真・恋姫無双 黒天編 裏切りの*** 第10章 「黒天」 前編1 |
真・恋姫無双 黒天編 裏切りの*** 第10章 「黒天」 前編1 大決戦
カガミが王座の間の扉を開け、外へと出た瞬間
春蘭「クソッ!!動かんか!!私の足!!動けって・・・うぉぉ!?」
動かない足を必死に動かそうとしていた春蘭は、急に足が軽くなったため、前のめりになってしまい、派手にこけてしまった。
春蘭だけでなく、他の皆の足も動くようになったらしく、愛紗と思春はすぐさま王座の間の扉に近づき扉を開け放つ。
そして、左右と交互に見てカガミの姿を捜す。
しかし、そこには真っ暗な廊下が続いているだけだった。
思春「蓮華様、まだ奴が近くにいるかもしれません!!捜してきます!!」
愛紗「私も行こう!!」
蓮華「ええ、分かったわ。けど・・・無茶だけはしないでよ。愛紗もね」
思春「御意!!」
思春は腰の鈴音の柄に手をかけると、そのまま左の廊下の方へ駆けていった。
愛紗「では、私は右を!!」
思春が駆けていくのとほぼ同時に、愛紗は右の廊下へと姿を消した。
華琳「春蘭。あなたも行きなさい」
春蘭「は・・・はいっ!!華琳様」
華琳の言葉に春蘭はすぐさま立ち上がり、愛紗と同じ右の方向へと駆けていった。
雪蓮「痛ッ・・・アイツ・・・」
蓮華「姉様!大丈夫ですか!?」
今まで床に這いつくばっていた雪蓮がヨロヨロ立ち上がっていく
その様子を見て蓮華は王座からすぐに立ち上がり姉の下へと駆け寄った。
雪蓮「華琳・・・本当に明日、来ると思う?」
雪蓮は蓮華の肩を借りてやっとのことで立ち上がる。
華琳「ええっ、来るでしょうね。今回以上の軍勢で・・・」
カガミが最後に残した言葉
その言葉はまさしく、三国に対する宣戦布告だった。
今日と比べ物にならないほどの厳しい戦いになるだろうことを否応にも予想させる
華琳「稟、明日に備えての準備を今から整えておいて」
稟「かしこまりました」
冥琳「亞莎、各地に再度、援軍要請をしておいてくれるか?私は朱里に連絡しておこう」
亞莎「はい!」
星「なら、私はこの城の守備を再度確認してきましょう。詠、お前も来てくれ」
詠「当然ね。月・・・、悪いんだけど・・・」
月「うん。がんばってね」
華琳「他の者は自分の部隊の最終確認、余裕がある所は先ほどの女の捜索にあたりなさい!!」
最後の華琳の言葉を皮切りに、各々が自分のやるべきことのために王座の間から走って出て行った。
王座の間に残ったのは蓮華、雪蓮、そして華琳の三人だけとなった。
雪蓮「大きい戦になりそうね」
雪蓮は蓮華の肩を借りながら、蓮華が今まで座っていた王座へと雪蓮を座らせた
華琳「あら?あなたの“勘”はそういってるの?」
雪蓮「そうね・・・今までにないくらいの大きいやつがね」
華琳「ならば・・・私も出ないといけないかもね」
雪蓮「私も・・・あの女や弓の女も出てくるかもしれないし」
蓮華「姉様は――」
雪蓮「“出るな”なんて言わないで、蓮華。ここまでコケにされて・・・ちょっと・・・いや、かなりムカついてんのよ。一刀のことも関わってるって言うならなおさらよね」
雪蓮は王座をバンッと軋むくらい強く叩いて、悔しさを前面に押し出している。
雪蓮「あのカガミって言う女には一度だけでなく、二度も膝折られてんのよ。私が殺してあげないと気がすまないわ・・・。それに・・・黒布の女もね・・・」
いつもの気楽な雪蓮とは打って変わって、戦国乱世“小覇王”と称された時の雪蓮の顔に戻っていた。
そして、王座から立ち上がって南海覇王を鞘から引き放つ。
雪蓮「蓮華、もう少し借りるわ。南海覇王もあいつらの血を啜りたいっていってるから・・・」
孫家の血が滾ってきた雪蓮を蓮華は止めるすべを知らなかった。
そして、抜き身の剣を持ったまま、雪蓮は王座の間から出て行った。
華琳「ああなったらもう止められないでしょう。たぶん、また前線に立ちたいって言うでしょうね」
