けず。
足で起き上がろうにも、片足にはがっちりと美琴が足を絡めている・・・
「あー、なんか幸せなんですが・・・いろんな感触で・・・・理性が・・・・理性が・・・」
頭の中で必死に本能を鎮めるものが何かないかと検索した結果、衝撃映像を一件探し当てた。
それは、御使堕し(エンゼルフォール)時のインデックス(青ピ)の水着姿。
上条は、必死に頭の中であの凄惨な映像をひたすら思い出すという、悲しい作業に没頭するのであった・・・
・・・・・・・・・
「う・・・ん、あったかーい・・・うーん・・・・当麻の匂いがする〜・・・ん?」
と寝ぼけて抱いているものに頬擦りする美琴だが、そのものを認識した途端に覚醒した。
「って当麻!・・・・・・あれ? 当麻・・・おーい、大丈夫?」
そのものに対して美琴は叫んだが・・・反応がない。
よく見ると顔を真っ青にして痙攣していた為、後半はペチペチと上条の頬を叩きながら状態を確認することに・・・
頬を叩かれ続けること10分。
既にペチペチからバチバチに変わって、叩くというよりもうビンタの域に近い美琴。
「お願いだから起きてっ、ねえ当麻!!」と必死で頬を打っている
上条はようやく伝わった痛みでゆっくりと覚醒すると共に、強烈な最後のビンタをもろに受けることになった。
「起きろって言ってんのよー!!」
バチンッ!!!!
「み、みことしゃん・・・い、痛いでふ・・・」ガクッ
上条は再び気絶することになるのであった。
「あぅ・・・」
と、やり過ぎたことに反省した美琴。
その後、ベッドで寝ている上条に膝枕をして頬を濡れたタオルで冷やしていた。
上条の頬は叩かれ過ぎた為に真っ赤なトマトの様になってしまって
「これって・・・氷貰った方がいいかしら」
そう思い、電話で氷を頼んだ美琴は、応急処置で濡れたタオルを使っているわけだ。
「ん・・・、美琴どうしたんだ?そんな顔して」
気がついた上条は第一声で暗い顔をしていた美琴のことを心配した。
「泣いてんぞ・・・」
そう言って上条は指で美琴の涙を拭っていく
「ごめんね・・・」
美琴は泣いてしまった。自分が原因で上条が気絶してしまったのに、真っ先に上条が自分を心配してくれたことで・・・
上条の優しさに美琴の涙は止まらなかった・・・・
美琴が泣き終わる頃
コンコンッ「お客様、氷をお持ちしました」
どうやらホテルマンが氷を持ってきたようだ。
「あ・・・・」
美琴は気付いた。
涙で目を腫らした自分も、頬が真っ赤の上条も対応するには酷い顔をしている。
そう美琴が考えてる内に、上条がホテルマンから氷を受け取っていた。
ホテルマンはギョッとしていたが、丁寧に氷を渡すと同時にそそくさと立ち去って行った。
「ん? なんであんなに慌ててくんだ?」
「鏡・・・見て来なさいよ・・・」
ん? と首をかしげた上条はシンクに備え付けられている鏡を見に行った。
「な、なんじゃこらー! 痛ててっ」
どうやら認識してから痛みだしたらしい・・・・
「私が起きた時、当麻が失神してたから・・・最初は軽く叩いてたんだけど・・・なかなか起きてくれないから焦って・・・」
「あー、なるほど・・・美琴の言いたいことは十分痛いほどわかりました」
痛いほど・・・・実際に痛いのだが上条は我慢して笑う。
「じゃ、ここに頭置いて・・・」
そう言って美琴は、顔を赤くして自分の膝の上をポンポンと叩く。
「えっと・・・美琴さん? あなたは私に膝枕してくれると?」
「そうよ、早くしなさい」
そう怒られたので、上条は言われるがまま美琴の膝に頭を置く・・・
やわらかい感触が頭にー!! とドキドキする上条。
「でも、氷を当てるくらいなら自分でやれると上条さんは思うのですが・・・」
「私が負わせた怪我なんだから・・・私が面倒見るの」
美琴は子供のように頬を膨らませて言う。
「はあ・・・わかりましたよ、美琴に任せて安静にしてますよ」
上条は美琴の顔をまっすぐ見つめて微笑んだ。
美琴は顔をより赤らめて微笑み返してくれた。
こうして上条と美琴の共同生活の最後の日が始まるのであった。
・・・・・・・・・・・・・・
「お客様、朝食のご用意が出来ましたのでお持ちしました」
頬を冷やし終わった後、しばらくしてホテルマンがノックしてきた。
ホテルマンに朝食の準備をしてもらい、昨晩と同じで食後はカートへ乗せてくださいと言われた。
「なあ、美琴今のやつ縁田じゃねえよな?」
上条は昨晩のホテルマンが縁田だったことに気付けなかった。
「うーん、違うと思ったけど・・・」
美琴も昨晩は気付けなかった。
「「うーん・・・・・」」
二人で悩んでも答えは出なかったのでまずはご飯を食べることにした。
時刻は午前7時45分
「美琴・・・その箸はなんだ?」
朝食も半分くらい進んだ頃、上条は卵焼きの一部を美琴に箸で向けられていた。
「あの、ね・・・当麻・・・あーんしても、いい・・・かな?」
美琴は赤らめた顔をまっすぐに上条に向けて、潤んだ瞳で見つめてくる。
「・・・・そろそろ、気付いてほしいのですが、美琴さん・・・そんな目で見つめられたら断れないじゃないですか!」
と上条は叫んでしまったが美琴は相変わらず見つめてくる・・・
「喜んでいただきます・・・・」
結局はこうなるのだ。
「それじゃ、はい・・・あーん」
「あーん・・・・」
ムグムグムグ・・・ごっくん
「おいしいな・・・でもやっぱり美k「あーもう! 当麻? 何回同じ台詞を言うつもりよ、いつでも作ってあげるって言ってるでしょ?」・・・・・はい」
言う途中で遮られた挙げ句、言いくるめられる上条はもう尻に敷かれているというのではないだろうか。
「それじゃ、次は俺が・・・ほら、あーん」
「えっ?! あ、その・・・あーん・・・・」
ムグムグムグムグ・・・・ごっくん
どうしよう・・・・料理は普通なんだけど・・・おいしいだと捻りもないし・・・・・・
