東方天零譚 第三話
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「それじゃ、あらためまして。ようこそ、レジスタンスベースへ」

トランスサーバを使ったあと、別の部屋へと移動したところでシエルが口を開く。

ちなみにこの部屋は司令室というらしい。

「ここは、イレギュラーのうたがいをかけられたレプリロイドたちが生きのびるために戦う最後のとりで」

とりあえず、一通り話を聞いてから質問をすることにした。

「少しでも長く生きのびようと私たちは必死で戦ってきた…でも…それも、もうげんかい」

ゼロもおとなしく話を聞いていた。まぁ無口な奴だから当たり前かもだけど。

シエルは、ゼロにまっすぐ視線を合わせて言う。

「私たちは、あなたの伝説を信じ、あなたに最後の望みをかけ、あなたをさがしたの」

なおも無言。少しはリアクションしたらどうなのだ。

「あなたは、ゼロ。100年前の世界でエックスとともに世界を救った伝説のレプリロイド」

「エックス…? 聞いたことがある名前だ」

と、ここで初めてゼロが反応する。ちなみにもちろん、天子には心当たりはない。

「エックス…」

その名前を繰り返したシエルの表情は暗い。

「伝説の英雄は、今も生きているわ。そして…私たちを処分しようとしている」

「エックスがオマエたちを…処分する…だと?」

処分とは、また物騒な言葉が出てきた。

「今、こうして話しているこの瞬間にも…多くの無実のレプリロイドたちが処分されているの…」

シエルは一呼吸を置いて、

「あなたの力をかりたいの」

そう言ったシエルの目は、まるで縋るようなものであった。

「私たちの未来はあなたにかかっている…」

まぁここで自分が対象外なことについては、今は何も言うまい。

ていうか、むしろ私はいちいちつっこみすぎであろうか。

「助けて…くれるよね?」

年相応な、縋るようで甘えるようにシエルはゼロに助けを請う。

ゼロは、

「ああ」

短く、簡潔に返事をする。

だが、シエルはとたんに安心したような表情で、

「あ…ありがとう…ほんと…ゆめ…みたい」

嬉しそうに、そう言った。

「これで…これで…もしかしたら、みんなを助けられるかもしれない」

この娘は見た感じまだ幼さが残る少女だ。

幻想郷では幼く見えても何百年と生きてきた妖怪はうじゃうじゃといるが、この娘に関して言えば本当に幼いのではないかと思う。

そんないっそ子供と言ってもいいかもしれないような娘が、こんなにもおいつめられている状況が少し信じられない。

もしかしたら、人里に住んでいる人間たちもこの娘のようにおいつめられているのだろうか。

そんなことを考えたが、あのゆるい幻想郷においてそんなことがあるはずないか、と天子は思い直した。

「じゃあ、今すぐお願いしたいことがあるの。じゅんびができたら声をかけてくれる?」

そう言うと、とりあえず解散の流れになったようだ。

色々質問するなら、このタイミングだろう。

そう思って、天子はシエルに話しかけた。

「ねぇ、ちょっと色々聞きたいんだけど」

「えっ…あ、そうだ。あなたも、ありがとう。助けてくれて…」

聞く前にお礼を言われ、はにかんだ笑顔を向けられた。

その純真可憐な立ち居振る舞いに若干押されつつも、天子は質問をすることにした。

「まず初めに、ここは幻想郷よね?」

「ゲンソウ…キョウ…?」

初めて聞きました、と言わんばかりに首をかしげるシエル。

まず幻想郷でないことには少し驚いたが、まぁ多分外の世界に出てしまったんだろうと深く考えなかった。

「違うのね。じゃあ次、さっきからあなたが言っているレプリロイドって何?」

「えっ? なにって…あなたも、人間じゃないならレプリロイドじゃないの?」

「違うわよ。私は天人よ、天人」

「テンジン…?」

シエルは頭の中に?マークをたくさん浮かべているようだ。

「外の世界じゃ天人も知らされていないのね……困ったものだわ」

たしか守矢神社の面々は外の世界から来たらしいけど、まさか外の世界はここまでヒドいとは思わなかった。

「とりあえず、私は天人である比那名居 天子よ。よろしくね」

「あっ、はい。テンシさんですね…よろしく…」

自己紹介の際、よろしくと言えるようになったのは"異変"を経て天子の性格が丸くなったからである。

少し前であれば、同じ「よろしく」でも上から目線の高圧的なものであったが、今の天子は素直に挨拶として用いられる「よろしく」を使っていた。

「で、天人ってのは人間よりも偉い神様みたいなものだと思っておきなさい」