華琳の言葉を蓮華は俯きながら聞いている
華琳「大丈夫よ。雪蓮は強い。そう簡単に死なないわよ。あなたも明日のために早く休みなさい。私ももう休むわ」
華琳も王座から立ち上がり、後ろ手を振りながら扉の方へと歩いていった。
蓮華「・・・・・・・・・・・・」
華琳はきっと休むといっておいて、何かしらのことをするつもりなのだろう。
華琳の性格からしてそんな事は容易に想像がつく。
自分も孫後の王なのだから何かしなければいけない。
明日、起こるであろう戦に備えなければならない
そうは思っていても、雪蓮のこと、一刀のことが頭から離れなかった。
蓮華「はぁ・・・」
蓮華は王座に座りなおすと一つ、大きなため息を漏らすのだった。
その後、思春、春蘭、愛紗はカガミを一晩中探し回ったが、結局捕える事はできなかった。
三国の武将達はその夜も寝る間を惜しんで、自らの準備を進めていく。
だが、頭の中からは凪たちのこと、一刀のこと、これからのこと、全てのことが頭から離れてはくれなかった。
久々に重苦しい夜が更けていく。
そして、翌日の早朝
各将軍がこれから起こるであろう戦いに備えて準備に追われていた。
冥琳や亞莎は白帝城の周辺地図を机一面に広げて、様々な状況に備えられるよう話し合いをおこなっていた。
地図の上には自軍用の駒と敵軍用の駒が並べられていた。
また、同じ場所で詠は星たちと共に再度、白帝城の守備状況の見直しをおこなっている所だった。
亞莎「さきほど朱里さんからもうじき蜀軍の援軍が到着するという報告がありました」
冥琳「そうか、これでこちらの状況もかなりよくなるだろう」
冥琳は地図を指し示しながら、自軍の駒を二つほど取り出して地図の上に置く。
そこに、城壁で一晩中監視の任についていた明命が慌てた様子で部屋の中に入ってくる
明命「報告します!!東から黒い軍団がこちらに進軍してくる模様です!!」
詠「やっぱりね。それで、数は?」
明命「数は昨日と同数かそれ以上!!あたり一面が真っ黒でぎっしりです!!」
明命は手を大きく広げて、自分が見たものがいかに大きかったのかを伝えようとしていた。
冥琳「まだ、それだけの兵力を隠し持っていたか・・・全軍に迎撃命令通達!!この城には近づけさせるな!!」
冥琳の良く通る声が伝令に伝わると、伝令たちはすかさず各報告へと散らばっていった。
星「では、私も戦線にでましょう。詠、すまないが後は頼んだ!!」
星はそう言うと、詠の返事を聞かずにそのまま廊下へと駆け出していった。
詠「冥琳、民間人の避難は全て完了してるわ。軍需品も民の協力で問題ないぐらいそろってる。篭城の準備も万全よ」
冥琳「そうか、なら後顧の憂いは何もない。あとは私のこの知略を持って敵を殲滅するのみ」
冥琳はそう言ってから立ち上がり、扉の方へと歩いていった。
詠「ちょっと、どこ行くの?」
冥琳「いや、敵がどのような奴等なのかもう一度見ておきたくてな。城壁に行くのだ」
明命「なら、私がお付き合いします」
明命はすかさず冥琳の右斜め後方に位置取り、供に城壁へと向かっていく。
詠「ちょ、ちょっと!?僕も行く!!亞莎、ここで最後の確認を頼める?」
亞莎「はい!!任せてください!!」
詠は亞莎に頼んだ後、二人を追いかけるようにして部屋を後にした。
明命、冥琳、詠は城壁に着き、遠くまで眺めることができる物見櫓を登る。
詠が最後に物見櫓の頂上へとたどり着いた。
明命「あちらです!!」
明命は報告どおり東の報告を指差した。
白帝城の近くには三国の兵士たちが敵を迎撃するため、陣形を展開している最中だった。
そして、詠は目線をさらに遠い方へと移す。
そこには先日見たのと同じ真っ黒い集団が広い草原を侵食していく光景が見てとれた。
冥琳「改めて見ると確かに・・・どこから兵力を・・・」
詠「本当に・・・いったいどこから出てきたのよ!!」