普通じゃいけない、と何故か思ってしまった美琴は
「と、当麻の・・・ああ、あ、愛の味がする・・・」
顔を真っ赤に染め、どもりながらも恥ずかしい一言を言い切る美琴。
ぶぅっ!! と上条は味噌汁を噴き出してしまった。
「ゲホッゲホッ・・・な、なにを言い出すと思えば・・・・」
「わかってるわよ! あーもうっ! それ以上言わないでー」
頭を抱え、顔を真赤にする美琴
どうやらさっきの発言はしばらく美琴の黒歴史になるようだ・・・
「で、美琴・・・落ち着いたか?」
しばらくゼーハーゼーハー言っていた美琴が、落ち着いたのを見計らって聞いてみる。
「うん・・・・落ち着いたわ・・・・」
「それじゃ、食器持ってくからドア開けてくんねえか?」
そう言って、両手が塞がった上条は顎でドアを指す。
「わかったわよ・・・あれ?」
美琴がドアを明けて廊下を見た。そしたら笑顔でこっちに歩いてくる白いゴスロリ装束の少女がいたのだ。
疑問に思ったのはその少女がまっすぐ美琴を見ていたからだ、そして目の前まで来ると
「あの、少しお話したいことがあります・・・よろしいですか御坂美琴さん、上条当麻さん」
そして、こう続けた・・・私は縁田・・・鶴の彼女です、と
・・・・・・・・・・・・・・・
時刻は午前9時丁度
上条と美琴は未だに信じられないでいる・・・目の前の能力者の能力に・・・・
正直こんな能力があれば簡易的な一方通行にさえなれるかもしれないうえ、相手を一方的に叩きのめすことも
一撃必殺することも出来てしまう能力・・・・こんなでたらめな能力は見たことがない・・・
「ね、信じてもらえた?」
そう言う少女は、先ほどから上条たちに言われベッドや椅子などに『認識の拒絶』を使い視界から消したり出したりていた、そして・・・少女は
「それじゃ、一番わかりやすいことだと・・・これかな?」
そう言って少女は、上条と美琴に手を繋ぐように言った。
二人は疑問に思いながら繋ぐ・・・が
「「あれ?」」
手を繋いでいるのに、繋いでいる感覚がない・・・ちなみに今回は美琴が右手、上条が左手だ。
「そうだよ、『感触の拒絶』を使ったの、感触だけ取り除いたんだよ? しかも発動箇所は手の平のみ」
そして、「解除する」と分かり易くする為に少女が言うと・・・・感触が戻った。
「わかった、信じる・・・それで縁田の彼女がなにしにここに来たんだ?」
「それは、遊園地なんだから遊ぶために決まってるんだよ?」
「そうじゃなくて!」
???と首をかしげる少女、どうやらこの少女は人の話を聞くのが苦手らしい・・・
「悪い、質問を変えよう・・・なんで俺たちに会いに来たんだ?縁田に怒られるんじゃないか?」
その一言に先ほどとは違って、少女は一度目を伏せた・・・少しして力強く上条を見つめる。
「鶴は今関係ありません、私は鶴の唯一の理解者として鶴の事恨まないでってお願いしに来ました」
と頭を一度下げた後、少女は美琴を見る。
「御坂さん、うちの鶴が酷い事してごめんなさい、でも鶴にはああいう遠回りでしか人に恩が返せないの・・・
育ってきた環境のせいもあるし、私が注意してあげなかったせいでもあるの・・・
今まで私は、鶴が恩を返す奴はろくな奴じゃなかったし、まあいいや程度に考えちゃってたの・・・」
そこで少女はハァ・・・と溜息をついて。
「溜息をつける立場じゃないのは私もわかってます、それでも・・・
こんないい人たちに恩を返す日が来るなら、前から教えておけばよかった・・・そう、思ってしまうんです」
後悔からか少女は少し震えていた。
「鶴はいままで人に本当の意味で手を差し伸べてもらえなかったし、差し伸べられても何かしら裏があったの・・・
鶴の能力は生れつきの読心能力・・・その能力を使おうと小さい頃から悪い奴らの所を転々としてたみたい
人間は正体のわからないものを恐れる・・・そのせいで悪い奴らにも煙たがられ、最後には捨てられる」
・・・・・そんな生活を繰り返してて鶴は精神も能力の制御も不安定になってました、と少女は告げた
「私と出会ってから少しは改善されてきましたが鶴が人を見る時は癖で心を読んでしまいます
それは、多分あなた達が鶴を助けた時も変わらず・・・でも鶴があなた達に言いたくなかったのは
今まで助けてくれたろくでもない奴ではなく、今まで感じたこともない心優しい人たちだったからです」
鶴は・・・・とここまで一気に話し続けた少女。
彼女自身も伝えたいことが上手く口から出せていないのだろう。言えば言うほど、焦っているように見える。
しかも今にも泣き出しそう・・・と美琴は思う。
「ねえ、あなたは縁田さんのことを恨んでほしくないのよね?」
言葉に詰まっている少女に向けて優しく話しかける美琴
「私は確かに酷い目にもあったし、怒りも覚えた・・・でも、縁田さんのおかげで今こうして当麻の横にいられる。
感謝しても足りないくらい、すごく幸せなの・・・だから恨むなんてしないよ」
そう言って美琴は少女の頭を撫でた。
「あ、ありがとう・・・鶴は私に出来た初めての友達で、一番大事な人なの・・・
だから、鶴が認めた人が鶴を嫌いになっちゃうのが嫌だったの・・・」
と言って少女は泣き出し、美琴がそれを抱きしめた。
上条はそれを眺めていた。縁田には色々されたが恨みなどはなく、怒りを覚えるくらいだった。
それも今では無い・・・美琴の言った通り、今の幸せをくれたのは縁田本人だ。
その縁田を恨むなんてとんでもない話だが、この少女も何かしら凄惨な過去を背負っているのかもしれない・・・
「まあ、縁田もこんな子を泣かせるなんて罪な男ですな・・・・」
「あなたが人に言えるような立場には思えませんが・・・」と少女に突っ込まれ。
「当麻も同類ってことになんで気付かないのかしら・・・」と美琴に言われた。
激しく落ち込む上条を見て少女達は笑っていた。
・・・・・・・・・・・
