.深夜0時を時計の針が回る、2月15日、バレンタインデーが終わった。今年も何もなかったかと寝る準備に入る。そうしていると控えめに玄関を叩く音が聞こえ、こんな時間に誰かと戸を開けると見知った少女が俯いて立っていた。「失敗作だけど…」少女はそう言い俯いたままぶっきらぼうに青い包と赤いリボン、向日葵のシールで包装した小さな包みを手渡してきた。少女は俯いたまま何も言わない、受け取った包を開け中を見る、少女は驚いた目で僅かにこちらを見たがすぐ見また俯いてしまった。包の中には小さなチョコが並べて入れられていた。見た感じどこが失敗作なのかわからない。それをひとつ摘み口に運ぶ。マフラーで隠した顔が僅かに赤く見えるのも身体が小刻みに震えているように見えるのも寒さのせいだけではないのだろう。「美味いな…」一言自然に言葉が漏れる。続けてもう一つ手に取ろうとした所で軽く額を小突かれる。「ばかっ…」顔を上げると少女が優しく微笑んでいた。顔が赤いままだがさっきの赤とは違う色に見える。少女は安堵したような顔で自分の無二額を預けるようにもたれかかってきた。そっと少女の肩を抱く………目を開ける。見慣れた天井、布団の中で横になっている、腕には枕を抱いている……夢か。
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