三人は黒の集団と三国の兵士たちが徐々に接近していく様子も見てとれる。
詠「明命。地和たちとは連絡取れる?」
明命「はい、城内で兵士たちの士気を上げるための公演をおこなっているとのことですが・・・」
詠「そう・・・終わったら僕の所に来てくれるように言ってくれるかな?」
明命「はいっ!かしこまりました!」
明命はすぐさま詠の命令を遂行しようと物見櫓から飛び降りて、城壁の上に着地する。
そして、そのまま屋根の上を身軽に駆け抜けていった。
冥琳「こんな時に張三姉妹に何か用なのか?」
詠「地和がね。妖術で戦の詳しい情報を見せてくれるのよ」
冥琳「ほう。いつの間にそんなことが・・・」
詠「なんか最近できるようになったらしいんだけどね。前の戦も地和の妖術である程度の観察はできたし、また頼もうかなって思って」
冥琳は詠の話を聞きながら、また東の方角をみる。
黒い集団が禍々しくうごめくようにして近づいてくるように感じた。
まるで、そのままの勢いで三国を飲み込んでいくかのように
雪蓮、蓮華を初めとした三国の者達、そして・・・北郷が作ったこの平和を
今にも飲み込みそうな勢いで
冥琳「そんなことはさせない・・・」
詠「えっ?何か言った?」
冥琳「いや、何も。さて・・・と、そろそろ戻るか。亞莎に負担ばかりかけられん」
詠「そうね。いきましょう」
冥琳「準備が出来次第、我々も戦陣へ向かわねば」
そうして二人は階段を一段一段降りていき、亞莎がいる部屋に戻っていった。
時間は少し戻って白帝城の厩舎
一番左端には翠と蒲公英が管理する紫燕、麒麟の厩舎があった。
黄鵬は現在、蒲公英と一緒に涼州にいるためこの厩舎にはいない。
翠はそこで紫燕の体を磨いてやっている所だった。
翠「よ〜し、よ〜し、久しぶりの戦場だったから疲れたろ?今日はめいいっぱい休みな」
体を藁で擦ってやると、紫燕は気持ちよさそうに顔を上下に揺すっている。
そのついでに鼻先で体の一部を指して“ここをこすれ”と示してくる。
翠「ここがいいのか?」
翠は紫燕が示した所を重点に磨いてやると、気持ちよさそうに嘶きをあげた。
翠「よし、紫燕はこれで終わりな。次は麒麟だ。お前の出番が来るかもしれないから・・・そのときは頼んだぞ」
翠は麒麟の顔を抱くようにして撫でた後、麒麟を厩舎から出してやる。
そして、麒麟の馬体を磨いてやろうと新しい藁を手に掴もうとしたその時
星「翠、ここに居たのか」
後ろから声をかけられた翠が後ろを振り返ると、そこには星がいた。
翠「星、どうしたんだ?まさか・・・敵襲か!?」
星「そのまさかだ。城門前まで行くぞ」
翠「わかった!麒麟、体を洗ってやるのは戦の後だ。いくぞ!!」
翠はすかさず麒麟に鞍を取り付け、飛び乗ると麒麟の腹に軽く蹴りを入れる
それに応じて麒麟は気合の入った嘶きをあげ、城門の方へと駆けて行った。
星「・・・・・・、私は置いてけぼりなのか。はぁぁ」
城門の方へ駆けていく翠の背中を見ながら、小さくため息をついた星は遅れないようにその後についていくのだった。
城門前
星が城門前に着いた時には三国のほとんどの将軍達が集結していた。
翠「星、遅いぞ。何やってんだ」
星「・・・・・・いろいろと言いたいことはあるが、それはとりあえずおいておこう。桔梗はどうした?」
愛紗「桔梗なら城内で兵士編制の最終確認を行っている。出撃の銅鑼がなるまでには終わるだろう。雪蓮殿は自室で待機しているそうだ」
星「そうか。先陣は誰がつとめるのだ?」
星が城門での最終確認の輪に加わると本格な話し合いが始まった。
愛紗「ここに冥琳殿考案の戦隊列がある」
愛紗は星にそれを手渡すと星は簡単に斜め読みしていく。
星「先陣は愛紗、春蘭に・・・雪蓮殿か。それで、遊撃部隊が翠と私で・・・思春たちはどうするのだ?」
思春「我々の部隊は共に森に入り、伏兵をつとめる事になっている」
思春は地図を広げて駐屯予測地点を指差した。