「じゃあ、あなたはレプリロイドじゃないの?」

「だから、そのレプリロイドってのはなんなのよ」

「……レプリロイドは、簡単に言えば人間に近い思考回路を持つロボットです」

「ロボット……って?」

「ロボットも、知らないんですか?」

「知らないわよ。そんなもの幻想郷には無かったし」

いや、でもそう言えば前に守矢の巫女がロボットがどうたらって言ってたような……。

「例えば、そこにいるゼロも、さっき私たちを襲ってきたのもロボットです」

「あぁ……」

襲ってきた奴ら。天子は人形だと思っていたが、あれがロボットというものだったのか。

「なるほど。人形でなくロボットって言うのね。ちなみに人形との違いは?」

「そうですね…多分、動力の有無じゃないでしょうか…」

シエルは、自らの常識を持って答える。

「ふぅん、なるほど……でもアリスの人形は動いていたような……」

と疑問を口にするも、あまり突っ込んでもしょうがないので締めることにした。

「まぁとりあえず、外で動いている人形みたいなものは全部ロボットって認識でいいのかしら?」

「はい、それでいいと思います」

「で、レプリロイドってのは人間と同じような思考が出来るロボットってわけね。ほとんど人間と変わらないんじゃない?」

「その通りです…だからこそ、罪の無いレプリロイドが処分される現状は、間違っているの…!」

そう言って、シエルは悔しそうな、悲しそうな顔をする。

「ふぅん……じゃあ次の質問。イレギュラーって?」

「イレギュラーは、人間に危害を加えたり破壊行為をするような、危険なレプリロイドのことを差します」

「ふむふむ……なるほどね。だんだんわかってきたわよ」

そう言うと、天子はこれまでに得た知識を整理するべくシエルに話しかける。

「つまり、あなた達はイレギュラーと認識されて、処分されようとしているから、ゼロに助けを求めたのね」

「ええ…そのとおりよ…」

そこで、天子はニヤッとイタズラっぽい笑みを浮かべた。

「実は本当にイレギュラーなんじゃないの?」

「違います…! 私たちはイレギュラーなんかじゃありません!」

「大丈夫よ、わかってるって」

と、天子はおちゃらけてみる。

「要は、エックスっていう偉い奴のせいで、あなたたちは処分されそうになってるってことよね?」

「…そうよ」

「じゃあ、手伝ってあげる」

「えっ!?」

「この天人である比那名居 天子様があなた達を助けてあげるんだから、感謝しなさいよね」

「で、でも、敵はすごく強いし…」

「さっきの戦闘見てなかったの? ちゃんと敵を倒したじゃない」

「で、でも…生身で戦うなんて…」

「大丈夫よ、天人の肉体は強いから」

「で、でも…」

なおも食い下がろうとするので、天子はシエルを手で制しながら、

「あぁ〜〜わかった! そんなに心配だって言うなら、私の実力を見せてあげる!」

「…え?」

「あんたがこれからゼロにするお願いに、私も協力するって言ってんの! そして私の実力を認めさせてあげるんだから!」

「…ほんと? 私たちを、助けて…くれるの?」

「そうよ! ありがたく思いなさい!」

実は、天子がこうまでシエルに協力的なのには理由があった。

その一つに、話に出てくるエックスという奴が、偉そうで生意気だからというものがある。

元々天子は天界において「不良天人」と呼ばれていた。

そんな過去を持つ天子にとって、偉そうにしている奴はそれだけで倒す理由になる。

そしてもう一つ。こちらのほうが天子にとっては何よりも大きな理由。

この世界に来てからは、見るもの聞くものすべてが初めてのことばかりであった。

そんな今の状況は、天子にとってはとても楽しい退屈しのぎとなったのだ。

何が起こるかわからないこの状況、ワクワクしちゃうわ。

そんな自己本位な理由から行動する辺り、さすが幻想郷の住人であった。

「ありがとう…まさか、二人も協力者が現れるなんて…」

シエルは感動しているのか、ふるふると震えている。

そして、会話中ずっと武器の確認をしていたゼロが口を開く。

「じゅんびが出来た。話を聞こう」

その一言をきっかけに、シエルが今回の作戦について話し始めた。

 

説明
ロボットと人形の違いも個人的解釈によるものです(笑)。
次回はアステファルコン戦です。
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ロックマンゼロ 天子 東方 

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