「それじゃ、今日はありがとう・・・私も今日鶴と一緒に遊園地で遊んでるから会えたら遊ぼうね」
そう言い少女は手を大きく振ってエレベーターまで走っていった・・・ちなみにエレベーターまでに2回盛大にこけた。
「にしても・・・・今日は知り合いが遊園地に4人か・・・なんか嫌な予感がする」
と少し身震いをする上条
「どうしたの? そんなのいつものことでしょ?」
嫌な予感がいつものこと、で済まされる上条は少しばかり悲しくなるのであった。
「それじゃ、今日は昨日乗ってないものを全部制覇するわよー」
しかし、意気揚々とはしゃぐ美琴を見て上条は微笑まずにはいられないのであった。
「そんじゃ、いきますか」
そう言って二人はホテルの鍵をカウンターに預けて遊園地へ繰り出すのであった。
時間も午前10時になりそうであったため上条は「昼何時なるだろうな・・・」と思うのであった・・・
□ □ □
時間は少し戻って午前9時30分頃
「ねえ、初春・・・あれって御坂さんだよね?」
「そう・・・だと思いますけど、なんか違いませんか佐天さん」
初春と佐天は本日縁田という人物から無料チケットを貰ったため遊園地に来ているのだが・・・
入り口から入って少しした所に、御坂美琴らしき人物がいたのである。
しかし、何かが違う・・・しいて言うならいつもの美琴が表情豊かと表すなら目の前の美琴は無表情・・・
それでも佐天と初春は声をかけていた・・・上条と何かあったのではないかと心配して
「御坂さん、どうしたんですか? 一人で・・・上条さんと何かあったんですか?」
と、佐天が話しかけた。
「・・・・・・・・・? 誰かと勘違いしてはいませんか、とミサカは尋ねます」
明らかに美琴とは違う反応だが、ミサカと言ったのだ
「あれ? もしかして御坂さんの家族の方ですか?」
初春が聞くと少し考えてこう答えた。
「・・・・・・・もしかして、お姉様のご友人の方ですか? とミサカは確認を取ります」
ミサカでお姉様・・・ということは
「御坂さんの妹さんですか? 私、初春飾利っていいます」
「そうです妹です、とミサカは肯定します」
どうやら妹のようだ、しかし・・・似過ぎていて区別が・・・と思った佐天だが・・・・・
区別は簡単なことに気付いた、まずは額のでっかい軍用ゴーグル、それに首にかかったネックレスである。
「そのネックレス可愛いですね? あ、私は佐天涙子です」
そう言ってネックレスを触ろうとしたら、御坂妹はネックレスを守るように後ずさる。
「あ、れ? 触っちゃダメでした?」
「すみません、これは大事な方に戴いた物なので・・・とミサカは謝りつつ簡潔に理由を述べます」
うーんと考えて佐天は、もう一つ気になったことを聞く。
「それじゃあ、仕方ないですよ・・・ところで妹さん、お名前は?」
「ミサカはミサカですが・・・とミサカは答えます」
「「・・・・・」」
その回答に初春も佐天も困ってしまったが・・・それを察したのか御坂妹は
「あの人には御坂妹と呼ばれているので妹でいいですよ、とミサカは困っているお二人に提案します」
どうも腑に落ちないが佐天と初春は納得することにした。
「あ、そうだ妹さん・・・上条さんと御坂さんがどこにいるかしりませんか?」
初春が御坂妹に聞くと
「ここにお姉様とあの人が来ているのですか? とミサカは逆に尋ねます」
逆に聞かれたので知らないという事なのだろう。
「そうなんですよ、縁田さんという方にここに招待されてるみたいなんですけど・・・」
と初春は続けているが途中から御坂妹には聞こえていないらしい。
「・・・・・・・・・・・お姉様が素直になったことに嬉しいく思います、とミサカはボソッと呟きます」
と誰にも聞こえない声で御坂妹は呟いた。
「御坂さん達の邪魔をしちゃ悪いと思うんですよ、だから3人で周りませんか? バラバラだと遭遇率も上がりますし」
佐天はこう切り出した、実を言うと御坂妹について探りを入れたいのも理由なのだが・・・
「それに、妹さんも上条さんに詳しそうだしさ」と付け足して初春も頷く。
「そうですね、どうですか妹さん?」
「・・・・・・・いいのですか? とミサカは誘って貰えた事に感謝しつつ聞きます」
目をキラキラさせて聞いてくる御坂妹を見て
{ねえ初春・・・この反応、可愛いもの見たときの御坂さんにそっくりだよね}
{そうですね、佐天さん・・・妹さん嬉しそうですよね}
そう二人でこそこそと喜ぶのであった。
「それじゃあ、行きましょうか妹さん」
こうして御坂妹にとって外でのはじめての友達が出来たのである。
佐天と初春は御坂妹の手を引き、楽しそうにアトラクションへ向かうのであった。
・・・・・・・・・・
「えー、今日は一日中遊んでくれるって約束だったよね? ってミサカはミサカは怒ってみたり!」
いぶくれて怒った顔をしているのは10歳前後の少女、それに対峙するのは白髪で赤目の少年
「急用だって言ってンだろォが・・・すぐに終らせてくるからちょっと待ってろ、終ったら電話するからよォ」
そう言って少年は少女の頭を撫で、スタスタと人ごみに消えて行く。
それを見送る少女・・・
「危ない事しちゃやだよ、ってミサカはミサカは見えなくなったアナタに呟いてみる・・・」
少女は少年と逆方向にうつむいてトボトボ歩き出したが、少し歩いて
「あれ? アホ毛ちゃん?」
そう声をかけられて足を止める。
「・・・・・・ミサカはアホ毛じゃないもん、ってミサカはミサカは返答してみる」
声の方を向くと見たことのある顔が二つと初めて見る顔が一つ。
そして、知らない顔のお姉ちゃんがこう言った。
「って初春知り合いなの? あと、この子もミサカって言ってるって事は御坂さんの妹なんじゃないの?」
そこでハッとした初春は
「た、確かにアホ毛ちゃんってどことなく御坂さんに似ている気が・・・」
「だから! アホ毛ちゃんじゃなくて打ち止めって名前があるの、ってミサカはミサカはあなたに訂正を求めてみる」