先陣部隊中央は愛紗が担当し、桔梗が副官を務めることになっている
それと同じように先陣右翼を担当する春蘭には季衣が副官を務め、左翼担当の雪蓮の副官は明命ということになっていた。
春蘭「流琉は親衛隊として本陣と華琳様、蓮華の護衛でいないのか。思春達がいない分、突破力にかけるというか・・・」
愛紗「鈴々や霞がいればもう少し違ったのだろうが、ない物をねだっても仕方あるまい」
翠「凪たちが抜けたのが本当に痛いな・・・」
翠の言葉に場の雰囲気は重いものへと変わる
その雰囲気を感じ取り、翠は“しまった”と少し顔をしかめる。
凪、沙和、真桜がカガミによって連れ去られたため、魏の戦力が著しく低下してしまったのだ。
兵の間にも詳しい情報は知らなくとも、凪たちの姿がないことが兵士たちの士気に少なからず影響していた。
翠「あ・・・ごめん。今、言うことじゃなかったな・・・」
季衣「あの・・・ですね。僕、思うんだけど・・・」
翠がばつの悪そうな顔をしていると、春蘭の横にいた季衣が話し始める。
季衣「本当にあの三人は、僕達を裏切ったのかな?」
季衣のこの問いかけに周囲の者達は誰も答えることはない。
季衣は顔を上げながら、一人ひとりの表情を確認するも皆顔を伏せてしまっていた。
季衣「だって・・・僕、信じられないよ。あんなにみんな仲良かったのに・・・」
星「そうだな・・・何か理由があってやむを得なくなのかもしれんが・・・」
季衣「なら、何で誰にも相談しなかったのかな?僕達、仲間なのに・・・」
今にも泣きそうな表情を浮かべながら、季衣は星の顔を見つめていた。
すると、春蘭が突然季衣の肩をポンと手で叩き、そのあと軽く頭を撫でてやる。
季衣「春蘭さ・・・ま?」
春蘭「難しいことは分からんが、私は凪たちを信じている。例えどんな理由があろうとも、私はただ信じるしかできん。季衣は凪たちを信じられんか?」
春蘭の言葉に少し考えた後
季衣「ううん、僕は・・・僕は信じてますよ!」
春蘭「なら、それでいいではないか」
春蘭が最後に季衣の頭をポンと叩くと、それと同時に出撃の合図である銅鑼が城内に鳴り響いた。
春蘭「さあ!いくぞ!!季衣!!難しいことは後で考えろ!!私達は三国の大剣として、華琳様が織り成す平和を邪魔する愚か者どもを血祭りにあげに行くぞ!!」
季衣「はい!!春蘭様!!」
季衣に先ほどまでの表情はこれっぽっちもなく、いつもどおりの季衣に戻っていた。
そして、元気に春蘭の後についていく。
愛紗「本当に、季衣は春蘭が好きだな」
星「そうだな。私達ではあのようにはいかなかったろう」
翠「よし、私達も行こうぜ!!いくぞ!!麒麟!!!」
翠はいつも間にか麒麟に跨っており、麒麟も“いつでもいける”と言わんがばかりに前足で地面を力強く蹴り、砂埃が立っている。
思春「では、私は雪蓮様に伝えてから、出発しよう。・・・武運を祈る」
思春はそう言って城壁の上へと飛び上がり、そのまま姿を消した。
桔梗「おーい。愛紗ーー。こちらの準備も整ったぁぁ。いつでも出れるぞぉぉ!」
後方からは桔梗の辺りの空気が痺れるほどの大声が聞こえてきた。
その声の大きさに周りの兵士たちは一同にピタリと止まり、桔梗の方を見つめる。
そんな兵士をよそに愛紗は特に変わった様子もなく桔梗の方へ振り向いた。
愛紗「準備が出来たか。よし!!我らも行くぞ!!!」
愛紗は青龍偃月刀を取り出し、肩に担ぐように持つとそのまま城門の方へ歩いていった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「報告します。三国側、動き始めました」
一人の黒兜に黒鎧の漆黒の兵士が片膝を着いて、報告を行う。
その兵士を4人が取り囲むようにして立っており、その報告を受けていた
カガミ「分かりました。下がりなさい」
カガミの言葉を聴いて、兵士は片膝を着いたまま深々と頭を下げると、低い姿勢のままその場を後にした。