「ごめん、ごめんアホ毛ちゃん」と悪びれることなく初春は言うと
「それで、また迷子でも捜してるんですか?」
と打ち止めは聞かれ。
「ううん、急用が出来たからまず一人で遊んでなさいって言われたの、ってミサカはミサカは簡潔に説明してみる」
「そうなんだ、それじゃ・・・その人が戻るまで一緒に遊ぼっか?」
と佐天が少し屈み、目線を合わせて打ち止めに話しかける。
「いいの? ってミサカはミサカは喜びを抑えながら聞いてみる」
抑えながら、と言っている割には目をキラキラさせ先ほどの御坂妹みたいになっていた。
「いいよ」そう言って佐天は笑顔を打ち止めに向けた。
「ありがとう、ってミサカはミサカは素直に喜んでお姉ちゃんに抱きついてみる」
と言うや否や、打ち止めは今まで外野にいた御坂妹に抱きつき
{こうしておいた方が後々お姉さまの為になるんじゃないかな、ってミサカはミサカは提案してみる}
{上位個体がそう言うのならそうしましょう、とミサカは提案に乗ることにします}
とこそこそと打ち合わせをするのであった。
「自己紹介がまだだったよね? 私は佐天涙子」
「アホ毛ちゃん、私の名前はまだ覚えてますか?」
・・・・・・・・・初春の問いに打ち止めはたっぷり時間をかけて
「適当な花言葉を教えるお姉ちゃんでしょ、ってミサカはミサカは初春のお姉ちゃんに嘘をついてみる・・・・」
と後半自分でばらしたことに気付き、ズーン・・・と肩を落とす打ち止めであった。
「初春・・・そんなことしたんだ」と半眼になった佐天に睨まれ「あははは・・・」と明後日の方を向く初春だった。
「そろそろ行きませんか? とミサカは提案すると共に時計を見ます」
そう言って御坂妹は遊園地中央に設置されてる時計塔を見る、時刻は午前10時20分
「そうですね、まだ一つもアトラクション乗ってませんし・・・妹さんとアホ毛ちゃんは何か乗りたい物ありますか?」
と初春の問に
「ジェットコースターに乗ってみたいです、とミサカは意見を述べます」
「ミサカはミサカは楽しければ何でもいいかもーって言ってみたり・・・・
あと、ミサカはアホ毛じゃないって何度言ったらわかってくれるの、って佐天のお姉ちゃんに泣きついてみる」
打ち止めは佐天に抱きつく、佐天はおーよしよしと頭を撫で・・・
「うーいーはーるー?」と笑顔で手をワキワキさせている佐天を見て初春は悟った・・・
このままだとスカートをめくられるだけではすまないんじゃないかと・・・
その後、遊園地に初春の叫びが響いたのは言うまでもない。
こうして3人は4人になり・・・打ち止めは佐天と手を繋ぎ、メソメソしてる初春を慰める御坂妹の4人は歩き出した。
□ □ □
時刻は午後2時
「あー・・・昨日に引き続き上条さんはもうダメです・・・」
昨日と同じように美琴に引きずられるままアトラクションを周った上条は、昨日と同じカフェで突っ伏している。
「ねえ当麻・・・このあとオバケ屋敷なんだけど・・・行けそう?」
と突っ伏している上条に確認を取る美琴
「もうダメって言ったけど、少し休めば大丈夫だと思うぞ・・・」
そう言って上条は片手をヒラヒラと振る。
「それじゃあ、お昼食べてないし適当に注文してくるから、ちょっと待ってて」
美琴はそう言いカウンターに歩いていった。
「情けねえ・・・・」
グッタリしながら上条はそう呟いた。
「確かに情けないにゃー、カミやん」
「あー・・・土御門・・・」
後ろからいきなり声をかけられた上条だが、反応が薄い。
「・・・・カミやんどうしたぜよ?なんかいつもと反応が違うぜい?」
ここで上条の様子がおかしいと土御門は思ったのだが
「くそサングラスがァ、どこで油売ってンだと思えばこンなところをぶらついてたとわなァ」
イラついた白髪赤目の少年にそう言われ、後ろから襟をいきなりつかまれ思いっきり引きずられて行った。
「あれ・・・土御門? ・・・・気の所為だったのか?」
上条は土御門の存在を曖昧にしながら、意識が遠のきそうになるのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・
「お待たせー、って当麻?」
美琴が昼食を持ってテーブルに戻ると、上条は突っ伏したままの状態である。
「寝ちゃったのかな?」
と上条の顔を覗き込んで見た美琴は、ん? と違和感を覚えた。
「お、美琴・・・・悪いな、もう少し休めば動けると思うんだ・・・」
先程よりグッタリしている上条、しかも顔色も悪くなっている。
「ちょ、さっきより具合悪くなってない!?」
そう言って昼食をテーブルに置き上条の額に手を当て・・・・
「・・・・・・・なんで言わないのよ」
と美琴は上条に呟く
「なんで、こんな熱があるのに言ってくれないのよ!」
周囲がなんだ? と視線を向けるくらい大声で叫んでいた。
「あー、悪い美琴・・・朝は身体がだるいなーっては思ってたんだがここまで酷いとは思わなかった・・・・」
あと朝からお前に心配かけたくなかった、と言うのだ。
「まず、いいわ、それよりホテルの部屋に当麻を運ばないと看病も出来な・・・・」
と言いかけた所でズゥンと上から音が響きフロアが揺れる。
「な、なによ? この揺れは・・・・」
揺れは一度ではなく2度、3度とたて続けに起こった。
そこに昨日会った土御門の義兄が走ってやってきた。
「あー、やっぱりかにゃーカミやん」
と今の上条を見て平然と言うが、その上条は動かない。
「あの・・・やっぱりってどういうことですか?」
美琴は土御門に向かって聞く。
「ん? さっき見たところ熱がありそうだにゃーと思っただけだぜい」
そう聞いた美琴はショックを受けた。
朝から一緒にいたのにまったく気付いてやれなかった・・・・・
特に昼食を取りに行く前や、アトラクション周りのときに気付けたはずなのに・・・・
そのことが美琴に重くのしかかる。
「ま、今はそれより上で事件が起きてるから下に逃げることをオススメするぜよ」
と言って土御門は上条を背負うと「すまねえ、土御門・・・」と上条
「ついて来るんだにゃー」
口調はふざけているが声はふざけていなかった・・・
土御門について行くこと数分。改装中のアトラクションの業務員室に着いた。
「ここなら氷もあるし、とりあえず人も来ないんだにゃー」
と言って途中で眠りに落ちた上条をソファーの上に降ろし、業務員用の冷蔵庫を指す。
「事件が収まったらカミやんの携帯に連絡を入れるからそれまで看病を頼んだぜい」
土御門はそう言って最後に「舞夏のとこに戻んないといけないしにゃー」と付け足した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
業務員室の戸を閉め土御門は・・・・「とりあえず一つ返すぜい、カミやん」と聞こえないように言う。
「にしても・・・・このまま戻ったら一方通行に殺されるような気がするぜよ・・・・別ルートでも行くかにゃー」
と土御門は先ほど自分を引っ張っていった少年を思い出し、苦笑いする。
「ハァ・・・・こんなのちゃっちゃと終らせるに限るぜい・・・」
土御門はそう呟き、来た道を戻って行くのであった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
美琴はここに連れて来た土御門に感謝しつつ上条を見て行動に移す。
上条は息も浅く苦しそうだった・・・
冷蔵庫の氷で氷のうを作り、偶然見つけた救急箱から運よく熱冷ましの薬を見つけた。
それらを上条に施し、呟いた。
「言わないといけないんじゃない・・・私が気付かないといけなかったんだ・・・」
妹達のことで悩んでいた時と同じくらい、美琴は絶望感が込み上げてきた。
もしかして・・・私には当麻の横にいる資格がない・・・・そう思うと悔しくて、悲しくて、自分に怒りさえも感じる・・・
いっそこのまま看病し終えたら別れてしまった方がいいのかなと
そんな風に考えてた時、ソファーに寝かせていた上条がうなされて言った。
「美琴・・・行かないでくれ、俺にはお前が必要なんだ・・・・美琴」と今の心境を打ち砕く一言を
美琴は泣きそうになるのを堪え
「当麻は寝言でも私の幻想を殺してくれるのね・・・」
そう言って美琴は上条を膝枕し「大丈夫、もうどこにも行かないわよ当麻」と頭を撫でた。
心なしか上条は悪夢が終ったようにスヤスヤと落ち着きを取り戻した。
美琴は思うことにした、気付けないなら気付くように努力すればいい
上条に頼るのだけではなく、支えられるようになろうと心に誓うのだった。
上ではまだ揺れが続いているがじきに収まるだろう・・・・
今はまず上条を看病しよう、そう思うのだった。
□ □ □
地下一階を歩く白髪赤目の少年は呟く。
「あのくそサングラス、またどこ行きやがった・・・・・こっちはくだらねェ事に時間使ってる暇ねェのによォ」
そこに電話が鳴り、出ると『大丈夫? ってミサカはミサカはあなたの身の安全を心配してみる』
プツッ・・・・ハァと電話を切り、溜息をつく少年
〜〜♪〜♪〜〜♪
・・・・・・・・・・
〜♪〜〜〜♪
・・・・
〜〜〜♪〜〜♪
・・イラッ、カチャ
『なんで切っちゃうの! ってミサカはミサカは酷すぎるアナタの対応に文句を言ってみる』
「あァ? 仕方ねエだろうがよォ、こっちはこっちで忙しいンだからよォ」
と少年、一方通行はそっけなく斬り捨てるが
『今、友達と4人でいるけど安全なところはどこ、ってミサカはミサカは声を潜めて聞いてみる』
と言う一言に一方通行は走り出した。
「今どこにいンだ?」
『今は地下一階のエレベーターから少し離れたところ、ってミサカはミサカは正確な場所が解らないって答えてみる』
チッ・・・一方通行は舌打ちをするとエレベーターの方に向かって走る。
「跡つけられてンじゃねェだろうなァ?」
『それは大丈夫かも、ってミサカはミサカは心配してくれるアナタが安心することを言ってみる』
そう言ってはいるが、多分確証はないんだろう。
「ハァ・・・俺が行くまで見つかるンじゃねェぞ、クソガキ」
そう言って駆ける一方通行は合流したメンバーに頭を抱えることになるのだが・・・一方通行はまだ知らない。
□ □ □
午後5時23分 業務員室
「う・・・、あれ俺、なんで寝てたんだっけ」
そう言い上条は目を開ける。
「美琴・・・?」
そこには安堵で泣きそうになる美琴の顔。
「どうしたんだよ? 泣きそうな顔し「ゴメンね、当麻」てんだ・・・」
美琴はそう言うと上条の頭を抱きしめる、上条の言葉が後半聞きにくくなったのはその為だ。
「ゴメンね、当麻・・・私が気付いてあげられなかったのに、当麻にあたっちゃったし・・・」
美琴の顔は今見えない、でも多分泣いている・・・
「気にすんな、俺は美琴が喜んでいる方が幸せなんだから・・・笑ってくれ・・・な?」
上条はそう優しく語りかける。
美琴は上条の頭を離し、「ありがとう」と笑った。
その笑顔は泣いて目が腫れていたが上条は綺麗だと思った。
・・・・・・・・
上条はこの部屋に来たことを覚えていない(カフェにいたことも覚えていなかった)ので美琴は状況説明をした。
「・・・・・・・・・・というわけなのよ、土御門の義兄さんには感謝しないとね」
言い終わると美琴は上条の頭を撫でる。
実を言うと上条はまだ熱があり美琴に「起き上がっちゃダメ」と言われ、膝枕されたままなのである。
しかし、上条は美琴の優しさに包まれているこの状況が嬉しくてたまらないのであった。
「なあ、美琴・・・」
「なに? 当麻・・・」
見つめあう二人・・・見上げる上条と見下ろす美琴
この非常時に不謹慎だと思いつつも二人の距離は近づいていき・・・・距離はゼロになった瞬間。
ドドドドドドドッ・・・・・バァン!!!