ツルギ「やっと、俺らも出るのか〜。長かったぜ〜」
ツルギは両腕を上げながら背筋をぐっと伸ばし、その後に軽く屈伸をしてみせる。
その横では自分の弓の手入れをしながら、矢筒にある矢の本数を確認している黒布の女がいた。
黒布の女「ホントにうるさかった・・・早く戦わせろだのなんだのって・・・」
ツルギ「戦いって聞いたら、血湧き肉踊るのが男ってもんだろうが!」
黒布の女(以下女)「私・・・女だし」
ツルギ「・・・・・・、なら!!お前なら分かんだろ!?」
ツルギはチャラい感じで両腕で指差しながら、カガミの隣にいる黒布の男に話しかける
黒布の男(以下男)「オレも別に何ともも思わんなぁ〜。こんな戦の雰囲気も正直初めてなわけやし・・・。つーか、ほんまにテンション高いな〜」
男は手を頭の後ろで組んで、三国の兵士たちが陣を展開していく様子を眺めている。
ツルギ「だぁぁぁぁぁ、ここの男共はほんとに分かってねぇぇぇ」
女「だから私、女だって」
ツルギは空へと不満を咆哮していたが、もう回りは慣れた様子で華麗にスルーしていた。
カガミ「・・・、ツルギ、うるさい。戦場に出しませんよ」
ツルギ「・・・・・・、はぁ〜〜〜。分かったよっ。んで、どういう陣形で行くんだ?」
カガミの重く、冷たい言葉を聴いてツルギは咆哮をピタリとやめる。
そして、大きなため息を一つ着いた後、どっしりと地面に胡坐をかいた。
カガミ「そうですね・・・。中央に「関」の旗で両翼に「孫」と「夏侯」ですか・・・。「孫」はおそらく孫策さん、「夏侯」は夏侯惇でしょうね」
カガミは平原に広がる三国の陣形を見ながら、ジッと何かを考えている。
カガミ「ツルギは中央の関羽を抑えてください」
ツルギ「よっしゃああぁぁぁぁぁ!!あん時の続きができんぜ!!!!」
胡坐をかいていたツルギは勢い良く飛び上がり、全力でガッツポーズを取る。
女「孫策は私がやればいいのよね?」
カガミ「はい。それでお願いします。私達だと相性が悪いので」
弓の手入れが終わると、その弓を背中に背負いなおす。
その時、いままで三国の様子を見ながら何となく話を聞いていた男の肩がピクッと揺れる。
男「えっ!?ちょ・・・待って!?ほんなら、オレが夏侯惇なん!?ムリムリムリッ!!瞬殺されるって!!」
カガミ「またまた・・・、ほんとにご冗談がお好きですね」
慌てふためく男を他所にカガミは手を口元に当て優雅ににっこりと笑って見せた。
男「それにオレこんな戦い初めてやねんで!?それやのにいきなり超有名なお人が相手なんて無謀すぎますって!!」
女「それなら私だって初めてよ。こんな戦い」
男「そりゃーそうやろうけども・・・、えっ・・・マジでやらなあかん?」
カガミ「大丈夫ですよ。かっこいい所を見せるチャンスじゃないですか」
男「誰に見せんねん・・・」
ツルギ「覚悟を決めな。男だろ」
カガミとツルギの二人は男の両肩にポンと手をのせる。
カガミ「あなたの実力は私が保証します。死にはしません」
男「そりゃあ、あんだけ特訓もすれば強うもなるけどもや・・・。それに、“勝てます”とは言ってくれんのやね・・・」
カガミ「いざとなったら必勝法をお教えしますから」
男「期待せんとくわ・・・」
その後、観念したのか顔をがっくりと落としながらも地面に置いてある槍を手に取った。
そして、グルンと大きく一回だけ槍を振るってカガミの方へと歩みを進めた。
カガミ「それと・・・彼も連れて行きます・・・来てください」
カガミは近くにある天幕に向かって声をかける。
すると、その天幕から一人の男が出てきた。
その男は全身を覆う灰色のコートを着ており、顔は見えないように白い仮面をつけていた。
仮面の男は一歩ずつ4人が集まる所へと近づいていく。
その様子に黒布の女の表情は驚きの色に変わる。
女「ちょっと待ってよ!!起きて早々、いきなり戦だなんて無茶よ!!体をもう少し休めないと!!」