走ってくる音が聞こえ、いきなり戸が開けられた・・・・
戸の前に立っているのは一方通行、打ち止め、御坂妹、佐天、初春
その目の前には唇がくっついた上条と美琴
・・・・・・・・・・・・・・・・・
7人は固まり、上層の揺れる音だけが響く・・・・
いち早く口を開いたのは
「おぉー、ってミサカはミサカは大胆なお姉さまの行動に賞賛を送ってみたり」
打ち止めだった、美琴と上条のキスを見て拍手し始めた。
それと同時に上条と美琴は顔を真っ赤にしてソファーの両端に逃げる。
上条としては移動した際にフラッと目眩がしたが今はそれどころじゃない
「・・・・・・おい、ヒーローさんよォ・・・この非常時にそんなことやってる暇があったら手ェ貸して欲しいンだがなァ」
一方通行が頬を引きつらせ額には青筋が浮んでいる。
「お姉様の行動力に驚きつつ、ミサカはなんだか心配して損した気分になります、とミサカは告げます」
御坂妹は半眼になって上条と美琴を見る。
「御坂さんって大胆ー」「意外ですねー」と喜ぶ佐天と初春
そんな中で上条と美琴は、真っ赤になって何も言えないでいた・・・
少し落ち着いて
「それで・・・何故このメンバーになったんだ?」
上条は異様なメンバーに頭をかしげる。
初春と佐天のコンビはありえる、打ち止めと一方通行もまたありえるが・・・そうすると御坂妹があぶれる。
そんなことを上条が考えていると「あー、それはですね・・・・・」と佐天が説明に入った。
内容は美琴と間違えて御坂妹に話しかけ友達になったことから始まり、初春が面識のあった打ち止めを回収した後に事件が発生して一方通行に打ち止めが救援の連絡を取り、合流して逃げてるうちに現在に至ると・・・
「逃げてる理由は、一方通行の能力が多人数を守ることに向いてないからか・・・」
と上条は勝手に結論を出した。
「悪ィかよ、向ねェもンは向かねェンだ」
と皮肉気に笑う一方通行そして
「それにここにば敵も来ねェだろ、俺は行くぜェ? ヒーローは具合悪ィみてェだし今日は寝ときやがれ」
そう言って一方通行は部屋を高速で出て行った、最後は上条の異常に気付いたのか珍しいことを言っていた。
「あの人の珍しい一言にちょっと驚いたかも、ってミサカはミサカは今の心境を報告してみる」
打ち止めは「あの人も成長したんだ、って・・・」と一人うんうんと頷いている。
「そういえば御坂さん、ご姉妹がいるならいるって教えてくれてもいいじゃないですか」
そう初春は言うのだが・・・・美琴は少し考えてから無理のないように
「・・・・・・・実はね、妹の方は少し病弱であまり無理が出来ないから私でもなかなか会えないのよ・・・・
で、打ち止めは助けて貰った一方通行にべったりだしね、紹介するタイミングがなかったの」
そう説明した・・・・嘘は言ってはいないはずだ。
「まあ、それなら仕方ないですよね・・・・」
と初春は納得したのか、してないのか微妙なところだが大丈夫だろう、そして佐天が
「そうそう御坂さん、妹さんとは双子なんですか?」と聞いてきて
歳は・・・一緒よね
「そ、そうよ・・・双子なんだけどね、性格はぜんぜん違うでしょ? あは、あははは」
「好みとか趣味はほとんど一緒だけどな」
と上条が足し
「ミサカはそんなに少女趣味ではありません、とミサカはアナタの前言撤回を要求します!」
御坂妹がその撤回を要求したところで美琴が
「少女趣味で悪かったわね!」
と怒りだし、「あと、当麻も余計なこと言わないっ!」と上条も一喝
「だからお姉様は、と・・・・」「うるさいうるさい!」などと姉妹喧嘩が始まった・・・
「ほんと、仲良さそうだよね・・・・」
呆れるように佐天が呟き、その横にいた打ち止めが
「お姉さまとお姉ちゃんの喧嘩はちょっとうるさいかも、ってミサカはミサカは眠い目を擦りながら言ってみる」
と言って、佐天の膝を枕にスヤスヤと寝息を立て始める。
打ち止めはどうやら佐天をかなり気に入ってしまったようだ。
そこに喧嘩を終えた美琴が
「佐天さん、かなり気に入られちゃってるわね」
と、佐天にくっついて気持ち良さそうに寝ている打ち止めを見て嬉しそうに話しかける。
「私としては弟しかいなかったんで、妹がいたらこんな感じかなって御坂さんが少し羨ましいですよ」
佐天はそう言うと打ち止めの頭を撫でる、打ち止めはくすぐったそうに寝ながら笑っている。
美琴は羨ましいという一言に少し複雑な気持ちになるのだが、妹達のことを考えると少し嬉しくはなるのだった。
「ねえ、妹さん・・・・そんなに見つめられると困るんですけど・・・」
と、こちらは喧嘩から戻ってきた御坂妹が初春をじっと見つめていた。
「会った時から気になっていたのですが、その髪飾りはどうなっているのですか? とミサカは尋ねます」
「え? 髪飾りに興味があるんですか?」
とこちらは髪飾りの談議に花を咲かせているようだ。
その一方で一人除け者の上条だが、元から体調が優れない為・・・今はもといたソファーに横になっている。
「そう言えば・・・一方通行のやつ、敵が来るとか行ってたよな・・・手を貸せとか言ってた気もするしな・・・」