女は仮面の男に駆け寄り、心配そうに両肩を抱えてやる。
カガミ「心配しなくてもしっかり訓練はできています。問題ありません。それに、今回の戦・・・そして、この外史の崩壊には彼の活躍が必要不可欠です」
女「それでもいきなり・・・・・・やっぱりダメ!!どうしてもって言うのだったら私と一緒にして!!私が絶対守るから・・・」
女はカガミに強い口調でそう言うと、仮面の男の両肩をもちながら真正面に立ち、目をジッと見つめる。
しかし、仮面の男は顔を横に振って見せた。
仮面の男「オレが・・・やらないと・・・な」
女「でも・・・」
仮面の男は両肩に乗っている手を優しく下ろすと、カガミの下へ近づいていく。
その途中で仮面の男は黒布の男の前で立ち止まった。
仮面の男「・・・・・・迷惑をかけてるな」
男「・・・気にすんな。さっさと終わらせたろや」
一言ずつ言葉を交わした後、仮面の男はカガミの下へと再び歩き出した。
仮面の男「・・・あんたについていけばいいんだな?」
カガミ「はい・・・。再度確認しますが、目的は分かってますね?」
仮面の男「・・・・・・問題ない」
仮面の男は自分の腰に刺さっている刀の柄をグッと強く握っている。
そこには、何かの決意の表れを見てとることができた。
その後ろでは女が心配そうに仮面の男を見つめていた。
カガミ「なら、結構です。ツルギ、頼みますよ?」
ツルギ「ああ、任せろ。それと・・・ふがいない我が弟子達はどうした?」
カガミ「外史進入資格の再取得にかなり時間がかかっているようです。この戦にはギリギリ間に合うか間に合わないかというところですねぇ」
ツルギ「ったく・・・我が弟子ながらホントに情けねぇ・・・。なら・・・ほっとくか・・・」
カガミ「最後に・・・皆さん作戦通りに動いてくださいよ。特にツルギ・・・あまり戦いに没頭しないように」
ツルギ「へいへ〜い」
カガミ「では、参りましょうか」
カガミはそういうと5人の先頭に立ち、ゆっくりとした足並みでもうすでに集まっている漆黒の兵団のもとへ歩いていった。
戦場にたなびくは魏・呉・蜀の牙門旗
相対するは戦場を覆うほどの漆黒の鎧兜を身に着けた大軍
そこに三国の英雄たちが集っていた。
その戦の雰囲気はかつての赤壁を思い起こさせる・・・
そして、両軍の進軍開始の銅鑼が平原に鳴り響く!!
いまここに、三国統一後初めての大戦闘が勃発する!!!!
END
あとがき
どうもです。
いかがだったでしょうか?
今回はきりのいい所で終わらせたかったので、短くなりました。
そして、やっと予告?の一部を使うことができました。
そして、お気づきの方もいらっしゃるでしょうが、今回は前編1となっています。
私の想像通りに行けば10章は前編の1と2、中編の1と2、後編の1、2という全6構成になると考えています。
もしかしたら中編3が登場するかも・・・
そして、この後に2部に突入という形を想定しています。
2部の予告?も製作中であります。
また、定期更新についてはあともう少々お待ちください。
次回更新は23日の祝日前後になると思います。
では、最後にタイトルだけの予告を
次回 真・恋姫無双 黒天編 第10章 「黒天」 前編2 予期せぬ報
では、これで失礼します。
説明 | ||
どうもです。第10章前編1となります。 今回はいつもと比べて短めですが、ごゆるりとどうぞ |
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コメント | ||
ケンケン☆様>そう言って頂けるとホントにやる気につながります。これからもできる範囲でがんばりたいと思います(salfa) この女と男はもしかして・・。続きが楽しみでしかたないですw(ツクモ) |
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