動けないことに落ち着かない上条だが熱はまだ高いため本当に動けないのである・・・
アックア戦の時など、明らかに動けないはずなのに動けた自分に改めて驚く上条であった・・・
俺って人間・・・だよな? もしかして、実は改造されてました・・・てへ、ってなったら泣くぞ・・・
と一人意味もない妄想を広げるのだった。
現時刻は午後6時43分 もう少しで夜に入ろうとしている。
□ □ □
少し時間は戻り午後6時10分 地上
「クソ・・・一方通行はどこに行った」
土御門は焦っている、今回の標的・・・犯行人物は計二十人、そのうち半数以上は捕縛し下部組織に引き渡した。
残りの二人は未だに姿さえ確認できていないが・・・
ズンッという衝撃と共に目の前の絶叫マシンがひしゃげて形を変える。
「チッ・・・どこにいやがるんだ・・・」
もう日も落ちる時間帯だ、この先になると急な不意打ちが来る可能性も上がる。
捕まえた奴の一人の能力は精神感応で伝令役だったらしいから一緒に行動してなければ少しはやりやすくなるだろう。
ドサッ・・・
背後から何かが倒れる音がした、土御門は振り返ると人が二人いた。
一人は地面に倒れピクピクと痙攣している。もう一人は土御門が今まで探していた白髪赤目の少年、一方通行だ。
「このくそサングラスがァ、今までどこぶらついてやがったァ? あン?」
一方通行がそう言うのも無理はないが
「俺もお前を探してたんだがな、一方通行・・・ちなみにお前がやったので十九人目だ」
「てェことは、あと一人か・・・楽勝じゃねェか」
そう言って一方通行は携帯を出し、下部組織に回収を頼んだ。
「で・・・最後の一人なんだが・・・能力は風力使いらしいが・・・威力はアレを見れば一目瞭然か」
そう言って、ぐにゃりとひしゃげた絶叫マシンを指す土御門。
「ンで・・・海原の野郎ォと結標はまだ、他の仕事だったか?」
ちなみに一方通行は戦後、再び『グループ』に戻ることにした・・・しかし、なるべく打ち止めといる時間を増やして
「ああ、まだ学園都市の外だな・・・帰るのは明日以降だろう」
土御門は面倒くさそうに溜息をつく
「・・・・・まァ、とにかくそいつを潰してさっさと帰るかァ、これじゃ開園は当分無理そォだしなァ」
「あれ、一方通行・・・・お前もここに遊びに来てたくちか?」
・・・・・・二人は視線を合わせ、ハァ・・・と大きな溜息をついた。
「それじゃ、ホントに急がねえとな」
「あァ・・・」と珍しく意見が一致する二人だった。
その後、最後の一人は無謀にも一方通行に奇襲をかけたところをボコボコにされ捕まった。
時刻は7時34分 事件解決
ちなみにこの事件のせいで遊園地はひと月くらい閉園する事になるのだった。
□ □ □
時刻は午後9時過ぎ
現在、上条ら9人は歩いている・・・事件が解決したのはいいが終バス、終電時間が過ぎた為、代行バスが出たのだ。
しかし、代行バスが第七学区まで出たはいいが・・・寮とは反対方向に降ろされた為に全員で歩く破目となった。
それに夕飯も皆が取れなかった為に途中、第七学区のファミレスで食べてきたのである。
「でも、皆無事でよかったかも、ってミサカはミサカは喜んでみる」
「ホントは第一位さんが無事だったのが嬉しいんだよね?」とこそこそと横で耳打ちする佐天
「ち、ちち違うもん!ってミサカはミサカは佐天のお姉ちゃんの読心術に驚いてみ・・・あっ」
目の覚めた打ち止めは、佐天と手を繋いで先頭でそんな風に笑って歩いている。
「お姉様・・・友達とはいいものですね、とミサカはお姉様に報告します」
どこか嬉しそうに、御坂妹は前を歩く佐天とその横を歩く初春、舞夏を見ていた。
事件の後、美琴の紹介で舞夏とも友達になることに成功した御坂妹は表情の波は小さいが本当に嬉しそうだった。
「ま、これからどんどん友達が増えてくれれば私も安心だわ」
そう言って姉妹で笑いあうのであった。
「しらいにはみさかに妹がいること伏せといた方が良いと思うぞー」
「そうですよねーやっぱり、御坂さんより危険が・・・」
と佐天と打ち止めの横を歩く、初春と舞夏は白井黒子に美琴の妹のことを話すかどうか話しているらしい。
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
したがって男三人はひとまとめに後方を歩くわけで・・・・
重い・・・ここだけ空気が・・・と上条は不幸だーと叫びたくなる程のストレスを感じずにはいられないのだった。
しばらく歩き
「あ、私はこっちですね・・・それじゃ皆さん、またー」
そう言って初春が横の道に歩いて行く
「また明日ー初春ー」「ばいばーい初春のおねえちゃん、って・・・」「初春さんまた会いましょう、とミサカは・・・」
と打ち止めと佐天、御坂妹が言う。
「それじゃーわたしはこっちだからなー、あでゅー」
「気をつけるんだぜい、舞夏ー」「土御門さんまた会いましょう、とミサカは・・・」
土御門と御坂妹が見送る。
病院の近くで御坂妹が抜け。
次は佐天が抜けた。打ち止めが名残惜しそうにしていたが「メールでもしてね」の佐天の一言で大喜びした。
その次は打ち止めと一方通行が抜け。
「俺だけアウェイなんだにゃーカミやん、だから今日は部屋に帰らずに遊び通すんだぜよ」
またにゃーと言って上条の寮とは逆方向に歩いていった・・・
「気を使ってもらったのか?」
そう、今日は美琴が俺と共同生活をする最後の日で、本当はホテルに宿泊だったのだが閉園作業の為に退去・・・
一応、今日被害にあった客は再開オープンの際に無料招待&宿泊が約束されたので大万歳なのだが
それでも、今日で共同生活は終了である。
「なんか、今週は濃い一週間でしたなあ・・・」
「そうね・・・能力は封じられるし、人に認識されなくなるし、事件に巻き込まれるし・・・でも当麻の恋人になれたし」
私にはそれが一番・・・そう言って美琴は上条の腕に寄添う。
「明日さ、縁田にあった後さ、白井に話そうと思うんだ・・・俺たちのこと」
上条は寄添われたことにドキッとしたが、今日一日心の中で考えていたことを告げた。
「・・・・・うん、私も当麻と一緒に行くわよ」
そう言って二人は上条の寮に着き、上条の部屋に入る。
その時既に時刻は10時をとうに過ぎていた。
「疲れたし、もったいないけど風呂入って寝ようぜ?」
「そうね、でも当麻は熱下がったばかりだから私が背中拭いてあげるわ」
そう言うなり美琴はいそいそと風呂に入りに行ってしまった。
「ほんとに俺には勿体無い位の彼女ですよ・・・」
そう呟き、上条はぬるま湯を沸かすのであった。
それから少しして美琴が風呂から上がってきた。
「当麻上がったよ?」
「ああ、わかった・・・・それじゃ、お願いします」
上条は上半身の服を脱いで裸になる、ちなみに美琴が上がってくる前に下半身は着替え終えジャージになっていた。
「・・・・・・・・・・・」
共同生活で初めて見る上条の裸に美琴はドッキドキなのだ。
「ん?どうした美琴・・・?」
と不思議に思う上条なのだが鈍感な為に気付かない。
「う、ううん・・・なんでもない、ほら・・・タオル貸して」
そう言われ上条はぬるま湯で湿らせたタオルを美琴に渡す。
「「・・・・・・・・・・・・」」
しばしお互い無言になり、美琴は上条の背中を拭いていく。
「なあ、美琴・・・・これから色々あると思うけど、よろしくな」
上条はそう自分を拭きながら後ろの美琴に話しかける。
「なによ、改まって・・・こっちこそ、迷惑かけるかもしれないけど・・・・・よろしく、ね」
今週は様々な事があり、成長した二人だが根幹の部分はいつもの二人なので結局はこんな話になる。
「そういえば、始業式から一週間まるまる休んでんだよな・・・・なんだかんだで来年進級出来っかな・・・」
と今年度早々、来年の心配をする上条
「大丈夫よ、留年しても私は当麻のこと嫌いにならないから」
そう言って笑う美琴
「上条さんはそこは信用してるんで、勉強を教えてもらえるとなお助かります・・・」
そこから身体を拭き終わった後も色々なことを話した・・・結局寝るのは先送りだ。
時刻は日付も変わり午前2時
「そろそろ寝ないとな・・・明日縁田との約束もあることだし」
「そうね・・・」
そうして二人は寝ることにする。
しかし、風呂場に向かおうとする上条に美琴は・・・
「ねえ・・・当麻、一緒に寝てくれない・・・・かな」
と言い出した。
「えっと・・・一応理由をお聞かせ願えますか? 姫」
そら来たーと言わんばかりのタイミングだった上条は苦笑い。
「一応、最後の共同生活でしょ? なんか・・・寂しくなっちゃって」
そう言って美琴は少し目をウルウルさせる。
そんな美琴を見た上条はすごく愛おしくなるのであった。
「しゃあねえな・・・・わかったよ」
上条は美琴が言ったその感じがわかる・・・
なぜなら自分も一生涯で最後とは言わないが、しばらく一日中一緒に居られなくなる事に寂しく思っていたからだ。
二人は仲良くベッドに入る、壁際に美琴、テーブル側に上条と並ぶ
「当麻、腕枕して?」
「・・・・・・・・・・・」
上条は無言で左腕を美琴の頭の下に入れるが・・・
「美琴・・・悪い」
そう言って上条は美琴を抱きしめた。
「・・・・・・・・!!!」
不意打ちに美琴は跳ねる勢いでビクッと身体を硬直させる。
「このまま寝てもいいか? 実を言うと恥かしながら上条さんも寂しいなと思ってたんですよ・・・」
そう上条が言うと極限まで緊張していた美琴は「ふにゃー」となって気絶してしまった。
やっぱ可愛い・・・・・・・と上条は思うのだが同時にどうしようと思うのだ。
「・・・・気絶しちまったけど、起すべきなんだろうか・・・でもなあ、起きたら理性が飛ぶこと要求されそうな予感が・・・」
そこまで考えて・・・まっいいかと上条は思いこのまま寝る事にする。
こうして上条と美琴の共同生活最終日は終るのであった。
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禁書の二次創作。上琴メインのダラダラ長く書いた話のそのE。原作20巻より分岐した感じです。 |
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